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森の活用 使えない木材、薪炭


 森・木材資源は、食料の採集・家の建材の供給・薪炭エネルギーの供給、はては産業の基盤資源の供給など、すべてにわたって人間の消費の補助活動をささえてきました。
 農地があっても森林がなければ、地力も維持できず、地域社会は衰退し、広域国家・文明も消滅します。
 これまでの人間の歴史上で、一地域に30-70世代以上にわたって文明を維持できた民族は例外だそうです。800〜2000年で環境は限界を迎えるのです。

 すでに地球は、限界を超えています。そのうえで、私たちは加速的に悪化する諸条件の中で、「全員が、永続的に、幸福の追求可能」である状態に移行しなければなりません。

 放棄すべき技術・ライフスタイル・伝統があることでしょう。残された自然環境へ依存した態度は、制限しなければなりません。

 森林については、かつてのように、エネルギー源として全面的に依存することはできません。いくら計画的に植林したところで、そこからのバイオマスエネルギーは、補助にすぎません。

 また、建材としての木材利用も、終焉をむかえています。木軸建築は、もう日本ぐらいしか採用していません。採用しようにも全人類の住居を供給する豊かな森などありません。

 結局、スギやヒノキの植林はムダだったのです。大規模建築用の大木は、必要としてはならず、使ってはいけません。それで管理できず花粉症を蔓延させているのは、ブラックジョークです。

 この前提で、今後の森の活用方法としては、

・治水、治山、沿岸漁業支援の基礎環境(そこにあるだけでいい存在)

・気象条件の緩和、改善(植林を進めて緑地が増えると気温・降水量が安定し、人間にとって好ましい条件に近づいていきます)

・小物の材料供給(日用品、家具、竹・つる用品)

・補助燃料(間伐材、廃材などをペレット化などして扱いやすくし、緊急時などの燃料とする。余剰分はベース発電用に消費できる)

・補助食料 植物性 果実(どんぐり含む)、キノコ、山菜、タケノコ、薬草などの採集

・補助食品 動物性 鹿、いのしし、ヤギなどの狩猟

 などがあげられるでしょう。

 そのために、

・里山としては、針葉樹ではなく、広葉樹を中心とした植林の更新。
 花粉症の元凶となる樹種は少量でいいでしょう。
 それより、人間や野生動物の食材となる産物をはぐくめる、多様性ある豊かな森が、人間の生活環境のすぐ側に必要です。それに、もともとスギやヒノキは柔らかく、道具の素材に向きません。硬く、利用価値の高い木材は、広葉樹に多彩です。

・ダムの利用をあきらめ、限られたエネルギーの投入で永続できる治水施設への切り替え。
 ダムは土砂をせき止めますが、時間の問題で埋没し、堤防も決壊します。
 数十年後の放棄を考えれば、最初から利用しない方が賢明です。そのためには山に森がなければなりません。

・過去に森林だった地域の再生。
 現在砂漠になった地域でも、人間の利用以前には大森林だった地域は広大です。これがその場所での風力発電・太陽発電や太陽熱エネルギーの活用で、初期の水供給と保持を確保してやれば、再生できる可能性がある地域は多いのです。人工のオアシスです。
(これまでの破壊がひどすぎるので、二酸化炭素の減少にむすびつけるには、すでに遅すぎますが・・生物多様性の回復には役立つでしょう)

・風力発電の適地としての森林
 風力発電は、住宅地では、騒音、危険性などで問題があります。そもそも風の強い場所でなければ発電しませんし、そんな場所には住宅を建ててはいけないでしょう。また強すぎる風は風車を破損させます。
 森林におおわれた場所は、過度の風が、長い年月にわたって吹いていなかった証明になります。人間が利用するルートを確保した、周囲に人家のない森林で、風の強い場所は、建設地として向いています。
(当然ですが森林は陸上にあります。海上に作るより、長期のメンテナンスが用意です。)

 などが考えられるでしょう。



使えないバイオマス



 再生可能エネルギーを考える場合、太陽光、風力、水力についで、候補にあがるのが、バイオマスです。

 バイオマスは古くから使われている薪(たきぎ)、炭、排泄物を醗酵させたメタンガス、木材を加工したチップ燃料、あるいは穀物などからのバイオ燃料です。

(バイオエタノールはガソリンエンジンに使えますし、菜種油はディーゼルエンジンに使えます。でも現在は米を原料としたバイオエタノールを商業ベースに乗せる為の価格 20円/Kg 、600円/俵となるそうです)

 しかしながら、カーボンストーム以前の社会では、食料費についで、あるいはそれ以上の生活の負担となった支出は煮炊き・暖房のための燃料費でした。

 江戸時代末期の二宮金次郎が、少年時代、なぜ薪をせおって村から町に本を読みながら行商にいったのでしょう。それが優れた換金商品であり、中学生が売りにいっても必ず現金で売れた商品だったからです。

 バイオ燃料は限りある資源です。
 太陽エネルギーを植物が受け止め、土壌のミネラル成分を使って水と二酸化炭素を変換し、自らの体に作り上げ、それを燃焼させてエネルギーを取り出します。発電のために燃焼させればさらに効率が落ちます。
 バイオ燃料は、太陽エネルギーの利用方法としては、変換・輸送・加工・燃焼・発電のプロセスがあるので、効率はかなり悪いのです。

 また、いくらカーボンニュートラルで、燃焼させてもCO2増加につながらないとしても、ミネラル分は土地から奪われて地力が低下します。その連続が、長期的な農業生産性の低下、地方経済の低下につながり、社会全体の活力が失われていきます。
 その結果が、産業革命直前の西欧文明の森林枯渇であり、江戸末期のはげやま日本でした。さらに進むと古代のローマ・ギリシャや中東、インダス、中国黄河流域のような衰退がもたらされます。

 結局、バイオマスは、廃棄する以外にない残渣を臨時に利用するのが適切なのであり、主力のエネルギーにした場合、かつてのようにジリ貧・衰退をもたらすものです。

 そして、発電後の送電を除いて、遠隔地に輸送して利用せずに、利用後の灰などは、すみやかに田畑・山野に返還し、地力の回復へと循環させねばなりません。

 すでに枯渇しかかっている地下資源としてのリン鉱石の利用や、エネルギーを多量消費する窒素肥料の合成は使用できなくなっていく。持続可能性はないと考えたほうが安全です。


 ですから、バイオマス燃料は、メタンは調理用のガス燃料として使用し、木製チップは太陽光や風力が安定できない場合の臨時のバックアップとしてのみ使うのが、適切ではないでしょうか。

 バイオ燃料は臨時のバックアップとして、熱源として最大一年分ほど、電源として半年分ほど備蓄しておけばよい。と思われます。


2016/08/12 T.Sakurai