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内装 窓 玄関 インテリア



内装
 

 屋内の内装の基本は、

・可燃物を極力少なくすること。

・硬度の高い、鋭角(エッジ)をもったものを、極力、排除すること。

・転倒の可能性を少なくすること。

・家具は作り付けを基本として、追加する場合も堅固に固定する。

・内部の移動動線を簡単にし、また通路を広くとり、手すりもつける。

・段差のないバリアフリー。

 とします。

 部屋の大きさは、最小で6畳程度とし、狭い部屋は作りません。また、間仕切りの変更で連続して使える部屋をもうけます。

 また、個人の趣味にあわせての間取りは基本的にしません。ライフスタイルは時と共に変化するものです。
 しかし、住宅は基本的に大きく構造を変化することはできませんので、作りすぎると、範囲から外れた場合は極端に使いにくくなる可能性が高いのです。

 都市生活なら、引越しをすればいいのですが、田園生活では生業が決まってますので、その生業にたずさわる以上、引越しはありえないからです。(根本の構造は、一時的ライフスタイルにあわせない)

 屋内の壁面は、軽量鉄骨の柱の外側で石膏ボードを支持して、そこに難燃性の壁紙を貼り付けます。
 絶対にコンクリートや鉄骨がそのまま、室内に露出することがないようにします。
 硬い木材やガラス類も同様です。

 老人や体調の悪い人が、屋内で転倒して、硬い壁に頭を打ち付けて重症を負ったり、あるいは重大な後遺症を残したり、死にまでいたるケースは、多いのです。
 家具の端や、壁面の曲がり角なども、もともとの90度の角度そのままではなく、曲面をもたせた面取りをします。

 可燃物を少なくするのは、もちろん火災対策です。建物がいくら火災に強くても、内部が燃えては建替えるしかありません。
 大きな部分を区切る防火扉は設置するにしても、燃えないことが前提です。

 カーテン・障子・カーペットなども対策して、床に可燃性のワックスなども使用しないようにします。書籍は意外に燃えませんが、紙類・木材類は減らします。

 また、プラスチックは、そもそもこのサイトの前提では、使用は極力減少させることになっています。(そのうえでプラスチックは全量リサイクルか、完全焼却処分しなければなりません。)

 床材は、ぬれてもすべりにくく、ふれて温かみがあり、耐久性があり、ある程度の柔らかさがある素材とします。

 無垢の硬質木材は、自然木・合板どちらであっても、床に露出させないようにします。
 劣化によってささくれだち、思わぬ重傷を与えることがあるのです。
 コルクなどの素材は好ましいと思われます。カーペットを使う際も、ずれたり、すべったりしないように固定します。

 家具は、壁と一体化しているほど堅固に固定します。
 もちろん地震対策で、住人が家具の下敷きになるなど、「ありえない」ように、徹底します。

 家具の内部のものが、震災時に飛び出さないような対策も当然で、かならず扉をつけて、内部のものを飛び出しにくくします。
 内部の見える扉にする場合は、ガラスの使用を避けて、アクリルなどを使用します。

 また、天井から落下するものも、なくします。
 照明はぶらさげ方式では最低2点による堅固な支持とし、できれば天井に組み込み式にします。

 照明器具の交換時は脚立などをつかって行ないますが、そのさいの転倒・落下事故の可能性がありますので、交換しやすい構造にしておき、長寿命の器具(基本はLED )を使って交換頻度を減少させます。


 家屋内部は、単純な構造にして、迷路のような部分は作りません。緊急避難のときに迷わないようにするためです。

 また、通路はすべて車椅子や移動ベッド・担架が楽に通れるような幅を確保(最低1メートル)し、玄関をのぞいて、一切の段差をつくらないバリアフリーの平面にします。
 そうすれば、いやおうなく健常者も避難しやすい通路になります。
 (そのうえで、まっすぐな廊下を子供がドタバタ走り回るのは、喜んで許容しましょう。)

 各部屋の壁紙、床材などは、居住者が変われば、好みにあわせて、色や柄をどんどん変えましょう。

 基本としては、乳幼児や、体力・判断力に問題のある高齢者が常時いるという感覚をもって、屋内すべてで、総合的にも、細部的にも、デザインしましょう。

 だれにとっても危険な場所、危険な瞬間があってはなりません。
 考えられるリスクはできるだけ減らしましょう。

 ここは、すべての家族の「生涯の住まい」となり、すべての家族の老若男女の知人が訪れる場所なのです。

 個人の一時的で身勝手な好みでなく、長期間家族をささえる、受け継がれるインフラとして、バランスがとれたものにします。

 定常経済があたりまえになれば、大部分の人間は、都市に住むのではないのですから、頻繁に住宅をとりかえることなど、できないのです。


窓・戸窓

 
 窓は、採光、眺望、気候のよい季節での換気を考えると、なるべく大きくとりたいのですが、透明な素材で、耐久力があるものは、どうしても断熱性からいえば弱点になります。

素材一覧
名称
屋外使用
耐火
比重
断熱・熱貫通率 U値
硬度
使用温度
加工性
ガラス 耐久性あり 割れやすい 2.5 重い 1W/mk 硬い 100℃(急速加熱で破損) 加工しにくい
アクリル 耐久性あり 燃えやすい 
着火400度
1.19 0.19W/mk ポリカーボの3倍 -60〜80℃ 容易 変形しやすい
ボリカーボネイト 変色しやすい 自己消火性あり
割れにくい
1.2 0.19W/mk 鉛筆B 簡単に傷 -40〜125℃ 切断、接着剤困難
 上記の素材は、どれも一長一短があります。

 また、どのようにしても、断熱性では弱点になりますので、採光が必要でない部分に窓はつくりません。

 必要な部分もなるべく小さくします。ですから冒頭に書いたよう眺望重視のガラス張りの大面積構造は使いません。ガラス戸もなるべく避けます。


 構造としては、外側から

1 格子 防犯・大型飛来物防御用 アルミの格子を取り付けます。

2 雨戸 引きちがいで、窓枠の横に戸袋を作り、収納。
 アルミ波板で作り、内側に軽量・耐熱・断熱材(ポリカーボネイト?)を貼り付ける。
 夜間・台風・暴風・火災・防犯などの時に閉める。ロック機能付、耐火性能を重視

3 網戸 アルミフレームのもの。戸袋に収納する。

4 主窓 アルミサッシとガラスを使用。
 雨風・直射日光に耐久性の高いもの。気密性を確保する。
 アルミは耐久性は良いが、断熱性能はないので、サッシ内部に断熱部分を挟み込み、ガラス部分も二重にして、内窓はアクリルにする。
 真空ペアガラスは、長期使用後や、あるいは損傷して交換する場合の調達をあてにしないので使わない。普通の二重ガラスとする。(ひよわなハイテク製品は使わない)

5 内窓 断熱性能を高める。結露の完全防止のため。アクリル一枚板とします。
 人間が出入りする大型引き戸なら、木枠にアクリルをはめて使用します。

 プラスチック系の素材は極力避けたいのですが、消耗品ではなく10年単位で長期間使用でき、完全リサイクル可能な前提で、使用するとします。


玄 関



 玄関は最終的には北側に三箇所となります。また、南側にリビング2箇所、大空間外扉一箇所、浴室の側に南側のサンルームへの扉が2箇所あり、これらが予備の出入り口になります。

 いずれも、外気を屋内に直接いれない構造にします。

 北側の玄関の前には張り出し屋根と照明をつけて、その下で雨具などから余計な水分や雪、付着物を簡単に落とします。重大な外気の問題があるときは、この張り出し屋根の下からシートを地面までたらして、簡易エアロックをさらにもうけ、事前に体の付着物を大体落とし、それから屋内にはいって、玄関で着替えなどして、汚染を対策します。
 屋内に入っても、その前に内部と遮断する二重扉が使えるようにします。内部から空気を加圧してふきだす構造にします。(もともと屋内の主排気口は玄関にとりつけて、強制換気で24時間稼動する設定です)
 空気清浄機などもそなえつけます。手洗い、うがいのための小型の洗面台も各玄関ごとに設置します。

 つまり、簡単なエアロックとして、玄関をとらえるのです。
 外気と内部を遮断することは、断熱性を高めて冷暖房効率をあげます。(北海道などの寒冷地ではあたりまえです。)

 また、玄関の空気を加圧して外に排気したり、空気清浄機をつけるのは、黄砂や花粉などを内部に入れないためです。花粉ならまだ深刻さはありませんが、汚染物質や病原菌なども想定範囲です。

 小さなコンプレッサーを使ってブロウするなどエアシャワー機能もいいでしょう。ここまでやるなら、不要物を廃棄するダストボックスも別個に置きましょう。

 もちろん普通の玄関機能・・、防犯対策や、ゲタバコや雨具おき、コート掛けなどはあたりまえにないと困ります。その際に衣服、防護服、装着器具が取り外しでき、管理保管できる機能を含ませておきます。

 必要充分に、明るく広くして、これらの動作や、あたたかくお客のお迎えができる、品のよい玄関にしたいものです。

 予備の出入り口については、もともとサンルーム自体が、予備のエアロック、バッファ空間として設定しているので、普通の防犯機能だけでよいでしょう。


キッチン

 日々の生活で、もっとも重要な屋内空間は、キッチンでしょう。

 日々の調理、収穫物の最終加工、家族の健康維持の計画場所、すぐに食べられる食料の保管・管理場所、炊事のためのエネルギーや加工・保存のエネルギーの使用場所。実に多岐で複雑で重要です。

 食事というどうしても必要な行為のすべてにかかわります。洗濯や掃除は、注意深くやれば効率化できますが調理は多様なので、労力は減らしにくいのです。

 そもそも、農地のある田園地帯での生活ですから、食材の気軽な購入や外食の機会は現代の都市生活と比較できないくらい難しくなります。

 また、重要な部門ですから、だれかがキッチンの責任者・管理者にならねばなりません。
 子供への食事準備という点と、人間の家族の伝統的役割分担から、女性が男性よりもキッチンにかかわる傾向が強いでしょう。
 将来もそれを選択するなら、キッチンはその家庭の「主な責任者」の城になります。

 そのため、第一期、第二期、第三期の工事のいずれも、キッチンをつくり、それぞれに責任者・担当者(若夫婦・第二世代・第一世代)を限定して家族と自分の「幸福」のための貢献を思う存分にできる体制をとります。(ひとつの城に、主は一人です)

 エネルギーや食材に制限があり、また廃棄物を完全リサイクルするために、調理の回数はできるだけ減らし、食器の使いまわしや洗浄回数の減少もめざします。





 大規模な水道システムは期待しません。村落共同体で簡易水道を設置できるなら、それが第一水源となります。
 想定として、使用する水は、井戸水をろ過したものです。シンクの上のジャマにならない所に設置した小さなタンクから流します。不足したらポンプで自動供給されます。
 太陽熱パネルで作られた温水も別の蛇口から供給されます。日中の余剰電力で、さらに追加過熱した熱湯も小さな断熱タンクに蓄えられ、解凍や下ごしらえ、調理、保温に使います。

 食器の洗浄は、耐久性があるなら食器洗い器を使ってもよいでしょう。洗濯機を使わないのがナンセンスなように、不必要な労力は最小限にしましょう。洗浄の回数は極力減らします。
 しかし、食べ残しは塩分過剰なことが多く、堆肥化に支障となります最小限になるよう家族全員で常に自覚します。

 また、シンクや調理台の高さは、責任者の体格、身長にあわせて、調整できるようにしましょう。
 小柄な人に高さを合わせると、大柄な人に代替わりすると、(その逆も)使いにくいものになります。
 (適正高さは、使う人の身長(cm) X 0.5+5cm)

(戦前まで、日本の農家の多くでは家族ひとりひとりに四角い漆器の膳を用意し、そこに使う食器・箸をまとめ、食事ごとに同じものを使いました。
 食べ残しはもってのほか。食事のおわりに、お茶を少しそそいで、使った椀の中をきれいにし、箸も洗って、洗ったお茶は飲みました。きれいになった食器を懐紙でふいて、膳をそのまま片付け、次の食事にもそのまま使います。
 食器の洗浄は週末か、ひどく汚れたときに、屋外で家の横の流水で洗いました。同じ事をやりたいと思いませんが、不可能ではないし、それなりに合理的ですし、参考になります)



調理熱

 屋内で、燃焼ガスを出すのは、禁止事項です。IH調理器は安全で魅力的ですが、大電力を使いますのでこれのみに依存するのは危険です。都市ガスは否定します。

 ボンベによるガス供給は、災害時にも電力無しで使え、カロリーが高く、暖房や動力、発電にも使えますので備えておくべきです。

 ボンベのガスの中身は、地球の裏側の油田の天然ガスや深海からとりだしたメタンハイドレード・・ではなく、先月、自宅からでた廃棄物を村でまとめて小型プラントでメタンガス化したものと、余剰電力で電気分解した水素を混合してボンベに充填して、各家庭に再配布したものになるでしょうか。
 この組み合わせに近いものは、戦後しばらく各家庭で使われた実績があります。

 調理時は、強制換気します。

 電力もガスも使えない場合は、バイオマス(ようするに木材系チップやたきぎ)を鉄のストーブで燃やしてその熱で調理します。エントツのないストーブは屋内使用厳禁で、周囲に可燃物がないことは当然でしょう。



冷蔵庫

 新鮮な食材を長期保管するには、キッチン以外に食品保存用冷温倉庫が必要です。
 収穫物の大量保管は村内の「氷温倉庫」でしょうし、自宅でこまごまとした少しまとまった保存は、周囲を断熱した倉庫の中の氷温庫に入れます。
 あくまで、「氷温」で零下数十度の本格冷蔵庫ではありません。エネルギー消費をおさえるためです。そのため、肉・魚の長期保存には向きません。野菜・根菜類の数ヶ月の保存が目的です。

 キッチン内の冷蔵庫も、電力の途絶にそなえて、内部に氷を蓄えて、停電時に対応できるタイプのものにします。また常時、廃棄熱がでますので、温水に蓄えるようにします。



フードプロセッサ

 
食事にかかわる作業は膨大になりやすいので、省力化できるところは徹底しましょう。
 包丁など刃物の使用もさけられるところは減らしましょう。
 フードプロセッサは大量の食材の処理には欠かせないでしょう。

 普通のみじんぎり、カット野菜、食肉(ひきにく・ソーセージ)の加工、パンの生地こね、製麺、玄米の精米、もちつき、味噌の製造、ジュースの製作、酒・ワイン造りなどです。
 どれも作るときには大量になります。一人の「主婦・主夫」の手作業では足りません。(最大、家族10人の一年分を想定します)現代都市生活の尺度で考えてはいけません。作業場所も広くなります。

 保存食料を作る場合も、乾燥しやすいように小さくする場合が多いです。
 また、乾燥化すれば、ビン詰め・殺菌して長期保管可能になり、食べるさいにもエネルギーの節約、時間の節約になります。
 果物や根菜類の皮むきも小規模から大規模まで機械化し、安全に大量処理しましょう。


衛生対策

 害虫、害獣類の発生を防ぐためにも高気密住宅は有効です。周囲の環境は「虫だらけ」です。でも隙間風がないことは、侵入口がないことです。
 温度と湿度が管理されていれば、カビの発生もふせげます。

 雑菌による食中毒は、要注意です。一家全滅もありますので、気をつけましょう。
「洗浄用スポンジ、包丁、まな板、ふきん」などは、専用の滅菌スペースで、常時殺菌しましょう。(専用滅菌装置を使用したり、乾燥後にレンジにかけたり、熱水に漬け込むなどです)

 井戸水の浄化程度の確認も定期的に行なわねばなりません。

 生ゴミは、すみやかにコンポスト処理します。

 土つきの収穫物など、大量の洗浄は、サンルームで予備洗いを行ないます。