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エネルギーミックス
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 千年のスパンで考えれば、現在の世界のエネルギーの供給方法は参考にする程度にしか関心はありません。それでもいくつか面白い視点があります。

 原子力発電は基幹エネルギーとされます。でも、実は太陽光発電や風力発電などとよく似た不安定なエネルギーで、よくにた性質があるというのです。

 太陽光は、お日様・天候任せ。夜は発電しないし、雨や曇りもろくに発電しない。風力も風がなければ発電しない。だからあてにはならない。というのはまさにそのとおり。

 千年のうちでは、夜などは最小限の需要を各家庭のバッテリーやEVの残存電力でまかなって、「さっさと寝なさい」というのが基本になるのですが、現代はまだそこまでの割りきりができるわけがありません。

 ですから、再生可能電力を導入すると、発電しない時間帯をカバーするバックアップ電源が必要になります。では、そのバックアップをどうやっておこなうか。です。

 原子力は一度作動すれば出力の変動が難しいため、ベース電源に適しているとされます。ですから、太陽や風力などの再生可能電力のバックアップ電源にはなりません。相性が悪いのです。

 原子力は、400日稼動すれば定期点検で三ヶ月停まります。
 日本のような地震の多い場所では、強い地震があれば停止します。あるいは機器の不具合により、停止することもあります。事故で放射能がもれれば、いうまでもありません。

 安全最優先ですから、停まるときは即座に停まります。すると潜在的に使えたり使えなかったりするのがあたりまえ。の電源なわけです。

 ある意味、不安定さでは太陽光発電と同じ運命をもっています。しかも停まるのは事前に予想できません。太陽光なら夜がくることは当たり前で、しばらく先までの天候も予想できます。風力もどのくらいの風がふくかは予想できます。

 それに太陽光や風力は、機器の数が膨大ですから、故障があっても全出力がいきなりダウンすることもありません。ですから安定性・確実性では太陽光や風力のほうが、原子力よりマシなのです。(かもしれません)

 また、原子力は出力調整が難しいので、電力ピークに対応するには揚水発電などをするためにダムを必要とします。発電は夜間の最低電力をまかなうために主に使うしかなく、いいかえれば夜間に電力を使わなければ原子力は無用となります。

 考えれば、なかなか困った電源です。

 結局、原子力というわがままな電源を使うために、火力や水力は出力調整をよぎなくされて、バックアップとして待機せざるを得ません。

 とくにダム水力は立ち上がりが早いので、原子力になにかあったときのバックアップ能力に優れているのでかえって平時は遊ばせて、実力を発揮させてくれないという事態になり、これが再生可能電力の割合の低下にも影響します。

 原子力は太陽光や風力と同じく、単独では役にたたず、エネルギーミックスの体系の一部として存在できます。ですから火力や水力発電がなければ維持できないのです。それで汚染を永遠に残すのですから、個人的には「もういらん」と考えたくなるのです。

 化石燃料への代金支払は、中国などの労働賃金破壊による産業空洞化・不況化と並んで、日本経済を蝕み、国力の衰退をまねくものです。

 でも、少なくとも太陽光や風力は、設置してしまえば、その地域に収入をもたらす貴重な純国産エネルギーとなります。夏の電力ピークと太陽光の作動条件は相性がいいのも利点でしょう。

 風力は、広範囲で電力網とつなげば、各地の風力発電が補完しあって、ベース電源の一部に使えることにもなります。大陸を結ぶ壮大な送電線網ができれば太陽光もベース電源にできることでしょう。

 つまりは、全体のバランスと、需要の設計をどのように選択するかであって、合理的に考えればおのずと現代のエネルギーをどのように考えるかの答えはでると思います。



2016/11/16 T.Sakurai