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<Table of Contents>

・first recording of a "lost" concerto by Liszt...
・Rachmaninov:Piano Concerto No.3
・Hindemith & Bartok
・Historic Soundstream Digital Recording on Telarc SACD
  Saint-Saens:Symphony no.3 "Organ" a la Memoire de FRANZ LISZT 


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first recording of a "lost" concerto by Liszt...
  英EMI ASD-4258 (P)1982(LP)
  also available on 東芝EMI/EMI Classics TOCE-13264 (CD 2006年2月)
  recorded in the Old Met,Philadelphia, Oct.1981
   Liszt orch. Tchaikovsky : Concerto in the Hungarian Style
   Liszt : Hungarian Fantasia
   Schubert arr. Liszt : Wanderer Fantasia
  
  Cyprian Katsaris(piano)
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

 長い間お蔵(?)になっていた音源が東芝EMIからCDリリースされました。ハンガリー幻想曲のみ EMI Red Line Series(7243 5 73516 2 1)として1999年にリリースされていましたが、今回「決定盤1300」としてLPのカップリングそのままにCD化されたわけです。しかも1300円というお買い得価格で。(それにしても、販売価格をシリーズのタイトル名にするのはもう止めた方がよいのでは・・・LP時代からの「伝統」とはいえ・・・)

 今回のCD化以前はLPでしか聴けなくて、私も英EMIの中古LPで聴いていました。ただ、このLPは1面の2トラック目(ハンガリー幻想曲)に頑固な汚れが付いていてどうしてもトレース出来ず、この曲だけは仕方なくEMI Red Line のCDで聴いていました。ちなみにこのLPはまだディジタル録音が浸透し始めたばかりの頃のものなので、切手サイズのニッパーマークの回りを”DIGITAL”の文字が囲うデザインとなっております。これ以前はナビスコのマークのような”DIGITAL”ロゴがジャケット右上に高らかに宣言されていました。ディジタル録音が当たり前となった今となっては懐かしいマークではあります。

 さて、この録音の大きな売りは2つ、「リストの失われた協奏曲の初録音」「ピアノ職人マーク=アレンの第1号カスタムメイドピアノによる演奏」。さらに、新進気鋭のカツァリスの演奏をオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団がバックアップするという、当時の米Angel/Capitolがかなり力を入れた企画だと推測します。

 お国物のリストの曲とはいえ、80才を超えた指揮者がこういう新作を取り上げて若手のピアニストをサポートして見事な演奏を披露してしまうのですから、やはりこのコンビは凄い。カツァリスも万全のサポートを得てこれまた見事な演奏をしています。それにしても曲芸的な技巧を要求される曲ですな、このリストの2曲は。シューベルトの曲は厚ぼったいオーケストレーションを施されていますが、きくとやっぱりシューベルトやなあという感じの曲で、面白さという点ではリストに2曲には及びませんが。

 このマーク=アレン製の特製ピアノ、第2作はチック=コリアが使っているとLPジャケットに記載されていますが、その後の展開はどうなっているんでしょう。Webで探してみたのですが、それ以降の情報らしきものは見当たりませんでした。気になりますなあ。このお二人はまだこのピアノを使っているのでしょうか?どうなんでしょう?(2006.5.8)



Rachmaninov:Piano Concerto No.3
  米Angel/EMI Capitol  DS-49049 (P)1987 EMI (C)1987 Angel (DMM LP), 英EMI 27 0623 1 (DMM LP)
  CDC 7 49049 2 (CD)
  recorded at Memorial Hall Fairmount Park, Philadelphia 1986
  
  Andrei Gavrilov(piano)
  Riccardo Muti/The Philadelphia Orchestra

 ガヴリーロフとムーティ/フィラデルフィア によるラフマニノフのピアノ協奏曲3番。この組み合わせでは同じ作曲家の2番目の協奏曲と「パガニーニの主題による狂詩曲」がある。チャイコフスキーはピアノ協奏曲1番の録音もあるが、オーケストラはフィラデルフィアではなくフィルハーモニアとの組み合わせ。philadelphia と philharmonia は勘違いされやすいのか、なんとこの米LP盤にはチャイコフスキーの録音は philadelphia と記されている。困ったものだ。
 この演奏のCDは現在国内外とも廃盤のようで、EMI Red Line Series でも再発売されなかった。(2番と「パガニーニ・・・」は国内盤(EMI Classics/東芝EMI TOCE-4040, 1997)で再発されたが、こちらももう生産終了で入手は困難だろう。 )流通量が少ないのか、オークションでもなかなかお目にかかれない。特にCDは希少価値(?)のせいか、2回くらいお目にかかったことはあるが、残念ながら落札出来なかった。LPもそうお目にかかることはないが、今回運良く(?)アメリカ盤を入手できた。埃だらけのLPだったが殆ど針を通していないせいか、丁寧にクリーニングをすると新品同様の音で聴くことが出来た。DMMプレスでゴーストも無く音も良い。(とはいえ、Direct Metal Mastering が解る人がどれだけいることやら・・・。既にLPを見たこともない世代が社会人になっているのだから)
 ムーティ/フィラデルフィア によるラフマニノフの録音は上記3曲しか知らない。他にあるかも知れないし、定期ではシンフォニーも演奏しているかも知れないけど・・・そこらへんはどうなんでしょうね?それはさておき、この演奏はなかなか良い。オーケストラも美しいし、ピアノも堂々として貫禄充分。競合盤の多い名曲なのでなかなか再発されないようだが、是非もう一度他のムーティ/フィラデルフィアの録音も含めてCD再発を期待したい。(2005.7.15)

<2007.7.11 追記>
 2004年8月 に、ピアノ協奏曲2番と3番及び「パガニーニの主題による狂詩曲」がCD2枚組みとしてリリースされていました。

 Rachmaninov: Piano Concerto Nos. 2 & 3; Rhapsody on a Theme of Paganini
 EMI Classics 72435857792
  
 Andrei Gavrilov
 Riccardo Muti/Philadelphia Orchestra



Hindemith & Bartok of EMI-Angel Recordings.
 EMI-encore 7243 5 86095 2 3 (P)1979/Digital Remastering, (P)(C)2004
 Hindemith
  Symphonic Metamorphoses on Themes by Carl Maria von Weber
  Concert Music for Strings and Brass
 Bartok
  The Miraculous Mandarin
 
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
 recorded 1978 at The Old Met,Philadelphia

 オーマンディ掲示板の横田さんから教えていただいた盤です。EMI-encore というシリーズからの再発盤で、私はタワーで購入しましたが千円ちょいという廉価盤でお得な値段になっています。左下に Recording Angel(EMIはGrammophone & Typewriter 時代からこのトレード・マークにこだわりがあるようです)、右側には絵画を配置した共通デザインですが、なかなか洒落ています。どうして国内盤でこういうセンスのあるデザインが無いのだろう・・・。このシリーズ、Sawallisch,Muti/Philadelphia の盤もあるようです。

 この当時の Philadelphia のEMIレコードは、ジャケットに "The New Philadelphia Sound" と銘打たれていますが、レコード会社が変わったということと、録音会場をそれまでの Scottish Rite Cathedral から EMI の The Old Met に移したということもセールス・ポイントだったのかも知れません。会場が変わりレコード会社も変われば収録される音は全く別物と言って良いくらい変化します。この録音もRCA後期の録音に較べると豊麗さは後退していますが、その分響きはクリアになっています。とはいえ、豊かな弦セクションと軽やかなブラス・セクションの特徴ははっきり分かります。どちらが良いかは聴く人の好みにもよるでしょう。

 正直、ヒンデミットとバルトークは「苦手な」作曲家ですが、ormandy/philadelphia で聴くと演奏の見事さに引き込まれていつのまにか最後まで一気に聴き通してしまいました。やはりこのコンビは凄い。「ウェーバーの主題による交響的変奏曲」はこのアルバムでは最も親しみやすい曲で、もっとも調性が感じられる音楽ですが、素直にパーと明るく楽しくならないのがヒンデミットのヒンデミットたる所以(?)かもしれません。ひねくれた楽しみというべきか・・・。「弦と金管の為の演奏会用音楽」は無調の傾向が強くこういう曲は苦手ですが、これはなかなか良いです。構成の珍しさも含めて一聴の価値有り。「中国の不思議な役人」(Mandarin が「中国の役人」という意味と知って驚きました。ちなみに、某音楽ショップでこのポケットスコアが「不思議なマンダリン」として売られていました。)言うまでもなくバルトークの「問題作」で道徳的には(?)の卑猥な作品ですが、ここはひたすら ormandy/philadelphia コンビの妙技に酔い痴れるのみ。必聴!(2004.9.23)



Historic Soundstream Digital Recording on Telarc SACD
Saint-Saens:Symphony no.3 "Organ" a la Memoire de FRANZ LISZT 

 Originally released LP as 米Telarc 10051(Double Jacket), 2nd released LP as DG-10051(Single Jacket) ((P)(C)1980)
 日本フォノグラム(株) 「テラーク2000」限定盤LP 20PC-2008
 first CD released as CD-80051 (P)(C)1980
 CD & SACD(Hybrid) released as CD-80634, SACD-60634 (P)(C)2004 avec "Encores a la francaise" 
    
 left to right:Original LP , Original LP label, 日本限定盤LP, 同左LP Label

 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra, Michael Murray(org.)
 recorded at St.Francis de Sales Church, Philadelphia, February 6, 1980

  ormandy 最晩年の数少ないディジタル録音の一つ。1979-1980シーズンを最後に音楽監督を勇退、挂冠指揮者に移行する時期の録音。三管編成のオーケストラにパイプ・オルガンを加えたこの曲は、Stereo 時代より High-Fidelity 追求・Audiofile(Audiofan)向けの格好の素材の一つとして扱われた感はあるが、それはともかく魅力的な曲であり、しなやかな優美さと壮麗な豪壮さが同居する傑作だと思う。当時、まだ始まったばかりのSoundstream社によるディジタル録音、そして無指向性(全方向性)・双方向性マイクロフォンを極力少なく使用した独自のマイクセッティングによる高品質録音(又は、1812年に代表される猛烈録音)を謳っていたTelarc が、小澤/Boston Symphony・Mazzel/Cleveland Symphony、そして我らが ormandy/philadelphia に代表されるアメリカのメジャーオーケストラと次々に録音を進行させていたディジタル録音黎明期でもあった。

 2008年現在、この録音はSACD hybrid フォーマットで聴くことが出来る。CDフォーマットでは100%収まりきれなかった当時のSoundstream社ディジタル録音のクオリティ(PCM 16bit 50kHz)をようやく家庭でほとんどそのままの形で聴くことが出来るわけだ。(といっても、私が聴いた限りでは、CDとSACDの差は感じられなかったけど・・・)

 
 Telarc SACD-60634

  Telarc が録音場所として選定したのは、Academy of Music, Scottisch Rite Cathedral(Town Hall) , Old Met ではなく、93の音栓と4段の鍵盤を持つ Haskell 社製オルガンが設置されている聖フランシス教会。恐らく「大きなパイプオルガンを備えた音響が美しい教会」という条件に合致した場所だったと思われる。その甲斐あってか、音響は実に美しく不快なフラッターエコー等も殆ど感じられない。(残響の多いホールの録音で時折聴くことがある)

  
 from first LP jacket(Click to enlarge)

 Telarcの初期のLPはセッション時の写真(今となってはマエストロとオーケストラの貴重な記録)や録音会場風景、当時の最新技術であるディジタル録音やレコード・カッティング等(使用したカッター針等)詳細な情報が記載されており、見ごたえがある。第2版のLPはこれらの情報がごっそり削除されたシングルジャケット仕様になってしまっている。CD,SACDも残念ながら同様の仕様。今後、音楽配信が主流になるこの時代、パッケージソフトはこういう情報をこそ積極的に収録して付加価値を付けなければ売れないと思うが・・・なあ。

 初期のLPは1面の弦が何故か荒れて聴こえる。2面は問題無し。第2版のLPは両面とも音に問題は無い。2000円の限定盤で出ていた国内盤もいい音がしており、オリジナル盤と遜色のない音を聴かせてくれる。プレスは国内盤の方が質が良い。

 この録音は、長岡鉄男氏が「外盤A級セレクション(2)」(共同通信社(1)〜(3)迄刊行)にて優秀録音として紹介しており、実は私が初めて購入した ormandy/philadelphia のCDでもある。まだこの頃はLPも売られており、CDはまだまだ高価でPolygram の輸入盤(「CDは西独逸ハノーヴァー製」と書かれていたことを記憶している)に日本語解説を付したものが\4,200〜4,500円で売られていた。手持ちの盤は日本語解説が付いた日本フォノグラム社による国内仕様のもので価格は\3,200円であった。まだこの頃は、ormandy/philadelphia の素晴らしさに気がついておらず、このCDを購入したのは長岡鉄男氏が推薦していたからなのだが・・・

  それはさておき、このディスクは ormandy/philadelphia の円熟の境地をの演奏を、当時の最新の優秀録音、しかも豊かな響きの教会という条件のもとで聴けるという非常に価値のあるもの。"philadelphia sound" がどんなものかということを想像する手掛かりとしては良いサンプルではないだろうか。シンプルなマイク構成によるオフマイク録音で、耳障りな音は殆ど皆無。オルガンの音もまあまあの出来。(ヨーロッパのような美しいオルガンの音にはちょっと及ばないのは残念だが、流石にパワフル)低弦の音がちょっと隠れる傾向にあるのは残念だが、しなやかな弦と輝かしいブラス、そして曇りがなく力感のあるパーカッションが素晴らしい。1楽章の静かな部分は philadelphia の音質の良さが楽しめるし、2楽章はその冒頭のティンパニのメロディックで力強い音からして他の演奏とは大きな差がある。

  ormandy の指揮も特筆に値する。RCA録音の演奏と比較しても、力みが無く円熟と溌剌さが融合したような希有な演奏ではないだろうか。2楽章のクライマックス(仏Durand社のスコア 167ページの FF Stringendo、CDだとTrack2 14:00-)に颯爽と入って行く部分(ティンパニが雷鳴のように轟くあたりも注目)や、スコアにないトランペットの音を効果的に重ね合わせているところ(仏Durand社のスコア 170ページの Stringendo、CDだとTrack2 14:20-)などは特筆に値すると思う。2楽章の最初にオルガンが壮麗に鳴り終わってから分散和音を奏でるピアノがこれほど美しく聞こえる録音も珍しい。(仏Durand社のスコア 126ページの FF Stringendo、CDだとTrack2 8:18)最後の地響きを伴うような大音響は他の録音では聴けない。とにかく、この壮麗な音響美は全編聴き所と言っても良い。

 彼らの晩年の姿を最上のコンディションで聴ける希有な盤なので、お勧めしたい。(2002.8.24記、2008.8.20追記)

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