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なぜ、千年の家なのか

concept 基本概念



 10人家族でやっと一人が永続できるスタートライン 20150213


 生物において一個体は完結した存在ではありません。(あたりまえ)

 生物は環境とセットになっており、膨大な周辺環境、さらに同族である多数の個体・個人が存在することで永続していけます。

 人間でいえば、わたしは一人の男ですが、たったひとりでいては、環境がいかに安楽であっても、やがて死んで消滅してしまいます。
 子孫を残すには女性のパートナーが必要です。女性にとっても男性が必要ですから、生物的には夫婦になって初めて最小単位の存在です。

 でも、二人で一つであっても、子供がいなければ永続できませんし、世代交代した前の世代も存在します。あたりまえですね。

 私は父であり、子であり、孫であり、祖父であり、曽祖父でもあらねばなりません。
 それが人間としての一つの存在の半分の意味です。同時に妻は母であり、娘であり、孫娘であり、祖母であり、曾祖母です。

 一個体が生まれて、存在して、生涯をまっとうするには、10人の「個人」が必要なのです。この10人は、いってみれば、「たった一人」と同等なのです。たった一人が人間らしく生涯にわたって存在するためには10人が必要なのです。

 この10人のうち、働き手は、祖父と父と子。となりましょう。一つの世代を20年とすると、5世代で100年となりますので、妥当なところではないでしょうか。

 10人の中のこの三人、妻と娘と祖母も含めると6人が生存に必要な仕事や家事を担当して、生活の最小単位の10人全体を支えます。それが人間の無理のない基本形と考えられます。

 収入源が最低三人分あれば、そして家事の中心が別に三人分あれば、その家庭は安泰といえるでしょう。充分に危機に対処できると思われます。なんらかの原因で10人のうち何人かが欠けても、潜在的に6人の働き手がいれば、かなりの事態になっても存続は可能でしょう。


どのような住宅が良いか?

 この問いかけについては、答えはありません。

 誰もが、どこかに住んで、頭をふりしぼって立地・内装・家具を選択して機能性・快適性・安全性・経済性を追及して全生涯を送っています。

 さらに、時代や、地域・気候・伝統が違えば、まったく生活は違い、必要とされる住居の形も違ってきます。

 世界各地でさまざまなこだわりとノウハウが膨大に存在するわけで、「これにしなさい」などと言えるわけがありません。

 それでも不勉強・不見識にもかかわらず私案を示すのは、たたき台の一つとしてであり、「こんなものではいけない」と感じていただき、意見をいただきたいためです。

 住居についてさらに高度な思想・発想を発表していただいて、全体を向上させていきたいがためである。どうかご協力いただければ幸いです。


私的背景

 上記のように、私の家族10人は、合わせて実質たったの一人。なのです。もちろん個性は違って考えていることは全部違いますけど・・・これがたった一人が永続するためのスタートラインなのです。

 それにしても、46歳で子供が一人だけできた。・・ってことは、二人の子供のうち一人を失い、さらに一つ世代を飛ばしたことでさらに二人家族を失ったのです。私の家庭は、亡くなった妻の父を含めて、たったの6人家族です。

 近頃、親戚の集まりがあった。親戚なのだから、同じような顔がたくさんいて、小さな子供から年寄りまで、そろっています。同じような顔ということは、ある意味、コピーなのであって、自分の過去や未来をパノラマとして見るようなものなのだ。

 一世代を20-25年とすると、人間らしい生涯をおくるなら、三世代か四世代になる期間があって、その期間をつつがなく、平穏に生きるひつようがある。いま目の前にいる直系の先祖子孫であれば、孫・子・父母、祖父母、曾祖父母が、全員、すこやかであることが、自分が生涯をまっとうできる最初の確認になる。

 嫁さんもふくめると、6人から8人が、この状態になって、永続していかなければならない。私は、これら全員がそろっての自分なのです。一人で勝手にできるなどとんでもない。自分の責任を果たした上で、その上で、何をするかが問題になるはずです。


 私には南関東に居住しているが、北海道札幌・北陸金沢での年間を通しての生活体験があります。住んだ家も、伝統的木造家屋、鉄筋コンクリート住宅、現代木造集合住宅、木造住宅といったところです。

 亜寒帯である札幌について言えば、冬季に晴天が少なく、降る雪が次々凍結して春まで凍結してして、蓄積していく氷は厄介である認識ができた。

 金沢はその大幅緩和版といえ、冬季の日照の少なさと気象の急変の多さは関東では想像できない。また結露がすごいです。


目標

・都市で生活することを、想定しない。(学生時代、あるいは研究施設以外の集積は避ける)

・居住性の確保(室内の気温・湿度の安定)
 三世代最低6人が充分居住できる部屋数・設備。トイレ・キッチンは複数必要。

・安全性(耐地震・台風・竜巻・豪雪・猛暑・水害・大規模噴火・社会的騒乱への対処)

・耐久性(最低百年・またはそれ以上で、多少の損傷でもさしつかえない住宅。かなりの冗長性をもって多少の損傷では問題が起きないようにする)

想定する技術

・平屋構造とします(メンテナンスに高度な技術を必要とせず、総合的安全性のため)

・軽量鉄骨と、レンガ・コンクリート壁化(断熱のため)

・屋根の軽量素材化と、全面断熱

・定期的な外壁塗装。もしくは、強度的・美的に高度の耐久性をもった外壁にする。 

・地下熱の利用をめざす

 燃料に何を使えばいいでしょうか。
 建物の機密性を高めては、家の内部でマキ・石炭・練炭などのカマド系の火を使うことは危険であり、深刻な事故を必ず多数発生させるだろう。韓国で練炭をオンドルで使用していた時代に一家全滅がたびたびあったそうである。

 暖房は、断熱化ができれば、地下冷熱と、電力による部分暖房でもいいが、調理をどうするかである。

・各家庭に太陽電池パネルを予備も含めて設置してあること。夜間電力はバッテリー、あるいは地域小規模水力発電やバイオガスや備蓄水素の利用でまかなう。

・各家庭は充分な断熱化を行い、夏冬の冷房・暖房の最小化をめざす。
 内部で直火暖房は使わない。都市ガス・下水道など高度なインフラは使用しない。水道は村内のみの簡易水道で、井戸・雨水利用も行なう。

・夏季は、よしずなどによる予備遮蔽 充分な周辺緑地の冷却効果と、家を吹き抜ける風による冷房を目指す。
 それでも暑ければたらいに水をはって、体をつけるしかあるまい。(クーラーの否定)

 どちらも冬の間は太陽による発電・太陽熱利用はあてにできないと考えるべきである。
 この場合の暖房は、村内バイオマスによる「オイルやガス」による燃焼暖房となるだろう。
 屋外ではマキの使用も当然できようが、屋外燃焼炉でチップを燃やして熱をお湯などで供給することも考えられる。(安全性第一である)。


基本コンセプト

・家族が住めること

 前章の「ライフスタイル」で、規定するすべての人が住める広さと機能があること。
 つまり、全年齢の7−8人が同時にストレスなく暮らせる必要があります。

・平屋であること

 二階建て、三階建ては想定しない。
 極論に思えるかもしれませんが、多層階の建築物は、実は不便なのです。
 幼児、老齢、障害をもたれた方、つまり誰もが人生のどこかで、階段を自力で上がれない時期が必ず何回かあることでしょう。
 また、健常者でも一度も階段から転落したことのない人間はいないでしょう。日常の中に高低差があればあるほど生活リスクが増えるのです。

 また、多層になれば屋根が高くなります。
 居住者による自力でのメンテナンス(修理・雪かきなど)が困難になり、作業の危険も増えます。緊急時に体力弱者が屋根へ避難することは難しくなり、落下事故のときの被害は大きくなります。
 建築にかかるエネルギーは多くなり、高価になることはいうまでもありません。
 つまり、多層建築は、構造的な問題があるのです。

 それに・・日本人のほとんどすべては、江戸時代の終わりまで武士も公家も一般人も平屋に住んでいました。古代ローマでは多層建築がすでにありましたが、家賃は高層階ほど安くなりました。
 また、一戸建てに住まわれていた方が高齢化して、マンションに移られる例は多くありますが、その理由のひとつは屋内に階段がなくなることなのです。
 私も怪我で数ヶ月立てず歩けずで、車椅子生活を経験しましたが、自宅に階段があることのつらさは実に大きいものでした。


・バリアフリーであること。

 だれしも体調を崩す時期があります。家庭内の廊下や動線で、車椅子や担架が使えるかが目安になるでしょう。
 廊下の幅が狭かったり、トイレ、浴室、各部屋の入り口などで段差があるなどしたら、イザというとき不便なだけです。

 だれかが歩行困難になってから廊下に手すりなどをつけるのはおかしいです。
 最初からついているべきです。


・断熱・気密・換気のバランスがとれていること。

 断熱していない家は、冬は厳寒、夏は二階などは灼熱地獄です。

 断熱して気密の無い家は、見えないところが「カビ」だらけです。こんな家の寿命は数年で終わってしまいます。

 換気がなくて気密が高ければ、不完全燃焼ガスで一家全滅もありえます。

 隙間風は換気ではありません。循環する空気の量を、計画・計算して正確に設計し、実現するものです。

 目的は、春夏秋冬に快適でエネルギーを節約して、緊急時には屋内を安心な空間に保つことです。
 当然ながら、吸気口・排気口には、高性能フィルターが屋内から安全に装着できる構造になっていて、フィルターの交換予備を確保している必要があります。

・木造でないこと。
 日本の一般的一戸建ては、柱に杉などの木材を使った木軸工法で作られています。しかし世界的にみると現代建築で木材を使うのは例外なのです。

 考えればわかりますが、木材を使った数十年の寿命の住宅を世界のすべての人に供給することは不可能です。
 木には優れた特性がいろいろありますが、建築構造材料としては期待できません。



・玄関は、外部とのエアロックにできる構造になっていること。

 玄関は必要があれば、外部と内部を遮断する中間空間にしましょう。

 もっとも一般的なケースは花粉症の時期に、外で体についた花粉をふるい落とすことでしょう。玄関と廊下の間にそれ以外の季節には使わないジャバラの隔壁を閉め、エアシャワーなどの機器を使って花粉を落とし、その空気とチリは、換気扇で速やかに外においだします。
 マスクをとり、ウェットティッシュで顔、手足を拭いて、玄関にそなえつけのゴミ箱に捨てましょう。
 必要なら着替えましょう。家の中に花粉をもちこまないようにするのです。

 同じケースは、吹雪の時もそうでしょう。
 外気の空気をもちこまず、雪を室内にもちこまずに着替えをすませる緩衝地帯です。
 二重扉ということです。北海道ならあたりまえですね。

 鹿児島の方なら、これが火山灰にも有効だとわかるでしょうし、福島に近い方なら、放射能を家庭に持ち込まないことに安心できるでしょう。放射線測定器も欲しいですね。

 だから玄関には、隣接して洗面台・シャワーなどがあるといいです。もちろん二人程度が同時に作業できるていどの広さが欲しいものです。

・寿命が長いこと。

 家を建てられる立地は限られています。そして人は家にすまねばなりません。一度建てれば、数十年使わねばエネルギー的にもったいないです。

 現在でも200年住宅と広告にうたう建築業者があります。200年メンテナンスフリーで住み続けられれば、代々の負担労力はどれほど低減できるでしょう。考えただけでも楽に暮らせますね。

・災害に強いこと

 地震・台風・ドカ雪・ゲリラ豪雨・津波・突風竜巻・爆弾低気圧・洪水・土石流・噴火・降灰・異常高温・異常低温・落雷・大型落雹・火事・オヤジ・・?。

 ・・オヤジとは山オヤジ(熊や害虫や全動物を含む)などの動物災害です、花粉症は植物災害とお考えください。

 また、人類が充分な記憶を残していないが過去に遭遇してきた普通噴火とケタの違うカルデラ破局噴火も想定しましょう。いずれ必ずまた来ます
 破局噴火は良く知られてませんが、文明を破壊しかねない重大危機です。

 周囲数十キロに数メートルの高温土砂を堆積させる火砕流が発生して、すべての生き物を焼きつくし、火山灰は大陸並みの面積をおおいつくし、気候を変動させて地球の半分・または全部の農業を危機に陥らせると予想されています。
 日本では一万年に一回の頻度・世界全体では千年に一回程度、発生します。


 人災としては、家庭内の暴力や外部からの侵入者、暴動による略奪、戦争、異民族による占領なども考えねばなりません。気が重たいですが、歴史的にはありふれた出来事です。

 大気汚染や汚染物質の拡散・ゴミの不法投棄などのいわゆる「公害」問題はもちろん人災ですし、ヒートアイランド、あるいは温暖化による気象変動・海面上昇、氷河の氷解も考えましょう。
 原発事故も人災の一種ですが自然災害と連動して原発や核施設がコントロール不能となる事態もありました。
 戦争も核を使用した場合を考えましょう。
 どれも我々人類がイヤというほど経験してきたことです。どれも、再現されるでしょう。

 過去におきた惨事が、さらに悪化しておこることも考えられます。
 ここに想定できなかった事態も、改定しつつ、個人レベルでも対策をとっておきましょう。

 そして、上記のなにがおきても、「なすすべがない」といった状態にならないよう、手を打ちましょう。
 家にいては生き残れない場合も、迅速に安全な場所に移動できるさまざまな方法を準備しましょう。
 そして、災害で家が破壊されても、土台だけは絶対に残すことは可能です。
(火山の山頂に家を建てて、山ごと吹き飛んだら・・ダメですね。そんな場所に住んではいけません。)

 そして一人も欠けることなく命を守った家族全員と、土台に守ってもらった資材と、家族の記憶と、財産で、生活の再建を試みることができるようにするのです。

   


仮記述

住居

 全年齢層で安全で快適な住まいであること どこに住んでも快適さが変わらないなら、どこにでも行って生活できることになる。また、どこに住んでも同じ寿命になる。ともいえよう。

家庭内でのリスク

 パリアフリー の欠如による転倒(段差がある 階段がある 廊下をはじめとする動線が車椅子対応の広さ)

 転倒時の危険箇所(壁面がコンクリ 鋭角がある)

 浴室での危険

必要な機能

 気温差があってはならない

 外部の気温に左右されてはならない 断熱性

 シェルターとしての機能 計画的換気装置とフィルター

 備蓄倉庫 作業場

 エネルギー生産・管理拠点

 災害対策

 自力で建設 自力でメンテナンス 自力で再建

 水周り 

 井戸

 流水

 温室(あるいは植物工場) ハウス栽培は20世紀の大きな技術革新です。

 また安全で新鮮な野菜を適量確保する有効な手段なのです。熱帯での作物・香辛料・嗜好品などをどこでも栽培して入手できるとすれば実に楽しいことではありませんか。

 LEDによる照明もあわせれば、量の問題は別として作れない作物はなくなりますし、異常気象・異常天災・虫害にもある程度対応できるであろうから安全保障上も重視して各家庭に設置するのが望ましい。

 作業場所

 脱出設備

 トイレ 人間は口にする食品の栄養分の30パーセントしか体内で吸収しない。
 外部からのエネルギーが期待できない社会では遠隔地の「肥料」の輸送は期待しにくいので、手近な資源を確保するなら栄養の70パーセントが残っている人間の排泄物を堆肥化して循環するのがもっとも合理的と思える。
 コンポストへ自動落下するようにし、使用時のみにカバーや密閉蓋が開放し、同時に換気扇を稼動するなら快適な使用ができるはずである。コンポストを複数にすれば、片方で熟成して、片方に蓄積すればよいだろう。

 家全体の断熱化がすんでいれば温熱便座は必要ない。
 温水便座は正直ほしいけれども、コンポストを優先するならあきらめるべきであろう。

 風呂(温水使用) 温水が豊富に使えるのは、水に制限がなく、日照が充分に得られる場合のみであろう。