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核の冬の被害想定



 冷戦時代の1983年に、近い将来、アメリカ(西側)とソ連(東側)で行われるとして準備完了していた核全面戦争の被害想定が、民間で研究されて発表されました。
 TTAPS論文といわれるものです。

 その内容は、すべての人の予想しているよりはるかに恐ろしいものでした。
 耐えがたく、対処の方法がなく、あまりにも愚かなものでした。

 西にも東にも、それどころか地球人類と生物すべてに勝利者はなく、ただただ悲惨な敗者の絶望が十年単位で襲い、その後遺症は永遠に地球に残るものです。

 この被害想定は、VEI8の破局噴火の被害想定以上ともいえ、被害想定にも流用できるものです。

 核戦争のシナリオは、おこりうる条件を考慮して、17通り作成われました。
 その中には、人類を含めて、全地球の生態系のほとんどが消滅するケースが多くありました。

 この研究が行われる前の想定を二つ
 核戦争の想定は、米ソで7800メガトンの相互攻撃が行われ、両国で2億8千万人の直接死者(他国を含めた汚染による死者は、2400万人とみつもられた)(米国技術評価局)

 また、WHOの試算では、11億人の死者と、11億人の負傷者とみつもられた。


 セーガンらの研究TTAPS論文では、直接被害のほかに、核爆発と大規模火災による煙やすす、ちりの影響として急速に猛烈な寒冷化が起こり、地球上の生態系全体が壊滅的な状態に陥ると発表された。
 存在する核兵器の半分程度が使用された標準シナリオにおいて、総爆発量は5000メガトン。とすると、およそ100日にわたって、地上気温は氷点下を下回るとされる。

 都市攻撃が中心なら、100メガトンの使用でも同様の結果となる。

 気温低下にともない、暴風、異常天候。さらにはオゾン層破壊による紫外線障害、放射線物質による汚染がある。
 さまざまな賛否両面からの検証があるが、重大な事態がおきることは間違いないとされている。
 
 人間への被害としては、上記論文の続編で、

・核戦争直後 世界人口の50−75%が生存。しかし低温・異常気象・物資不足・社会崩壊がおきる。

・戦争一年後 農業・畜産生産は回復しない。紫外線・放射線障害が深刻化

・戦争10年後 農業生産の回復は未知数 人間の生存条件は著しく厳しい状態が続く 世界の自然環境は激変している

 日本においては、直接的攻撃を受けなくとも、食糧生産・輸入ができないため、50%が餓死するとされる。



 核の冬は、人類の理性による冷戦の終結で、おこることはなくなったでしょうが、その被害想定の恐ろしさは永久に忘れてはならないでしょう。


2016/07/15 T.Sakurai



核の冬からの生還戦略



 上記の「核の冬」想定は、個人の生活を脅かす最大級の試練になりうるのですが、それでも「なすすべがない」とあきらめるわけにはいきません。

 これまで考えてきた「千年のうち」の最大リスクの一つとして、克服方法をさぐりましょう。

 もっともおそろしいのは、低温と、それによる植物の壊滅。さらにオゾン層破壊による動物の失明・遺伝子破壊。気象の激変、生態系の絶滅に近い破壊でしょう。

 それでも、堅固な千年の家で作られており、かつ想定のとおり4年分の食糧備蓄、一年分のバイオマス燃料備蓄、半年分の発電材料があり、井戸で最低限の飲料水を確保し、屋内の植物工場で生鮮野菜が自給できていれば、人間は生き残ることができます。
 放射能が怖いのでほぼ一年中外に出られないとしてもです。
 日照が半分程度回復すれば、太陽光パネルでの発電で、エネルギー問題も一息つけるはずです。

 核の冬は、氷点下十数度まで気温が低下し、それが数ヶ月続くとあります。
 秋や冬なら耐えられる屋外の温帯の植物でも、春や夏ではいきなりの気象変化に対応できず、全滅の可能性があります。(多年草の地下茎は残るでしょう)

 それを防ぐために、核の冬がやってくると判った時点で、人間に必要な果樹や作物の枝や苗を屋内に避難して、電力による光をあたえ、温度管理を維持することで温存せねばなりません。

 そして、使用せずに残していた種子ともども、屋外の環境が改善するまで、・・気温が上昇し、オゾン層が回復し、放射能が許容範囲になるまで、・・持ちこたえて、将来の農業復活の足場とせねばなりません。

 ネズミやゴキブリなどの害獣・害虫はいきのこるでしょうから、ネコ、イヌなどは人間のパートナーとして引き続き共存せねばなりません。

 家畜も、ヤギと鶏、豚は残したいのものです。
 小規模な庶民の家でも屋内飼育できるギリギリの大きさですし、乳や肉の供給源として、人間用の備蓄食料を使ってでも最低限、残しましょう。
 一集落で数頭残れば、未来は開けます。(人間は全員生存)

 そうすれば、破局後の世界の生活は大きく改善できます。

 悪い想定をすれば、花粉をはこんでくれる昆虫類が壊滅したら農業の再会はきわめて難しくなりますが、なんとかミツバチの飼育も屋内でつづけて、「種」を残せればいいのですが。


2016/08/12  T.Sakurai



敗戦後の食生活



 こんな資料もあります。
 2005年「食糧・農業・農村白書」より

「わが国の主な輸入農産物の生産に必要な農地は約1200万haと試算され、これは我が国耕地面積469万ha(同年の2.6倍)に相当している。」

「不測の事態が発生して、万が一、輸入が途絶するなどの事態に陥ったときには(中略)国民が最低限必要とする一人一日当たり1880〜2020キロカロリーの熱量供給が可能であるとの試算結果がある。これは昭和20年代後半(1951-1955 敗戦後の大飢餓時代が一段落した時代 引用者注)とほぼ同じ供給熱量が確保される水準であり、現在の食生活と比べてその水準、内容は大きく変化することになる」
 とのことです。


 2006年の読売新聞掲載による具体的内容は

「肉は九日に一度、卵は一週間に一個、牛乳は六日でコップ一杯、主食の米は、朝・夕食に各茶碗一杯。おかずは夕食に焼き魚一切れを食べられるが、朝と昼はジャガイモとサツマイモでまかなう。みそ汁も二日で一杯だけ」

 でした。(「成長の限界からカブ・ヒル村へ」P290より)
 



軍事と資源浪費



 石油の世界総使用量のうち、軍隊による直接消費は3-4%とされ、さらに兵器生産に6-8%使用されている。
 あわせて全使用量の一割で、経済規模から言うと日本が世界の一割経済に近いので、日本の全使用分に匹敵する(「新・地球環境論」P272より)

 また、軍事費の総生産に占める割合は、全世界のGDPの5パーセントともいわれる。


2016/07/18
T.Sakurai