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ルカ福音書
 
ルカ一章
"420101","わたし達の間で(近ごろひとまず)完結しました出来事を、(すなわち、イエス・
キリストの福音の発端から、それがローマにまで伸びていったことの顛末を、)"
"420102","最初から実際に見た人たちと御言葉の伝道にたずさわった人たちとが(語り)
伝えてくれたとおりに、一つの物語に編もうと企てた人が数多くありますので、"
"420103","テオピロ閣下よ、わたしも一切の事の次第を始めから精密に取り調べましたか
ら、今順序を正して書き綴り、これを閣下に奉呈して、"
"420104","閣下が(今日までこのことについて)聞かれた話が、決して間違いでなかった
ことを知っていただこうと思ったのであります。"
"420105","ユダヤのヘロデ(大)王の代に、ザカリヤというアビヤ組の祭司があった。。妻
は、(これも大祭司)アロンの末で、名をエリサベツといった。"
"420106","二人とも主の掟と定めとを皆落度なく守って、神の目に(さえ)正しくあった。
"
"420107","しかしエリサベツが石女であったので、子がなく、かつふたりとももう年を取
っていた。"
"420108","さてザカリヤの組が当番で、宮にて祭司の務をしていた時のこと、"
"420109","(ある日)彼が祭司職の習わしに従って籤を引いたところ、主の聖所に入って
香をたく役目にあたった。"
"420110","(きょうザカリヤには一生にただ一度ゆるされる幸運がのぞんだのである。ザ
カリヤが)香をたいている時、一般の民衆は皆(いつものとおり)外で祈っていた。"
"420111","(すると)突然一人の主の使がザカリヤに現われ、香壇の右、(ザカリヤの向か
って左)に立っていた。"
"420112","それを見てザカリヤは胸さわぎがし、恐ろしさが彼をおそった。"
"420113","天使が言った、「ザカリヤ、"恐れることはない。あなたの"(かねての)祈りは
"聞きいれられた。"妻エリサベツは男の子を産むであろう。その名をヨハネとつけよ。"
"420114","この子はあなたの喜びであり、楽しみであり、多くの人もその誕生を喜ぶであ
ろう。"
"420115","主の前に大いなる者となるからである。"彼は決して葡萄酒や強い酒を飲まな
い。"(そのかわり)母の胎内からすでに聖霊に満たされ、(それに)酔っている。"
"420116","彼は多くのイスラエルの子孫を、彼らの神なる主に立ち返らせるであろう。"
"420117","(そればかりか、)"(預言者)エリヤの"霊と力とをもって主(救世主)の先駆
けをし、"父の心を(ふたたび)子に"(向けさせて家をきよめ、)また不従順な者を義人
と同じ考えに"立ち返らせて、"準備のできた民を主のために用意するであろう。」"
"420118","ザカリヤが天使に言った、「(子をさずかる)その"証拠は何でしょうか。"わた
しは老人で、妻ももう年を取っております。」"
"420119","天使が答えた、「わたしは(もったいなくも)神の前に立つガブリエルである。
あなたにこの喜びのおとずれを伝えるために遣わされたのである。"
"420120","だからいま、あなたは唖になり、このことが成るその日まで、ものを言うこと
が出来ないであろう。これは、時が来ればかならず成就するわたしの言葉を信じなかった
罰である。」"
"420121","(外で)待っている人々は、ザカリヤが聖所の中で暇どるのを不思議に思った。
"
"420122","やがて出てくるには出てきたが、(仕来りの)祝福を人々に与えることが出来な
かったので、人々は彼が聖所の中で幻を見たことを知った。ザカリヤは身振りで示すばか
りで、口がきけずにいた。"
"420123","そして(その組の七日の)務の日が終ると、家にかえった。"
"420124","数日の後、妻エリザベツはみごもって、五か月のあいだ(家に)引き篭ってい
たが、彼女はこう考えるのであった、"
"420125","「主はわたしに目をかけ、人中で"(子供のない)わたしの恥をそそいで"やろ
うとて、いまこの時にこのようにしてくださった」と。"
"420126","(エリサベツがみごもってから)六か月目に(同じ)天使ガブリエルが、神か
らガリラヤのナザレという町の一人の乙女に遣わされた。"
"420127","この乙女はダビデ(王)家の出であるヨセフという人と婚約の間柄で、名をマ
リヤといった。"
"420128","天使は乙女の所に来て言った、「おめでとう、恵まれた人よ、主があなたとご一
しょだ!」"
"420129","マリヤはこの言葉にびっくりして、いったいこの挨拶は何事であろうと考えま
どうた。"
"420130","天使が言った、「マリヤよ、恐れることはない。神からお恵みをいただいたのだ
から。"
"420131","見よ、あなたは子をさずかり、男の子が生まれる。その名をイエスとつけよ。"
"420132","その子は大いなる者となり、いと高きお方の子と呼ばれる。神なる主は先祖"ダ
ビデの王位を"彼に与え、"
"420133","彼は"永遠に"ヤコブの家の"王となり、"その国は果しなく続くであろう。」"
"420134","マリヤが天使に言った、「まだ夫を知らぬわたしに、どうしてそんなことがあり
ましょうか。」"                              
"420135","天使が答えた、「聖霊があなたの上に臨み、いと高きお方の力があなたを掩いか
くすであろう。それゆえ(あなたから)生まれるものは、"聖"であり、神の子"と呼ば
れる。""
"420136","実はあなたの親類のエリザベツも、あの老年で、男の子をさずかったのだ。石
女と言われていた女が、今月はもう六月になっている。"
"420137",""神には何一つ出来ないことはない"のだから。」"
"420138","マリヤは言った、「かしこまりました。わたしは主の召使、お言葉のとおりに成
りますように。」天使はマリヤをはなれ去った。"
"420139","その後間もなくマリヤは立って、大急ぎでユダの山地のある町に行き、"
"420140","ザカリヤの家に入ってエリサベツに挨拶した。"
"420141","エリザベツがマリヤの挨拶を聞いた時、児が胎内で躍った。エリサベツは聖霊
に満たされ、"
"420142","声高らかにさけんだ、「あなたは女の中で、(一番)祝福された方、あなたの胎
内のお子さまも(だれより)祝福されたお方です。"
"420143","主の母上がわたしの所に来てくださるとは、まあどうしたのでしょう。"
"420144","そら、あなたの挨拶の声がわたしの耳に入ると、児が胎内で喜んで躍りました。
"
"420145","主の仰せられたことはきっと成就すると信じたこの人は、なんと仕合わせでし
ょう。」"
"420146","マリヤが(神を讃美して)言った。──"わたしの心は主を"あがめ、"
"420147","わたしの霊は、"救い主なる神を喜びたたえる、""
"420148","この"卑しい召使にまで目をかけてくださった"からです。きっと今からのち
代々の人々は、"わたしを仕合わせ者と言いましょう。""
"420149","力の強いお方がわたしに大きなことをしてくださったのです。"そのお方の名は
聖で、""
"420150",""その憐れみは千代よろず代とかぎりなく、そのお方を恐れる者にのぞみまし
ょう。""
"420151",""御腕にて"逞しきことを行い、心の思いの"高ぶる者を""おい散らし、""
"420152",""権力者を"位から"引き下ろし、""低い者を高うし、""
"420153",""飢えた者を宝で満たし、""富める者を""空手で追いかえされましょう。""
"420154","永遠に"その憐れみを忘れず、""その僕イスラエルの民を助けてくださるでし
ょう、""
"420155",""われらの先祖たち、すなわちアブラハム"とその"子孫に"仰せられた"と
おりに。""
"420156","マリヤは三か月ほどエリサベツと一しょにいて、家に帰った。"
"420157","月満ちて、エリサベツは男の子を産んだ。"
"420158","近所の者や親類は、主がエリサベツに大きな憐れみをほどこされたと聞いて、
自分のことのように喜んだ。"
"420159","(誕生から)八日目に、この人々が幼児に割礼を施すためにあつまったときの
こと、(慣例もあり)父の名にちなんでザカリヤと名をつけようとすると、"
"420160","母親が、「いけません、ヨハネとつけなくては」と言って反対した。"
"420161","彼らは、「あなたの親類には、そんな名前の者は一人もいない」とエリサベツに
言って、"
"420162","父親に、何と名をつけたいかと身振りでたずねた。"
"420163","ザカリヤは石板を頼んで、「あれの名はヨハネ」と書いたので、皆が不思議に思
った。"
"420164","するとたちどころにザカリヤの口が開け舌が動き出してものが言えるようにな
り、神をほめたたえた。"
"420165","近所の者に皆恐れが臨んだ。そしてこのことがことごとくユダヤの山地全体の
評判になったので、"
"420166","聞いた者は皆これを胸におさめ、「この幼児はいったい何になるのだろう」と考
えた。主の(恵みの)御手もまたたしかにこの幼児に働いていたのである。"
"420167","父ザカリヤはその時聖霊に満たされてこう預言した。──"
"420168",""讃美すべきかな、イスラエルの神なる主!""その民(イスラエル)を"心に
かけて"あがないを"なし、"
"420169","わたし達のために、僕"ダビデの"家に救いの(力強い)"角(なる救い主)を
お立てになる"からである、"
"420170","遠い昔から、聖なる預言者たちの口をもって仰せられたとおりに。"
"420171","その角こそ、われらの"敵から、""また"すべてわたし達を"憎む者の手から、"
すくう救いである。"
"420172","主はこうして、"われらの先祖に憐れみを"ほどこし、また"その"聖なる"契
約、""
"420173","(すなわち)先祖"アブラハムにお立てになった"誓いを"おぼえ、""
"420174","わたし達を敵の手から救いだし、不安なく、主に奉仕させてくださるのである、
"
"420175","全生涯を主の前に清く、正しく。"
"420176","お前、幼児よ、お前はいと高きお方の預言者と呼ばれる。"主の"先駆けをして
"その道を用意し、""
"420177","罪の赦しによる救いを民に知らせるのだから。"
"420178","これは(みな)われらの神の(深き)憐れみの御心によるのである。またその
憐れみによって、高き所よりの光がわたし達を訪れ、"
"420179",""暗やみと死の陰とに住まう人々を照らし、"われらの足を"平和の道"へと導
くであろう。"
"420180","幼児は大きくなり霊も強くなって、(洗礼者として)イスラエルの民の前にあら
われる日まで、荒野に(かくれて)いた。"
ルカ二章
"420201","そのころ、全(ローマ)帝国の人口調査の勅令が皇帝アウグストから出た。"
"420202","これは(ローマ政府)第一回の人口調査で、クレニオがシリヤの総督であった
ときに行われたものである。"
"420203","すべての人が登録を受けるために、それぞれ自分の(生まれた)町にかえった。
"
"420204","ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上
った。彼はダビデ家の出、またその血統であったからである。"
"420205","すでに身重であった妻マリヤと共に、登録を受けるためであった。"
"420206","するとそこにおる間に、マリヤは月満ちて、"
"420207","初子を産み、産着にくるんで飼葉桶に寝かせた。宿屋には場所がなかったので
ある。"
"420208","(その晩、)数人の羊飼がそのあたりで、野宿をしながら群の夜番をしていた。
"
"420209","すると(突然)一人の主の使が(現われて)彼らに近づき、主の栄光が彼らの
まわりを照らしたので、羊飼たちはすっかりおびえてしまった。"
"420210","天使が言った、「こわがることはない。いまわたしは、(イスラエルの)民全体
への大きな喜びのおとずれを、あなた達に伝えるのだから。"
"420211","実は今夜ダビデの町に、あなた達のために一人の救い主がお生まれになった。
このお方が(かねて預言されていた)救世主なる主である。"
"420212","あなた達はみどり児が産着にくるまれて飼葉桶に寝ているのを見る。それが(救
世主の)目印である。」"
"420213","するとたちまち、おびただしい天使の群がその天使のところにあらわれて、神
を讃美して言った、──"
"420214","いと高き所にては神に栄光、地上にては(いまや)平安、御心にかなう人々に
あり!"
"420215","天使たちが彼らをはなれて天に去ると、羊飼たちは互に言った、「さあ、ベツレ
ヘムに行って、主が知らせてくださった出来事を見てこよう。」"
"420216","そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉桶に寝ているみどり児とをさが
し出した。"
"420217","彼らはそれを見ると、幼児について(天使に)告げられたことを(人々)に知
らせた。"
"420218","聞く者は皆羊飼たちの話を不思議に思った。"
"420219","しかしマリヤはこのことを皆胸にひめて、一人でじっと考えていた。"
"420220","羊飼たちは、聞いたり見たりしたことがことごとく(天使の)話のとおりであ
ったので、神を崇め、讃美しながら引き返した。"
"420221","八日過ぎて割礼の日が来ると、人々は、胎内に宿る前に天使からつけられたイ
エスという名を、幼児につけた。"
"420222","両親はモーセ律法による彼らの"清めの日(四十日)が過ぎる"と、幼児をつ
れてエルサレムに上った。"
"420223","これは主の律法に、"はじめて生まれた男の子は皆主に聖別しなければならな
い"と書いてあるとおりに、これを主に捧げるため、"
"420224","また(母親の清めについて)主の律法に、"山鳩一番か雛鳩二羽(を捧げねばな
らない)"とある規定によって、犠牲を供えるためであった。"
"420225","さて(そのころ)エルサレムに名をシメオンという人がいた。この人は正しい、
信心深い人で、イスラエルの慰め(である救世主)を待ち望み、聖霊が彼をはなれなかっ
た。"
"420226","かつ主の救世主を見ないうちは決して死なないと、かねて聖霊からお告げを受
けていた。"
"420227","(この日)御霊に感じて宮に行くと、ちょうど両親が、律法の仕来りどおり幼
児イエスに行おうとして彼をつれて入ってきたので、"
"420228","シメオンは幼児を両腕に抱き、こう言って神を讃美した。──"
"420229","今こそ、主よ、あなたはこの僕をしてお言葉のとおり安らかに(この世に)暇
乞いをさせてくださいます、"
"420230","わたしの目が"もうあなたの救いを拝見しました"からです。"
"420231","この救いこそ、あなたが"全人類の(ため、その)目の前で"用意されたもの、
"
"420232",""異教人には啓示を、"あなたの民"イスラエルには栄光をあたえる""光"で
あります。"
"420233","幼児のことをこのように言うのを父と母とが不思議に思っていると、"
"420234","シメオンは両親を祝福し、母マリヤに言った、「驚きなさるなよ、この幼児はイ
スラエルの多くの人を、(この方に対する態度によって)倒されたり立たせたりする、ま
た、一つの目印となって(この世の烈しい)反対をうける、使命を負わされているのです。
──"
"420235","(母人よ、)あなたも劔で胸を刺しつらぬかれ(る苦しみをせ)ねばなりますま
い。──これは多くの人の心の(隠れた)考えを外に出させるためなのです。」"
"420236","また、アセル族のパヌエルの娘に、アンナという女預言者があった。非常に年
を取っていて、娘時代の後、七年の結婚生活をおくり、"
"420237","(その後)八十四歳(の今日)まで寡婦ぐらしをしていた。(片時も)宮を離れ
ず、夜も昼も断食と祈りとをもって(神に)奉仕していたが、"
"420238","(シメオンが預言している)ちょうどその時、近寄ってきて(幼児について)
神に感謝をささげ、またエルサレムの人々のあがないを待ち望むみんなの人に、この幼児
のことを話した。"
"420239","両親は主の律法のさだめをすべて果すと、ガリラヤの自分の町ナザレに帰った。
"
"420240","幼児は大きくなり強くなって、知恵満ち、神の恵みが彼をはなれなかった。"
"420241","さてイエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムに行った。"
"420242","イエスが十二歳になった時、両親は(その)祭の習わしに従って、(彼を連れて
都へ)上った。"
"420243","(祭の)日が終って帰る時、イエス少年はエルサレムにのこったのに、両親は
それを知らなかった。"
"420244","道連れの中にいるとばかり思って、一日路を行ったのち、(はじめてそれに気づ
き、)親類、知人の中を捜したけれども、"
"420245","見つからないので、捜しながらエルサレムに引き返した。"
"420246","そして(都を出て)三日の後に、イエスが宮で教師たちの真中に坐って、話を
聞いたり尋ねたりしているのを見つけた。"
"420247","彼の話を聞いている人々は皆、その賢いうけこたえぶりに舌をまいていた。"
"420248","両親はこれを見て驚き、母が言った、「坊や、どうしてこんなことをしましたか。
ごらん、お父さまもわたしも(こんなに)心配して、あなたをさがしているではありませ
んか。」"
"420249","彼らに答えられた、「なぜおさがしになったのです。わたしが(天の)お父さま
の家に居るのは当り前でしょう。御存知なかったのですか。」"
"420250","両親にはこう言われた言葉(の意味)がわからなかった。"
"420251","それからイエスは一しょに(エルサレムから)下ってナザレに帰り、両親につ
かえられた。母(マリヤ)はこのことを皆胸に秘めていた。"
"420252","イエスは知恵も身の丈も、"また神と人との寵愛も、いやましに増していった。"
"
"420301","(ローマの)皇帝テベリオの治世の十五年目、ポンテオ・ピラトはユダヤの総
督、ヘロデ・(アンテパス)はガリラヤの領主、その兄弟ピリポはイツリヤおよびテラコ
ニテ地方の領主、ルサニヤはアビレネの領主、"
"420302","(そして)アンナスとカヤパとが大祭司であった時、神の(お召しの)言葉が、
(ユダヤの)荒野でザカリヤの子ヨハネにくだった。"
"420303","そこでヨハネは(救世主の道を用意するため、)ヨルダン川沿岸の地全体へ行っ
て、罪を赦されるための悔改めの洗礼を説いた。"
"420304","預言者イザヤの預言集に書いてあるとおりである。──"荒野に叫ぶ者の声は
ひびく、「主の道を用意し、"その"道筋をまっすぐにせよ。"
"420305","すべての谷は埋められすべての山と丘とは低うされ、曲った道はまっすぐに、
でこぼこ道は平らになるであろう。"
"420306","かくして全人類一人のこらず神の救いにあずかるであろう。」""
"420307","それでヨハネは、彼から洗礼を受けようとしてでて来た群衆に言った、「蝮の末
ども、(わたしから洗礼を受けて)来るべき(神の)怒り(の裁き)を免れるようにと、
だれがおしえたのか。"
"420308","(ほんとうに悔改めたのか。)それなら(洗礼を受けるだけでなく、)悔改めに
ふさわしい実を結べ。『われわれの先祖はアブラハムである(から大丈夫だ)』などという
考えを起してはならない。わたしは言う、神はそこらの石ころからでも、アブラハムの子
供を造ることがお出来になるのだ。"
"420309","斧はいますでに木の根に置いてある。だから、良い実を結ばない木はどんな木
でも、切られて火の中に投げ込まれる。」"
"420310","群衆が尋ねた、「では、わたし達はどうすればよいのですか。」"
"420311","ヨハネが答えた、「下着を二枚持っている者は、持たない者に分けてやれ。食べ
る物を持っている者も、同じようにせよ。」"
"420312","税金取りも洗礼を受けに来たが、ヨハネに言った、「先生、わたし達はどうすれ
ばよいのですか。」"
"420313","彼らに言った、「きまったもの以上、何も取り立てるな。」"
"420314","兵卒も「このわたし達は、どうすればよいのですか」と尋ねると、言った、「だ
れをもゆすらず、しぼり取らず、給料で満足せよ。」"
"420315","民衆は(救世主を)待ち望んでいたので皆心の中で、もしかしたらこのヨハネ
が救世主ではあるまいかと考えていると、"
"420316","ヨハネがみんなに言った、「わたしは水で洗礼を授けているが、わたしよりも力
のある方が(あとから)来られる。わたしはその方の靴の紐をとく値打もない者である。
その方は聖霊と(裁きの)火とで洗礼をお授けになる。"
"420317","その手に箕をもって、(すぐ)脱穀場の掃除をしようとしておられる。すなわち
麦は集めて倉に入れ、籾殻は消えぬ火で焼きすてられるのである。(聖霊と火の洗礼とは
これである。)」"
"420318","ヨハネはそのほかなお多くの訓戒をあたえながら、民衆に福音を伝えた。"
"420319","ところが領主ヘロデでは、その兄弟(ピリポ)の妻ヘロデヤ(との結婚)のこ
とについて、また自分の行ったすべての悪事について、ヨハネから非難されたので、"
"420320","ヨハネを牢に閉じこめ、(これまでの)ありとあらゆる悪事に、もう一つこの悪
事をつけたした。"
"420321","さて民衆が皆(ヨハネから)洗礼を受けた時、イエスも洗礼を受けて祈ってお
られると、天が開けて、"
"420322","聖霊が鳩のような形で彼の上に下ってきた。そして「あなたは(いま)わたし
の"最愛の子、"わたしの心にかなった"」という声が天からきこえてきた。"
"420323","このイエスは(伝道を)始められたとき、三十歳ばかりであった。(聖霊による
子であったが、)世間ではヨセフの子と思われていた。ヨセフはヘリの子、"
"420324","ヘリはマタテの、マタテはレビの、レビはメルキの、メルキはヤンナイの、ヤ
ンナイはヨセフの、"
"420325","ヨセフはマタテヤの、マタテヤはアモスの、アモスはナホムの、ナホムはエリ
スの、エリスはナンガイの、"
"420326","ナンガイはマハテの、マハテはマタテヤの、マタテヤはシメイの、シメイはヨ
セクの、ヨセクはヨダの、"
"420327","ヨダはヨハナンの、ヨハナンはレサの、レサはゾロバベルの、ゾロバベルはサ
ラテルの、サラテルはネリの、"
"420328","ネリはメルキの、メルキはアデイの、アデイはコサムの、コサムはエルマダム
の、エルマダムはエルの、"
"420329","エルはヨシュアの、ヨシュアはエリエゼルの、エリエゼルはヨリムの、ヨリム
はマタテの、マタテはレビの、"
"420330","レビはシメオンの、シメオンはユダの、ユダはヨセフの、ヨセフはヨナムの、
ヨナムはエリヤキムの、"
"420331","エリヤキムはメレヤの、メレヤはメナの、メナはマタタの、マタタはナタンの、
ナタンはダビデの、"
"420332","ダビデはエッサイの、エッサイはオベデの、オベデはボアズの、ボアズはサラ
の、サラはナアソンの、"
"420333","ナアソンはアミナダブの、アミナダブはアデミンの、アデミンはアルニの、ア
ルニはエスロンの、エスロンはパレスの、パレスはユダの、"
"420334","ユダはヤコブの、ヤコブはイサクの、イサクはアブラハムの、アブラハムはテ
ラの、テラはナホルの、"
"420335","ナホルはセルグの、セルグはレウの、レウはペレグの、ペレグはエベルの、エ
ベルはサラの、"
"420336","サラはカイナンの、カイナンはアルパクサデの、アルパクサデはセムの、セム
はノアの、ノアはラメクの、"
"420337","ラメクはメトセラの、メトセラはエノクの、エノクはヤレデの、ヤレデはマハ
ラレルの、マハラレルはカイナンの、"
"420338","カイナンはエノスの、エノスはセツの、セツはアダムの、アダムは神の子、で
ある。"
"420401","さてイエスは聖霊に満たされ、ヨルダン川から(ガリラヤへ)帰られた。(その
途中)御霊によって四十日のあいだ荒野を引き回されながら、"
"420402","悪魔の誘惑にあわれた。その間何も食べず、四十日が終ると、空腹を覚えられ
た。"
"420403","すると悪魔が言った、「神の子なら、(そんなにひもじい思いをせずとも、)この
石ころに、パンになれと命令したらどうです。"
"420404","イエスは答えられた、「"パンがなくとも人は生きられる"と(聖書に)書いて
ある。」"
"420405","すると悪魔はイエスを高い所につれてゆき、瞬くまに世界中の国々を見せて、"
"420406","言った、「あの(国々の)全支配権と栄華とをあげよう。あれは(神から)わた
しに任されていて、だれにでも好きな人にやってよいのだから。"
"420407","それで、もしあなたがわたしをおがむなら、あれは皆あなたのものになります。」
"
"420408","イエスは答えられた、「"あなたの神なる主をおがめ、"主に"のみ"奉仕せよ"
と(聖書に)書いてある。」"
"420409","そこで悪魔はイエスをエルサレムにつれていって、宮の屋根の上に立たせて言
った、「神の子なら、ここから下へ飛びおりたらどうです。"
"420410",""神は天使たちに命じて、あなたを守ってくださる、""
"420411","また"手にてあなたを支えさせ、足を石に打ち当てないようにしてくださる"
と(聖書に)書いてあります。(人々はそれを見て信じ、たちどころにあなたの国が出来
ます。)」"
"420412","イエスは答えられた、「"あなたの神なる主を試みてはならない"と言ってあ
る。」"
"420413","悪魔はあらん限りの誘惑を終ると、ひとまずイエスから手を引いた。"
"420414","イエスは御霊の力にあふれて、ガリラヤに帰られた。評判がその周囲全体に広
まった。"
"420415","イエスはあちらこちらの礼拝堂で教え、皆にあがめられた。"
"420416","それからお育ちになったナザレに行って、安息の日にいつものとおり礼拝堂に
入り、(聖書を)朗読しようとして立たれた。"
"420417","(係の者から)イザヤの預言書が手渡され、その巻物をお開けになると、こう
書いた所が出てきた。──"
"420418",""主の御霊がわたしの上にある、油を注いで(聖別して)くださったからであ
る。主は貧しい人に福音を伝えるためにわたしを遣わされた。囚人に赦免を、盲人に視力
の回復を告げ、""押えつけられている者に自由をあたえ、""
"420419",""主の恵みの年(の来たこと)を告げさせるために。""
"420420","イエスは(読み終ると、)聖書を巻き、係の者に返して坐られた。礼拝堂にいる
者の目が皆彼にそそがれた。"
"420421","イエスは、「(今)あなた達が聞いたこの聖書の言葉は、今日(ここで)成就し
た」と言って話を始められた。"
"420422","皆がイエスを誉めそやし、かつその口をついて出る言葉のうるわしさに驚いて、
「これはヨセフの息子ではないか」と言った。"
"420423","彼らに言われた、「どの道あなた達は『自分をなおせ、お医者さん』という諺を
引いて、『いろいろなことをカペナウムでしたと聞いたが、郷里のここでもやってみろ』
とわたしに言うにちがいない。」"
"420424","また言われた、「アーメン、わたしは言う、いかなる預言者も、その郷里では歓
迎されない。"
"420425","本当にわたしは言う、(郷里でえらい働きをした預言者がどこにあるか。預言
者)エリヤの時代に、三年六か月、天が閉じて(雨が降らず、)国中に大飢饉があった際、
イスラエル人の中に多くの寡婦がいたのに、"
"420426","そのだれの所にもエリヤは遣わされず、"(異教国)シドンのサレプタにいた一
人の寡婦の所に"だけつかわされた。"
"420427","また預言者エリシャの時、イスラエル人の中に多くの癩病人がいたのに、その
だれも清まらず、(異教人である)シリヤ人ナアマンだけがきよまった。(神の恵みはかえ
って異教人に与えられる。)」"
"420428","これを聞くと、礼拝堂にいた者が皆非常に憤慨し、"
"420429","総立ちになってイエスを町の外に突き出し、町の建っている山の崖のところま
でつれていった。(そこから)突き落そうと思ったのである。"
"420430","しかしイエスは人々の真中を通って、(目ざす所へ)進んでゆかれた。"
"420431","ガリラヤの町カペナウムに下られた。安息日に教えられると、"
"420432","人々はその教えに感心してしまった。話に権威があったからである。"
"420433","そのとき、礼拝堂に汚れた悪鬼の霊につかれた一人の人がいたが、大声をあげ
て叫んだ、"
"420434","「ああ、ナザレのイエス様、"放っておいてください。"わたしどもを滅ぼしに
来られたのか。あなたがだれだか、わたしにはわかっています。神の聖者(救世主)です。」
"
"420435","イエスは「黙れ、その人から出てゆけ」と言って叱りつけられた。すると悪鬼
はその人をみなの真中に投げ倒して、出ていった。何も怪我はなかった。"
"420436","皆がびっくりして、互いにこう語り合った、「この言葉はいったいどうしたのだ
ろう。権威と力があって、この人が命令されると、汚れた霊まで出てゆくのだが。"
"420437","イエスの噂がその周囲の地全体に広まっていった。"
"420438","イエスは立って礼拝堂を出て、シモンの家に入られた。シモンの姑がひどい熱
病に苦しんでいた。人々が彼女のことを願うと、"
"420439","近寄って身をかがめ、熱病を叱りつけられた。すると熱が取れ、彼女はすぐさ
ま起き上がって、彼らをもてなした。"
"420440","日が沈むと、(安息日が終ったので、)さまざまな病人をかかえている人々は皆、
それをイエスの所につれてきた。イエスはひとりびとりに手をのせてなおされた。"
"420441","悪鬼も、「あなたは神の子だ」と叫びながら多くの人から出ていった。イエスは
悪鬼どもが救世主だと知っているので、これを叱りつけ、口をきくことをお許しにならな
かった。"
"420442","朝になると、人のいない所に出て行かれた。人々は捜しまわった末イエスのと
ころに来て、自分たちをはなれて行かれないようにと、しきりに引き留めた。"
"420443","イエスは彼らに言われた、「わたしはほかの町々にも、神の国の福音を伝えねば
ならない。そのために遣わされたのだから。」"
"420444","それからユダヤ(人の国のあちらこちら)の礼拝堂で教を説いておられた。
""420501","(ある日)群衆がおしかけてきて神の言葉を聞いていた時のこと、イエスはゲ
ネサレ湖のほとりに立っておられて、"
"420502","湖のほとりにある二艘の小舟がお目にとまった。漁師たちは舟から下りて網を
洗っていた。"
"420503","イエスはその一艘のシモンの舟に乗り、彼に頼んで陸からすこし漕ぎ出させ、
坐って、舟の中から群衆を教えられた。"
"420504","話がすむと、シモンに言われた、「沖に漕ぎ出し、網をおろして漁をしてみなさ
い。」"
"420505","シモンが答えた、「先生、わたし達は(昨夜)一晩中働きましたが、何もとれま
せんでした。しかし先生のお言葉ですから、網をおろしてみます。」"
"420506","そしてその通りにすると、沢山の魚の群が入って網が裂けかかった。"
"420507","そこでもう一艘の舟にいる仲間に合図をして、加勢に来てもらった。彼らが来
て、二艘の舟いっぱい(魚を)つんだので、沈みそうになった。"
"420508","シモン・ペテロはこれを見て、イエスの足もとにひれ伏して言った、「主よ、あ
ちらに行ってください。わたしは罪人です。」"
"420509","彼も一しょにいた者も皆、とれた魚(の多いの)に、びっくりしたのである。"
"420510","シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも同様であった。イエスが
シモンに言われた、「恐れることはない。今から後、あなたは人間を生け捕る(漁師にな
る)のだ。(きょうの漁は、あなたの大伝道の前ぶれである。)」"
"420511","彼らは舟を陸に引き上げ、何もかもすててイエスに従った。"
"420512","ある町におられた時のこと、そこに体中癩病の人がいた。イエスを見ると、頭
を地にすりつけ、「主よ、(清めてください。)お心さえあれば、お清めになれるのだから」
と言って願った。"
"420513","イエスは手をのばしてその人にさわり、「よろしい、清まれ」と言われると、た
ちまち癩病が消えうせた。"
"420514","イエスは、だれにも言ってはならない、「ただ、(全快したことを)世間に証明
するため、(エルサレムの宮に)行って体を"祭司に見せ、"モーセが命じたように清めの
ために(供え物を)捧げよ」と言いつけられた。"
"420515","しかしイエスの噂はいよいよ広まってゆき、大勢の群衆が、(教えを)聞き、ま
た病気をなおしていただこうと集まってきた。"
"420516","しかしイエスは人のいない所に引っ込んで、祈っておられた。"
"420517","ある日のこと、イエスが(人々を)教えておられると、パリサイ人と律法学者
が坐って(聞いて)いた。この人々はガリラヤとユダヤのすべての村から、ことにエルサ
レムから来たのである。主の力がイエスに臨んで病気を直させた。"
"420518","するとそこに、数人の人が一人の中風にかかった人を寝床にのせてつれて来た。
(家の中に)運び込んでイエスの前に置こうとしたが、"
"420519","群衆のためどうしても運び込む方法がないので、屋根に上って瓦(をはがし、
そ)の間から、寝床ごと、人々の真中、イエスの前に吊りおろした。"
"420520","イエスはその人たちの信仰を見て(驚き、中風の者に)言われた、「君、あなた
の罪は赦されている。」"
"420521","聖書学者とパリサイ人は考え始めた、「冒涜を言うこの人はいったい何者だろう。
ただ神のほか、だれが罪を赦せよう。」"
"420522","イエスは彼らの考えを見抜いて、「何を心の中で考えているのか。"
"420523","あなたの罪は赦されている、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらが
たやすい(と思う)か。"
"420524","では、人の子(わたし)は地上で罪を赦す全権を持っていることを知らせてや
ろう」と彼らに言いながら、中風の者に言われた、「あなたに命令する、起きて、寝床を
かついで家にかえりなさい。」"
"420525","すると彼は即座に人々の目の前で立ち上がり、床をかついで、神を讃美しなが
ら家にかえって行った。"
"420526","皆が感動して神を讃美し、恐れに満たされて、「きょうは不思議なことを見た」
と言った。"
"420527","そのあとで、イエスは(湖のほとりに)出てゆき、レビという税金取りが税務
署に坐っているのを見て、「わたしについて来なさい」と言われると、"
"420528","何もかも捨てて、立って従った。"
"420529","レビがイエスのために家で大宴会を催すと、税金取り、その他の人々が大勢、(イ
エスや弟子たちと)共に食卓についていた。"
"420530","パリサイ人とパリサイ派の聖書学者が弟子たちに向かってつぶやいた、「なぜあ
なた達は税金取りや罪人と一しょに飲み食いするのか。」"
"420531","イエスはその人たちに答えられた、「健康な者に医者はいらない、医者のいるの
は病人である。"
"420532","わたしは正しい人を招きに来たのではない、罪人を招いて悔改めさせるために
来たのである。」"
"420533","彼らがイエスに言った、「(洗礼者)ヨハネの弟子はしばしば断食をし、祈りを
するのに、あなたの弟子は(平気で)飲み食いしている。」"
"420534","イエスは言われた、「あなた達は花婿がまだ一しょにいるうちに、婚礼の客に(悲
しみの)断食をさせることが出来るのか。"
"420535","しかしいまに(悲しみの)時が来て、花婿が奪いとられたら、その時、彼らは
(いやでも)断食をするであろう。」"
"420536","なお一つの譬を彼らに話された、「新しい着物を切って、古い着物に継ぎをする
者はない。そんなことをすれば、新しい着物も疵ものになり、新しいのから切った継ぎも
古いのにあわない。"
"420537","また新しい酒を古い皮袋に入れる者はない。そんなことをすれば、新しい酒は
皮袋を破って流れ出し、皮袋もだめになるであろう。"
"420538","新しい酒は新しい皮袋に入れねばならない。"
"420539","また、古い酒を飲んだ者は、新しいのをほしがらない。『古い方が甘い』と言っ
て。」"
"420601","ある安息日に麦畑の中を通られたときのこと、弟子たちが(空腹を覚えて)穂
を摘み、手でもんで食べていた。"
"420602","パリサイ人が言った、「なぜあなた達は、安息日にしてはならぬことをするの
か。」"
"420603","イエスが答えて言われた、「あなた達は、ダビデ(王)が自分も供をしている者
も空腹の時にしたことを、(聖書で)読んだことすらないのか。"
"420604","──彼が神の家に入って、ただ祭司のほかはだれも食べてはならない"供えの
パンを"取って食べ、供の者にわけてやったことを。」"
"420605","また彼らに言われた、「人の子(わたし)は安息日の主人である。」"
"420606","またほかの安息日に、礼拝堂に入って教えられた。するとそこに一人の人がい
て、右手がなえていた。"
"420607","聖書学者とパリサイ人たちが、イエスは安息日になおされるかどうかと、ひそ
かに様子をうかがっていた。訴え出る口実を見つけるためであった。"
"420608","イエスは彼らの考えを知って、手のなえた男に「立って真中に出てこい」と言
われると、立ち上がって出てきた。"
"420609","イエスが彼らに言われた、「尋ねるが、安息日には、善いことをするのと悪いこ
とをするのと、命を救うのと、滅ぼすのと、どちらが正しいだろうか。」"
"420610","そして一同を見まわして、その人に言われた、「手をのばせ。」その通りにする
と、手が直った。"
"420611","彼らは狂わんばかりに怒って、イエスをどうしょうかと話し合った。"
"420612","このころのこと、イエスは祈りのため山に行って、神に祈りながら夜をあかさ
れた。"
"420613","朝になると弟子を呼びよせ、その中から十二人を選び、これをまた使徒と名づ
けられた。"
"420614","すなわち、シモン──この人をまたペテロと名づけられた──と、その兄弟ア
ンデレと、ヤコブとヨハネと、ピリポとバルトロマイと、"
"420615","マタイとトマスと、アルパヨの子ヤコブと熱心党と呼ばれたシモンと、"
"420616","ヤコブの子ユダと、イスカリオテのユダ──この人は(あとで)裏切者になっ
た。"
"420617","イエスはこの人々を連れて(山を)下り、平らな所にお立ちになった。大勢の
弟子の群と、ユダヤ全国、ことにエルサレム、また(遠く)ツロ、シドンの沿岸から来た
大勢の民衆の群も、"
"420618","教えを聞き、また病気を直していただこうとして、そこにいた。汚れた霊にな
やまされていた者もなおされた。"
"420619","群衆が皆、なんとかしてイエスにさわろうとした。彼から力が出て、一人のこ
らず直したからである。"
"420620","イエスは目をあげ、(十二人の使徒その他の)弟子たちを見ながら話された。─
─「ああ幸いだ、"貧しい人たち、"神の国はあなた達のものとなるのだから。"
"420621","ああ幸いだ、今飢えている人たち、(かの日に)満腹させられるのはあなた達だ
から。ああ幸いだ、今泣いている人たち、(かの日に)笑うのはあなた達だから。"
"420622","人に憎まれる時、また、人の子(わたし)のゆえに除名されたり、罵られたり、
悪様に言われたりする時には、あなた達は幸いである。"
"420623","その日には躍りあがって喜びなさい、どっさり褒美が、天であなた達を待って
いるのだから。あの人達の先祖も、同じことを預言者たちにしたのである。"
"420624","だが、ああ禍だ、富んでいるあなた達、もう慰めを受けたのだから。"
"420625","ああ禍だ、今食べあきているあなた達、(かの日に)飢えるのだから。ああ禍だ、
今笑っている人たち、(かの日に)泣き悲しむのはあなた達だから。"
"420626","皆の人に良く言われる時、あなた達は禍である。あの人達の先祖も、同じこと
を偽預言者たちにしたのである。"
"420627","しかし(今わたしの話を)聞いているあなた達に言う、敵を愛せよ。自分を憎
む者に親切をつくし、"
"420628","呪う者に(神の)祝福を求め、いじめる者のために祈れ。"
"420629","あなたの頬を打つ者には、ほかの頬をも差し出し、上着を奪おうとする者には、
下着をこばむな。"
"420630","求める者にはだれにでも与えよ、あなたの物を奪った者から取り返すな。"
"420631","あなた達は自分にしてもらいたいと思うとおり、人にしなさい。"
"420632","自分を愛する者を愛すればとて、(神から)どんな恵みがいただけよう。不信者
でも自分を愛する者を愛するのだから。"
"420633","親切にしてくれる者に親切にしたからとて、どんな恵みがいただけよう。不信
者でも同じことをするのだから。"
"420634","また、取りもどすつもりで貸したからとて、どんな恵みがいただけよう。不信
者でも同じだけのものを取り戻そうとして、不信者に貸すのである。"
"420635","しかし、あなた達は敵を愛せよ、親切をせよ、何も当てにせずに貸しなさい。
そうすれば褒美をどっさりいただき、かつ、いと高きお方の子となるであろう。いと高き
お方は恩知らずや悪人にも、憐れみ深くあられるのだから。"
"420636","あなた達の(天の)父上が慈悲深くあられるように、慈悲深くあれ。"
"420637","(人を)裁くな、そうすれば(神に)裁かれない。(人を)罪に落すな、そうす
れば罪に落されない。赦してやれ、きっと(神に)赦される。"
"420638","与えよ、きっと与えられる。押しつけ、ゆすり込み、こぼれるほど量りを良く
して、懐に入れていただけるであろう。(人を)量る量りで、あなた達も量りかえされる
からである。」"
"420639","なお譬を一つ話された、「盲人に盲人の手引が出来るか。二人とも穴に落ち込ま
ないだろうか。"
"420640","(良い先生をえらべ。)弟子は先生以上になれない。りっぱに一人前になっても、
(たかだか)先生のようになるだけである。"
"420641","なぜあなたは、兄弟の目にある塵が見えながら、自分の目に梁があるのに気付
かないのか。"
"420642","自分の目にある梁が見えずに、どうして兄弟にむかって、『兄弟、あなたの目に
ある塵を取らせてくれ』と言うことが出来ようか。偽善者!まず自分の目の梁を取っての
けよ。その上で、兄弟の目にある塵を(取ってやれるなら、)取ってやったらよかろう。"
"420643","わるい実を結ぶ良い木はなく、また良い実を結ぶ悪い木もない。"
"420644","木(の良し悪し)はいずれもその実で知られるのである。茨から無花果をとら
ず、茨の薮から葡萄をつまない。"
"420645","(同じように、)善人は心の善い倉から善い物を取り出し、悪人は(心の)悪い
倉から悪い物を取り出す。心にあふれて口に出るのだから。"
"420646","(わたしを)『主よ、主よ』と呼びながら、なぜわたしの言うことを行わないの
か。"
"420647","わたしの所に来て話を聞き、それを行う者が皆、だれに似ているか、おしえて
あげよう。"
"420648","それは、(地を)深く掘り下げ、岩の上に土台をすえて家を建てた人に似ている。
洪水が出て、大水がその家にぶつかったが、丈夫に建ててあったので、びくともしなかっ
た。"
"420649","しかし(これと反対に、わたしの話を)聞くだけで行わない者は、土の上に土
台なしで家を建てた人に似ている。大水がぶつかると、たちまち崩れてしまって、その家
のくずれ方はひどかった。」"
"420701","イエスはこれら一切の話を人々に聞かせ終った後、カペナウムにかえられた。"
"420702","すると、ある百卒長の大事な僕が病気で、もう危篤であった。"
"420703","百卒長はイエスのことを聞くと、ユダヤ人の長老たちをイエスの所に使にやっ
て、是非僕を直しに来てほしいと頼ませた。"
"420704","長老たちはイエスの所に来て、こう言って熱心に願った、「あの人はそうしてい
ただいてもよい人です。"
"420705","(異教人でありながら)わが国民に好意をもち、自分でわたし達に礼拝堂を建
ててくれたのですから。」"
"420706","イエスは彼らと連れ立って行かれた。しかし、すでにその家から程遠からずな
ったとき、百卒長は友人たちをやって言わせた、「主よ、ご足労くださらぬように。わた
しはあなたを、うちの屋根の下にお迎えできるような者ではありません。"
"420707","だから自分でお願いに出る資格もないと考えたのです。(ここでただ)一言、言
ってください。そうすれば下男は直ります。"
"420708","というのは、わたし自身も指揮権に服する人間であるのに、わたしの下にも兵
卒がいて、これに『行け』と言えば行き、ほかのに『来い』と言えば来、また僕に『これ
をしろ』と言えば(すぐ)するからです。(ましてあなたのお言葉で、病気が直らないわ
けはありません。)」"
"420709","イエスはこれを聞いて驚き、ついて来た群衆の方に振り向いて言われた、「わた
しは言う、イスラエルの人の中でも、こんな(りっぱな)信仰を見たことがない。」"
"420710","使の者が家に帰って見ると、僕は元気になっていた。"
"420711","そのあとで、ナインという町に行かれた。弟子たちおよび多くの群衆も一しょ
に行った。"
"420712","町の門の近くに来られると、ちょうど、ある独り息子が死んで、(棺が)舁き出
されるところであった。母は寡婦であった。町の人が大勢その母に付添っていた。"
"420713","主は母を見て不憫に思い、「そんなに泣くでない」と言って、"
"420714","近寄って棺に手をかけ──担いでいる者は立ち止まった──「若者よ、あなた
に言う、起きよ!」と言われた。"
"420715","すると死人が起き上がって物を言い出した。イエスは"彼を母に渡された。""
"420716","皆が恐れをいだいて、「大預言者がわたし達の間にあらわれた」とか、「神はそ
の民を心にかけてくださった」とか言って、神を讃美した。"
"420717","イエスについてのこの(二つの)言葉は、ユダヤ(人の国)全体とその周囲い
たる所に広まった。"
"420718","洗礼者ヨハネの弟子たちがこれら一切のことをヨハネに報告すると、彼は弟子
を二人ほど呼びよせ、"
"420719","主の所にやって、「来るべき方(救世主)はあなたですか、それともほかの人を
待つべきでしょうか」とたずねさせた。"
"420720","その人たちはイエスの所に来て言った、「洗礼者ヨハネから来ました。『来るべ
き方はあなたですか、それともほかの人を待つべきでしょうか』とおたずねするよう申し
つけられました。」"
"420721","その時、イエスは多くの人の病気と苦しみと悪霊につかれているのとをなおし、
多くの盲人を見えるようにしてやっておられたが、"
"420722","答えられた、「行って、(今ここで)見たこと聞いたことをヨハネに報告しなさ
い。──"盲人は見えるようになり、"足なえは歩きまわり、癩病人は清まり、聾は聞き、
死人は生きかえり、"貧しい人は福音を聞かされている"と。"
"420723","わたしにつまずかぬ者は幸いである。」"
"420724","ヨハネの使が立ち去ると、群衆にヨハネのことを話し出された。──「(さきご
ろ)あなた達は何を眺めようとして、荒野(のヨハネの所)に出かけたのか。風にそよぐ
葦だったのか。(まさかそうではあるまい。)"
"420725","それでは、何を見ようとして出かけたのか。柔らかい着物を着ている人か。見
よ、りっぱな着物をきて贅沢をしている人ならば、宮殿にいる。"
"420726","それでは、何を見ようとして出かけたのか。預言者か。そうだ、わたしは言う、
(預言者だ。)預言者以上の者(を見たの)だ。"
"420727",""(神は言われる、)『見よ、わたしは使をやって、あなたの先駆けをさせ、"あ
なたの"前に道を準備させる』"と(聖書に)書いてあるのは、この人のことである。"
"420728","わたしは言う、女の産んだ者の中には、ヨハネより大きい者は一人もない。し
かし神の国で一番小さい者でも、彼より大きい。"
"420729","(ヨハネの説教を)聞いた民衆は皆、税金取りまで、ヨハネの洗礼を受け(る
ことによっ)て神の正しいことを認めた。"
"420730","しかしパリサイ人と律法学者とは、彼から洗礼を受けることをせず、彼らをも
救おうとされた(せっかくの)神の御心をないがしろにした。"
"420731","だから、(気ままな)この時代の人々を何にたとえようか。彼らは何に似ている
だろうか。"
"420732","子供達が市場に坐って(嫁入りごっこや弔いごっこをしながら)、こう言って互
に(相手の組と)呼びかわすのに似ている。──笛を吹いたのに、踊ってくれない。弔い
の歌をうたったのに、泣いてくれない。"
"420733","なぜならあなた達は、洗礼者ヨハネが来てパンを食べず酒を飲まないと、『悪鬼
につかれている』と言い、"
"420734","人の子(わたし)が来て飲み食いすると、『そら、大飯食いだ、飲兵衛だ、税金
取りと罪人の仲間だ』と言うのだから。"
"420735","しかし(神の)知恵の正しいことは、(税金取り、罪人など、)その子供たちが
みんなで証明した。」"
"420736","(シモンという)ひとりのパリサイ人が一しょにお食事をと願ったので、その
パリサイ人の家に入って食卓に着かれた。"
"420737","すると、その町に一人の罪の女がいた。イエスがパリサイ人の家で食卓につい
ておられることを知ると、香油のはいった石膏の壷を持ってきて、"
"420738","泣きながら後ろからイエスの足下に進み寄り、しばし涙で御足をぬらしていた
が、やがて髪の毛でそれをふき、御足に接吻して香油を塗った。"
"420739","イエスを招待したパリサイ人が見て、ひそかに思った、「もしもこの人が(ほん
とうの)預言者だったら、自分にさわっている者がだれだか、どんな女だか、──罪の女
だと分るはずであるのに!」"
"420740","イエスが言われた、「シモン、あなたに言わねばならぬことがある。」彼が言う、
「先生、言ってください。」イエスが言われる、"
"420741","「ある金貸しに二人の債務者があった。一人は五百デナリ(二十五万円)、一人
は五十デナリ(二万五千円)を借りていた。"
"420742","返すことができないので、金貸しは二人(の借金)をゆるしてやった。とする
と、二人のうち、どちらが余計に金貸しを愛するだろうか。」"
"420743","シモンが答えた、「余計にゆるしてもらった方だと思います。」イエスは「あな
たの判断は正しい」と言って、"
"420744","女の方に振り向き、シモンに言われた、「この婦人を見たか。わたしがこの家に
来たとき、あなたは足の水もくれないのに、この婦人は涙でわたしの足をぬらし、髪の毛
でふいてくれた。"
"420745","あなたは接吻一つしてくれないのに、この婦人はわたしが(この家に)来たと
きから、わたしの足に接吻のしつづけである。"
"420746","あなたは(普通の)油をすら頭に塗ってくれないのに、この婦人は(高価な)
香油を足に塗ってくれた。"
"420747","だから、わたしは言う、この婦人の多くの罪は赦されている。(いま)多くわた
しを愛したのがその証拠である。赦され方の少ない者は、愛し方も少ない。」"
"420748","そしてその女に言われた、「あなたの罪は赦されている。」"
"420749","同席の者が(憤慨して)ひそかに考えた、「罪さえ赦す(という)この人はいっ
たい何人だろう。」"
"420750","しかしイエスは女に言われた、「あなたの信仰があなたを救った。"さよなら、
平安あれ。"」"
"420801","その後、イエスは町から町、村から村へと回りながら、神の国を説き、その福
音を伝えられた。十二人(の弟子)がお供をした。"
"420802","また悪霊や病気をなおしていただいた数名の女たち、すなわち、七つの悪鬼を
追い出されたマグダラの女と呼ばれたマリヤと、"
"420803","ヘロデ(・アンデパス王)の家令クーザの妻ヨハンナと、スザンナと、そのほ
か大勢の女たちも一しょであった。女たちは自分の財産を持ち出して、みなを賄った。"
"420804","(ある時)大勢の群衆が集まり、また町々からも人々が押しよせてきたので、
イエスは譬を用いて話された、"
"420805","「種まく人がその種をまきに出かけた。まく時に、あるものは道ばたに落ちた。
踏みつけられたり、空の鳥が食ったりした。"
"420806","またほかのものは岩の上に落ちた。(生えるには)生えたが、湿り気がないので
枯れてしまった。"
"420807","またほかのものは茨の(根が張っている)中に落ちた。茨が一しょに生えて押
えつけてしまった。"
"420808","またほかのものは善い地に落ちた。生えて(育って)百倍の実を結んだ。」こう
言ったあとで、「耳の聞える者は聞け」と叫ばれた。"
"420809","弟子たちがこの譬はどういう意味かと尋ねると、"
"420810","言われた、「あなた達(内輪の者)には、神の国の秘密をさとる力が授けられて
いる(のでありのままに話す)が、ほかの人たちには譬をもって話すのである。これは(聖
書にあるように、)"彼らが見ても見えず、聞いても悟らない"ようにするためである。"
"420811","譬(の意味)はこうである。──種は神の御言葉である。"
"420812","道ばたのものとは、(御言葉を)聞くと、あとで悪鬼が来て、彼らを信じて救わ
れることのないように、その心から御言葉をさらってゆく人たちである。"
"420813","岩の上のものとは、御言葉を聞く時、喜んで受け入れるが、この人たちには(し
っかりした信仰の)根がないので、その当座は信じているが、試みの時に離れおちる人た
ちである。"
"420814","茨の中に落ちたもの、これは(御言葉を)聞く(と、しばらくは信じている)
が、とかくするうちに人生の心配や富や快楽に押えつけられて、実の熟さない人たちであ
る。"
"420815","しかし良い地のもの、これは御言葉を聞くと、りっぱな善い心でこれをしっか
り守り、忍耐をもって実を結ぶ人たちである。"
"420816","(しかし外の人たちに神の国の秘密が隠されるのは、)だれも明りをつけて器で
おおい隠したり、寝台の下に置いたりする者はない。(部屋に)入ってくる者にその光が
見えるように、かならず燭台の上に置くのである。"
"420817","隠れているものであらわにならぬものはなく、隠されているもので(人に)知
られず、また現われないものもないからである。"
"420818","だから、気をつけよ、聞き方が大切である。(よく聞いて守れ。)持っている人
は(さらに)与えられ、持たぬ人は、持っていると思うものまで取り上げられるのである。」
"
"420819","(ある時)イエスの母と兄弟たちがイエスの所に来たが、人だかりのため、そ
ばへ行くことができなかった。"
"420820","人々が「母上と兄弟がたが、お会いしたいと外に立っておられます」と知らせ
ると、"
"420821","イエスは答えられた、「わたしの母、わたしの兄弟は、神の御言葉を聞いて行う
人たちである。」"
"420822","ある日のこと、イエスは弟子たちと舟に乗って、「湖の向こう岸に渡ろう」と言
われるので、船出した。"
"420823","渡ってゆくうちに、イエスは寝入ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろ
し、彼らは水をかぶって危険になった。"
"420824","弟子たちがそばに来て、「先生、先生、わたし達は溺れます」と言ってイエスを
起した。イエスが目をさまして風と浪とを叱りつけられると、(たちどころに)静まって、
凪になった。"
"420825","彼らに言われた、「あなた達の信仰はどこにあるのか。」弟子たちは驚き恐れて、
「この方はいったいだれだろう、この方が命令されると、風も水も、その言うことを聞く
のだが」と語り合った。"
"420826","かくて一行はガリラヤの向い側にあるゲラサ人の地に渡った。"
"420827","イエスが陸にあがられると、その町の者で、悪鬼につかれた一人の男が迎えた。
この男は長い間着物を着ず、また家にすまずに墓場にすんでいた。"
"420828","イエスを見ると、叫びながらその前にひれ伏し、大声で言った、「いと高き神の
子のイエス様、"放っておいてください。"お願いです、わたしを苦しめないでください。」
"
"420829","これはイエスが汚れた霊に、その人から出てゆけと命じたからである。汚れた
霊は何度も何度もその人をつかんだ。いかに鎖と足桎でつながれ監視されていても、その
繋ぎをひきちぎり、悪鬼に追われて荒野にいったのである。"
"420830","「あなたの名はなんというか」とイエスがお尋ねになると、「軍団です」とこた
えた。悪鬼が大勢、(一軍団も)彼の中に入りこんでいたからである。"
"420831","また、地の底に行くことをお命じにならぬようにと願った。"
"420832","折から、そこの山で多くの豚の群が草を食っていた。悪鬼どもは、それに乗り
移ることを許されたいと願った。お許しになると、"
"420833","悪鬼どもはその人から出ていって豚に乗り移った。すると群は(気がちがった
ように)けわしい坂をどっと湖へなだれこみ、溺れて死んだ。"
"420834","豚飼たちはこの出来事を見て逃げ出し、町や部落に知らせた。"
"420835","人々はこの出来事を見に出て来たが、イエスの所に来て、悪鬼を追い出された
人が着物をき、正気にかえって、イエスの足もとにじっと坐っているのを見ると、恐ろし
くなった。"
"420836","また(現場を)見ていた人たちは、悪鬼につかれていた者がどんな風にして救
われたかを、その人々に知らせた。"
"420837","ゲラサ地方の住民は皆すっかりおびえ切って、イエスに自分たち(の所)から
でて行ってもらいたいと頼んだ。そこでイエスは舟に乗って帰られた。"
"420838","(帰ろうとされる時に、)悪鬼を追い出された男がお供をしたいと願ったが、(許
さず、)こう言ってお帰しになった、"
"420839","「家に帰って、神がどんなにえらいことをしてくださったかを、(みんなに)話
してきかせなさい。」すると彼は行って、イエスがどんなにえらいことを自分にされたか
を、町中に言いふらした。"
"420840","イエスが(カペナウムに)帰ってこられると、群衆は喜んで迎えた。皆待って
いたのである。"
"420841","するとそこに名をヤイロという人が来た。この人は礼拝堂の役人であった。イ
エスの足もとにひれ伏し、家に来ていただきたいと願った。"
"420842","十二歳ばかりの一人娘があって、それが死にかけていたのである。(ヤイロの家
に)行かれる途中、群衆はイエスを押しつぶしそうであった。"
"420843","すると十二年このかた長血をわずらって、だれにもなおしてもらえなかった女
が、"
"420844","近寄ってきて、後からイエスの上着の裾にさわった。すると、たちどころに地
の出るのがやんだ。"
"420845","イエスが言われた、「わたしにさわったのはだれか。」皆が知らないとこたえる
と、ペテロが言った、「先生、(なにしろ)群衆が(こんなに)あなたを取り巻いて、もみ
合っているのですから。」"
"420846","イエスが言われた、「(確かに)だれかがさわった。わたしの中から力が出てい
ったのを感じたから。」"
"420847","女は隠しおおせないのを見て、震えながら、進み出てイエスの前にひれ伏し、
さわった訳と、たちどころに直ったこととを皆の前で話した。"
"420848","イエスは言われた、「娘よ、あなたの信仰がなおしたのだ。"さよなら、平安あ
れ。"」"
"420849","イエスがまだ話しておられるところに、礼拝堂監督の家からひとりの人が来て
(監督に)言った、「お嬢さんはもうなくなりました。先生にこれ以上御迷惑をかけられ
ないように。」"
"420850","イエスは聞いて監督に言葉をかけられた、「こわがることはない。ただ信ぜよ。
そうすれば助かる。」"
"420851","家に着かれると、ペテロとヨハネとヤコブと、女の子の父と母とのほかには、
だれも一しょに中に入ることを許されなかった。"
"420852","(集まった)人々が皆泣いて、女の子のために悲しんでいた。イエスが言われ
た、「泣くな。死んだのではない、眠っているのだ。」"
"420853","人々は死んだことを知っているので、あざ笑っていた。"
"420854","しかしイエスは女の子の手を取り、声をあげて「子よ、起きなさい!」と呼ば
れると、"
"420855","霊がもどって、即座に女の子は立ち上がった。イエスは(何か)食べさせるよ
うに言いつけられた。"
"420856","両親が呆気にとられていると、イエスはこの出来事をだれにも言うなと命じら
れた。"
"420901","それから(前に選んだ)十二人(の弟子)を呼びあつめて、すべての悪鬼を支
配し、また病気をなおす力と全権とを授けた上、"
"420902","神の国(の福音)を説いたり、病気を直したりするために派遣された。"
"420903","彼らに言われた、「旅行には何も──杖も、旅行袋も、パンも、金も持ってゆく
な。着替えの下着も持ってはならない。"
"420904","ある家に入ったら、(その町を去るまでは)その家に泊まっていて、そこから(次
の町へ)立ってゆけ。"
"420905","人があなた達を歓迎しないなら、(すぐ)その町を(出てゆけ。そして)出てゆ
くとき、(縁を切ったことを)そこの人々に証明するため、足の埃を払いおとせ。」"
"420906","十二人は出かけていって、村から村へとあるき回りながら、到る所で福音を説
き、また病気をなおした。"
"420907","これは一切の出来事が領主ヘロデの耳にはいると、彼はすっかり不安になった。
ある人は(イエスのことを洗礼者)ヨハネが死人の中から生きかえったのだと言い、"
"420908","ある人は(預言者)エリヤが現われたと言い、またほかの人は、昔のある預言
者が生き返ったのだと言ったからである。"
"420909","しかしヘロデは言った、「ヨハネは(確かに)わたしが首をはねた。だが、こん
な噂を聞くその男はそもそも何者だろう。」彼はイエスに会いたいと思った。"
"420910","(さて十人の)使徒たちは帰ってきて、(旅行中に)したことをみなイエスに話
した。イエスは彼らを連れて、自分たちだけベツサイダという町の方へ引っ込まれた。"
"420911","しかし群衆がそれと知ってついて来たので、これを迎えて神の国のことを語り、
また治療を要する人々を直された。"
"420912","日が傾きかけると、十二人は来てイエスに言った、「群衆を解散させ、まわりの
村や部落に行って宿を取らせ、食事をさせてください。わたし達はこんな人里はなれた所
にいるのですから。」"
"420913","彼らに言われた、「あなた達が自分で食べさせてやったらよかろう。」彼らが言
った、「手許にはパン五つと魚二匹よりありません、わたし達が行って、このみんなの食
べる物を買ってこないことには。」"
"420914","男五千人ばかりもいたからである。「五十人ぐらいずつ組にして坐らせなさい」
と弟子たちに言われた。"
"420915","そのように、皆を坐らせた。"
"420916","するとイエスは(いつも家長がするように、)その五つのパンと二匹の魚を(手
に)取り、天を仰いでそれを祝福したのち、(パンを)裂いて、群衆に配るように弟子た
ちに渡された。"
"420917","皆が食べて満腹した。そして余った(パンの)屑を拾うと、十二篭あった。"
"420918","イエスがひとりで祈っておられた時のこと、弟子たち(だけ)が一しょにいる
と、こう言って尋ねられた、「人々はわたしのことをなんと言っているのか。」"
"420919","彼らが答えて言った、「洗礼者ヨハネ。あるいはエリヤ、あるいは昔のある預言
者が生き返ったのだ、と言う者があります。」"
"420920","彼らに言われた、「では、あなた達はわたしのことをなんと言うのか。」ペテロ
が答えて言った、「神の(お約束の)救世主!」"
"420921","イエスは弟子たちを戒めて、このことをだれにも言うなと命じられた。"
"420922","そして、「人の子(わたし)は多くの苦しみをうけ、長老、大祭司連、聖書学者
たちから排斥され、殺され、そして三日目に復活せねばならない。(神はこうお決めにな
っている)」と言われた。"
"420923","それから今度は皆に話された、「だれでも、わたしについて来ようと思う者は、
(まず)己れをすてて、毎日自分の十字架を負い、それからわたしに従え。"
"420924","(十字架を避けてこの世の)命を救おうと思う者は(永遠の)命を失い、わた
しのために(この世の)命を失う者が、(永遠の)命を救うのだから。"
"420925","全世界をもうけても、自分(の命)を失ったり損したりするのでは、その人は
何を得するのだろう。"
"420926","(わたしを信ずると言いながら、)わたしとわたしの福音(を告白すること)と
を恥じる者があれば、人の子(わたし)も、自分と父上と聖なる天使たちとの栄光に包ま
れて(ふたたび地上に)来る時、そんな(臆病)者を(弟子と認めることを)恥じるであ
ろう。"
"420927","本当にわたしは言う、(その時はじきに来る。)今ここに立っている者のうちに
は、死なずにいて、その神の国を見る者がある。」"
"420928","これらの言葉を語られた後、八日ばかりして、ペテロとヨハネとヤコブとを連
れて、祈るために山に上られた。"
"420929","祈っておられるうちに、お顔の様子がちがってきて、着物(まで)が白く光り
出した。"
"420930","すると見よ、二人の人が(現われて、)イエスと話していた。それはモーセとエ
リヤで、"
"420931","栄光に包まれて現われ、イエスがエルサレムで遂げねばならぬ最後について(彼
と)語っていたのである。"
"420932","ペテロたちはぐっすり眠っていたが、(この時)目を覚まして、このイエスの栄
光(の姿)と、一しょに立っている二人の人とを見たのである。"
"420933","いよいよ二人がイエスと別れようとした時、ペテロがイエスに言った、「先生、
わたし達(三人)がここにいるのは、とても良いと思います。だから小屋を三つ造りまし
ょう。一つをあなたに、一つをモーセに、一つをエリヤに。」──何を言っているのか、(自
分にも)わからなかった。"
"420934","しかしペテロがこう言い終らないうちに、雲がおこって、彼ら(イエスとモー
セとエリヤと)を掩った。彼らが雲の中に入った時、弟子たちは恐ろしくなった。"
"420935","すると「これはわたしの"選んだ子、""彼の言うことを聞け"」と言う声が雲の
中から聞えてきた。"
"420936","声がきこえた時、見ると(そこには)イエスだけがおられた。彼らはそのころ
口をつぐんで、見たことを一切、だれにも話さなかった。"
"420937","次の日、山から下ってくると、大勢の群衆がイエスを出迎えた。"
"420938","すると群衆の中のひとりの人がこう言って叫んだ、「先生、お願いです、伜に目
をかけてやってください。独り息子です。"
"420939","かわいそうに霊がつくと、灸にどなり出し、またひきつけさせて泡をふかせ、
なかなか離れないで、すっかり弱らせてしまいます。"
"420940","それで、霊を追い出すことをお弟子たちに願いましたが、お出来になりません
でした。」"
"420941","イエスが答えられた、「ああ不信仰な、腐り果てた時代よ、わたしはいつまであ
なた達の所にいてあなた達に我慢しなければならないのか。息子をここにつれてきなさ
い。」"
"420942","しかし来るうちに、悪鬼がもうその子を投げ倒して、ひどくひきつけさせた。
イエスは汚れた霊を叱りつけて子をいやし、父親に返された。"
"420943","皆が神の御威光に驚いてしまった。イエスのされたすべてのことに皆が驚いて
いると、(また)弟子たちに言われた、"
"420944","「あなた達はこの言葉をよく耳にしまって置きなさい。──人の子(わたし)
は人々の手に引き渡されねばならない。」"
"420945","しかし彼らはこの言葉がわからなかった。彼らに(意味が)隠されていたので、
会得できなかったのである。でもこわいので、この言葉について尋ねなかった。"
"420946","ここに弟子たちの心に、自分たちのうちでだれが一番えらいだろうという考え
が起った。"
"420947","イエスは彼らの心の考えを知って、一人の子供の手を取り、自分のわきに立た
せて、"
"420948","言われた、「わたしの名を信ずるこの子供を迎える者は、わたしを迎えてくれる
のである。わたしを迎える者は、わたしを遣わされた方をお迎えするのである。あなた達
の間ではだれよりも一番小さい者が、一番えらい。」"
"420949","ヨハネが言った、「先生、あなたの名を使って悪鬼を追い出している者を見たの
で、止めるように言いました。わたし達と一しょに(あなたに)従わないからです。(し
かし言うことを聞きませんでした。)」"
"420950","イエスはヨハネに言われた、「止めさせるには及ばない。反対しない者はあなた
達の味方である。」"
"420951","イエスは(いよいよ)昇天の日が迫ったので、決然としてその顔をエルサレム
へ向けて進み、"
"420952","(まず行くさきざきに)使を先発させられた。ところが、彼らが行ってイエス
のために宿の用意をしようとしてサマリヤ人の村に入ると、"
"420953","村人たちはイエスが顔をエルサレムへ向けて進んでおられるので、承知しなか
った。"
"420954","弟子のヤコブとヨハネとはそれを見て(憤慨して)言った、「主よ、(エリヤの
ように)"天から火を"呼び"下して、"あの奴らを"焼き殺してしまい"ましょうか。」"
"420955","イエスは振り返って二人を叱り、"
"420956","みなとほかの村へ行かれた。"
"420957","彼らが道を進んでいると、ある人がイエスに言った、「どこへでもおいでになる
所はお供をします。」"
"420958","イエスはその人に言われた、「狐には穴がある、空の鳥には巣がある。しかし人
の子(わたし)には枕する所がない。(その覚悟があるか。)」"
"420959","またほかの一人に言われた、「わたしについて来なさい。」その人が言った、「そ
の前に、父の葬式をしに行かせてください。」"
"420960","その人に言われた、「死んだ者の葬式は死んだ者にまかせ、あなたは行って神の
国を伝えなさい。」"
"420961","もう一人のほかの人も言った、「主よ、お供します。ただその前に、家の者に暇
乞いをさせてください。」"
"420962","しかしイエスは言われた、「鋤に手をかけたあとで後を見る者は、神の国の役に
立たない。」"
"421001","そのあとで、主は(十二人のほかに)別に七十二人を定め、自分で行こうとし
ておられる、あらゆる町や場所に二人ずつ先発された。"
"421002","彼らに言われた、「刈入れは多いが、働き手が少ない。だから刈入れの主人に、
刈入れのため(多くの)働き手を送られるよう、お願いしなさい。"
"421003","行け、いまわたしがあなた達を送り出すのは、羊を狼の中に入れるようなもの
だ。"
"421004","(だからただ信仰で武装せよ。)財布も旅行袋も持ってゆかず、靴もはくな。だ
れにも道で挨拶をするな。"
"421005","ある家に入ったら、まっ先に『平安この家にあれ』と言いなさい。"
"421006","もしそこに一人でも平安を愛する者がおれば、あなた達の(祈った)平安はそ
の人に止り、もし一人もいなければ、あなた達に返ってくる(、そしてあなた達のものと
なる)であろう。"
"421007","(どんな家でも一度入ったら、その土地を立ってゆくまでは)同じ家に泊まっ
ていて、家の人が出すものを(遠慮なく)飲み食いせよ。働く者が報酬をいただくのは当
然だから。家から家へと移ってはならない。"
"421008","ある町に入ったとき、人があなた達を歓迎するなら、出されるものを食べて、"
"421009","その町の病人をなおし、また(町の)人々に、『あなた達には神の国(の喜び)
が近づいた』と言え。"
"421010","しかしある町に入ったとき、人が歓迎しないなら、大通りに出て言え、"
"421011","『わたし達は足についたこの町の埃まで、あなた達に拭いてかえす。(縁を切っ
た証拠だ。)しかし(あなた達には、恐ろしい裁きである)神の国が近づいたことを知れ』
と。"
"421012","わたしは言う、かの日には、(あの堕落町)ソドムの方が、まだその町よりも罰
が軽いであろう。"
"421013","ああ禍だ、お前コラジン!ああ禍だ、お前ベツサイダ!わたしがお前たちの所
で行っただけの奇跡をツロやシドンで行ったなら、(あの堕落町でも、)とうの昔に粗布を
着、灰の中に坐って悔改めたにちがいないのだから。"
"421014","ところで、裁きの時には、ツロやシドンの方が、まだお前たちよりも罰が軽い
であろう。"
"421015","それから、お前カペナウム、(わたしに特別に可愛がられたからとて、)まさか
"天にまで挙げられる"などとは思っていないだろうね。(天に挙げられるどころか、)"お
前は黄泉にまでたたき落されるであろう。""
"421016","(七十二人の者に言っておく。──)あなた達の言うことを聞く者は、わたし
の言うことを聞くのであり、あなた達を排斥する者は、わたしを排斥するのである。わた
しを排斥する者は、わたしを遣わされた方を排斥するのである。」"
"421017","七十二人が喜んで帰ってきてイエスに言った、「主よ、あなたの名を使うと、悪
鬼までがわたし達に服従します。」"
"421018","彼らに言われた、「悪魔が稲妻のように天から落ちるのを、わたしは見ていた。
"                 
"421019","(悪魔の下働きをする)"蛇"や蝎"を踏みつけ、"また敵のあらゆる力に打ち
勝つ全権をあなた達に授けたではないか。だから、あなた達に害を加えるものは一つもな
い。"
"421020","しかし(悪い)霊どもがあなた達に服従したことを喜ばず、自分の名が天(の
命の書)に書き込まれていることを喜ばなくてはいけない。」"
"421021","この時イエスは聖霊にみたされ、感激にあふれて言われた、「天地の主なるお父
様、(神の国の秘密に関する)これらのことを(この世の)賢い人、知恵者に隠して、幼
児(のような人たち)にあらわされたことを、讃美いたします。ほんとうに、お父様、そ
うなるのがあなたの御心でした。"
"421022","(──知恵も力も、その他)一切のものが父上からわたしに任せられた。父上
のほかに、子(であるわたし)が何であるかを知る者は一人もなく、また、子と、子が父
上をあらわしてやる者とのほかに、父上が何であるかを知る者はない。」"
"421023","それから特に弟子の方へ振り向いて言われた、「あなた達が(いま)見ているも
のを見る目は幸いである。"
"421024","わたしは言う、多くの預言者と王とは、あなた達が(いま)見ているものを見
たいと思ったが見られず、あなた達が(いま)聞いているものを聞きたいと思ったが、聞
かれなかったのである。」"
"421025","するとそこに、ひとりの律法学者があらわれて、イエスを試そうとして言った、
「先生、何をすれば永遠の命がいただけるのでしょうか。」"
"421026","イエスは言われた、「律法[聖書]に何と書いてあるか。解釈はいかに。」"
"421027","学者が答えた、「"心のかぎり、精神のかぎり、力のかぎり、"思いのかぎり、"あ
なたの神なる主を愛せよ。"また"隣の人を自分のように愛せよ"です。」"
"421028","彼に言われた、「その答は正しい。"それを実行しなさい。そうすれば(永遠に)
生きられる。"」"
"421029","すると学者は照れかくしにイエスに言った、「では、わたしの隣り人とはいった
いだれのことですか。」"
"421030","イエスが答えて言われた、「ある人が(──それはユダヤ人であった──)エル
サレムからエリコに下るとき、強盗に襲われた。強盗どもは例によって(着物を)はぎと
り、なぐりつけ、半殺しにして逃げて行った。"
"421031","たまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ながら、向こう
側を通っていった。"
"421032","同じくレビ人もその場所に来たが、見ながら向こう側を通っていった。"
"421033","ところが旅行をしていたひとりのサマリヤ人は、この人のところに来ると、見
て不憫に思い、"
"421034","近寄って傷にオリブ油と葡萄酒を注いで包帯した上、自分の驢馬に乗せて旅籠
屋につれていって介抱した。"        
"421035","そればかりか、次の日、デナリ銀貨[五百円]を二つ出して旅篭の主人に渡し、
『この方を介抱してくれ。費用がかさんだら、わたしが帰りに払うから』と言った(とい
う話)。"
"421036","(それで尋ねるが、)この三人のうち、だれが強盗にあった人の隣の人であった
とあなたは考えるか。(同国人の祭司か、レビ人か、それとも異教のサマリヤ人か。)」"
"421037","学者はこたえた、「その人に親切をした(サマリヤの)人です。」イエスが言わ
れた、「行って、あなたも同じようにしなさい。(そうすれば永遠の命をいただくことが出
来る。)」"
"421038","さてみなが旅行をつづけるうち、イエスがある村に入られると、マルタという
女が家にお迎えした。"
"421039","マルタにマリヤという姉妹があった。。マリヤは主の足もとに坐ってお話を聞い
ていた。"
"421040","するといろいろな御馳走の準備で天手古舞をしていたマルタは、すすみ寄って
言った、「主よ、姉妹がわたしだけに御馳走のことをさせているのを、黙って御覧になっ
ているのですか。手伝うように言いつけてください。」"
"421041","主が答えられた、「マルタ、マルタ、あなたはいろいろなことに気を配り、心を
つかっているが、"
"421042","無くてならないものはただ一つである。マリヤは善い方を選んだ。それを取り
上げてはならない。」"
"421101","ある所で祈っておられた時のこと、それがすむと、ひとりの弟子が言った、「主
よ、(洗礼者)ヨハネが弟子たちに教えたように、わたし達にも祈りを教えてください。」"
"421102","彼らに言われた、「祈る時には、こう言いなさい。──お父様、お名前がきよま
りますように。お国が来ますように。"
"421103","その日の食べ物を日ごとにわたしたちに戴かせてください。"
"421104","罪を赦してください、わたしたちも罪を犯した人を皆赦しておりますから。わ
たしたちを試みにあわせないでください。」"
"421105","また彼らに言われた、「あなた達のうちのだれかに友人があって、夜中にその友
人の所に行き、『友よ、パンを三つ貸してくれ。"
"421106","旅先からわたしの友人が来たのに、何も出すものがないから』と言ったとき、"
"421107","その友人は内から、『勘弁してくれ。もう戸締りをしてしまったし、子供たちも
わたしと一しょに寝ている。起きてかしてやるわけにはゆかない』と答えるにちがいない。
"
"421108","しかしわたしは言う、(その人がなおもせがんで止まなければ、)友人だからと
いうのでは起きて(パンを)かしてやらなくても、その厚かましさにはかなわず、起き上
がって、必要なだけのものをかしてやるにちがいない。"
"421109","それで、わたしもあなた達に言う、(ほしいものはなんでも神に)求めよ、きっ
と与えられる。さがせ、きっと見つかる。戸をたたけ、きっとあけていただける。"
"421110","だれであろうと、求める者は受け、さがす者は見つけ、戸をたたく者はあけて
いただけるのだから。"
"421111","あなた達のうちのどんなお父さんでも、子が魚を求めるのに、魚の代りに蛇を
やるだろうか。"
"421112","また卵を求めるのに、蝎をやるだろうか。"
"421113","してみると、あなた達は悪い人間でありながらも、自分の子に善い物をやるこ
とを知っている。まして天の父上が、求める者に聖霊(という善いもの)を下さらないこ
とがあるだろうか。」"
"421114","(ある日)悪鬼を追い出しておられた。それは唖(の霊)であった。その悪鬼
が出てゆくと(すぐ)唖が物を言うようになったので、群衆が驚いた。"
"421115","しかしそのうちには、「あれは悪鬼どもの頭ベルゼブル(悪魔)を使って悪鬼を
追い出している」と言った者もあり、"
"421116","またある者は(イエスを)試そうとして、(神の子である証拠に)天からの(不
思議な)徴を彼に求めた。"
"421117","イエスは彼らの思いを知って言われた、「内輪で割れるいかなる国も荒れ果てて、
家が重なり合って倒れる。"
"421118","(同じように)悪魔(の国)も内輪で割れれば、どうしてその国が立ってゆこ
う。あなた達は、わたしがベルゼブルを使って悪鬼を追い出していると言うのだが。"
"421119","またわたしがベルゼブルを使って悪鬼を追い出すとすれば、(同じことをしてい
る)あなた達の弟子は、いったい何を使って(悪鬼を)追い出しているのか。(まさかベ
ルゼブルではあるまい。だからこのことについては、)あなた達の弟子に裁判官になって
もらったがよかろう。"
"421120","しかし、もし(そうでなく、)わたしが神の指で悪鬼を追い出しているのであっ
たら、それこそ神の国はもうあなた達のところに来ているのである。"
"421121","強い者が武装して自分の城を守っている時には、その持ち物は安全であるが、"
"421122","より強い者が襲ってきてこれに打ち勝つと、その頼みにしている武具を奪い、
分捕品を分けるのである。"
"421123","(だからわたしは言う、神と悪魔との戦いはすでに始まっている。)わたしの側
に立たない者は、わたしに反対する者、わたしと一しょに集めない者は、散らす者である。
"
"421124","汚れた霊が(追い出されて)人間から出て行くと、砂漠をあるき回って休み場
所をさがすが見つからないので、『出てきた自分の家にもどろう』と言って、"
"421125","かえって見ると、(家は)掃除ができて、飾り付けがしてあった。"
"421126","そこで行って、自分よりも悪い、ほかの(汚れた)霊を七つも連れてきて入り
こみ、そこに住む。するとその人のあとの有様は、(追い出す)前よりも、もっとひどく
なるのである。」"
"421127","こう話しておられる時、群衆の中の一人の女が声を張り上げてイエスに言った、
「なんと仕合わせでしょう、あなたを宿したお腹、あなたがすった乳房は!」"
"421128","しかしイエスは言われた、「いや、仕合わせなのは、神の言葉を聞いてそれを守
る人たちである。」"
"421129","群衆がなおも押し寄せてきたとき、イエスは話し出された、「この時代は悪い時
代である。(だから信ずるのに)徴を求める。しかしこの時代には、(預言者)ヨナの徴以
外の徴は与えられない。"
"421130","すなわちヨナが(大きな魚の腹から出てきて)ニネベの人に徴となったように、
人の子(わたしも地の中から出てきて)この時代の人に徴となるのである。"
"421131","(しかし人々は信じない。だから)南の国(シバ)の女王がこの時代の人たち
と一しょに(最後の)裁きの法廷にあらわれて、この人たちの罪が決まるであろう。とい
うのは、彼女は地の果てからソロモン(王)の知恵を聞きに(エルサレムに)来たが、(こ
の人たちは、)いまここにソロモンよりも大きい者がいる(のに、それに耳を傾けない)
からである。"
"421132","(また、)ニネベの人がこの時代の人と一しょに(最後の)裁き(の法廷)にあ
らわれて、この人たちの罪が決まるであろう。というのは、ニネベの人はヨナの説く言葉
に従って悔改めたが、(この人たちは、今)ここにヨナよりも大きい者がいる(のに、そ
の言葉に従わない)からである。"
"421133","だれも明りをつけて片隅に置いたり、枡をかぶせたりする者はない。(部屋に)
入ってくる者にその光が見えるように、かならず燭台の上に置くのである。(そのように
人の子が来たのも世を照らすためである。それを見わけられないのは、見る人の心が暗い
からである。)"
"421134","体の明りはあなたの目である。目が澄んでいる間は、体全体も明るいが、悪い
となると、体も暗い。"
"421135","だから、あなたの内の光(である目、すなわち心)が暗くならぬように注意せ
よ。"
"421136","もし体全体が明るくてすこしも暗い部分がなければ、明りがその輝きであなた
を照らしている時のように、すべてが明るいであろう。」"
"421137","こう話しておられた時、一人のパリサイ人がその家でお食事をと願ったので、
(家に)入って食卓に着かれた。"
"421138","するとそのパリサイ人は、イエスが(規則どおり)食事の前にまず(手を)す
すがれないのを見て不思議がった。"
"421139","主は彼に言われた、「よろしい、では君たちパリサイ人、君たちは杯や盆の外側
は清潔にするが、(心の)内側は強欲と悪意とでいっぱいではないか。"
"421140","無知な人たちよ、外側を造った方が、内側もお造りになったのではないか。"
"421141","とにかく、(杯や盆の)内のものを施してみよ。見る間に、君たちのもの一切が
清潔になるであろう。"
"421142","ああ禍だ、君たちパリサイ人!君たちは薄荷や芸香やすべての野菜の(収穫の)
一割税は(神妙に)納めるが、(大切な)正義と神に対する愛とをゆるがせにしているか
らだ。しかしこれこそ行うべきである。だがあれもなおざりにしてはならない。"
"421143","ああ禍だ、君たちパリサイ人!君たちは礼拝堂の上席や、市場で挨拶されるこ
とを好むからだ。"
"421144","ああ禍だ、君たちは!君たちは見分けのつかない(汚れた)墓のようで、人は
(それと)知らずにその上を歩くからだ。(同じように、きたない君たちに接する人は皆
汚れる。)」"
"421145","するとひとりの律法学者が口を出した、「先生、あなたはそう言って、わたし達
までも侮辱しておられます。」"
"421146","イエスが言われた、「ああ禍だ、君たち律法学者も!君たちは人には負いきれな
い荷を負わせながら、自分では(担ってやるどころか、)ただの指一本、その荷にさわっ
てやらないからだ。"
"421147","ああ禍だ、君たちは!君たちは預言者の記念碑を建てるが、その預言者を殺し
たのは君たちの先祖だからだ。"
"421148","それゆえ君たちは先祖がした(預言者殺しの)業の証人であり、またその賛成
者である。先祖は殺し、君たちは(その記念碑を)建てるからだ。"
"421149","だから神の知恵も(預言して)言っている、『わたしが預言者や使徒を派遣する
と、彼らはそのある者を殺し、また迫害するであろう。"
"421150","これは、(こうして彼らが迫害する預言者の血だけでなく、)世の始めから流さ
れたすべての預言者の血に対して、この時代が勘定を取られるためである、"
"421151","(すなわち、最初の殺人であった)アベルの血から、祭壇と神殿との間で殺さ
れたザカリヤの血に至るまで(の血に対して。)』ほんとうに、わたしは言う、この時代(の
君たち)は勘定を取られるであろう。"
"421152","ああ禍だ、君たち律法学者!君たちは(神の国の)知識の鍵を取り上げて、自
分も入らず、また入ろうとする者の邪魔をするからだ。」"
"421153","イエスがそこを出てゆかれると、聖書学者とパリサイ人とは(イエスに対して)
ひどく敵意をいだき、いろいろな質問をあびせ始めた。"
"421154","あわよくば、その口から何か言葉質をとろうと狙っていたのである。"
"421201","とにかくするうちに、(足を)踏み合うほど数かぎりない群衆が集まってきた。
イエスはまず弟子たちに言い出された、「パリサイ人のパン種──彼らの偽善──を警戒
せよ。"
"421202","覆われているものであらわされないものはなく、隠れているもので(人に)知
られないものはない。"
"421203","(伝道も同じである。)だからあなた達が暗闇で(こっそり)言ったことはみな、
明るみで聞かれ、奥の部屋で耳にささやいたことは、屋根の上で宣伝される(時が来る)
のである。"
"421204","あなた達、わたしの友人に言う、体を殺しても、そのあと、それ以上には何も
できない者を恐れるな。"
"421205","恐るべき者はだれか、おしえてあげよう。殺したあとで、地獄に投げ込む権力
を持っておられるお方を恐れよ。ほんとうに、わたしは言う、そのお方(だけ)を恐れよ。
"
"421206","雀は五羽二アサリオン(六十円)で売っているではないか。しかしその一羽で
も、神に忘れられてはいないのである。"
"421207","それどころかあなた達は、髪の毛までも一本一本数えられている。恐れること
はない、あなた達は多くの雀よりも大切である。"
"421208","それで、わたしは言う、(恐れずに説け。)だれでも人の前で公然わたしを(主
と)告白する者を、人の子(わたし)も(裁きの日に、)神の使たちの前で(弟子として)
認める。"
"421209","しかし人の前でわたしを否認する者は、神の使たちの前で(わたしから)否認
されるであろう。"
"421210","また、人の子(わたし)を冒涜する者ですら、皆、赦していただけるが、聖霊
を冒涜する者は(決して)赦されない。"            
"421211","人々があなた達を礼拝堂や役所や官庁に引っ張っていった時には、いかに、何
と弁明しようか、何を言おうかと、心配するな。"
"421212","言うべきことは、その時に聖霊が教えてくださるのだから。」"
"421213","すると群衆の中の一人がイエスに言った、「先生、遺産を分けてくれるように、
兄に言ってください。」"
"421214","イエスは「君、だれがわたしを、あなた達の裁判官また遺産分配人に任命した
のか」とこたえておいて、"
"421215","人々に言われた、「一切の貪欲に注意し、用心せよ。いかに物があり余っていて
も、財産は命の足しにはならないのだから。」"
"421216","そこで一つの譬を人々に話された、「ある金持の畑が(ある年)豊作であった。
"
"421217","『どうしよう、わたしの作物をしまいこむ場所がないのだが…』と金持ちはひ
そかに考えていたが、"
"421218","やがて言った、『よし、こうしよう。倉をみなとりこわして大きいのを建て、そ
こに穀物と財産をみなしまいこんでおいて、"
"421219","それからわたしの魂に言おう。──おい魂、お前には長年分の財産が沢山しま
ってある。(もう大丈夫。)さあ休んで、食べて、飲んで、楽しみなさい、と。』"
"421220","しかし神はその人に、『愚か者、今夜お前の魂は取り上げられるのだ。するとお
前が準備したものは、だれのものになるのか』と言われた。"
"421221","自分のために(地上に)宝を積んで、神のところで富んでいない者はみな、こ
のとおりである。」"
"421222","それから(また)弟子たちに言われた、「だから、わたしは言う、何を食べよう
かと命のことを心配したり、また何を着ようかと体のことを心配したりするな。"
"421223","命は食べ物以上、体は着物以上(の賜物)だから。(命と体とを下さった神が、
それ以下のものを下さらないわけはない。)"
"421224","烏をよく見てごらん。まかず、刈らず、納屋も倉もないのに、神はそれを養っ
てくださるのである。ましてあなた達は、鳥よりもどれだけ大切だか知れない。"
"421225","(だいいち、)あなた達のうちのだれが、心配して寿命を一寸でも延ばすことが
出来るのか。"
"421226","それなら、こんな小さなことさえ出来ないのに、なぜほかのことを心配するの
か。"
"421227","花は紡ぐことも、織ることもしないのに、よく見てごらん。しかし、わたしは
言う、栄華を極めたソロモン(王)でさえも、この花の一つほどに着飾ってはいなかった。
"
"421228","きょうは野に花咲き、あすは炉に投げ込まれる草でさえ、神はこんなに装って
くださるからには、ましてあなた達はなおさらのことである。信仰の小さい人たちよ!"
"421229","あなた達も、何を食べよう、何を飲もうと考えるな、また気をもむな。"
"421230","それは皆この世の異教人の欲しがるもの。あなた達の父上は、それがあなた達
に必要なことを御承知である。"
"421231","あなた達はむしろ御国を求めよ。そうすれば(食べ物や着物など)こんなもの
は、(求めずとも)つけたして与えられるであろう。"
"421232","小さな群よ、恐れることはない。あなた達の父上は御国をあなた達に下さるつ
もりだから。"
"421233","(ただ御国のために働けばよろしい。)持ち物を売って施しをしなさい。(すな
わちそれによって)自分のために古び(て破れ)ることのない財布をつくり、泥坊が近づ
くことも、衣魚が食うこともない天に、使いつくすことのない宝をつんでおきなさい。"
"421234","宝のある所に、あなた達の心もあるのだから。"
"421235","裾ひきからげ、明りをともしておれ。"
"421236","あなた達は、主人が宴会からかえって来て戸をたたいたときすぐあけられるよ
うに、帰りいつかと待ちかまえている人のようであれ。"
"421237","主人がかえって来たとき、目を覚ましているところを見られる僕たちは幸いで
ある。アーメン、わたしは言う、主人の方で裾をひきからげて、僕たちを食卓につかせ、
そばに来て給仕をしてくれるであろう。"
"421238","第二夜回りのころにせよ、第三夜回りのころにせよ、主人がかえって来たとき、
こうして(目を覚まして)いるところを見られたら、その人たちは幸いである。"
"421239","あなた達はこのことを知っているはずだ。──何時に泥坊が来るとわかってお
れば、家の主人は(目を覚ましていて、)みすみす家に忍び込ませはしないであろう。"
"421240","あなた達も用意していなさい。人の子(わたし)は思いがけない時に来るのだ
から。」"
"421241","するとペテロが言った、「主よ、この譬はわたし達(世話をしている者)のため
ですか、それとも皆の者のためにも話されたのですか。」"
"421242","主が言われた、「(旅行に出かける)主人が一人の番頭を(えらんで)召使たち
の上に立て、時間時間にきまった食事を与えさせることにした場合に、いったいどんな番
頭が忠実で賢いのであろうか。"
"421243","それは主人がかえって来たとき、言いつけられたとおりにしているところを見
られる僕で、その僕こそ幸いである。"
"421244","本当にあなた達に言う、主人は彼に全財産を管理させるに違いない。"
"421245","しかしその僕が、主人のかえりはおそい、と心の中で考えて、下男や下女をな
ぐったり、飲んだり食ったり酔っぱらったりし始めていると、予期せぬ日、思いもよらぬ
時間に、その僕の主人がかえってきて、僕を八つ裂きにし、不信者と同じ目にあわせるに
ちがいない。"
"421246","予期せぬ日、思いもよらぬ時間に、その僕の主人がかえってきて、僕を八つ裂
きにし、不信者と同じ目にあわせるにちがいない。"
"421247","主人の心を知っていながら用意せず、あるいは主人の心に従って行動しなかっ
た僕は、(鞭で)打たれることが多い。"
"421248","しかし(主人の心を)知らない者は、打たれるようなことをしても、打たれ方
が少ない。(神に)多く渡された者は皆多く請求され、(信頼して)多く任された者は一そ
う多く要求される。"
"421249","火を地上に投げるために、わたしは来た。火がもう燃え出していたらと、どん
なに願っていることであろう!"
"421250","しかしわたしには、受けねばならない洗礼がある。それがすむまで心配でたま
らないのだ。"
"421251","あなた達は、地上に平和をもたらすためにわたしが来たと思うのか。そうでは
ない、わたしは言う、平和どころか、内輪割れ以外の何ものでもない。"
"421252","今からのち、一軒の家で五人が割れて、三人対二人、二人対三人に"
"421253","割れるからである。父対息子"息子対父、"母対娘"娘対母、"姑対嫁"嫁対姑"!」
"
"421254","また群衆にも言われた、「あなた達は雲が西に出るのを見ると、即座に『俄雨が
来そうだ』と言うが、はたしてそのとおり。"
"421255","また南風が吹きだすと、『暑くなりそうだ』と言うが、はたしてしかり。"
"421256","この偽善者たち、天地の模様を見ることを心得ていながら、どうしてこの時(の
せまった様子)がわからないのか。"
"421257","あなた達は(こんな時に)どうすればよいかを、なぜ自分で判断しないのか。"
"421258","あなたは(いま、裁判所に訴えられているようなものである。)告訴人と一しょ
に役人の所に行く間に、途中でその人と話をつけるよう努力すべきである。そうでないと、
告訴人はあなたを裁判官の前に引きずってゆき、裁判官は執行人に引き渡し、執行人は牢
に入れるにちがいない。"
"421259","わたしは言う、最後の一レプタ[五円]を返すまでは、決してそこから出るこ
とはできない。(早く悔改めよ。)」"
"421301","ちょうどその時、人が来て、(総督ピラトが犠牲をささげている)ガリラヤ人た
ちを殺し、その血が彼らの犠牲(の血)にまじったことをイエスに報告した。"
"421302","その人たちに言われた、「そのガリラヤ人たちはそんな目にあったので、(ほか
の)すべてのガリラヤ人よりも罪人だったと思うのか。"
"421303","そうではない。わたしは言う、あなた達も悔改めなければ、皆同じように滅び
るであろう。"
"421304","またシロアムの(池の)近くの櫓が倒れて(下敷になって)死んだあの十八人
は、(当時)エルサレムに住んでいた(ほかの)すべての人よりも罪人だったと思うのか。
"
"421305","そうではない。わたしは言う、あなた達も悔改めなければ、皆同様に滅びるで
あろう。」"
"421306","そこでこの譬を話された、「ある人が葡萄畑に一本の無花果の木を植えておいた。
(ある日)実をさがしに来たが、見つからないので、"
"421307","葡萄畑の作男に言った、『もう三年この方、この無花果の木に実をさがしに来て
いるのに、まだ実がならない。切ってくれ。(ならないばかりか、)なんで土地までくたび
れさせることがあろう。』"
"421308","答えて言う、『ご主人、今年もう一年だけ勘弁してやってください。今度は回り
を掘って、肥料をやってみますから。"
"421309","それで来年実を結べばよし、それでもだめなら、切ってください。』」"
"421310","安息日にある礼拝堂で教えておられた。"
"421311","その時、そこに十八年も病気の霊につかれている女がいた。体が曲っていて、
真直ぐに伸ばすことが出来なかった。"
"421312","イエスは女を見て呼びよせ、「女の人、病気は直っている」と言って"
"421313","手をのせられると、女はたちどころに体がまっすぐに伸びて、神を讃美した。"
"421314","すると礼拝堂監督は、イエスが安息日に病気をなおされたことを憤慨して、群
衆に言った、「働くべき日は六日ある。その間に来てなおしてもらったがよかろう。安息
日の日にはいけない。」"                          
"421315","主が答えられた、「この偽善者たち、あなた達はだれも、安息日には牛や驢馬を
小屋から解いて、水を飲ませにつれてゆかないのか。"
"421316","この女はアブラハムの末であるのに、十八年ものあいだ、悪魔が縛っていたの
だ。安息の日だからとて、その(悪魔の)縄目から解いてはならなかったのか。」"
"421317","こう言われると、(監督はじめ)反対者は皆恥じ入り、群衆は一人のこらず、イ
エスが行われたあらゆる輝かしい御業を喜んだ。"
"421318","すると言われた、「神の国は何に似ているか。何にたとえようか。"
"421319","それは芥子粒に似ている。ある人がそれをその庭に蒔いたところ、育って(大
きな)木になり、"その枝に空の鳥が巣をつくった。"」"
"421320","さらに言われた、「神の国を何にたとえようか。"
"421321","それはパン種に似ている。女がそれを三サトン[二斗]の粉の中にまぜたとこ
ろ、ついに全体が醗酵した。」"
"421322","イエスは町々村々を通って教えながら、エルサレムへの旅行をつづけておられ
た。"
"421323","するとある人が「主よ、救われる者は少ないでしょうか」と尋ねた。人々に言
われた、"
"421324","「全力を尽くして(今すぐ)狭い戸口から入りなさい。あなた達に言う、(あと
になって)入ろうとしても、入れない者が多いのだから。"
"421325","家の主人が立ち上がって戸をしめたあとで、あなた達が外に立って、『ご主人、
あけてください』と言って戸をたたきつづけても、主人は、『わたしはあなた達がどこの
人だか知らない』と答えるであろう。"
"421326","その時あなた達はこう言い出すにちがいない、『わたし達はご一しょに飲んだり
食べたりした者です。あなたはわたし達のところの大通りで教えてくださいました』と。"
"421327","しかし主人は、『わたしはあなた達がどこの人だか知らない。"この悪者、みん
な、わたしをはなれよ!"』と言うであろう。"
"421328","あなた達はアブラハムやイサクやヤコブや、またすべての預言者たちが神の国
におるのに、自分は外に放り出されるのを見て、そこでわめき、歯ぎしりするであろう。"
"421329","また人々が"東から西から北から南から"来て、神の国で宴会につらなるであ
ろう。"
"421330","たしかに、最後であって一番になる者があり、一番であって最後になる者があ
る。」"
"421331","ちょうどその時、数人のパリサイ人が来てイエスに言った、「(すぐ)ここを逃
げ出しなさい。ヘロデ(王)があなたを殺そうと思っています。」"
"421332","彼らに言われた、「(忠告はありがたいが、)行って、あの狐(のヘロデ)にこう
言ってもらいたい、『見よ、わたしはきょうとあしたは、(まだここにいて)悪鬼を追い出
し治療を行い、三日目に(仕事が終って)全うされる。"
"421333","とはいえ、きょうもあしたもあさっても、わたしは(たえずエルサレムへ向か
って)進みゆかねばならない。預言者がエルサレム以外の所で死ぬことはあり得ないのだ
から』と。"
"421334","ああエルサレム、エルサレム、預言者を殺し、(神から)遣わされた者を石で打
ち殺して(ばかり)いる者よ、雌鳥がその雛を翼の下に集めるように、何度わたしはお前
の子供たちを(わたしの所に)集めようとしたことか。だがお前たち(エルサレムの者)
はそれを好まなかった。"
"421335","そら、"お前たちの町は(宮もろとも神に)見捨てられ(て荒れ果て)るのだ。"
お前たちに言っておく、お前たちが(わたしを迎えて)"主の御名にて来られる方に祝福
あれ。"と言う時の来るまで、わたしを見ることは決してないであろう。」"
"421401","ある安息日に、パリサイ派に属する(最高法院の)ある役人の家に食事に(招
かれて)行かれた時のこと、人々はひそかにイエスの様子をうかがっていた。"
"421402","すると、水気をわずらった人がイエスの前にあらわれた。"
"421403","イエスは自分の方から律法学者やパリサイ人たちに向かって口を切られた。「安
息日に病気をなおすことは正しいか、正しくないか。」"
"421404","彼らが黙っていると、その人(の手)をつかんで、病気を直してお帰しになっ
た。"
"421405","そして彼らに言われた、「あなた達のうちには、息子か牛かが井戸に落ちたとき、
安息の日だからとてじきに引き上げてやらない者がだれかあるだろうか。」"
"421406","彼らはこれに対して返答ができなかった。"
"421407","またイエスは招かれた人たちが上座を選ぶのに目をとめて、彼らに一つの譬を
話された、"
"421408","宴会に招かれた時には、上座についてはいけない。あなたよりもえらい人が招
かれていると、"
"421409","あなた達を招いた人が来て、『この方に席を譲ってください』と言うかも知れな
い。その時あなたは恥ずかしい思いをして、下座に着かねばならない。"
"421410","招かれた時には、むしろさっさと下座にすわりなさい。そうすればあなたを招
いた人が来て、『友よ、もっと上の方に進みください』と言う時に、満座の中で面目をほ
どこすであろう。"
"421411","自分を高くする者は皆低くされ、自分を低くする者は高くされるのである。」"
"421412","また自分を招いた人にも言われた、「朝飯や夕飯の会を催す時には、友人も、兄
弟も、親族も、近所の金持も呼ぶな。そうでないと、その人たちもあなたを招待してお返
しをするかも知れない。"
"421413","御馳走をする時には、むしろ貧乏人、片輪、足なえ、盲人を招きなさい。"
"421414","この人たちはお返しができないから、あなたは幸いである。(最後の日)義人の
復活の時に、あなたは(神から)お返しをうけるのだから。」"
"421415","これを聞いて、ひとりの客がイエスに言った、「神の国で食事のできる者は、な
んと幸いでしょう。」"
"421416","その人に言われた、「(そのとおり。しかしこの譬を聞きなさい。)ある人が大宴
会を催して大勢(の客)を招いた。"
"421417","宴会の時刻になったので、一人の僕をやって招いた人たちに、『お出でください、
もう用意ができています』と言わせると、"
"421418","皆が異口同音にことわり始めた。第一の人は言った、『畑を買ったので見に行か
ねばなりません。どうか失礼させてください。』"
"421419","次の人は言った、『五対の牛を買ったので、いま改めに行くところです。どうか
失礼させてください。』"
"421420","もう一人の人は言った、『家内をもらったばかりで、行かれません。』"
"421421","僕がかえって来てそのことを主人に報告すると、主人は怒って僕に言った、『大
急ぎで町の大通りや路地へ行って、貧乏人や片輪や盲人や足なえをここにつれて来なさ
い。』"
"421422","やがて僕が(かえって来て)言った、『御主人、仰せのとおりにしましたが、ま
だ席があります。』"
"421423","主人が僕に言った、『田舎道や垣根のところに行き、(そこにいるひとたちに)
無理にも来てもらって、家をいっぱいにしなさい。』"
"421424","──あなた達に言う、(神の国もこのとおり。最初に)招いた人たちで、わたし
の宴会に連なる者は一人もあるまい。」"
"421425","大勢の群衆がイエスと一しょに旅行をしていると、振り向いて言われた、"
"421426","わたしの所に来て、その父と母と妻と子と兄弟と姉妹と、なおその上に、自分
の命までも憎まない者は、だれもわたしの弟子になることは出来ない。"
"421427","自分の十字架を負ってわたしについて来ない者は、わたしの弟子になることは
出来ない。"
"421428","(このように、わたしの弟子になるには最初の覚悟が必要である。)なぜか。(次
の譬を聞きなさい。)あなた達のうちには櫓を建てようと思うとき、まず坐って、はたし
て造りあげるだけの金があるかと、その入費を計算しない者がだれかあるだろうか。"
"421429","そうしないで、土台をすえただけで完成ができないと、見る人が皆、"
"421430","『あの人は建てかけたが、完成できなかった』と言って笑うであろう。"
"421431","また、ある王が他の王と戦いを交えようとする時には、まず坐って、(自分の)
一万(の兵)で、二万(の兵)を率いてすすんで来る敵をむかえ撃てるかどうかを考えな
いだろうか。"
"421432","そして、もしかなわないと見たら、敵がまだ遠くにいるうちに、使者を派遣し
て講和を申し出るであろう。"
"421433","だから同じように、(家族や財産など)一切合切、自分のものと別れなければ、
あなた達のだれ一人、わたしの弟子になることは出来ない。"
"421434","だから、(それは塩に似ている。)塩はよいもの。しかし塩でももし馬鹿になっ
たら、何で(もう一度)塩気がつけられるか。"
"421435","畑にも肥料にも役立たず、外に捨てられるばかりである。(わたしの弟子もその
とおり。)耳のきこえる者は聞け。」"
"421501","さて、イエスの話を聞こうとして、(いつものとおり)税金取りや罪人が皆近寄
ってきた。"               
"421502","パリサイ人と聖書学者たちがぶつぶつ呟いて言った、「この人は罪人を歓迎する
し、また(招かれていって)食事までも一しょにする。」"
"421503","そこで彼らにつぎの譬を話された。"
"421504","「あなた達のうちのだれかが羊を百匹持っていて、その一匹がいなくなったと
き、その人は九十九匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を、見つけ出すまではさ
がし歩くのではないだろうか。"
"421505","そして見つけると、喜んで肩にのせて、"
"421506","家にかえり、友人や近所の人たちを呼びあつめてこう言うにちがいない、『一し
ょに喜んでください。いなくなっていたわたしの羊が見つかったから』と。"
"421507","わたしは言う、このように、一人の罪人が悔改めると、悔改める必要のない九
十九人の正しい人以上の喜びが、天にあるのである。"
"421508","また、どんな女でも、ドラクマ銀貨[五百円]を十枚持っていて、もしその銀
貨を一枚無くしたとすれば、明りをつけて家(中)を掃き、それを見つけ出すまでは、丹
念にさがしつづけるのではないだろうか。"
"421509","そして見つけると、友だちや近所の女たちを呼びあつめてこう言うにちがいな
い、『一しょに喜んでください。無くした銀貨が見つかりましたから』と。"
"421510","わたしは言う、このように、一人の罪人が悔改めると、神の使たちに喜びがあ
るのである。」"
"421511","また話された、「ある人に二人の息子があった。"
"421512","『お父さん、財産の分け前を下さい』と弟が父に言った。父は身代を二人に分
けてやった。"
"421513","幾日もたたないうちに、弟は(分け前)全部をまとめて(金にかえ、)遠い国に
行き、そこで放蕩に財産をまき散らした。"
"421514","すべてを使いはたしたとき、その国にひどい飢饉があって、食べるにも困り果
てた。"
"421515","そこでその国のある人のところに行ってすがりつくと、畑にやって、豚を飼わ
せた。"          
"421516","彼はせめて豚の食う蝗豆で腹をふくらしたいと思ったが、(それすら)呉れよう
とする人はなかった。"
"421517","ここで(はじめて)本心に立ち返って言った。──お父さんのところでは、あ
んなに大勢の雇人に食べ物があり余っているのに、(息子の)このわたしは、ここで飢え
死にしようとしている。……"
"421518","よし、お父さんの所にかえろう、そしてこう言おう、『お父さん、わたしは天(の
神様)にも、あなたにも、罪を犯しました。"
"421519","もうあなたの息子と言われる資格はありません。どうか雇人なみにしてくださ
い』と。"
"421520","そして立ってその父の所へ出かけた。ところが、まだ遠く離れているのに、父
は見つけて不憫に思い、駈けよって首に抱きついて接吻した。"
"421521","息子は父に言った、『お父さん、わたしは天(の神様)にも、あなたにも、罪を
犯しました。もうあなたの息子と言われる資格はありません。……』"
"421522","しかし父は(皆まで聞かず)召使たちに言った、『急いで、一番上等の着物をも
って来て着せなさい。手に指輪を、足にお靴をはかせなさい。"
"421523","それから肥えた小牛を引いてきて料理しなさい。みんなで食べてお祝いをしよ
うではないか。"
"421524","このわたしの息子は死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかっ
たのだから。』そこで祝賀会が始まった。"
"421525","兄は畑にいたが、家の近くに来ると鳴り物や踊りの音が聞えるので、"
"421526","ひとりの下男を呼んで、あれはいったい何ごとかとたずねた。"
"421527","下男が言った、『弟さんがかえってこられました。無事に取り戻したというので、
お父様が肥えた小牛を御馳走されたのです。"
"421528","兄はおこって、家に入ろうとしなかった。父が出てきていろいろ宥めると、
""421529","父に答えた、『わたしは何年も何年もあなたに仕え、一度としてお言い付けに
そむいたことはないのに、わたしには友人と楽しむために、(小牛どころか)山羊一匹下
さったことがただの一度もないではありませんか。"
"421530","ところがあのあなたの息子、きたない女どもと一しょに、あなたの身代をくら
いつぶしたあれがかえって来ると、肥えた小牛を御馳走されるのはどういうわけですか。』
"
"421531","父が言った、『まあまあ、坊や、お前はいつもわたしと一しょにいるではないか。
わたしの物はみんなお前のものだ。"
"421532","だが、喜び祝わずにはおられないではないか。このお前の弟は死んでいたのに
生きかえり、いなくなっていたのに見つかったのだから。』」"
"421601","また弟子たちにも話された、「ある金持に一人の番頭があった。主人の財産を使
い込んでいると告げ口した者があったので、"
"421602","主人は番頭を呼んで言った、『なんということをあなたについて聞くのだ!事務
の報告を出してもらおう、もう番頭にしておくわけにはいかないから。』"
"421603","番頭は心ひそかに考えた、『どうしたものだろう、主人がわたしの仕事を取り上
げるのだが。(土を)掘るには力がないし、乞食をするには恥ずかしいし……"
"421604","よし、わかった、こうしよう。こうしておけば仕事が首になった時、その人た
ちがわたしを自分の家に迎えてくれるにちがいない。』"
"421605","そこで主人の債務者をひとりびとり呼びよせて、まず最初の人に言った、『うち
の主人にいくら借りがあるのか。』"
"421606","『油百バテ[二十石]』とこたえた。番頭が言った、『そら、あなたの証文だ。坐
って、大急ぎで五十と書き直しなさい。』"
"421607","それから他の一人に言った、『あなたはいくら借りがあるのか。』『小麦百コル
[二百石]』とこたえた。彼に言う、『そら、あなたの証文だ。八十と書き直しなさい。』"
"421608","すると主人はこの不埒な番頭の利巧な遣り口を褒めた(という話)。この世の人
は自分たちの仲間のことにかけては、光の子(が神の国のことに利口である)よりも利巧
である。"
"421609","それでわたしもあなた達に言う、あなた達も(この番頭に見習い、今のうちに
この世の)不正な富を利用して、(天に)友人[神]をつくっておけ。そうすれば富がな
くなる時、その友人が永遠の住居に迎えてくださるであろう。"
"421610","ごく小さなことに忠実な者は、大きなことにも忠実である。ごく小さなことに
不忠実な者は、大きなことにも不忠実である。"
"421611","だから、もし(この世の)不正な富に忠実でなかったならば、だれが(天の)
まことの富をあなた達にまかせようか。"
"421612","もし他人のもの[この世のこと]に忠実でなかったならば、だれがあなた達の
もの[天のもの]をあなた達に与えようか。"
"421613","しかし(この世のことはみな準備のためであるから、それに心を奪われてはな
らない。)いかなる僕も(同時に)二人の主人に仕えることは出来ない。こちらを憎んで
あちらを愛するか、こちらに親しんであちらを疎んじるか、どちらかである。あなた達は
神と富とに仕えることは出来ない。」"
"421614","金の好きなパリサイ人の人々は一部始終を聞いて、イエスを鼻で笑った。(富は
信仰の褒美と考えていたのである。)"
"421615","そこで彼らに言われた、「あなた達は人の前では信心深そうな顔をしているが、
神はあなた達の心を見抜いておられる。人の中で尊ばれるものは、神の前では嫌われるも
のである。"
"421616","(あなた達は聖書を誇るが、時代はもう変っている。)律法と預言書と([聖書]
の時代)は(洗礼者)ヨハネ(の現われる時)までで、その時以来神の国の福音は伝えら
れ、だれもかれも暴力で攻め入っている。"
"421617","しかし(神の言葉はすたったのではない。)律法(と預言書と)の一画がくずれ
落ちるよりは、天地の消え失せる方がたやすい。"
"421618","(だから、)妻を離縁して別な女と結婚する者は皆、姦淫を犯すのであり、夫か
ら離縁された女と結婚する者も、姦淫を犯すのである。"
"421619","(つぎに、利巧な番頭と反対に、神の国の準備をしなかった人の話を聞け。)一
人の金持があった。紫(の上着)と細糸の亜麻布(の下着)を着て、毎日華やかに楽しく
暮していた。"
"421620","またその金持の門の前に、ラザロという出来物だらけの乞食がねていた。"
"421621","せめて金持の食卓から落ちる物で満腹できたらと思った。それどころか、犬ま
で来て出来物をねぶっていた。"
"421622","やがて乞食は死んで、天使たちからアブラハムの懐につれて行かれ、金持も死
んで葬られた。"
"421623","金持は黄泉で苦しみながら、(ふと)目をあげると、はるか向こうにアブラハム
とその懐にいるラザロとが見えたので、"
"421624","声をあげて言った、『父アブラハムよ、どうかわたしをあわれと思ってラザロを
よこし、指先を水にひたしてわたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの焔の中でも
だえ苦しんでおります。』"
"421625","しかしアブラハムは言った、『子よ、考えてごらん、あなたは生きていた時に善
いものを貰い、ラザロは反対に悪いものを貰ったではないか。だから今ここで、彼は慰め
られ、あなたはもだえ苦しむのだ。"
"421626","そればかりではない、わたし達とあなた達との間には大きな(深い)裂け目が
あって、ここからあなた達の所へ渡ろうと思っても出来ず、そこからわたし達の所へ越え
てくることもない。』"
"421627","金持が言った、『父よ、それではお願いですから、ラザロをわたしの父の家にや
ってください。"
"421628","わたしに五人の兄弟があります。彼らまでがこの苦しみの場所に来ないように、
よく言って聞かせてください。』"
"421629","しかしアブラハムは言う、『(その必要はない。)彼らにはモーセ(律法)と預言
書と[聖書]がある。その教えに従えばよろしい。』"
"421630","彼が言った、『いいえ、父アブラハムよ、もしだれかが死人の中から行ってやれ
ば、きっと悔改めます。』"
"421631","しかしアブラハムは答えた、『モーセと預言書との教えに従わないようでは、た
とえ死人の中から生き返る者があっても、その言うことを聞かないであろう。』」"
"421701","それから弟子たちに言われた、「罪のいざないが来るのは致し方がない。だが、
それを来させる人は禍だ。"
"421702","この小さな者を一人でも罪にいざなうよりは、挽臼を頚にかけられて海に放り
込まれる方が、その人の為である。"
"421703","(人を罪にいざなわぬように注意せよ。(また)もし兄弟が(あなたに対して)
罪を犯したら、これを咎め、悔改めたら、赦してやりなさい。"
"421704","あなたに対して一日に七度罪を犯しても、七度『すまなかった』と言って、あ
なたの所へもどってきたら、七度赦してやらねばならない。」"
"421705","使徒たちが主に言った、「もっと信仰を下さい。」"
"421706","主が言われた、「もしあなた達に芥子粒ほどでも信仰があれば、──(あなた達
にはそれがないが、もしあれば)──この桑の木にむかい『抜けて海に植われ』と言って
も、言うことを聞くであろう。"
"421707","ただ(次の譬を聞け。)あなた達のうちに耕作、あるいは牧畜をする僕を持って
いる人があって、その僕が畑からかえって来たとき、『すぐここに来て食事をしなさい』
とその人は言うだろうか。"
"421708","むしろ反対に、『夕食の用意をして、わたしが食事をすますまで裾をひきからげ
て給仕をし、そのあとで食事をしなさい』と言うのではあるまいか。"
"421709","言いつけられたことをしたからとて、主人が僕に感謝するだろうか。"
"421710","そのようにあなた達も、(神に)命じられたことを皆なしとげた時、『われわれ
は役に立たない僕だ、せねばならぬことをしたまでだ。(褒美をいただく資格はない)』と
言え。」"
"421711","エルサレムへ進んでおられた時のこと、サマリヤとガリラヤとの間を通られた。
"                  
"421712","とある村に入ると、十人の癩病人に出合われた。彼らは(規則どおりに)遠く
の方で立ち止まったまま、"
"421713","声をはりあげて、「イエス先生、どうぞお慈悲を」と言った。"
"421714","イエスは見て言われた、「(全快したことを世間に証明してもらうため、エルサ
レムの宮に)行って体を"祭司たちに見せなさい。"」すると行く途中で、(皆いつとはな
しに体が)清まった。"
"421715","ところでそのうちの一人は自分が直ったのを見ると、大声で神を讃美しながら
帰ってきて、"
"421716","イエスの足下にひれ伏してお礼を言った。それはサマリヤ人であった。"
"421717","イエスは言われた、「十人とも清められたのではなかったか。九人はどこにいる
か。"
"421718","この外国人一人のほかには、(九人のユダヤ人のうちに)帰ってきて神に栄光を
帰する者はだれもないのか。」"
"421719","そしてその人に言われた、「さあ立って行きなさい。あなたの信仰がなおしたの
だ。」"
"421720","パリサイ人から神の国はいつ来るのかと尋ねられたとき、答えられた、「神の国
は、(いつ来るのかと計算や)観測のできるようにしては来ない。"
"421721","また『そら、ここに(ある)』とか、『かしこに(ある)』とか言うことも出来な
い。神の国はあっと言う間に、あなた達の間にあらわれるのだから。」"
"421722","それから弟子たちに言われた、「(いまに苦しい試みの)日が来て、あなた達は、
せめて一日でも人の子(わたし)の(栄光の)日に生きたいと願うけれども、許されない。
"
"421723","(その試みの時に、)『そら、かしこに(人の子が)』『そら、ここに』と言う者
があるが、ついて行くな、追いまわすな。"
"421724","その日に人の子(わたし)が来るのは、ちょうど稲妻がひらめいて、大空の下
をこの端からかの端まで照りかがやかすよう(に、はっきりわかるの)であるから。"
"421725","しかし人の子はその前に多くの苦しみをうけ、この時代の人から排斥されねば
ならない。"
"421726","ちょうどノアの(洪水の)時にあったようなことが、人の子の(来る)日にも
起るであろう。"
"421727",""ノアが箱船に入った"日まで、人々が飲んだり食ったり、嫁にやったり取っ
たりしていると、洪水が来て、一人のこらず滅ぼしてしまった。"
"421728","ロトの時にも、ちょうど同じようなことがあった。人々が飲んだり食ったり、
売ったり買ったり、植えたり建てたりしていると、"
"421729","ロトがソドムから出た日に、"(神は)天から火と硫黄とを降らせて、"一人のこ
らず滅ぼしてしまわれた。"
"421730","人の子があらわれる日にも同じことが起るであろう。"
"421731","その日には、屋根の上におる者は、(何か大切な)家財道具が家の中にあっても
下におりて取り出そうとするな。畑におる者も同じく"(家に)もどる"な。"
"421732","ロトの妻のことを思え。"
"421733","(この世の)命を保とうとする者は(永遠の)命を失い、(この世の命を)失う
者は、(永遠に)生きながらえるであろう。"
"421734","わたしは言う、その晩、二人の男が一つ寝床にねていると、一人は(天に)連
れてゆかれ、他の一人は(地上に)のこされる。"
"421735","二人の女が一しょに臼をひいていると、一人は連れてゆかれるが、他の一人は
のこされる。」"
"421736"[無し]
"421737","弟子たちが尋ねる、(いつ)どこで(その裁きはありますか。)」彼らに言われた、
「(時が来れば、いつでも。)死体のある所に、鷲も集まる。」"
"421801","なお、気を落さずに常に祈るべきことについて、一つの譬をひいて弟子たちに
話された、"
"421802","「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官があった。"
"421803","またその町に一人の寡婦がいた。いつもその裁判官の所に来ては、『(早く裁判
をして)わたしのため敵に仕返しをしてください』と言っていた。"
"421804","裁判官はしばらくの間は取り合おうとしなかったが、あとでひそかに考えた、
『わたしは神を恐れず、人を人とも思わないが、"
"421805","この寡婦はどうもうるさくて、やりきれないから、(裁判をして、)この女のた
めに仕返しをしてやろう。そうしないと最後にはやって来て、わたしをどんなひどい目に
あわせるか知れない。』」"
"421806","それから主は言われた、「この不埒な裁判官の言うことを聞け。"
"421807","(こんな男でもこのとおり。)まして神が、夜昼叫んでいるその選ばれた人々の
ために仕返し(の裁判)をせず、気長に放っておかれることがあろうか。"
"421808","わたしは言う、間もなく彼らのために仕返しをされるであろう。しかし人の子
(わたし)が来るときに、はたして地上に信仰(をもつ人)が見当るだろうか!」"
"421809","なお、自分(だけ)は信心深いとうぬぼれて人を軽蔑している者たちにも、こ
の譬を話された。"
"421810","「二人の人が祈りのために(エルサレムの)宮に上った。一人はパリサイ人、
他の一人は税金取りであった。"
"421811","パリサイ人は(得々と)ひとり進み出て、こう祈った、『神様、わたしはほかの
人たちのように泥棒、詐欺師、姦淫する者でなく、また、この税金取りのような人間でも
ないことを感謝します。"
"421812","わたしは一週間に二度も断食し、(きまったものの一割税だけでなく、)一切の
収入の一割税を納めております。』"
"421813","しかし税金取りは(罪に責められ、)遠く(うしろ)の方に立ったまま、目を天
に向け(て祈りをささげ)ようともせず、ただ胸をうって、『神様、どうぞこの罪人のわ
たしをお赦しください』と言った。"
"421814","わたしは言う、あの人でなく、この人の方が(神から)信心深いとされて、家
にかえっていった。自分を高くする者は皆低くされるが、自分を低くする者は高くされる
のである。」"
"421815","イエスにさわっていただこうとして、人々が幼児たちまでもつれて来ると、弟
子たちが見て咎めた。"
"421816","イエスは幼児を呼びよせたのち、(弟子たちに)こう言われた、「子供たちをわ
たしの所に来させよ、邪魔をするな。神の国はこんな(小さな)人たちのものである。"
"421817","アーメン、わたしは言う、子供のように(すなおに)神の国(の福音)を受け
入れる者でなければ、決してそこに入ることはできない。」"
"421818","ひとりの(最高法院の)役人が尋ねた、「善い先生、何をすれば永遠の命がいた
だけるでしょうか。」"
"421819","イエスは言われた、「なぜわたしを『善い』と言うのか。神お一人のほかに、だ
れも善い者はない。"                 
"421820","(するべきことは神の掟を守ることだけで、)掟はあなたが知っている通り。─
─"姦淫をしてはならない、殺してはならない、盗んではならない、偽りの証言をしては
ならない、父と母とを敬え。"(ただこれだけである。)」"
"421821","その人が言った、「それならみんな若い時から守っております。」"
"421822","イエスは聞いて言われた、「もう一つ欠けている。持っているものをことごとく
売って、(その金を)貧乏な人に分けてやりなさい。そうすれば天に宝を積むことができ
る。それから来て、わたしの弟子になりなさい。」"
"421823","彼はこれを聞き、しょげてしまった。非常な金持であったのである。"
"421824","彼を見ると、イエスは言われた、「物持が神の国に入るのは、なんとむずかしい
ことだろう。"
"421825","金持が神の国に入るよりは、駱駝が縫針のめどを通る方がたやすい。」"
"421826","聞いている人たちが言った、「それでは、だれが救われることが出来るのだろ
う。」"
"421827","イエスは言われた、「人間に出来ないことが、神には出来る。」"
"421828","ペテロが(イエスに)言った、「でも、わたし達はこの通り、自分の持ち物をす
ててあなたの弟子になりました。」"
"421829","彼らに言われた、「アーメン、わたしは言う、神の国のために家や妻や兄弟や親
や子を捨てた者で、"
"421830","この世でその幾倍を、また来るべき世では永遠の命を受けない者は一人もな
い。」"
"421831","イエスは(また)十二人(の弟子だけ)をそばに呼んで、こう話された、「さあ、
いよいよわたし達はエルサレムへ上るのだ。人の子(わたし)について預言者たちが(聖
書に)書いてあることは、ことごとく成就する。"
"421832","──異教人に引き渡されて、なぶられ、いじめられ、唾をかけられ、"
"421833","ついに鞭で打たれて殺されるのである。しかし三日目に復活する。」"
"421834","弟子たちはこのことが全くわからなかった。この言葉(の意味)が彼らに隠さ
れていて、(イエスの)言われたことが呑み込めなかったのである。"
"421835","エリコの(町の)近くに来られた時のこと、ひとりの盲人が道ばたに坐って物
乞いをしていた。"
"421836","群衆が通り過ぎる音を聞くと、あれは何ごとかとたずねた。"
"421837","人々がナザレ人イエスのお通りだとおしえてやると、"
"421838","盲人は、「ダビデの子のイエス様、どうぞお慈悲を」と言って叫んだ。"
"421839","先頭に立っていた人たちが叱りつけて黙らせようとしたが、かえってますます、
「ダビデのお子様、どうぞお慈悲を」と叫びつづけた。"
"421840","イエスは立ち止まって、盲人をつれてくるように命じられた。盲人が近づいて
くると尋ねられた。"
"421841","「何をしてもらいたいのか。」彼がこたえた、「主よ、見えるようになりたい。」
"
"421842","そこでイエスが、「見えるようになれ。あなたの信仰がなおした」と言われると、
"
"421843","たちどころに見えるようになって、神を讃美しながらイエスについて行った。
人々は皆これを見て、神に讃美をささげた。"
"421901","エリコに入って、(そこを)通っておられた。"
"421902","すると、(町に)名をザアカイという人がいた。この人は税金取りの頭で、金持
であった。"
"421903","イエスがどんな人か見ようとしたが、背が低いので、群衆のため見ることが出
来なかった。"
"421904","それで先の方に駈けていって、桑無花果の木に上った。そこを通られるところ
を見ようとしたのである。"
"421905","イエスはその場所に来られると、ザアカイを見上げて言われた、「ザアカイ、急
いで下りておいで。きょうはあなたの家に泊まることになっているから。」"
"421906","ザアカイは急いで下りてきて、喜んでお迎えした。"
"421907","皆がこれを見て、イエスは(税金取りのような)罪人の所に入りこんで宿を取
った、と言ってぶつぶつ呟いた。"
"421908","しかしザアカイは進み出て主に言った、「主よ、わたしは(誓って)財産の半分
を貧乏な人たちに施します。人からゆすり取ったものは四倍にして返します。」"
"421909","イエスが(人々に)言われた、「救いは(きょう、)この家に入った。(人でなし
のように言われる)この人も、やはり(あなた達と同じ)アブラハムの末だから。"
"421910","人の子(わたし)は"滅びうせた者をさがして"救うために来たのである。」"
"421911","人々がこれを聞いているとき、さらに一つの譬を話された。それはイエスが(い
よいよ)エルサレムに近づかれたので、今にも神の国が現われるように人々が考えたから
である。"
"421912","それで言われた、「ある高貴な人が王の位を授かって来るために、遠い国に行っ
た。"
"421913","(出かける時、)彼は十人の僕を呼んで、一ミナ[五万円]ずつ十ミナを渡し、
『かえって来るまで(これで)商売をしておけ』と言った。"
"421914","ところが国民は彼を憎んでいたので、あとから使者をやって、『われわれはこの
人を王に戴きたくない』と言わせた。"
"421915","さて、その人は王の位を授かって帰ってくると、だれがどんな風に商売をした
か知ろうとして、金を渡しておいた僕たちを呼ばせた。"
"421916","第一の者があらわれて言った、『御主人、あなたの一ミナは十ミナをかせぎまし
た。』"
"421917","主人が言った、『感心々々、善い僕よ、ごく小さなことに忠実であったから、十
の町の支配権を持たせる。』"
"421918","第二の者が来て言った、『御主人、あなたの一ミナは五ミナをこしらえました。』
"
"421919","これにも言った、『あなたも五つの町を支配せよ。』"
"421920","またほかの者が来て言った、『御主人、これがあなたの一ミナです。風呂敷に包
んでしまっておきました。"
"421921","あなたは預けないものを取り立て、まかないものを刈り取られる厳しい方だか
ら、恐ろしかったのです。』"
"421922","彼に言う、『悪い僕よ、あなたのその言葉で罰してやろう。このわたしが、預け
ないものを取り立て、まかないものを刈り取る厳しい人間だと知っていたのか。"
"421923","ではなぜわたしの金を銀行に預けなかったか。そうすればかえって来たとき、
利子をつけて受け取ることができたのに。』"
"421924","それからそばに立っていた人たちに言った、『その一ミナをその男から取り上げ
て、十ミナを持っている者に渡しなさい。"
"421925",""
"421926","わたしは言う、だれでも持っている人は(さらに)与えられるが、持たぬ人は、
持っているものまでも取り上げられるであろう。"
"421927","ところで、わたしを王に戴くことを好まなかったあの敵どもをここに引っ張っ
てきて、わたしの見ている前で斬り殺してしまえ。』」"
"421928","このことを話したのち、イエスは進んでエルサレムへと上って行かれた。"
"421929","いわゆるオリブ山の中腹にあるベテパゲとベタニヤとの近くに来られると、こ
う言って弟子を二人使いにやられた、"
"421930","向いの村まで行ってきなさい。村に入ると、かつてだれも乗ったことのない一
匹の子驢馬がつないであるのが見える。それを解いて引いてきてもらいたい。"
"421931","もし『なぜ解くか』と尋ねる者があったら、『主がお入用です』と、こう言えば
よろしい。」"
"421932","使の者たちが行って見ると、はたしてイエスの言葉どおりであった。"
"421933","子驢馬を解いているとき、持ち主たちが「なぜ子驢馬を解くか」と言ったので、
"
"421934","「主がお入用です」とこたえた。"
"421935","二人はそれをイエスの所に引いてきて、自分たちの着物を子驢馬の上に投げか
け、イエスをお乗せした。"
"421936","イエスが進んでゆかれると、人々はその着物を道に敷いた。"
"421937","すでにオリブ山の降り口近くに来られたとき、弟子の群は皆喜んで、彼らが見
た(イエスの)あらゆる奇跡の(すばらしさの)ゆえに、こう言って大声に神を讃美し始
めた。──"
"421938",""主の御名にて来られる"王に、"祝福あれ。"天には平安、いと高き所には栄
光あれ!"
"421939","群衆の中にいた数人のパリサイ人がイエスに言った、「先生、お弟子たちを叱っ
てください。」"
"421940","答えて言われた、「わたしは言う、この人たちが黙ったら、石が叫ぶであろう。」
"
"421941","いよいよ(エルサレムが)近くなって(はじめて)都が見えると、イエスは都
(に臨もうとしている裁き)を思い、声をあげて泣きだされた。"
"421942","そして言われた、「(ああエルサレム、)お前ももし(「平安を見る」という自分
の名のように、)きょうでも平安への道が見えたなら(まだ遅くはないのに!)しかし今
それはお前の目に隠されている。"
"421943","やがて時が来て、敵はお前のまわりに塁を築き、お前を取り巻いて四方から攻
め立て、"
"421944","お前と、そこにいる"お前の子供たちを地べたに叩きつけ、"お前の中に、その
まま重なっている石が一つもないようにするであろう。恩恵の時を知らなかった罰であ
る。」"
"421945","やがて(エルサレムに着いて)イエスは宮に入り、物を売る者を追い出し始め
て、"
"421946","こう言われた、「"わたしの家は祈りの家であらねばならぬ"と(聖書に)書い
てあるのに、あなた達はそれを"強盗の巣"にしてしまった。」"
"421947","イエスは毎日宮で教えておられた。大祭司連、聖書学者たち、それに国の名士
たちも、イエスを殺そうと思ったが、"
"421948","どう仕様もなかった。だれもかれも皆イエスの話に聞きとれていたからである。
"
"422001","ある日、イエスが宮で人々を教え、福音を説いておられた時のこと、大祭司連、
聖書学者が長老たちと共に進み寄って、"
"422002","イエスに言った、「なんの権威であんなことを(宮で)するのか。あの権威を授
けた者はだれか、言ってもらいたい。」"
"422003","答えて言われた、「ではわたしからも一つ尋ねる。それにこたえよ。"
"422004","──ヨハネの洗礼は天(の神)から(授かったの)であったか、それとも人間
からか。」"
"422005","彼はひそかに考えた、「もし『天から』と言えば、『なぜヨハネを信じなかった
か』と言うであろうし、"
"422006","もし『人間から』と言えば、人民どもは(冒涜だと言って)皆でわたし達を石
で打ち殺すにちがいない。彼らはヨハネを預言者だと信じこんでいるのだから。」"
"422007","そこで、どこからか知らない、と答えた。"
"422008","イエスは言われた、「ではなんの権威であんなことをするか、わたしも言わな
い。」"
"422009","そして人々にこの譬を話し出された、「ある人が"葡萄畑をつくり、"小作人た
ちに貸して長い旅行に出かけた。"
"422010","(収穫の)時が来たので、葡萄畑の収穫の分け前を納めさせるために、一人の
使用人を小作人の所に使いにやった。しかし小作人はそれをなぐりつけ、手ぶらでおい返
した。"
"422011","さらにほかの使用人を一人やると、それをもなぐりつけ、かつ侮辱した上、手
ぶらでおい返した。"
"422012","かさねて第三の者をやると、これも怪我をさせて(葡萄畑から)放り出した。"
"422013","そこで葡萄畑の持ち主が考えた、『どうしたものだろう。…よし、最愛の(独り)
息子を使にやろう。これなら多分恐れ入るにちがいない。』"
"422014","すると小作人たちはそれを見て、互に相談して、『これは相続人だ。殺してしま
おう。そしてその財産をおれ達のものにしよう』と言いながら、"
"422015","葡萄畑の外に放り出して殺してしまった(という話)。それで(尋ねるが、)葡
萄畑の持ち主は小作人たちをどうするだろうか。"
"422016","(もちろん)来てこの小作人たちを殺し、葡萄畑をほかの人に貸すにちがいな
い。」人々はこれを聞いて(驚いて)言った、「とんでもない、そんなことが!」"
"422017","イエスは彼らをじっと見て言われた、「では、こう(聖書に)書いてあるのはな
んの意味であるか。──"大工たちが(役に立たぬと)捨てた石、それが隅の土台石にな
った。""
"422018","(救世主なる)その石の上に(つまづき)倒れる人は一人のこらず打ち砕かれ、
(最後の裁きの日に)その石が倒れかかる人は、粉微塵になるであろう。」"
"422019","この時聖書学者と大祭司連は、イエスが自分たちに当てつけてこの譬を言われ
たことを知ったので、(怒って)イエスに手をかけようと思ったが、人民(が騒ぎ出すの)
を恐れた。"
"422020","そこで彼らはイエスをつけねらい、信心深そうな風をした回し者をやった。イ
エスの言葉質をとって、総督の役所や官庁に引き渡すためであった。"
"422021","回し者がイエスに尋ねた、「先生、あなたは正直に物を言い、また教えられ、す
こしもわけ隔てをせず、本当のことを言って神の道を教えられることをよく承知しており
ます。"
"422022","(それでお尋ねしますが、わたし達は異教人である)皇帝に、貢を納めてよろ
しいでしょうか、よろしくないでしょうか。」"
"422023","彼らの悪賢い考えを見破って言われた、"
"422024","「デナリ銀貨を見せなさい。そこにはだれの肖像と銘があるか。」「皇帝のがあ
ります」と彼らが言った。"
"422025","イエスは彼らに言われた、「それなら皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返
せ。」"
"422026","彼らは民衆の前でイエスの言葉質をとることができず、そのうけこたえぶりに
驚きながら黙ってしまった。"
"422027","復活の存在を否定するサドカイ人が数人近寄って、イエスにこう言って質問し
た、"
"422028","「先生、モーセは(その律法に、)"もし死んだ兄に、"妻があって"子がない場
合には、弟はその女をめとり、兄の家をつぐべき子をもうけよ"とわたし達のために書い
ています。"
"422029","ところで(ここに)七人の兄弟があって、長男が妻をめとったが、子がなくて
死に、"
"422030","(この律法に従って、)次男、"
"422031","三男と、(つぎつぎに)その女をめとり、ついに七人とも同様に子を残さず死ん
で、"
"422032","しまいにはその女も死んでしまいました。"
"422033","すると(もし復活があるなら、)復活の折には、この女はその(七人の)うちの
だれの妻になるのでしょうか。七人とも女を妻にしましたから。」"
"422034","イエスは言われた、「この世の人はめとり嫁ぐけれども、"
"422035","あの世にはいる資格を与えられて、死人の中から復活する者は、めとることも
なく嫁ぐこともない。"
"422036","復活によって生まれる彼らは、天使と同じであり、神の子であるので、もはや
死ぬことが出来ない、(従って子を産む必要がない)からである。"
"422037","死人が復活することは、(聖書にはっきり書いてある。)モーセも茨の薮の(燃
える話の)ところで、主を"アブラハムの神、またイサクの神、またヤコブの神(である)
と"と言ってこれを示している。"
"422038","ところで神は死人の神ではなく、生きている者の神である。神に対しては、す
べての者が生きているのだから。(してみるとアブラハム、イサクなども皆復活して、今
生きているわけではないか。)」"
"422039","すると数人の聖書学者までが、「先生、りっぱなお答えです」と言った。"
"422040","彼らはもう何一つ、問おうとしなかった。"
"422041","イエスは人々に言われた、「人はどういう訳で、救世主はダビデの子である、と
言うのであろうか。"
"422042","ダビデ自身が詩篇の中でこう言っているではないか。──"(神なる)主はわが
主(救世主)に仰せられた、『わたしの右に坐りなさい、"
"422043","わたしがあなたの敵を(征服して)あなたの足台にしてやるまで』と。""
"422044","だから、ダビデが(このように)救世主を主と呼んでいるのに、どういう訳で
(その救世主が)ダビデの子であろうか。」"
"422045","民衆が皆聞いているまえで、弟子たちに言われた。"
"422046","「聖書学者に用心せよ。あの人たちは(人の目につくように)長い衣を着て歩
くことが好きで、市場で挨拶されることや、礼拝堂の上席、宴会の上座を喜び、"
"422047","また寡婦の家を食いつぶし、長く、見かけばかりの祈りをする。あの人たちは
人一倍きびしい裁きを受けるであろう。」"
"422101","それから目をあげて、金持たちが賽銭箱に賽銭を入れるのを見ておられた。
""422102","またある貧しそうな寡婦がレプタ銅貨[五円]二つをそこに入れるのを見て、
"
"422103","言われた、「本当にわたしは言う、あの貧乏な寡婦はだれよりも多く入れた。"
"422104","この人たちは皆あり余る中から賽銭を入れたのに、あの婦人は乏しい中から、
持っていた生活費を皆入れたのだから。」"
"422105","ある人たちが(イエスに)宮がりっぱな石と献納品とで飾られていることを話
すと、言われた、"
"422106","「あなた達が(今)見ているこれらの物は、このまま重なっている石が一つも
なくなるほど、くずれてしまう日が来るであろう。」"
"422107","彼らがイエスに尋ねた、「先生、では、そのことはいつ起りましょうか。また、
(世の終りが来て)このことがおころうとする時には、どんな前兆がありましょうか。」"
"422108","そこでこう話された。──「迷わされないように気をつけよ。いまに多くの人
があらわれて、『(救世主は)わたしだ』とか、『(最後の)時は近づいた』とか言って、わ
たしの名を騙るにちがいないから。そんな人たちのあとを追うな。"
"422109","戦争や暴動と聞いた時に、びっくりするな。それらのことはまず"おこらねば
ならないことである"が、しかし(まだ)すぐ最後ではないのだから。」"
"422110","それから言われた、「(世の終りが来る前に、)"民族は民族に、国は国に向かっ
て(敵となって)立ち上がり、""
"422111","また大地震や、ここかしこに疫病や飢饉があり、いろいろな恐ろしいこと、ま
た天に驚くべき前兆があらわれるであろう。"
"422112","しかしすべてこれらのことがある前に、人々はあなた達に手をかけて迫害する。
すなわち礼拝堂や牢屋に引き渡し、またわたしゆえに、王や総督の前に引き出すであろう。
"
"422113","これは結局あなた達が(福音を)証しする結果となるのである。"
"422114","だから(前もって)弁明の準備をしておかないことに、心を決めなさい。"
"422115","いかなる反対者も、反抗し弁駁することの出来ない言葉の知恵を、わたしが授
けるから。"
"422116","あなた達はまた親、兄弟、親族、友人からまで(裁判所に)引き渡される。殺
される者もあろう。"
"422117","またわたしの弟子であるために皆から憎まれる。"
"422118","しかしあなた達の髪の毛一本も決して無くならない。"
"422119","あなた達は忍耐によって、自分の(まことの)命をかち取ることができる。"
"422120","しかしエルサレムが(ローマの)軍勢に囲まれるのを見たら、その滅亡が近づ
いたと知れ。"
"422121","その時ユダヤの平地におる者は(急いで)山に逃げよ。都の中におる者は立ち
退け。田舎におる者は都に入るな。"
"422122","これは(聖書に)書いてあることが皆成就する"(神の)刑罰の日"だからであ
る。"
"422123","それらの日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、ああかわいそうだ!この
(ユダヤの)地には大きな艱難が、この民には(神の)怒りが臨むのだから。"
"422124","彼らは劔の刃にたおれ、あるいは捕虜となってあらゆる国々に散らされ、また
"エルサレムは"(いわゆる)異教人時代が終るまで、"異教人に踏みにじられる"であろ
う。"
"422125","すると日と月と星とに(世の終りの不思議な)前兆があらわれ、地上では"海
がどよめき荒れ狂うため、国々の民は"周章てふためき怖じまどい、"
"422126","全世界に臨もうとしていることを思って、恐ろしさのあまり悶え死にする者が
あろう。"もろもろの天体が"震われるからである。"
"422127","するとその時、人々は"人の子(わたし)が"大いなる権力と栄光とをもって、
"雲に乗って来るのを"見るであろう。"
"422128","それでこれらのことがおこり始めたら、体を伸ばし、頭をあげなさい。あなた
達のあがない(の時)が近づいたのだから。」"
"422129","(こう言ったあと、)また一つの譬をひいて彼らに話された。──「無花果の木
をはじめ、すべての木を見なさい。"
"422130","すでに芽が出ると、それを見て、ひとりでにはや夏が近いと知るのである。
""422131","そのようにあなた達も、これらのことがおこるのを見たら、神の国が近くに来
ていることを知れ。"
"422132","アーメン、わたしは言う、(これらのことが)一つのこらずおこってしまうまで
は、この時代は決して消え失せない。"
"422133","天地は消え失せる、しかし(今言った)わたしの言葉は決して消え失せない。"
"422134","注意せよ、大酒を呑み、二日酔いをし、またこの世のことを心配して、頭が鈍
くなっていると、"罠が"落ちるように、だしぬけにかの日があなた達に臨まないとはか
ぎらない。"
"422135","その日は"地の"全面"に住んでいる者に"一人のこらず襲いかかるのだから。
"
"422136","目を覚まして常に祈っておれ、すべてこれら将来の出来事からのがれて、人の
子(わたし)の前に立ち得るようにと。」"
"422137","イエスは(毎日)昼のあいだは宮で教え、夜は(都を)出ていって、いわゆる
オリブ山で夜を過ごされた。"
"422138","人々は皆宮で話を聞こうとして、早起きして彼の所にあつまった。"
"422201","種無しパンの祭、すなわち、いわゆる過越の祭が近づいた。"
"422202","大祭司連と聖書学者たちは、イエスを(そっと)無き者にする方法を考えてい
た。人民(が暴動を起すの)を恐れたのである。"
"422203","すると(その時)悪魔が、十二人の(弟子の)数に入っていたイスカリオテと
呼ばれるユダに入った。"
"422204","彼は出かけていって、大祭司連、宮の守衛長たちとイエスを売る方法について
話し合った。"
"422205","彼は喜んで、金をやることに話をきめた。"
"422206","ユダは承諾し、群衆の目をぬすんで彼らにイエスを引き渡すよい機会をねらっ
ていた。"
"422207","過越の小羊を屠るべき種無しパンの祭の日が来た。"
"422208","イエスはこう言ってペテロとヨハネとを使いにやられた、「わたし達の過越の食
事の支度をして来なさい。」"
"422209","二人が言った、「どこで支度をしましょうか。」"
"422210","彼らに言われた、「都に入ると、水瓶をかついだ男に出合うから、そのあとにつ
いて行って、その人が入ってゆく家にはいって、"
"422211","その家の主人に、『わたしが弟子たちと一しょに過越の食事をする部屋はどこか、
と先生があなたに言われる』と言いなさい。"
"422212","するとその人は敷物のしいてある、大きな二階座敷に案内してくれるから、そ
こで(食事の)支度をしなさい。」"
"422213","二人は行って見ると、はたしてイエスの言葉どおりだったので、(そこで)過越
の食事の支度をした。"
"422214","(日が暮れて食事の)時間になると、イエスは席につかれた。使徒たちも一し
ょであった。"
"422215","彼らに言われた、「わたしは苦しみをうける前に、あなた達と一しょにこの過越
の食事がしたくて、たまらなかった。"
"422216","わたしは言う、神の国でほんとうの過越の食事──(罪のあがないの記念の食
事)──をする時まで、わたしはもう決して、この(エジプトからあがなわれた記念の)
食事をしないのだから。」"
"422217","そして(いつものように)杯を受け取り、(神に)感謝したのち、(弟子たちに)
言われた、「これを取って、みなで回して飲みなさい。"
"422218","わたしは言う、今からのち神の国が来るまで、わたしは決して葡萄の木から出
来たものを飲まないのだから。」"
"422219","またパンを(手に)取り、感謝して裂き、彼らに渡して言われた、「これはわた
しの体である。[以下及び20無し
"422220",""
"422221","しかし驚いてはいけない、わたしを(敵に)売る者が、わたしと一しょに手を
食事の上において食事をしている!"
"422222","人の子(わたしはかねて神に)定められているとおりに死んでゆくのだから。
しかし(人の子を)売るその人は、ああかわいそうだ!」"
"422223","(これを聞くと)弟子たちは、自分たちのうちでいったいだれがそんな(だい
それた)ことをしようとしているのかと、みなで言い合いを始めた。"
"422224","また弟子たちの間に、自分たちのうちでだれが一番えらいと思われているかに
ついての争いもあった。"
"422225","するとイエスが言われた、「世間では王が人民を支配し、また主権者は自分を恩
人と呼ばせる。"
"422226","しかしあなた達はそれではいけない。あなた達の間では、一番えらい者が一番
若輩のように、支配する者が給仕をする者のようになれ。"
"422227","食卓につく者と給仕をする者と、どちらがえらいか。食卓につく者ではないの
か。でもわたしはあなた達の間で、あたかも給仕をする者のようにしている。"
"422228","しかしあなた達はわたしのかずかずの試みの時に、一しょに持ちこたえてくれ
た人たちだ。"
"422229","だから父上がわたしに御国を委ねてくださったように、わたしもあなた達にわ
たしの国を委ね、"
"422230","(そこで)わたしの食卓で飲み食いさせ、また王座につかせて、イスラエルの
(民の)十二族を支配させるであろう。」"
"422231","(そしてペテロに向かって言われた、)「シモン、シモン、見なさい、悪魔はあ
なた達を麦のように篩にかけることを(神に)願って聞き届けられた。"
"422232","しかしわたしはあなたのために、信仰がなくならないように祈っておいた。(だ
から一度信仰を失っても、またもどってくる。)もどってきたら、あなたが兄弟たちを強
めてやってほしい。」"
"422233","するとペテロは言った、「主よ、ご一しょに、牢に入っても、死んでもよい覚悟
ができております。」"
"422234","イエスは言われた、「ペテロ、わたしは言う、きょう(今夜、)三度、あなたが
わたしを知らないと言うまで、鶏は鳴かない。」"
"422235","それから彼らに言われた、「(前に)財布も旅行袋も靴も持たせずに、あなた達
を(伝道に)やった時、何か足りない物があったか。」彼らが答えた、「いえ、何も。」"
"422236","彼らに言われた、「しかし今は(もうそれではいけない。)財布を持っている者
は持ってゆけ。旅行袋も同様。剣を持たない者は、(もし金がなかったら、)上着を売って
でも買いなさい。"
"422237","わたしは言う、"彼は咎人の一人に数えられた"と(聖書に)書いてあること、
をわたしは成就せねばならないのだから。そしてわたしの務は(いよいよこれで)果てる
のだ。(あなた達も戦いの準備をするがよい。)」"
"422238","彼らが言った、「主よ、剣ならばここに二振あります。」イエスが(笑いながら)
言われた、「それで沢山々々。」"
"422239","それから(都を)出て、例のとおり、オリブ山へ行かれた。弟子たち(十一人)
もついて行った。(もう真夜中すぎであった。)"
"422240","いつもの場所につくと、彼らに言われた、「誘惑に陥らないように祈っていなさ
い。」"
"422241","そして自分は石を投げれば届くほどの所に離れてゆき、ひざまずいて祈って"
"422242","言われた、「お父様、お心ならば、どうかこの杯をわたしに差さないでください。
しかし、わたしの願いでなく、お心が成りますように!」"
"422243","そのとき天から一人の天使がイエスに現われて、力づけた。"
"422244","イエスはもだえながら、死に物狂いに祈られた。汗が血のしたたるように(ポ
タポタ)地上に落ちた。"
"422245","やがて祈りから立ち上がって弟子たちの所に来て、彼らが悲しさのあまり寝入
っているのを見ると、"
"422246","言われた、「なぜ眠るのか。誘惑に陥らないように、立ち上がって祈っていなさ
い。」"
"422247","イエスの言葉がまだ終らぬうちに、そこに一群の人があらわれた。十二人の一
人である、前に言ったユダが先頭に立ち、イエスに接吻しようとして近寄ってきた。"
"422248","イエスが言われた、「ユダ、接吻で人の子を売るのか。」"
"422249","弟子たちはことの迫ったのを見て言った、「主よ、剣で切りまくりましょうか。」
"
"422250","そのうちのひとりの人が大祭司の下男に切りかかり、右の耳をそぎ落してしま
った。"
"422251","イエスは、「もうそれでよし」と言って、耳にさわってお直しになった。"
"422252","それからイエスは、押しかけてきていた大祭司連、宮の守衛長、長老たちに言
われた、「強盗にでも向かうように、剣や棍棒を持ってやって来たのか。"
"422253","わたしが毎日あなた達と一しょに宮にいたときには、手を下さずにおいて。(時
が来なかったのだ。)しかし今は、(この暗い夜こそ)あなた達の天下、闇の縄張り(、悪
魔の勢力範囲)である。」"
"422254","彼らはイエスをつかまえると、引いていって、大祭司(カヤパ)の屋敷につれ
込んだ。ペテロは見えがくれについて行った。"
"422255","そして彼らが中庭の真中であかあかと火を焚いて一しょにすわったので、ペテ
ロもその中に坐った。"
"422256","ひとりの女中は彼が火の所に坐っているのを見ると、しげしげと眺めならら、
「この人もあの人と一しょだった」と言った。"
"422257","しかしペテロは、「女中さん、あんな人は知らない」と言って打ち消した。"
"422258","ほどなく、ほかの男がペテロを見て、「あなたもあの仲間だ」と言った。ペテロ
は言った、「君、人ちがいだ。」"
"422259","一時間ばかりたつと、(また)ほかの男が、「実際この人もあの人と一しょだっ
た。この人もガリラヤ人だから」と主張した。"
"422260","しかしペテロは言った、「君、あなたの言っていることはわからない。」すると
たちまち、まだその言葉の終らぬうちに、鶏が鳴いた。"
"422261","主が振り向いて、じっとペテロを見つめられた。ペテロは、「きょう(今夜)、
鶏が鳴く前に、わたしを三度、知らないと言う」と言われた主の言葉を思い出し、"
"422262","外に出ていって、さめざめと泣いた。"
"422263","イエスの番をしていた者たちはイエスをなぶったり、なぐったりした。"
"422264","また目隠しをして、「だれがぶったか、当ててみろ」と言って尋ねた。"
"422265","そのほかなおさまざまのことを言って、イエスを冒涜した。"
"422266","朝になると、国の元老院、すなわち大祭司連や、聖書学者たちが集まって、イ
エスを彼らの法院の議場に引いていって"
"422267","言った、「お前が救世主なら、そうだとわれわれに言ってもらいたい。」彼らに
答えられた、「言っても、とても信じまいし、"
"422268","尋ねても、なかなか返事ができまい。"
"422269","しかし今からのち、"人の子(わたし)は大能の神の右に坐って"いる。」"
"422270","皆が言った、「ではお前が、神の子か。」彼らに言われた、「そうだと言われるな
ら、御意見にまかせる。」"
"422271","すると彼らが言った、「これ以上、なんで証言の必要があろう。われわれが(直
接)本人の口から聞いたのだから。」"
"422301","そこで法院全体が立ち上がって、イエスを(総督)ピラトの前に引いていって、
"
"422302","「われわれはこの男が国民を惑わし、皇帝に貢を納めることを禁じ、かつ、自
分が救世主、すなわち王だと言っていることを確かめた」と言って訴え始めた。"
"422303","ピラトがイエスに問うた、「お前が、ユダヤ人の王か。」答えて言われた、「(そ
う言われるなら)御意見にまかせる。」"
"422304","ピラトが大祭司連と群衆に向かって、「この人にはなんの罪も認められない」と
言うと、"
"422305","彼らはますます強く言い張った、「この男はユダヤ人(の国)全体に(自分の)
教えを説いて民衆を煽動し、ガリラヤから始めてここまで来ている。」"
"422306","これを聞くとピラトは、この人は(たしかに)ガリラヤ人かと尋ね、"
"422307","ヘロデ(王)の領内(ガリラヤ)の者だと知ると、イエスをヘロデの所に送り
とどけた。ヘロデもそのころ、(祭のためピラトと)同様にエルサレムにきていたのであ
る。"
"422308","ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。というのは、イエスの噂を聞いて、だ
いぶ前から会ってみたいと思っており、また何か奇跡をするのを見たいと望んでいたから
である。"
"422309","それで言葉をつくして問いかけたが、イエスは何もお答えにならなかった。"
"422310","大祭司連と聖書学者たちは(わきに)立って、必死になってイエスを訴えた。"
"422311","(埒があかないのに業を煮やした)ヘロデは兵隊と一しょになって、イエスに
侮辱を加えたり、なぶったりしたあげく、派手な着物をきせてピラトに送りかえした。"
"422312","ヘロデとピラトは以前には犬と猿の仲であったが、この日(この事件によって)
互に仲良しになった。"
"422313","ピラトは大祭司連をはじめ、(最高法院の)役人たち、および民衆を呼びあつめ
て、"
"422314","言った、「お前たちはこの人を民衆をあやまらせる者だと言って引いてきたので、
このわたしがお前たちの目の前で取り調べたが、訴えの廉では、この人に何の罪も認めら
れなかった。"
"422315","ヘロデでもそうらしい。送りかえしたのだから。たしかにこの人は、何一つ死
罪に当ることをしていない。"
"422316","だから鞭うった上、赦すことにする。」"
"422317"[無シ]
"422318","すると人々が一斉に声をあげて叫んだ、「その男を片付けろ。バラバの方を赦し
てくれ。」"
"422319","バラバは都におこった暴動(に関係したの)と人殺しとの廉で、牢に入れられ
ていた者である。"
"422320","ピラトはイエスを赦したいので、ふたたび人々に呼びかけたが、"
"422321","人々は(ただ)、「十字架につけろ、それを十字架につけろ」とどなりつづけた。
"
"422322","三度目にピラトは彼らに言った、「いったいどんな悪事をこの人がはたらいたと
いうのか。わたしはこの人に何一つ死罪にあたる罪を認められなかった。だから鞭うった
上、赦すことにする。」"
"422323","しかし人々は十字架につけることを大声でせがみつづけ、とうとうその声が勝
った。"
"422324","ピラトは彼らの願いをかなえることに決定して、"
"422325","暴動と人殺しとの廉で牢に入れられていた者を願いどおりに赦し、イエスの方
は彼らの思うようにさせた。"
"422326","(兵卒らが)イエスを(刑場へ)引いてゆく時、シモンというクレネ人が野良
から来(て通りかかっ)たので、つかまえて(イエスの)十字架を背負わせ、イエスの後
から担いでゆかせた。(イエスにはもう負う力がなかったのである。)"
"422327","民衆と、イエスのために悲しみ嘆く女たちとの大勢の群が、あとにつづいた。"
"422328","イエスは女たちの方に振り向いて言われた、「エルサレムの娘さんたち、わたし
のためには泣いてくれなくともよろしい。それよりは自分のため、自分の子供のために泣
きなさい。"
"422329","いまに人々が、『石女と、(子を)産んだことのない胎と、飲ませたことのない
乳房とが羨ましい』と言う(恐ろしい)日が来るのだから。"
"422330","その時人々は"山にむかっては、『われわれの上に倒れかかって(殺して)くれ』、
丘にむかっては、『われわれを埋めてくれ』と言い"続けるであろう。"
"422331","(罪のない)生木(のわたし)でさえ、こんな目にあわされるのだ。まして(罪
にくされた)枯木は、どうなることであろうか!」"
"422332","ほかに二人の罪人も、処刑されるためイエスと共に引かれていった。"
"422333","髑髏という所に着くと、(兵卒らは)そこでイエスを十字架につけた。また罪人
も、一人を右に、一人を左に(十字架につけた)。"
"422334","するとイエスは言われた、「お父様、あの人たちを赦してやってください、何を
しているか知らずにいるのです。」"彼らは籤を引いて、"イエスの"着物を自分たちで分
けた。""
"422335","民衆は立って"見物していた。"最高法院の)役人たちは"鼻で笑って"言った、
「人を救ったのだ、(今度は)自分を救えばいいのに、神の救世主、(神に)選ばれた者な
ら!」"
"422336","兵卒らも近寄って、"酸っぱい葡萄酒を"(その口許に)差し出しながら、イエ
スをなぶって"
"422337","こう言った、「お前がユダヤ人の王様なら、自分を救ってみろ。」"
"422338","イエスの(頭の)上には こ れ が ユ ダ ヤ 人 の 王と書いた札ま
でも(悪ふざけに)かけてあった。"
"422339","磔にされている罪人の一人がイエスを冒涜した、「お前は救世主じゃないか。自
分とおれ達を救ってみろ。」"
"422340","するともう一人の者が彼をたしなめて言った、「貴様は(このお方と)同じ(恐
ろしい)罰を受けていながら、それでも(まだ)神様がこわくないのか。"
"422341","おれ達は自分でしたことの報いを受けるのだから当り前だが、このお方は何一
つ、道にはずれたことをなさらなかったのだ。」"
"422342","それから(イエスに)言った、「イエス様、こんどあなたのお国と共にお出でに
なる時には、どうかわたしのことを思い出してください。"
"422343","「イエスが言われた、「アーメン、わたしは言う、(その時を待たずとも、)あな
たはきょう、わたしと一しょに極楽にはいることができる。」"
"422344","すでに昼の十二時ごろであったが、地の上が全部暗闇になってきて、三時まで
つづいた。"
"422345","日蝕だったのである。すると宮の(聖所の)幕が真中から(二つに)裂けた。"
"422346","その時イエスは大声をあげて言われた、「お父様、"わたしの霊をあなたにおあ
ずけします。"」こう言われるとともに、息が絶えた。"
"422347","百卒長はこの出来事を見て、「この方はほんとうに正しい人であった」と言って
神を讃美した。"
"422348","見物に来た野次馬も皆、これらの出来事を見て(心を刺され、)胸を打ちながら
帰っていった。"
"422349","またすべてのイエスの"知人"とガリラヤからついて来た女たちも、"遠くの方
に立って"これを見ていた。"
"422350","さてここにヨセフという人があった。。最高法院の議員で、りっぱな、信心深い
人であった。"
"422351","──この人は(イエスの処分について、)同僚たちの(今度の)決議と行動とに
賛成しなかった。──ユダヤの町アリマタヤ生まれで、神の国(の来るの)を待ち望んで
いた。"
"422352","この人がピラトの所に行ってイエスの体(の下げ渡し)を乞い、"
"422353","これを(十字架から)下ろして亜麻布で包み、まだだれも葬られたことのない、
岩に穿った墓に納めた。"
"422354","この日は支度日[金曜日]であったが、(もう夕方で、)安息日[土曜日]が始
まろうとしていた。"
"422355","イエスと一しょにガリラヤから来た女たちは(ヨセフの)あとについて行って、
墓と、イエスの体が(そこに)納められる様子とを見とどけ、"
"422356","帰って、香料と香油を用意した。女たちは掟に従って安息日を休み、"
"422401","(翌日、すなわち)週の始めの日[日曜日]、夜の引明けに、用意しておいた香
料(をまぜた香油)を持って墓場に行った。"
"422402","墓(の入口)から石がころがしてあるのを見て"
"422403","中に入ったが、主イエスの体は見えなかった。"
"422404","そのため途方にくれていると、見よ、かがやく着物をきた二人の人が(現われ
て)彼らに近づいた。"
"422405","ぞっとして面を垂れると、彼らに言った、「なぜ死人の中に生きた者をさがすの
か。"
"422406","ここにはおられない。もう復活されたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あ
なた達に言われたことを思い出してみよ。"
"422407","『人の子(わたし)は罪人どもの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目
に復活せねばならない』と言われたではないか。」"
"422408","女たちはイエスの言葉を思い出して、"
"422409","墓から帰り、十一人(の使徒)とそのほかみんなの人に、一つのこらずこのこ
とを知らせた。"
"422410","これを使徒たちに話したのは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリ
ヤと、および、この女たちと一しょにいたほかの女たちとであった。"
"422411","しかし使徒たちはこの話が冗談のように見えたので、女たちを信じなかった。"
"422412"[無シ]
"422413","するとちょうど同じ日に、二人の弟子がエルサレムから六十スタデオ[十一キ
ロ半]離れたエマオという村へ歩いてゆきながら、"
"422414","これらの出来事をあれやこれやと話し合っていた。"
"422415","二人が(こうして)話したり議論したりしていると、(いつの間にか)御本人の
イエスが近づいてきて、一しょに歩いておられたが、"
"422416","二人は目をくらまされていたので、それと気がつかなかった。"
"422417","二人に言われた、「歩きながら何をそんなに論じ合っているのです。」暗い顔を
して二人は立ち止まり、"
"422418","一人のクレオパという方が答えた、「(見れば御巡礼のようだが、)エルサレムに
滞在していながら、あなただけは、この二三日の間にそこで起ったことを何も知らないの
ですか。」"
"422419","彼らに言われた、「なんのことです。」彼らが言った、「ナザレ人イエスのことで
す。──この方はだれが見ても、神の目にさえも、業に言葉に力のある預言者であったの
に、"
"422420","大祭司連をはじめ(最高法院の)役人たちが(ローマ人に)引き渡して死刑を
宣告し、十字架につけてしまったのです。"
"422421","ほんとうにわたし達は、この方こそイスラエル(の民)をあがなってくださる
人だと望みをかけていたのに!そればかりが、かてて加えて、そのことがあってから、き
ょうはもう三日目になったのです。(もはや生き返られる望みもありません。)"
"422422","ところがまた、仲間の女たちがわたし達をびっくりさせました。──この女た
ちは朝早く墓に行ったが、"
"422423","お体が見つからずにかえって来て、天使たちがあらわれ、あの方は生きておら
れる、と告げたと言うのです。"
"422424","そこで仲間の男が二三人墓に行って見ると、はたして女たちの言うとおり(墓
は空っぽ)だったが、(生きておられるという)その方は見えなかったのです。」"
"422425","彼らに言われた、「ああ、預言者たちの言ったことを何一つ信じない、悟りの悪
い、心の鈍い人たちよ!"
"422426","救世主は栄光に入るために、そのような苦しみを受けねばならなかったのでは
ないのですか。」"
"422427","そして(預言者)モーセから始めて、すべての預言者が御自分につき聖書全体
において言っていることを説明された。"
"422428","とかくするうちに目指す(エマオの)村に近づくと、なお先へ行くような様子
をされたので、"
"422429","二人はこう言って無理に引き留めた、「わたし達のところにお泊まりなさい。間
もなく夕方で、日もはや傾いたから。」そこで彼らのところに泊まるために、(家に)入ら
れた。"
"422430","一しょに食卓について、(いつものように)パンを(手に)取り、(神を)讃美
したのち、裂いて渡されると、"
"422431","(その時)二人の目が開けて、その方とはっきりわかった。すると(また)そ
の姿が見えなくなった。"
"422432","二人は語り合うのであった、「(そう言えば、)道々わたし達に話をされたり、聖
書を説き明かされたりした時に、胸の中が熱くなったではないか」と。"
"422433","時を移さず二人は立ち上がってエルサレムに引き返して見ると、十一人とその
仲間とが集まっていて、"
"422434","「ほんとうに主は復活して、シモン(・ペテロ)に御自分を現わされた」と話
してくれた。"
"422435","それで二人も、(エマオへの)道であったことや、また、どうしてパンを裂かれ
たことで(主と)わかったかを物語った。"
"422436","二人がこう話しているところに、(突然)御自身でみなの真中に出ておいでにな
った。"
"422437","ぞっとして震えあがり、幽霊でも見ているように思っていると、"
"422438","彼らに言われた、「なにをうろたえるのか。なぜ心に疑いを起すのか。"
"422439","わたしの手と足とを見てごらん。だれでもない、わたしだよ!さわってごらん、
幽霊には肉も骨もないが、わたしには、それがあるのがわかるから。」"
"422440","[無シ]
"422441","喜びのあまり、彼らがまだ信じられずに怪しんでいると、「ここに何か食べるも
のがあるか」と言われた。"
"422442","焼いた魚を一切差し上げると、"
"422443","受け取ってみなの前で食べられた。"
"422444","それから彼らに言われた、「(あなた達が見聞きした)これらのことは、わたし
がまだあなた達と一しょにいたとき、わたしについてモーセの律法と預言書と詩篇と[聖
書]に書いてあることは一つのこらずきっと成就する、と話したその言葉(が実現したの)
である。」"
"422445","それから聖書をわからせるために彼らの心を開いて"
"422446","言われた、「救世主は苦しみをうけて、三日目に死人の中から復活する。"
"422447","また罪を赦されるための悔改め(の福音)が、その名においてすべての国の人
に説かれる、エルサレムから始まって、と(聖書に)こう書いてある。"
"422448","あなた達はこの(苦しみと復活との)証人である。"
"422449","待っておいで、わたしが父上のお約束のもの[聖霊]をあなた達におくるから。
あなた達は(この)天よりの力を身につけるまで、都に止まっていなさい。」"
"422450","それから、彼らを(オリブ山の頂上の)ベタニヤ道のところまでつれてゆき、
手を挙げて祝福された。"
"422451","そして祝福しながら、(天へと)はなれてゆかれた。"
"422452","彼らは大喜びでエルサレムに帰り、"
"422453","いつも宮にいて、神をほめたたえていた。"