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 2.26事件で反乱軍の兵士に呼びかけた内容

 兵に告ぐ

 勅命が発せられたのである。
 既に天皇陛下の御命令が発せられたのである。
 お前達は上官の命令を正しいものと信じて絶対服従して誠心誠意活動して来たのであらうが、既に天皇陛下の御命令によってお前達は皆復帰せよと仰せられたのである。

 此上お前達が飽く迄も抵抗したならば夫は勅命に反抗することになり逆賊とならなければならない。
 正しいことをしてゐると信じていたのにそれが間違って居たと知ったならば
徒らに今迄の行懸りや義理上から何時までも反抗的態度をとって天皇陛下に叛き奉り
逆賊としても汚名を永久に受けるやうなことがあってはならない。

 今からでも決して遅くはないから直ちに抵抗をやめて軍旗の下に復帰する様にせよ。
 そうしたら今までの罪も許されるのである。

 お前達の父兄は勿論のこと国民全体もそれを心から祈って居るのである。
 速かに現在の位置を棄てて帰って来い。

戒厳司令官 香椎中将

 コメント

 2.26事件は、世界的に見れば不思議の国のクーデターである。

 なにしろ、クーデターを起こして、勝手に軍隊を動かして首都を占領し、大臣クラスを根こそぎ暗殺して政府を壊滅させようとした首謀者達自身が自分達を「反乱軍」だとは夢にも思っておらず、あくまでも天皇陛下に忠実な臣下であると自己規定していたのである。

 しかも、相手側の政府・軍首脳部も、この「反乱軍」に対して、なにか奥歯にモノがはさまったような態度をとり、徹底的対決姿勢をとろうとしなかった。

 これは日本人の思考構造を考える上で、さまざまに応用できる貴重なケーススタディとなりうるのです。