Video Review

<Table of Contents>

・150th Anniversary Vienna Philharmonic in Historical Recordings
・Holst:The Planets, Debussy:La Mer
・Ormandy & Perlman
・Debussy:La Mer, Holst:The Planets, Mussorgsky:Pictures at an Exhibition 
・Nikoray Rimsky-Korsakov : Scheherazade; Symphonic Suite after "A thousand and One Night" 

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150th Anniversary Vienna Philharmonic in Historical Recordings
 東芝EMI TOLW3741/44(4 Laser Discs,1996)
 Mozart:Piano Concerto no.21
 Beethoven:Symphony no.8
 
 Rudolf Selkin(p)
 Eugene ormandy/Vienna Philharmonic Orchestra
 rec:Theater an der Wien, June 9th,1963 (C)ORF 1963

 「ウィーンフィル150周年記念、ウィーンフィルと名指揮者たち」と題したこのLDセット。発売は1996年だからもう12年経過したわけか。まだ悪税が3%の時代で、税抜き\19,000と高価でおいそれと手が出なかったなあ。当時はTさんからコピーして頂いたテープや、その後暫くしてクラシカ・ジャパンのCS放送で見た記憶がある。

 今月、ふと立ち寄った中古オーディオ店の棚にこのLDがあった。中古で六千円也・・・どうしようかな〜と思ったが、当時買えなかった恨み(?)を今こそ晴らそうとレジへ・・・ヤレヤレ・・・また、ここに道楽の歴史が1ページ・・・

 4枚組みのCLV(CLVとかCAV とか、分かる人がどれだけいるやら・・・)で、しかもそのうち二枚は片面しか収録されていない。今どきのDVDなら1〜2枚で収録可能なものだが。

 我らがマエストロの他(というか企画としてはこっちの方が比重が大きいが)セルとベームの演奏が収録されている。我らがマエストロの演奏はCLV片面で1時間にも満たない。だからファンには手が出しづらい映像でもあったと思う。

 モノクロ映像・モノラル録音ではあるが、壮年期のマエストロの芸風、しかもフィラデルフィアではなくウィーンを振っている貴重な映像である。曲もモーツアルト(ゼルキンとの21番)とベートーベン(しかも8番ときた)という、マエストロの素の芸風を確認できる、なかなか見ごたえのある映像と言えるのではないだろうか。ユニテル収録の円熟期のマエストロも良いが、1960年代のパワフルな指揮ぶりもこれまた実にいい。

 ゼルキンとのピアノコンチェルトもいいが、やはり見物はベートーベンの8番だ。ウィーンフィルとの一騎討ち(?)みたいな、にこやかな表情の中にも緊張感漂う演奏。マエストロの最初の一振りから音の出る迄の「間」の長いこと、これがウィーンやベルリンの流儀なのだろうが、マエストロはそれに合わせつつも自分の音楽を進めていく。オケも倍管編成(2管を4管に増強)となっており、19世紀生まれの指揮者の様式を映像で確認できる。

 そのようなわけで、最初の1〜2小節はオーケストラも多少乱れるが、あとはマエストロの引き締まったダイナミズムに溢れた8番が展開されていく。コロムビアにフィラデルフィアと録れた7番のステレオ録音も名演だが、どちらかというと8番の方がマエストロとの相性が良いように思う。同様にコロムビアにフィラデルフィアと録れた8番のステレオ録音がこのウィーンとの演奏と同傾向の颯爽たる演奏なので、聴き較べるのも一興だろう。DVD化が待たれる映像だ。(2008.9.11)



Holst:The Planets, Debussy:La Mer
 Euroarts2072268(DVD,(C)1977 Unitel,(C)2007 EuroArts Music Inernational GmbH)
 Gustav Holst:The Planets,Claude Debussy:La Mar
 
 Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra
 The Mendelssohn Club of Philadelphia(Chorus Master:Mary Zatzman)
 Recorded at the Academy of Music,Philadelphia, 24-26 June 1977

 これは2001年にUniversal MusicからUCBP-1007(philips)として出ていたもの。但し、これに入っていたムソルグスキー「展覧会の絵」は2006年秋にEuroartsから発売された 2072128 に収録されていますが・・・。それはさておき、オーマンディとフィラデルフィアの映像で、まずこれは必見と言っても過言ではないかと思う。なんてったって「惑星」と「海」が、残響豊かな音と畳み掛けるような圧倒的な名演で収録されているのだから。

 しかし、残響が少なくて録音に不向きな Academy of Music でこれほど豊かな響きをどうやって・・・と疑問に思う向きもあるかと思う。僕も不思議に思っていたが、それは録音担当の Max Wilcox 氏の証言(ちょいと大げさかな・・・)によって明らかにされている。

 「・・・このホール(Academy of Musicのこと)はフィラデルフィア管弦楽団が本拠地として定期演奏会で使用している(現在は新しいKimmer Center のVerizon Hallに移っているのはご存じの通り)美しい、歴史的なホールですが録音の為には残響が少なすぎるのです。名門フィラデルフィア管弦楽団も本拠地のホールではあまり響きません。」
 「・・・後に私がRCAをやめてフリーのプロデューサーになってから、アカデミーではオーマンディ氏の演奏をユニテルのテレビ番組用に収録しました。そのテレビ番組では、適度に残響のあるとても良い音になりました。複数の指向性マイクを客席に設置し、それをステージではなく天井の方へ向けてセットし、それをステージではなく天井の方に向けてセットし、個別にメイン・マイクの音にミックスするのです。天井に向けたマイクのバランスを上げすぎるとしまりのない音になります。そうならないように注意しなくてはいけませんが、効果は絶大でした。RCAがこのホールで行った録音よりうまくいったといえるでしょう。いずれにせよ当時は効果的なデジタル・リバーブ装置などまだない時代で、いろいろと苦労させられました・・・」(BMGファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38123 の解説より)

 ・・・成る程、個々の音が明瞭に録れてかつ豊かな残響音が実現出来たのはそういう事でしたか。残響キャッチ用に指向性マイクを天井に向けてその音をミックスするとはね。これを1968からの2シーズン、RCAもやってくれたらと思わずにはいられませんが、まあそれは結果論であって逆に大失敗する可能性もある一種の「賭け」でもあるので、当時の担当者の気苦労が思いやられるではありませんか。

 他の映像と較べても、この「惑星」と「海」はホールの残響がより多めにミックスされているようで、それが曲とうまくマッチしているようです。しかし、実際の会場(Academy of Music)ではドライな響きなので、結果として、当時録音会場として使われていた Scottish Rite Cathedral の舞踏会場で録音された同曲よりも力強く速いテンポで進む演奏になったのではないでしょうか。RCAのLPよりこちらの映像の演奏の方が素晴らしい出来と思うのですが如何でしょうか?特に惑星は、当時引退直前のホルン首席 Mason Jones の姿を観れるだけでも貴重。「海」の3楽章のホルンとチェロの音が美しくブレンドするところは正に「黄金のフィラデルフィア・サウンドここにあり」ではありませんか?

 なお、当時西ドイツを主としてヨーロッパ放送用に製作されためか、マエストロの視聴者に向けた挨拶らしきものはドイツ語だし、曲の表示もドイツ語。クラシカジャパンの放送もそうだったかな。曲の変わり目で曲名が出ないのは少々不親切。以前ユニバーサルから出たDVDは観ていないから知らないけど、その前に出ていた輸入盤LDでは英語表示でちゃんと出ていたのに・・・まあどうでもいいことですが。(2008.2.5)



Ormandy & Perlman
 Euroarts2072128 (DVD,(C)1977 Unitel,(C)2006 EuroArts Music Inernational GmbH)
 Mussorgsky(arr. M.Ravel) : Pictures at an Exhibition 
 Tchaikovsky: Violin Concerto Op.35 & Fantasic Overture "Romeo & Juliet"
 
 Itzhak Perlman(Vn)
 Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra
 Recorded at the Academy of Music,Philadelphia, 1978(Mussorgsky), 1979(Tchikovsky)

 これは2001年にUniversal MusicからUCBP-1007(Tchaikovsky, philips)とUCBP-1017(Mussorgsky,philips)として出ていたもの。組み合わせが違う理由は不明。順番としてはこちらが昨年発売されている。ユニバーサルから出ていた2枚のDVDは、これらユーロアーツのこれまた2枚のDVDで聴ける事になった。私も含めてユニバーサル盤を買い損ねたオーマンディ・ファンには朗報だろう。

 さて、こちらの録音は「惑星」「海」とはかなり異なり、どちらかというと少々ドライで、パールマンとの「チャイコン」はダイナミックレンジも狭く感じる。まあ、これはソロヴァイオリンをクローズアップした結果かなという気はするが・・・。カメラアングルやライティングもかなり違うのではないだろうか?

 さて、「展覧会の絵」収録に際して発生したハプニングに関して、またまた録音担当の Max Wilcox 氏にご登場頂こうではないか・・・。

 「・・・『展覧会の絵』をビデオ収録中に、予期せぬアクシデントが起きました。1台のカメラのビデオ・トラックの電源が落ちたのです。演奏中だったため、終わってからオーケストラに再度演奏し直してもらわなければならなくなりました。(・・・中略・・・)しかし時間内に、もう一度この曲を全曲演奏するだけの時間がぎりぎりありました。もちろん、金管の連中はぶつぶつ文句を言って不満気でした。『もう一度は無理だ!』とかなんとか。(・・・中略・・・)オーマンディはステージ・マネージャーに向かってこう言いました、『私をこれらの時間までに舞台に立たせてほしい。そうすれば、9時27分30秒に終えられるからね』。(・・・中略・・・)なんと、オーマンディは予告時刻から2秒も違わず演奏を終えたのです!(・・・中略・・・)結局、2回目は、最初よりやや速く、より力強い演奏になりました。金管も最初と変わらず好調でした。かれは意識的にほんの少しテンポを速くしたのです。こうして演奏そのものは、1回目より素晴らしいものになり、それが演奏として残されることになったのです。」(BMGファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38127 の解説より)

 BVCC-38127 の解説にはさらに興味深いことが記されているが、引用はここまでにしておきましょう・・・タイプするのも疲れるし、これ以上の引用はBMGジャパンさんに申し訳ない。知りたい人はCDを買って下さい。しかし、この興味深いエピソードを解説に記して日本盤として発売して欲しいと思うのは私だけではあるまい。(ユニバーサルのDVDの解説はどうだったんでしょ?)

 それにしても、あの見事な「展覧会の絵」の演奏が収録失敗後の2回目の演奏だったなんて、このエピソードを知ったときはびっくりしました。「なんてタフな金管連中だ!」と思いましたよ。多少なりともブラスセクションを経験された方なら多少実感らしきものを感じるでしょう。しかも同じ曲を続けて・・・

 おっと、肝心のパールマンとの共演は何処へやら・・・。ここでは、ソリストにぴったり寄り添って離れないオーマンディの名伴奏ぶりを観ることが出来ます。最終楽章で突っ走り気味のパールマンに追いついて怒濤のクライマックスを迎えるところは圧巻ですわ。こんな組み合わせを生で聴けたフィラデルフィアンが羨ましい・・・。(どーでもいいんですが、昨年のパールマンの日本公演は本人の体調不良で中止。私は当日のコンサート会場でそれを知る羽目になりました・・・嗚呼)

 「ロミオとジュリエット」はこれら二つの演奏に較べるといくぶん影が薄くなりますが、これもなかなかの好演。不思議に思ったのは、これだけ何故かタイトルがカラーで"Romio und Jullia"(ドイツ語だとこういう表記か)と出てくる。クラシカ・ジャパンの放送も確かそうだったかな。こちらも前述のDVDと同じく、曲の変わり目で曲名が出ない。まあ、出なくても困りませんが。

 あと、ちょいと苦言を。「展覧会の絵」の PCM Stereo 音声は音が大きい部分で耳障りなノイズが入ってくる。これはLDには無かった。Dolby Digital, DTS でこのノイズは無いので、恐らくPCM Stereoにトランスファーしたときに混入したのだろう。「惑星」「海」も心配したが、こちらはそのようなノイズは無かったので一安心。

 ま、それはさておき、まだまだ未DVD化の演奏は沢山ある。それらも早くDVDで観たいものだ。Euroartsにリクエストしようかしらん。(2008.2.5)



Debussy:La Mer, Holst:The Planets, Mussorgsky:Pictures at an Exhibition 
 独Unitel (C)1977-78 Laser Disc/CD Viedo, 日Universal Music Classics UCBP-1007 (philips,DVD)
 
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
 Recorded in Academy of Music, Philadelphia(Debussy & Holst:June/1976, Moussorgsky:July/1978)
 
  Ormandy/Philadelphia の底知れぬ実力を堪能するに格好のディスク。DVDも発売されたのでより入手も容易。CLASSICA JAPANでも時折放送されている。録音はちょっと低音不足ではあるが、天井に向けたマイクからの残響音が効果的にミックスされており、かなり聴きやすい音に仕上がっている。特に、「惑星」が一番豊かな音に仕上がっている。
  さて、まずは「惑星」から。CD(RCA/日BMG ジャパン(Funhouse) BVCC-38060)も素晴らしい演奏だが、個人的にはこちらの映像盤の方が好み。なんといっても映像で彼らを見ることが出来ることが大きい。CDと比較して、音のダイナミックレンジは及ばないが弦やブラスの音が良くブレンドされた状態で聞こえるし(本当に黄金のブラスという形容に相応しい音だ)、テンポも幾分早め。「火星」でオケの全合奏から力強く音が飛び出てくるトランペットや「木星」での一糸乱れぬホルン等、すべてが見どころで溢れている。なお、この演奏のみ Maestro はスコアを開いて指揮をしている。
  お次は「展覧会の絵」。プロムナードは Kaderabek の朗々たるトランペットで始まるが、これが実はやり直しの収録とのこと。詳しくは CD(RCA/日BMG ジャパン(Funhouse) BVCC-38127 vol.18 Copland & Britten Orchestral Works)の解説をご覧頂きたいが、当時の Unitel のプロデューサーである Max Wilcox の話が興味深い。この演奏会(他の演奏も含めて)は Unitel のこの収録のために行われた特別演奏会で、この「展覧会の絵」の収録途中にビデオ・トラックの電源が落ちて、演奏終了後に再度最初から演奏し直してもらわなければならなくなった。再演する時間はぎりぎりあり、金管奏者の不満をよそに(そりゃ、最初からまた同じ曲を吹き直せと言われたら・・・)Ormandy は再度ステージに立ち、演奏前に彼が予告した時刻(演奏会終了予定時刻の2分30秒前)に演奏を終わらせた・・・・というお話。いやはや、あの見事な演奏が2回目の演奏なんて全くもって信じられないが、本当に彼らのスタミナは並大抵ではないようだ。 Maestro の並外れた Time Keeper の感覚をも含めて・・・。もちろん、演奏は最初から最後まで驚嘆すべき演奏に満ち溢れている。「キエフの大門」など、本当にあの底知れぬ "Philadelphia Sound" が鳴っていた・・・と思わせる迫力に満ちている。ただ、音はこのディスクに収録された3曲中最も乾いた音で、これは少々残念。
  最後は「海」。この演奏も本当に素晴らしい。全編見どころではあるが、特に終曲の「海と風との対話」のオケの迫力は比類が無いし、Ormandy の見事なタクトに唯唖然とするばかり。彼らの演奏を生で聴けなかったのは残念ではあるが、これらの映像はそれを補うことの出来る貴重な記録だ。まだ視聴されたことの無い方は必見。(2002.8.11)



Nikoray Rimsky-Korsakov : Scheherazade; Symphonic Suite after "A thousand and One Night" 
 独Unitel (C)1978 Viedo
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
 Recorded in Academy of Music, Philadelphia

  Scherazade を始めてき聴いたのは、確か小学生の3〜4年頃だったと思う。兄が持っていた東芝EMIの廉価盤(緑色の統一ジャケットのNew Seraphim Best 150 という \1,300円のやつ)で Beecham/RPO の 1960年代前半の演奏だった。これはなかなか良い演奏で、繰り返しかけては聴いていた。エキゾチックで優美な、そして荒々しい旋律が次から次へと登場し、難破の終局まで魅惑的なメロディーで埋め尽くされている、実に美味しい曲だ。
  今、好んで良く聴くのは、Kondrasishin/Concertogebouw(蘭Philips 400 021-2, rec 1979) と ormandy/philadelphia のこの映像収録の2つ。 Kondrasishin盤は荒々しさと疾走する終曲が実にいい。 ormandy/philadelphia のは Kondrasishin盤 に比べると躍動感は後退するが充実した音響と語り口の上手さは右に出るものがない。LP・CD含めて4枚ディスクもあるが、私はこの映像収録の演奏が彼らのベストだと思う。残響の少ない(観客が入っているからその傾向は更に強くなっている) Academy of Music での収録のせいか、1972のRCA盤より速いテンポで進められているのも私の好みだ。録音はちょっと低音不足ではあるが、天井に向けたマイクからの残響音が効果的にミックスされており、かなり聴きやすい音に仕上がっている。見事なOrmandy の棒さばきと orchestra のソロを映像で楽しむことが出来る、貴重な記録だ。Thank you! Unitel. (2002.7.24)



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