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 教育ニ関スル勅語

1890(明治23)年10月に明治天皇が発布

 

朕(チン)惟(オモ)フニ我(ワ)カ皇祖(クワウウソ)皇宗(クワウソウ)國(クニ)ヲ肇(ハジ)ムルコト宏遠(クワウエン)ニ徳(トク)ヲ樹(タ)ツルコト深厚(シンコウ)ナリ我(ワ)カ臣民(シンミン)克(ヨ)ク忠(チュウ)ニ克(ヨ)ク孝(コウ)ニ億兆(オクテウ)心(ココロ)ヲ一(イツ)ニシテ世世(ヨヨ)厥(ソ)ノ美(ビ)ヲ濟(ナ)セルハ此(コ)レ我(ワ)カ國體(コクタイ)ノ精華(セイクワ)ニシテ教育(キョウイク)ノ淵源(エンゲン)亦(マタ)實(ジツ)ニ此(ココ)ニ存(ソン)ス爾(ナンジ)臣民(シンミン)父母(フボ)ニ孝(コウ)ニ兄弟(ケイテイ)ニ友(イウ)ニ夫婦(フウフ)相和(アヒワ)シ朋友(ホウイウ)相信(アイシン)シ恭儉(キョウケン)己(オノ)レヲ持(ジ)シ博愛(ハクアイ)衆(シュウ)ニ及(オヨ)ホシ學(ガク)ヲ修(オサ)メ業(ギョウ)ヲ習(ナラ)ヒ以(モッ)テ智能(チノウ)ヲ啓發(ケイハツ)シ徳器(トクキ)ヲ成就(ジョウジュ)シ進(ススン)テ公益(コウエキ)ヲ廣(ヒロ)メ世務(セイム)ヲ開(ヒラ)キ常(ツネ)ニ國憲(コクケン)ヲ重(オモン)シ國法(コクハウ)ニ遵(シタガイ)ヒ一旦(イッタン)緩急(クワンキフ)アレハ義勇(ギユウ)公(コウ)ニ奉(ホウ)シ以(モッ)テ天壤(テンジヤウ)無窮(ムキウ)ノ皇運(クワウウン)ヲ扶翼(フヨク)スヘシ是(カク)ノ如キハ獨(ヒト)リ朕(チン)カ忠良(チュウリャウ)ノ臣民(シンミン)タルノミナラス又(マタ)以(モッ)テ爾(ナンジ)祖先(ソセン)ノ遺風(イフウ)ヲ顯彰(ケンシャウ)スルニ足(タ)ラン
 斯(コノ)ノ道(ミチ)ハ實(ジツ)ニ我(ワ)カ皇祖(クワウウソ)皇宗(クワウソウ)ノ遺訓(イクン)ニシテ子孫(シソン)臣民(シンミン)ノ倶(トモ)ニ遵守(ジュンシュ)スヘキ所(トコロ)之(コレ)ヲ古今(ココン)ニ通(ツウ)シテ謬(アヤマ)ラス之(コレ)ヲ中外(チュウグワイ)ニ施(ホドコ)シテ悖(モト)ラス朕(チン)爾(ナンジ)臣民(シンミン)ト倶(トモ)ニ拳々(ケンケン)服膺(フクヨウ)シテ咸(ミナ)其(ソノ)徳(トク)ヲ一(イツ)ニセンコトヲ庶(コト)幾(ネガ)フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽 (ギョメイギョッジ)

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教育勅語の用語解説と若干の説明

皇祖皇宗(こうそこうそう)−−皇祖皇宗も天皇(皇室)の祖先のことをいうが、皇祖は、始祖である天照大神(あまてらすおおみかみ)ないし神武(じんむ)天皇のこと、あるいは天照大神ないし神武天皇までの歴代(代代)のこと。皇宗は、第2代綏靖(すいぜん)天皇以下の代代の天皇をいう。

   

 肇(はじ)ムル−−創り開く 。
 宏遠(こうえん)−−広くて遠大なこと
 徳(トク)−−身についた品性。社会的に価値ある性質。善や正義に従う人格的能力。すぐれた求道者。
 國ヲ肇(ハジ)ムルコト宏遠(クワウエン)−−初代天皇の神武天皇自身天から人間界の降りてきた「ニニギノミコト」(天照大神の孫)という神様の曾孫(そうそん⇒孫の子=ひまご)で、天上の神々の中で最高の位にある天照大神の神勅を受けて日本の国を作ったという神話を踏まえてのこと。ちなみに日本の国を生んだ神とされる「イザナギノミコト(伊邪那岐命)」が川で左眼を洗ったら現われたのが天照大神である。また、日本は、「イザナギノミコト」と「イザナミノミコト」(伊邪那美命)が天の浮き橋に立ち、天の瓊矛を下界にさし降ろしてかき回し引き上げたところ、矛先からしたたりおちた滴(しずく)が固まって島となったとされる。
 深厚(しんこう)−−情け、気持ちなどが心の底から発したものであること。
 臣民(しんみん)−−君主国(明治憲法下の日本)の国民。
 克(よ)ク−−能力を発揮して成し遂げることで、 「能く」と同じ。
 億兆(おくちょう)−−万民。全ての国民。限りなく大きな数。
 厥(そ)ノ −−「其の」と同じ。すでに述べた事柄に関係する意を表す。
 濟(な)セル−−「成せる」と同じ。つくりあげるの意味。
 國體(こくたい)−−国家としての固有の体制ないし性格、天皇体制の意。
 精華(せいか)−−そのものの真価をなす、立派な点。
 淵源(えんげん)−−物事の拠(よ)って立つ根源。
 恭劍(きょうけん)−−人にうやうやしく、自分は慎み深くすること。
 徳器(とくき)−−善良有為(立派な人格)の人物。
 世務(せいむ)−−世の中に役立仕事。
 國憲(こっけん)−−国の根本法(すなわち)憲法。
 一旦(いったん)緩急(きんきゅう)アレバ −−万一国家に危急の事態が起こった場合には。
 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ−−正義にかなった勇気を奮い起こし、国家・公共のために尽力する。
 天壌無窮(てんじょうむきゅう)−−天地と同じように永久に続くこと。
 皇運(こううん)−−天皇を戴(いただ)く日本国の運。
 扶翼(ふよく)−− たすけること。
 遺風(いふう)−−祖先が残した美風。
 古今(ここん)ニ通シテ謬(あやま)ラス−−昔から今に至る何時の時代に実践しても間違いのないさま。
 中外(ちゅうがい)ニ施シテ悖(もと)ラス−−我が国で実践しても外国で実践しても道理に反しないさま。
 拳拳(けんけん)服膺(ふくよう)−−謹んで捧げ持つようによく守ること。
 咸(みな)−− 「皆」と同じ。
 庶(こひ)幾(ねが)フ−−願い望むこと。

教育勅語の12徳

1. 孝行(こうこう)⇒子は親に孝養を尽くしましょう。

2. 友愛(ゆうあい)⇒兄弟姉妹は仲良くしましょう。

3. 夫婦の和(ふうふのわ)⇒夫婦はいつも仲睦(むつ)まじくしましょう。

4. 朋友(ほうゆう)の信(しん)⇒友達はお互い信じ合ってつき合いましょう。

5. 謙遜(けんそん)⇒自分の言動を慎みましょう。

6. 博愛(はくあい)⇒広くすべての人に愛の手をさしのべましょう。

7. 修学習業(しゅうがくしゅうぎょう)⇒勉学に励み職業を身につけましょう。

8. 智能啓発(ちのうけいはつ)⇒知徳を養い才能を伸ばしましょう。

9. 徳器成就(とっきじょうじゅ)⇒人格の向上につとめましょう。

10. 公益世務(こうえきせいむ)⇒広く世に中の人々や社会の為になる仕事に励みましょう。

11. 遵法(じゅんぽう)⇒法律や規則を守り社会の秩序に従いましょう。

12. 義勇(ぎゆう)⇒正しい勇気をもってお国の為に真心をつくしましょう。

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教育勅語現代解説(訳文)

『聖訓ノ述義二関スル協議会報告』(1940年、文部省刊)の中の「教育に関する勅語の全文通釈」を現代仮名遣いにあらため、解説したもの。

 

朕(明治天皇)がおもうに、我が御先祖の方々が国をお肇(はじ)めになったことは極めて広遠であり、徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ、又、我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし、国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって、教育の基づくところもまた実にここにある。

汝(なんじ)臣民は、父母に孝をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦(むつ)び合い、朋友互に信義を以て交り、ヘりくだって気随(きずい−自分の思うまま)気侭(きまま−他人に気がねなく自分の思い通り)の振舞をせず、人々に対して慈愛を及ぼすようにし、学問を修め業務を習って知識才能を養い、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧(ささ)けて皇室国家の為につくせ。かくして神勅のまにまに天地と共に窮(かぎ)りなき宝祚(あつまひつぎ)の御栄(天皇陛下の御運勢)をたすけ奉(たてまつ)れ。

かようにすることは、ただに朕に対して忠良な臣民であるばかりでなく、それがとりもなおさず、汝らの祖先ののこした美風をはっきりあらわすことになる。

 ここに示した道は、実に我が御祖先のおのこしになった御訓であって、皇祖皇宗の子孫たる者及び臣民たる者が共々にしたがい守るべきところである。

この道は古今を貫ぬいて永久に間違いがなく、又我が国はもとより外国でとり用いても正しい道である。

朕は汝臣民と一緒にこの道を太切に守って、皆この道を体得実践することを切に望む。