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パーマカルチャー (資料)



 下記は、パーマーカルチャーについて、ネット上の各資料を参考のために転載したものです。
 興味深い思索・概念が、紹介されております。

 しかしながら、個人的印象では、哲学、宗教神秘領域まで概念をひろげる一方、現実の経済社会のなかで、どのように将来像と現在の状況を接続するか、不足すると思われる分野も多いと思われる。
 人間の思考は常に限界があるものであり、単一の思想体系ですべてを充足することは不可能である。

 パーマカルチャーという「単語」は実に魅力的だが、その分、多様な内容を一単語につめこみすぎ、期待しすぎではないか。
 いわば「パーマカルチャーはこう主張する」といった、表現は自家撞着の可能性があると危惧しています。重要なのは、単語の意味ではなく、有効で、機能するかどうかでしょう。

 意味をひろげすぎると、どうでもよい部分の失敗が全体の成功を阻害するかもしれません。


 また、パーマカルチャーは永久的文化といいつつも、具体的社会体制について記述はあまりに少ない。また、手作りによる、時間の無限の吸収(つまり永久労働)を前提としていないか? 趣味的に小規模の手作りに従事して満足できればいいが、単なる労働では苛酷な環境に万人を追いこむことになりはしないだろうか。

 それにたいする処方箋は、工業的生産性向上・つまり時間の節約なのだが、ここにたいする配慮は多いとはいえない。

 将来的な社会像として、家畜の大規模利用や、封建制的土地利用を予測したり、また、社会が変動していくうえで、でてしまいかねない犠牲・人口の不幸な大量消失を防止しようという具体的アプローチが希薄である。

 私は印象論として、パーマーカルチャーの根源提案者には、未来に対する暗い・悲観的予感。はっきりいえば絶望感があるのではないかと感じている。


 太字、赤文字などは、個人的に重要と思える部分に独自につけたものです。


パーマカルチャー wikipediaより  (参考 転載)

エコロジカルデザイン・環境デザイン分野の用語であり、自然のエコシステムを参考にし、持続可能な建築や自己維持型の農業システムを取り入れ、社会や暮らしを変化させる総合的なデザイン科学概念[1][2]。

目次

1 定義

2 パーマカルチャー、3つの倫理

3 パーマカルチャーの原理

4 日本におけるパーマカルチャー

5 外部リンク

6 参考文献

7 パーマカルチャー(広義)共通の価値観

8 パーマカルチャーの根本概念

9 パーマカルチャー(広義)の提案 9.1 都市環境について

9.2 道具と科学技術について

9.3 文化と教育について

9.4 健康と精神的安定について

9.5 財政と経済について

9.6 土地管理とコミュニティについて

9.7 土地と自然管理について

10 パーマカルチャー(狭義)の提案

11 脚注

12 関連項目

定義

パーマカルチャー(Permaculture)という言葉は1970年代にオーストラリア南部のタスマニア島で暮らしていたデビッド・ホルムグレン[1]とビル・モリソンが作った造語である。

ふたりによれば最初その言葉はパーマネント(permanent)とアグリカルチャー(agriculture)を組み合わせ「永続する農業」という意味が込められていた。

パーマカルチャーを初めて世に問うふたりの唯一の共著『パーマカルチャー・ワン』(1978年)によれば、「動物や多年生の植物、および自家更新する植物を人間が利用する目的で組みあわせたシステムであり、それは常に進化する」と定義されていた。

パーマカルチャーの元となるパーマネント・アグリカルチャーという概念は、ふたりが『パーマカルチャー・ワン』の中で指摘するようにモリソンやホルムグレンの創造ではない。

パーマネント・アグリカルチャー(永続する農業、持続型農業)はアメリカの土壌学者、FHキングが日本、中国、朝鮮半島の視察を綴る『東アジア四千年の永続農業(農文協、 杉本俊朗訳)[2]の副題で使われていた。

また、J・ラッセル・スミスが1929年に出版した『トゥリー・クロップス(Tree Crops)』[3]の副題もパーマネント・アグリカルチャーだった。すでに20世紀初頭において、そういう考え方が生まれてきたことは、「永続しない」農業が支配的になりつつあったことがうかがえる。

このようにパーマカルチャーは、少なくともその創世においては動物や多年生の木を組み合わせ、その特性を利用する。そして野菜など一年生の植物を野生化し、多年生化する、それが基本の概念だった。

一年生の野菜や穀物に依存する現代人の暮し方、単一作物栽培、モノカルチャーを指向する農業に頼りっきりな現代社会への批判であり、もうひとつの生き方の可能性、社会のあり方を提示するものだった。

「永続的な農業(パーマネント・アグリカルチャー)」を指すとされたパーマカルチャーだが、提唱されてから30年以上を経て、最近では「永続的な文化(パーマネント・カルチャー)」を意味するという解釈が広がりつつある。

ホルムグレンは2012年に邦訳が出版された『パーマカルチャー:農的暮らしを実現するための12の原理』(コモンズ、リック・タナカら訳)[4]で「食物や繊維、エネルギーなど人間の必要を満たすため、自然の中に見られるパターンや関係を真似し、風土を意識的にデザインすること」と定義している。

ホルムグレンは、ピークオイルと気候変動の発症など人間社会がこれまでにない変動を迎える時代、右肩上がりに成長しない不確実な時代に、パーマカルチャーは「下降の時代の文化」としてその真価を発揮すると説く。[5]

パーマカルチャー、3つの倫理

パーマカルチャーの初期の文献では、以下に掲げるデザイン原理同様、倫理(道徳的な訓戒、原理)についても明記されていなかった。世界各地での教育や実践を経て、パーマカルチャーは次の三つの倫理に基づくと理解されるようになった。これらの倫理は宗教や共同体の倫理に関する研究から抽出されたとされる。 [3]

地球に配慮する(Care for the earth) - 全ての生命システムが持続し繁栄できる状態を維持する。人間は地球の健康なしに繁栄できないのであり、これが最も基本の倫理である。

人びとに配慮する(Care for the people) - 人々が存続するために必要な資源を供給する。

余剰は分かち合い、消費と再生産には限度を設けよ(Set limits to consumption and reproduction, and redistribute surplus)- 健康な自然システムは、それぞれ生存に必要な要素を互いに供給しあっている。人類も同様のことができる。我々が各々らに必要なものを供給しあうことで、我々は上記の方針に必要な資源を確保する事ができる。

パーマカルチャーの原理

パーマカルチャーの原理はシステム思考やデザイン思考と呼ばれる世界観から生まれており、自然と産業化以前の持続可能な社会を観察することで普遍な原理が抽出できるという考えに基づいている。

パーマカルチャーのデザイン原理は生態学、特にハワード・オーダムなどのシステム生態学に基づくとされ、環境地理学や民族生物学などにも影響を受けた。

これらの原理は、これからの脱産業化社会において土地や資源を持続可能に利用する際、世界のどこにでも適用できると考えられている。パーマカルチャーの原理は簡潔な文章やスローガンで表される。

これらの原理は、さまざまなな選択肢を検討する時にチェックリストとして利用される。

原理は万国共通に当てはまるが、その具体的な適用はそれぞれの場所や状況により、大きく異なる。ホルムグレンは「パーマカルチャーの花」で個人、経済、社会、政治の再編成にもこれらの原理が有効であるとしている。

パーマカルチャーの原理が最初から重要視されていたわけではなく、『パーマカルチャー・ワン』では「パーマカルチャーの木」と呼ばれる図が原理を紹介するために用いられ、デザイン理論とその適応例が紹介されるにとどまっていた。

デザイン原理をモリソンが初めて提示するのは1991年に出版されたレニー・スレイとの共著『パーマカルチャー:農的暮らしの永久デザイン』(農文協、 田口 恒夫、小祝 慶子訳)においてである。

このリストはアメリカ人パーマカルチャー教師、ジョン・キネイが作成したもので、それ以降、広く使われるようになった。ホルムグレンは『パーマカルチャー』で、次の12のデザイン原理を掲げている。

ホルムグレンは「パーマカルチャーが新しい思想であり、まだ、発展途上にあることを考えれば」と断った上で、「このリストは有効ではあるが、不断の見直しが必要で、さらに明晰にしていかなければ、創造的な解決方法をさっと見つけ出す助けにはならない」と、それを盲目的に教条的にとらえることを戒めている。

【原理1】 まず観察、それから相互作用

【原理2】 エネルギーを獲得し、蓄える

【原理3】 収穫せよ 

【原理4】 自律とフィードバックの活用

【原理5】 再生可能な資源やサービスの利用と評価 

【原理6】 無駄を出すな

【原理7】 デザイン――パターンから詳細へ

【原理8】 分離よりも統合

【原理9】 ゆっくり、小さな解決が一番

【原理10】 多様性を利用し、尊ぶ

【原理11】 接点の活用と辺境の価値

【原理12】 変化には創造的に対応して利用する

日本におけるパーマカルチャー

日本におけるパーマカルチャー運動の歴史は、1990年にモリソンが日本人を対象に行ったパーマカルチャー・デザイン・コースに遡る。

1993年には日本で初めてのパーマカルチャー・ワークショップが開催された。

同じ年に農文協からモリソンの『パーマカルチャー』が翻訳出版された。

1996年にパーマカルチャー・センタ−・ジャパン[6]が設立され、2001年にはパーマカルチャーネットワーク九州[7]が設立された。

2003年に初めての全国大会が開かれ、各地からパーマカルチャー活動家が安曇野にあるシャロムヒュッテ[8]に集結した。

2004年、パーマカルチャー・センタ−・ジャパンのNPO法人化を記念し、ホルムグレンを招いた講演ツアーが実施された。

2009年にパーマカルチャー関西[9]が、2011年にはパーマカルチャー中部[10]ができ、2012年にはホルムグレンの『パーマカルチャー』が邦訳出版された。

ホルムグレンの日本滞在記『日本におけるパーマカルチャー[11]』参照。


Permaculture Center Japan (参考 転載)

パーマカルチャーとは

what's permaculture

パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉で、永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法です。

私たちの命を支えている自然の恵みである食べ物やエネルギー、水などがどこからきてどこへ行くのか、そして自分の毎日の生活がそれらにどのように関わっているのかを知り、汚染や破壊を引き起こすのではなく、より豊かな生命を育むことが出来るようにそれらと関わっていくこと。

そして争うのではなく喜びを分かち合うことを前提とした人間社会を築いていくこと。これらを実現していくために自らの生活や地域、社会そして地球を具体的にデザインしていきます。

デザインといっても机やコンピューターに向かって、姿形を考え出すことではありません。

現場に立ち、風の音や花の香り、土の感触などから自然のメッセージを受け取り、それに基づいて、問題があれば、その最善の解決を見出し、使われていない資源があれば、その持続可能な利用方法を見出すことで、自然と人間が共に豊かになるような仕組みを創りだしていくことがパーマカルチャーのデザインです。

そして、その過程で得た学びによって自分自身の生き方や価値観も変わっていくことでしょう。

全ての命と私たち人間が求める永続性を自らの力で具体化していくことが現在求められています。パーマカルチャーはそれを実現する確かな方法の一つと言えるでしょう。



パーマカルチャーの倫理・原則

●パーマカルチャーの倫理

倫理とは人間が自らの自由を実践するために、自らの過剰な欲求を統御し、正しく身を処すために、自らに課す行動基準と定義されます。自らの欲望のみに従い行動すれば、それは、多くの場合、他の人の自由の束縛や権利の侵害となり、社会的な制御を受け、自らの自由を失うことになります。

他の人々、ひいては社会全体や自然そのものが望むことは何であるかを知り、それを実現するために自分が何をすることができるのかと考え、それを自らの望むこととれば、その望みは他からの干渉や制御を受けることなく、実現されることでしょう。

それこそが自由を実践することになります。

パーマカルチャーはこのような自由のための倫理を以下の4つに要約し、デザインや実践の基準とすることを求めています。

自己に対する配慮

人間が、正しく身を処し、自由を立派に実践するために、自らを知り、形成し、人を駆り立てかねない欲望を自らの中で統御することです。

地球に対する配慮

地球とは,生命が自らの手でより多くのいのちが生きることができるようにと育んで来た宇宙においても希有の星と考えられます。

そして、「森」こそが最も豊かないのちに満ちた場です。

無限とも言える多くの命が助け合いながら育ち、そして育てて行く森を人間が手を添えながら完成させて行く事こそ地球に対する配慮と考えられます。

人に対する配慮

人の基本的な生きるための要求(生理的欲求、精神的欲求、社会的欲求)を満たすばかりではなく、文化の生成に参加し、自然をより豊かにして行くことで、人の最も根本的な要求である自己を超えた存在との一体化を実現し、永遠を実感する機会を保証すること。

余剰物の共有

自然との恊働としての生産活動に参加することで、自然から必要を超えた恵みを受け、それらを他の人々と共有することで自分の生活の安定と相互の助け合いによる安心感を得ること。

また、人間一人一人が持つ独自の才能を自分のためだけではなく、他の人そして、広くは社会のために用いることで、より豊かな社会を築いて行くこと。

●パーマカルチャーの原則

パーマカルチャーの原則とは、自然の中に存在する、自らを永続可能にする様々な仕組みを表したものです。

パーマカルチャーの創始者の一人であるビル・モリソンは山の猟師、海の漁師として半生を過ごしてきましたが、そこで見出したのは、自然が豊かな生命に満ちているだけではなく、より豊かにしていくための変化を常に起こし続けているという動的な姿でした。

彼はそこに働く基本的な自然のあり方を、パーマカルチャー=永続可能な文化の創造へと導く仕組み=原則として、明らかにしています。

これらの原則は、以下のように大きく4つに分けることができますが、それらの意味合いは独自のものであり、自然や文化から離れてしまい、自然からの語りかけを受け取るという経験やそれに基づいて動くという基準を失ってしまった、私たち現代人に、もう一度、自然の見方と私たちと自然の生産的な関わり方に目覚めさせてくれるものです。

循環性1/4

生物が最初に作り出した永続へとつながる仕組みは、この循環性だったと考えられます。

光合成と呼吸という太陽から与えられるエネルギー以外は何も消費されることがない循環は、生物が自ら作り出したものですが、永続性を具現化したもっとも基本的な仕組みということができるかと思います。

それ以外にも、生物にとって決定的に重要なタンパク質を生成し、また、分解する窒素循環や、食物連鎖もそこに関わる有限な物質が消費されるのではなく、元に戻るという生物を介して形成された循環系です。

この循環の当然の帰結としてのもう一つの特徴は、ゴミがでないということです。

このため、環境に対して負荷をかけることもありません。

単純化して言えば、ゴミ=資源となる仕組み、すなわち、あるシステムから出されるアウトプット(ゴミ)が他のシステムのインプット(資源)となり、それらのシステムが一つの輪になって、どこからもゴミが出ることもなく、また、資源が足りなくなることもないのがこの循環性です。

多重性2/4

多重性とはその字の通り幾つかのものを重ね合わせることです。自然も文化も様々なものを重ね合わせることで、豊かさと安定性、そして、持続性を確保してきたと言えるでしょう。その中でも以下の3つの視点から多重性の意味とその役割を考えてみたいと思います。

【1】空間の多重性

自然の最も完成された形である、森には様々な植物が茂っていますが、それらを観察すると、3次元の空間をうまく使って棲み分けているのが見られます。

一般に、生態学ではこのような植物の棲み分けを5層として、地面に近いところから、地衣類、草類、低潅木類、亜高木類、高木類と分類しています。

自然界では、生物同士の関係性は競争よりも共存を基本としていますが、それは、このような空間的な、高度による棲み分けにより行われています。

パーマカルチャーでは、これらに、ツタ類と根菜類を加えて、空間に7層を設けて、生産性が高く、かつ共生する生態系を作り上げることを目標としています。

【2】時間の多重性

時間は過去から未来に向けて一方向に流れていて、どの場所にも同じ時間が訪れ、去っていきます。

このため、時間を重ね合わせることをイメージすることは難しく、実践することには戸惑いを覚えます。

しかし、自然界では、様々な形で時間が重なりあっています。

例えば、秋に散った落ち葉は、やがて朽ちて、土に帰り、他の植物を育てる栄養分となりますが、その間は、落ちた種を守っています。春先に土を覆う落ち葉をめくってみると、すでに種から芽が出ているのに出会うことがあります。

朽ちて分解していく時間と新しい命が育まれる時間がここで重なっているわけです。

このような時間の重ね合わせを読み取り豊かな畑を作っているのが福岡正信氏の農法だと解釈することもできるかもしれません。

その他にも、この時間を重ね合わせて豊かにするという視点で見ると、本を読むことや語り合うことも時間を重ね合わせることと考えられるでしょう。

書物の中にある文字が伝えることや人と語り合うことで相手から受ける言葉はすべてそれを発する人たちの時間が込められています。

そのような時間を取り込むことで私たち自身の内容は豊かになっていきます。

【3】機能の多重性

 3-1 多機能性

多くの生物、特に進化した生物は必ず多くの機能を果たすことができる多機能性を備えています。

例えば、鶏であれば、卵を産むことだけではなく、虫を食べたり、地面を引っ掻いて後期したり、それに糞を出して土を肥やすこともできます。

このように自然を構成する個々の要素に多くの機能があることで、自然の中には多様な環境が生まれて、より多くの生物が生まれ、生きることができるようになります。

また、このような多く機能を果たすことで生物自体もストレスなく生きることができます。

また、生物でも無生物でも、一つのものに多くの機能を持たせることで、一つの機能だけしか果たせないものを多く集めるのに比べて空間を大幅に節約することも可能です。

パーマカルチャーのデザインでは、そのデザインを構成する要素に少なくとも3つの機能を持たせることを考えます。

 3-2 重要機能のバックアップの用意

これは生きていく上で欠かすことのできないことやものには複数のバックアップを用意するということです。

例えば、水であれば、現代人のほとんどは、水道以外に水源を持ってはいないと思います。

しかし、地震などの災害が起き、水道管が破裂するような事態が生じてしまえば、生きるに欠かすことのできない水の供給が断たれて生命の危機に陥ってしまいます。

雨水タンクを設ける、あるいは予め井戸を掘っておくなどしておけば、水道が断水になってもすぐに生命の危機にさらされることはありません。

このように食べ物や、水、職業などについても安定した生活を営んでいくには複数のバックアップを持つことが必要と考えられます。

多様性3/4

多様性は、ただ互いに異なる存在が多数あることを指すのではなく、個の内的な多様性と環境の多様性、それらを結びつける関係性により構成されます。

多重性のところでも触れましたが、生物は基本的に多くの機能を持っています。

ただ、これらの機能は他の生物を含む環境にそれを発現する条件が用意されている時に初めて具体化します。

すなわち、パーマカルチャーの多様性とは、そこに存在するすべての生物が持つ機能の把握し、それらが十分に働くことを可能にする多様な環境を作ることで生じる動的な多様性をさしています。

★エッジ効果

このような多様性を生じさせる手法として、エッジ作りがあります。

これは互いに異なる環境を隣り合わせに準備することで、意図した以上に多様な生物が生きることが可能になる環境を作り出すことができます。

自然の中にあるその例としては湿地が挙げられるでしょう。川や湖などの水という環境と陸の環境の接するところに生じる湿地ではもちろん水中に住む生物も陸にいる生物もやってきますが、そこにしか住むことができない生物もやって来るので、極めて多様な生物が生息しています。

このようなエッジは意図したよりも多様な環境条件を作り出すので、多様性の創出には最も適した手法と考えられます。

合理性4/4

より多くの生物の命をはぐくみながら、しかも、人の行為において無駄を省くことが合理性の基本と考えられます。

それを具体化するためには2つの手法が考えられます。ゾーニングと自然資源の利用です。

【1】ゾーニング

人間から自然に向けて、グラデーション的な土地利用を行うことを意味しています。

即ち、図にあるように、人間が最も時間を多く過ごす場所を中心とし、人間の立ち入ることがない自然のままの場を周縁として、その間を人間の介入度を基準にゾーン分けしていく手法です。

生活の場であれば、

家を中心として第1ゾーン、

菜園など頻繁に行く場所が第2ゾーンとなる。日本のように居住地の敷地面積が少ないところでは、この2つのゾーンを持つことが精一杯と考えられますが、昔の農家程度の規模があれば、更に水田や鶏小屋それに果樹など1日に1度行くところが第3ゾーンとなり、あまり手をかける必要のない燃料や建材のための人工林が第4ゾーンとなります。第5ゾーンは自然のままにしておくところです。

この様に人間と自然の間のバランスを設定すれば、自然に対する人間の介入が際限なくなることを避けることが出来ると同時に、野生動物が菜園を荒らしてしまうことも少なくなります。

何よりも、人間の移動のための時間やエネルギーも極力省くことが出来るので、無駄を省いて効率的に生産活動を行うことが出来るようにもなります。

【2】自然資源の利用

もう一つの合理性を具体化する手法は、自然資源の利用です。

これは、もっと動物や、昆虫、植物などの自然の生物の力を人間のために利用しようという考え方で、彼らから搾取するのではなく、どちらにとっても利点があるように人間が知恵を働かせる手法をさします。

鶏を持ち運びできる小屋にいれて移動しながら畑の除草と除虫、そして糞による施肥行わさせるチキントラクターや果樹の根元に通路を作って鶏に果樹を管理してもらうコリドールなどもパーマカルチャーの手法としてよく知られています。

また一般にコンパニオンプランツと呼ばれている植物の組み合わせも、科学と言うよりはむしろ長年の工夫や経験を集積した、言い伝えとも言うべき手法ですが、植物を使って人の手間を省くことができる、自然資源の利用方法の一つです。

パーマカルチャーの手法

スパイラルハーブガーデン

石を螺旋型に積んで様々な微気象を作るのがこのスパイラルガーデンである。底面の直径を2mほどとし、高さは1.0〜1.2mほどに積み上げる。

材料としては蓄熱体として役立ち、また水はけを良くする意味からも大きめの自然石が良い。それ等を土か漆喰で隙間を詰めて固定する。

螺旋状であることから、様々な方向と高さが得られるので日照と湿度の強さに応じて様々なハーブを植えることが出来る。

出来れば、台所の近くに配置して、新鮮なハーブが簡単に採取できるようにする。

キーホールガーデン

キーホールガーデンには様々な形が考えられるが、基本的には円形の植床にキーホールを穿つ形になる。

直径2mほどでキーホールの丸い部分が中央に来るようにする。この形を取ることにより、苗を植えたり収穫したりするのが容易になり、また、風により運ばれてきた様々な養分が集積するようになる。

アースオーブン

アースオーブンは、土で作るドーム型のオーブン。土と砂があればどこでも作ることが出来ます。

古くから、アメリカ大陸、中東や北アフリカなど世界中の至るところで使われていたと言われています。

積層マルチ

積層マルチは維持に手間のかからない(除草や散水を行わない)菜園を作るのに適しています。

材料を多く使うので、大規模の農場よりは小さい菜園にむいています。

積層マルチでは、窒素分の多い層と炭素分の多い層を交互につくり計4層のマルチにします。

微気象

一般の気象(気候)とは違って地形や日当りその他の条件により、ある 地域本来の気象とは異なって生じる部分的な気象。

パーマカルチャーでは多様な生育環境づくりを目指すので,様々な手法を用いて微気象を作り出す事が大切とされている

スウェイル

スウェイル(SWALES)とは、同じ深さに掘り通された長い溝で、地表に降った水を一時せき止めて、ゆっくり土地か浸透させることを目的として設置される。

特に斜面地など、雨水が速い速度で流れ落ちるようなところでは、このスウェイルを設けることで、水の落下速度が遅くなり、表土の流失を防ぐことが出来ると同時に、斜面地に植えられた、果樹や野菜などに水分を供給する役割も果たすことが出来る。



世界のパーマカルチャー

パーマカルチャーは、1970年代にオーストラリアのビルモリソン、デイヴィッド・ホルムグレンにより生みだされてから、世界中の国々で実践されています。

(中略)


日本のパーマカルチャー

日本国内にも、パーマカルチャーを学ぶことの出来るいくつかの施設があります。

各地で様々な活動をしながら、持続可能な社会づくりや、人材の育成に力を注いでいます。

(以下略)