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帝国のシステムの否定 

Denial of the inperial system



 帝国は領土を持ち、収穫物を都市に集積する。

 都市は、周辺地域から、物資と民力を集積して、消費し、人的再生産をしないので、帝国の母胎であり、帝国化によっと膨張するので、主体ともできる。

 そして、国となって、官僚・軍事力を形成して対内、対外の反乱・侵略を阻止し、異なる民族・言語・宗教・地理変化(海・山・砂漠・寒帯・温帯・熱帯)をも統合する事で、帝国となる。

 それを束ねるイデオロギーと法体系をもち、「実力」を持った存在である。・・・が。

 一つの帝国がすべてを、一瞬たりとも所有することはできないし、したと思いこみ、錯覚したところで、絶対神の劣化コピーにすぎない。
 元の自分の姿(アイデンティティ)を見失って、自分が自分でなくなり、すべてを失うだけだ。

(たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。・・マルコ8・36)

 帝国システムとて、人が人として生きられず、人として扱われないようなシステムであってはならない。

 しかしグローバル化・都市化が帝国の本質なので、問題は自動的に量産される。

 帝国・都市の問題は、カーボンストーム時代(産業革命時代)のはるか前からあり、その後もさらに続く、人間にとって永久の矛盾である。

 帝国は、内部に取り込んだ民衆に未来を提供できず、やがて内部からは思想イデオロギーの変化と、外部からは侵略と環境の激変・災害によって必然として崩壊し、滅び、外的状況によってまた再生する。
 ユダの荒野に積みあがる古代からの住居あとの積層である「テル」は、その好例である。
 どのように最高の帝国でも、自然の環境が変化すれば崩壊し、回復すればまた別の帝国(都市)ができる。
 同じ場所に同じ方法で再生すれば、前のものより劣っていくことは、ごく普通のことでしょう。

 人間は、自分自身のなかの、本当の問題を把握することができるべきで、少なくとも努力すべきだ。帝国・都市の問題はその一つだと私は思う。

 経済は人の上に有ってはならない。

 帝国は人の上に有ってはならない。

 都市は人の上に有ってはならない。

 人の義務は、人らしく、永続して、生きることだけでいいと私は思う。

 近くで手に入る、ささやかで、充分なもので、完結して、過ごさねば、永続はありえない。

 確実に言えることは、大規模所有は不公平を生む。ということだろう。

 大規模所有は大きな収入をもたらす。しかし、再配分はけっして公平になされることはない。
 収入の格差とは、再配分の不公平をあらわすのである。

 狩猟採集民族の分配は、完全に公正でなければ、集団の協力は維持できないのである。
 狩に参加した一人一人で、獲物をしとめるための貢献度に差があっても、獲物の分配は公正であった。ケガで参加できなかった者にも、分配されていた。

 特別なことを考えているわけではないのである。


2015/12/16 T.Sakurai