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 スタグフレーションとエネルギー
stagflation_and_energy



 スタグフレーションは、物価高と景気後退=失業率の増大のダブルパンチによる最悪の経済状況を表す言葉です。
 いろいろな解説を見ても、原因に対するエネルギーの果たす役割が重要視されないことが多いので書いてみます。

 この種の経済不況にみまわれれば、庶民の生活はたまったものではありません。
 資産は減る、収入は減る、モノは加速的に売れない。
 生活水準はいやおうなく下がります。

 しかしエネルギー的に見ると、比較的簡単に原因は明らかになると思えます。

 貨幣ベースや、失業率で見るとわかりにくいのですが、トータルのエネルギー収支で見てみれば、物価の上昇は、供給コストの増大にあります。

 人件費は余って下落しているのだから、それを上回る資源の高騰が背景にあります。
 端的に言えば、エネルギーコストの増大です。

 この場合のコストは貨幣ベース価格ではなく、エネルギーを取り出すためのエネルギーの比率が、以前と比べて増大すれば、供給されるエネルギーは劣化して見かけ以上に大きく減少します。

 また、失業は、有効な仕事がないことで生まれますが、エネルギーが不足すれば再生産にかかわりが薄い産業ほどエネルギーがまわらなくなり、有効な仕事ができなくなってしまうのです。

 エネルギーが高くなれば、あるいは産出方法の環境が変わってエネルギーそのものが劣化したり、産出効率が悪化すれば、経済の拡大は止まり、縮小せざるをえません。当然です。

 コストが高くなる・・とは、エネルギーに関していえば、質の劣化、量の劣化(減少)なのです。

 エネルギーが劣化すれば、景気は後退し、物価は上がり、生活の質は下がる。
 貨幣は仮想変数なのだから、貨幣のみに注目していると、かえって現実に動いているものが見えにくくなってしまいます。

 20世紀の富とは、安価な化石燃料による一時的効果の産物なのでしょう。


 ごく簡単に、あらわすと

・20世紀前半の景気拡大     太陽エネルギー+化石燃料

・20世紀終末期からの景気後退  太陽エネルギー+劣化した化石燃料

・21世紀中葉からの定常経済   太陽エネルギー+さらに劣化した化石燃料+新エネルギー

 と、なりましょうか?

 エネルギー供給以上の経済は運営できません。エネルギー供給にみあった経済・庶民生活をあまねく維持しなければ、(恐ろしいことですが)破局は必然的に訪れるでしょう。

 まとめてみます。

 スタグフレーションは、いわば、産業革命以前の、「飢饉」と同じ。と理解しています。

 異常気象で日射量が減ったり低温にさらされて、農産物が太陽エネルギーを受け取れずに収穫できず、それによって食料価格が高くなり、他の手段で収入を得ることもできず、仕事を放棄して飢えてさまよう。わけです。

 パイの減少(分けるエネルギーの減少)ということでしょう。

 また、パイの減少ではなく、もうひとつのスタグフレーションの形として消費の過剰による、エネルギー不足。つまりパイの切り分けすぎがあります。

 人口が過剰になり、エネルギーの総量が変化無ければ、一人当たりのエネルギーは当然減少して、生活は悪化していきます。

 もちろんこの二つが同時に起きると、結果はもっと悲惨なことになります。

 また化石燃料がいきなり供給不能となったら(大災害などで)どうなるかも、いうまでもありません。
 大震災でライフラインが一部途絶、あるいは根こそぎ供給不能となった体験は、多くの日本人が経験したところです。

 エネルギー収支と、長期的傾向と、それに対する対策を常に我々庶民は持たなければならないでしょう。結局、自分と家族の命を守るものは、自分自身ですから。

2015/12/03 T.Sakurai