●ラインナップ詳細(BVCC-38282〜BVCC-38303)

  ユージン・オーマンディ&フィラデルフィアの芸術III
  Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra vol.III

  税込み定価: \1,575 (税抜き\1,500)
  レーベル(Label):BMG Funhouse/RCA Red Seal

  演奏は全てユージン=オーマンディー指揮、フィラデルフィア管弦楽団です。
  (Pefromed by Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra)




●BVCC-38282[全世界初CD化]
 Johannes Brahms(1833-1897)
  1.Tragic Overture Op.81 [1977.2.28]
   Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-3001 (C)1978 LP
 Franz Schubert(1797〜1828)
  2.Symphony no.8 in B minor D.759 "Unfinished" [1968.5.28]
 Wolfgang Amadeus Mozart(1756-1791)
  3.Symphony no.41 K.551 "Jupiter" [1968.5.27]
   Originally Released as 米RCA Red Seal LSC-3056 (C)1969 LP

オーマンディ/フィラデルフィアによる堂々たる「ジュピター」と「未完成」
  オーマンディとしては比較的珍しいドイツ・オーストリア音楽のレパートリーをカップリング。作品に取り組む姿勢は真摯そのもので、徹底的に美しい響きの中に、音楽の真実を追究しようとする姿勢が聞こえてくる。「ジュピター」「未完成」はRCA復帰後の最初に収録されたもの。オーマンディはモーツァルトの交響曲では他に第30番・第31番・第40番を録音しているのみで、シューベルトでは、第4番と第9番があるのみである。「ジュピター」と悲劇的序曲はオーマンディにとって生涯唯一の録音、「未完成」もステレオでは唯一の録音である。

【管理人より】
  「ジュピター」はこれが、ormandy/philadelphia 唯一の録音です。カップリングの「未完成」は 1956年の Columbia 録音から2度目になります。変わった組み合わせのレコードですが、いずれもRCA 復帰直後の録音で、収録場所は Academy of Music 、producer は John Pfeiffer が担当しています。評論家からはその録音について散々の評価(最新の機材を使用し、何故20年前のような音で収録されたのか・・・)を下されたそうです。確かに、デッドで潤いに欠ける録音であり、恐らく録音時(あるいはレコード製造過程?)に混入したと思われる妙なノイズがちらほらと顔を出します。(このLP自体は未開封のもので、経年劣化を考えてもちょっと首をかしげるノイズがあります・・・)  しかしそれでも、ormandy/philadelphia の豊かな音を感じとることは出来ます。「未完成」の最初の方のクラリネットは録音に助長されたのかかなり硬質で金管も荒れ気味な音ですが、弦の豊かさはやはりこのコンビの特徴として現れてきます。演奏はかなりドライで、ほの暗い情感を求める向きにもの足りないかもしれませんが、実にさっそうとした曲の運び方でうじうじした感じはありません。「ジュピター」は現代オーケストラによる堂々とした演奏です。最近の流行とは相容れないでしょうが、最終楽章の弦のリレーなどは流石といいたいところで、これで録音が良ければ・・・・と悔やまれます。



●BVCC-38283/4 [2CDs]
 Johannes Brahms(1833-1897)
   Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-3001
  1.Alto Rhapsody Op.53 [1969.9.1]
 Richard Wagner(1813-1883)
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-2528 LP (Parsifal)
  from "PARSIFAL"
   2.Prelude[1970.5.6]
   3.Good Friday Spell[1970.5.6]
 Gustav Mahler(1860-1911)
  4.Symphony no.2 in C minor "Resurrction" [1970.3.18 & 19]    
   Originally released as 米RCA Red Seal LSC-7066(2) (C)1970 LP
 1.Shirley Verrett(Mezzo-soprano)
   Men of the Temple University Choirs/Robert E. Page(Director)
 4.Evelyn Mandac(Soprano),Brigit Finnila(Contralto)
   Singing City Choirs/Elaine Brown(Director)
[2.〜4.=世界初CD化/ 1.=日本初CD化]

知られざるマーラー演奏のパイオニア、オーマンディによる雄大・深遠な「復活」の超弩級名盤
  SP時代にマーラーの交響曲第2番「復活」の電気録音の初録音を行なったのはオーマンディその人であった(1936年、ミネアポリス交響楽団とのライヴ)。LP時代にも「大地の歌」の他に、クック版の交響曲第10番の録音を行なうなど、意外なところでマーラーとの接点を持つオーマンディが、初録音以来約34年ぶりに再録音した当盤は、フィラデルフィア管弦楽団の色彩感豊かで豊麗な響きを生かしつつ、マーラーの音楽の本質に迫った、知る人ぞ知る名盤である。「パルジファル」からの「前奏曲」と「聖金曜日の音楽」、そしてブラームスの「アルト・ラプソディ」を併録。

【管理人より】
  Ormandy/Philadelphia の Resurrection のLPですが、市川さんがWeekend Reviewで取り上げなければその存在すら知りませんでした。私が所有しているのは、アメリカ盤とイギリス盤の2種類。(イギリス盤はほしい方にお譲りしました)どちらも ebay のオークションで入手したものです。大曲で発売数も少ないのか、殆どお目にかかることがありません。アメリカ盤は入手したとき、ジャケットはぼろぼろ、肝心のレコードも埃だらけ、おまけにスリーブも無い状態(それでも、Good Conditon! と堂々とのたまうアメリカ人の大らかさ)でしたが、殆ど針通ししていないようでかなり良い状態で聴けます。イギリス盤は、盤のプレス自体アメリカ盤より質が良く(厚くて重い)、ジャケットも保存状態が良くかなり綺麗です。アメリカ盤は1枚目が Side1,4 2枚目がside2,3 となっており、恐らくオートチェンジャーを意識した構成なのでしょう。イギリス盤は素直に1枚目が Side1,2 2枚目がside3,4 となっています。ジャケットは、William Smith による曲の詳細な解説が記載されています。

  肝心の音ですが、これはどうもアメリカ盤に軍配が上がるようです。盤面を良く見ると、アメリカ盤の方が内周までカッティングされており、カッティングレベルが高く溝と溝の間隔を広くとっているからと思われます。また、イギリス盤は高音が少々丸くなっている気がします。もしかしたら、イギリス盤のカッティング用マスターはアメリカのカッティングマスターのコピーかもしれません。(これはあくまで推測ですが・・・)

  この盤の問題は、フォルティッシモで音が歪む(割れる)事でしょう。いくら何でも、大元の Recording Session 時の Multi Track Master の音が歪んでいるとは考えにくいのです。それであれば playback で解ることですから。恐らく、Trackdown して 2ch の Cutting 用 Master Tape を製作の際、或いはカッティングの時点で音が歪んだと思われます。(というか、そう思いたいのです。元から駄目であれば「復活」できませんから。ただ、アメリカで発売されたオープンリールテープにも同じ歪みがあったというのが気になります)このフォルティッシモの音の歪みは別々にスタンパーを製作しているアメリカ・イギリス両方の盤で同じように発生してます。イギリス盤はジャケットのオレンジ色の部分に(写真のオレンジ色の四角の部分、ここはタイトルですが)

   "...This is a magnificent perfomance of the work; and the recording is a spacious, full-blooded one..."
   Deryck Cooke, The Gramophone

とありますが、演奏はともかく録音については「ほんまかいな」という気がします。もしかしたら、Cooke Version の mahler 10番を録音してくれたormandy/philadelphia に好意的だったのかもしれませんが・・・・

  肝心の演奏ですが、これは確かにOrmandy/Philadelphia の録音のなかでも筆頭に上げるべきものです。悠然たるスケールの大きさやフォルティッシモの強烈さは他に類を見ないのではないでしょうか?録音に問題のあることが悔やまれますが、これだけのスケールの大きい演奏が果たして録りきれたかどうか・・・。4楽章・5楽章のフォルティッシモは凄まじく、philadelphia の Brass Section をこれ程突出させた演奏はあまり無いかもしれません。しかし、そこはやはり Maestro 、他の演奏と聴き比べると、やはりホルンの音などかなり押さえ込んでブレンドさせて部分があります。G. Jhonson のトランペットも特筆に値します。フォルティッシモの部分も勿論ですが、例えば3楽章の桃源郷とも思える甘いメロディーを奏でる音色はたとえようもありません。終楽章の「光明」の合唱はその情熱に目頭が熱くなります。

  なお、今回のCD化にあたり米国BMGのオリジナル4chマスターテープに遡ってのリマスタリングが行われ、LPと比較して大幅な音質向上が図られております。但し、強音部の歪みは収録時にもともと発生しており、残念ながらそれの除去は不可能でした。惜しいことです。




●BVCC-38285
 Felix Mendelsshohn-Bartholdy(1809-1847)
  1.Incidential Music to "A Midsummer Night's Music"(Excerpts) [1976.4.20、5.6,5.12]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-2084 (C)1977 LP
   1)Overture 2)Scherzo 3)Melodrama and March of the Elves
   4)Song with Chorus:You Spotted Snakes 5)Intermezzo 6)Melodrama & Nocturne
   7)Wedding March 8)Funeral March and Dance of Clowns 8)Melodrama & Finale
 Richard Wagner(1813-1883)
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-2528 LP (The Flying Dutchman)
  2.The Flying Dutchmann Overture [1970.2.4]
  3.Prelude (ActIII) from "Lohengrln" [1972.4.25]

  1.Judith Blengen(Soprano),Frederica von Stade(Mezzo-soprano)
    Women's Voices of the Mendelssohn Club of Philadelphia, Robert E. Page(Director)
 [2.=世界初CD化]

オーマンディ=フィラデルフィアの魅力が最大限に発揮された、夢幻的な「真夏の夜の夢」
  「真夏の夜の夢」は、オーマンディお得意のレパートリーで、LP発売当初から決定盤としての高い評価を得ていた名盤。ブレゲン、フォン・シュターデという当時若手の美声歌手を用いてオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団が描き出す妖精の世界は夢幻的な美しさを誇る。併録のワーグナー2曲のうち、「さまよえるオランダ人」はオーマンディ唯一の、「ローエングリン」は3回目の録音である。

【管理人より】
  「真夏の夜の夢」は、早熟の天才 Mendelssohn が若干17歳の1826年に序曲が、そしてその17年後の1843年になってそれ以外の部分の曲が作られている。Mendelssohn は終生、この「真夏の夜の夢」序曲を超える曲を作ることが出来なかったと言われる程この曲は素晴らしい。とはいえ、序曲以外の曲も素晴らしい。特に、ソプラノとメゾソプラノの2重奏と女性コーラスが加わる "You spotted snakes" や "Nocturne"の美しさは幻想的と言っても過言では無いと思う。"You spotted snakes" でソプラノとメゾソプラノが "philomel, with melody, Sing in our sweet la lullaby.." と(CDではドイツ語で)歌う部分はうっとりとしてしまう。ブレンゲンとシュターデの歌も文句なし。この演奏が国内で一部の曲しかCD化されなかったのは非常に残念だ。ただ、この演奏はドイツ語で歌われており歌詞対訳もないので歌の詳細はよく分からない。Klemperer/Philharmonia盤は英語で歌っているし。Shakespeare の戯曲は英語だと思うが、ドイツ人の Mendelssohn はドイツ語訳で作曲したのだろうか?個人的には、ドイツ語の方が雰囲気があって良いと思うが・・・。それにしても入門者向けのシリーズなのだから歌詞ぐらい付けて欲しいと思う。グリーグの「ペール・ギュント」もここでとやかく言う必要のない名演。
  なお、後日入手したオリジナルLPの Producer's Note(J.David Saks)には、ormandy と RCA Red Seal が「真夏の夜の夢」の2つの歌曲を英語と独逸語どちらで歌うかを検討した経緯が記載されており興味深い。また、とじ込みとして、 Geroge R. Mark によるエッセイと歌詞(独逸語、英語対訳付き)が付いているのも嬉しい。CD化の際に外されたのは残念。今回のCD化では如何に?




●BVCC-38286
 Richard Wagner(1813-1883)
   Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3264 (C)1972 LP
  1.Die Walkure:ActII
   1)Ride of the Valkyries [1969.10.1]
   2)Magic Fire Music [1971.3.15 & 16]
  2.Siegfried:ActII, Forest Murmurs [1969.10.1]
  3.Das Rheingold, Invocation of Alberich and Entrance of the Gods into Valhalla
    [1971.3.15 & 16]
  4.Gotterdammerung
    1)Prologue:Dawn and Siegfried's Rhine Journey  [1971.3.15 & 16]
    2)ActIII:Siegfried's Funeral Music [1971.3.15 & 16]
    3)ActIII:Immolation Scene(Finale) [1971.3.15 & 16]

オーマンディの選曲により、コンパクトに辿れる壮大な指環物語
  オーマンディは、RCAステレオ時代に、ワーグナーの管弦楽曲集を3枚録音している。当アルバムは、RCA復帰後すぐに録音された「ニーベルングの指環」からの管弦楽名曲集で、オーマンディによってLP表裏約60分に収まるように配列・抜粋されている。LP時代には、セル=クリーヴランドによる同様の録音と並んで、「言葉のない指環」としては愛聴されたアルバムである。LP時代と同様の曲順でCD復刻されている。

【管理人より】
  ormandy/philadelphia の Wagner は一般的にあまり認知されていないようですが、なかなかの名演ぞろいです。「ニュルンベルグの名歌手」第1幕への前奏曲は Rgner/Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin(独Berlin Classics 0093512BC (P)1979 (C)1998)の名演に華やかさを加えたような仕上がりだし、この「ニーンベルグの指輪」のハイライト集も「ラインの黄金」から「神々の黄昏」まで暖かく豊かなサウンドでありながら凄まじい迫力で迫ってきます。(Mason Jones の Horn, Seigfried's Horn Call は切れが良く素晴らしい。ただし、普通 Horn を目立たせる場面で Cello とブレンドさせる音作りはやはり ormandy ならでは。 )「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲と愛の死」も濃厚な Wagner の世界を作り出しています。
  オーマンディ掲示板でも話題になった、「ラインの黄金」の「アルベリヒの呪い」という普段ちょっと聴くことのない部分も含まれていて興味深いものがあります。今回目出度くオリジナルLPの構成そのままの形で「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」のラインナップに加えられることになりました。(米CD盤に含まれていた「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」は第2弾にてCD化されていることもあり、第3弾の復刻からは除外されています)





●BVCC-38287
 Richard Strauss(1864-1949)
  1.Also Sprach Zarathustra [1975.2.26]
   Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-1220 (C)1975 LP
  2.Don Quixote [1972.1.19]
   Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-2287 (C)1977 LP
  2.Samuel Mayes(Cello)、Joseph de Pasquale(Viola)
    Norman Carol(Violin)
[2.=世界初CD化]

フィラデルフィア管弦楽団の総力を結集したシュトラウスの名曲2曲
  オーマンディ=フィラデルフィアによるR.シュトラウス作品の録音は、この名コンビの魅力を最大限に発揮させた名演ぞろいである。オーケストラの各パートの緻密な雄弁さだけでなく、豪華でありながら決して空疎に陥らない充実した全体の響きは、フィラデルフィアならではである。「ドン・キホーテ」で見事な技巧を聴かせるソリストは、当時のオーケストラの首席奏者達である。「ツァラトゥストラ」は3種類あるうちの2回目の、「ドン・キホーテ」は4種類あるうちの最後の録音となったものである。

【管理人より】
  ormandy の Zarathustra は 1963年のColumbia盤(米Sony Classical Essential Classics SBK47656) と 1979年のEMI盤(米EMI/Angel CDC-7 47636 2) と 1975年のRCA盤の3種ある。個人的には、ormany のみならず他の指揮者の演奏と比較してもこのRCA盤が一番好きだ。ちなみに、2番目は 1944年の strauss/wiener philharmoniker(独Preiser 90216)、3番目は 1962年の Reiner/CSO(BMG/RCA Victor Living Stereo 09026-68638-2) 。
  冒頭の日の出(Sonnenaufgang)が「2001年宇宙の旅」に使用されたせいか、何故かこの曲には漠然とした「宇宙」のイメージが一般的に付きまとうようになった。この曲のレコードジャケットの写真に宇宙から見た地球の写真等が良く使われるのそのせいだろう。(そんなジャケットばかりではないが・・・)この ormandy/philadelphia の RCA盤 もそんな感じだが、このマスクは一体何なのかよく分からない。strauss でも Nietzche でもなさそうだし・・・ Zarathustra のイメージ?
  「癒えゆく者」(Der Genesende) には、トランペット吹きを緊張させる"C-highC"の音の跳躍があり、Reiner と Herseth が激烈なやり取りをしたエピソードもあるくらいの有名な部分だが、この ormandy 盤 のTrumpet、Johnson か Kaderabek のどちらが演奏しているのか私にはよく分からない。(市川さんより、退団半年前のGil Johnsonが演奏しているとのご指摘を頂きました。)
  この曲の一番の聴き所は後半の「舞踏歌」(Tanzlied)以降だと思う。ウィンナワルツを後期ロマン派の衣で覆ったような雰囲気が何とも言えない。この部分を納得させてくれる演奏はそう多くない。私が及第点を与えられるのは3番目のReiner盤までだ。
 「舞踏歌」にもトランペットの"C-G-C"の音の跳躍があるが、他の演奏では目立たせることが多いこの部分、この ormandy盤 では実はあまり目立たない、というか意図的に控えめに演奏させているように思える。金管よりも弦を優先させる、如何にも ormandy らしい音作りだと思う。弦セクションは本当に特筆に値する出来だと思う。ただ、Trumpet solo に若干生彩を欠く部分もあり「夜に彷徨う者の歌」(Nachtwandlerlied)の短いソロは殆ど聴こえない。それはともかく、Norman Carol の Violin Solo は見事であり、驚異的なメロディックさでとかく崩れやすいこの曲の要所要所でオーケストラを纏め上げるティンパニもさすが、の名演。




●BVCC-38288〜38289 [2CDs]
 Peter Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
  1.Symphony no.1 in G minor Op.13 "Winter Dreams" [1976.10.11]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-3063 LP(C)1979
  2.Symphony no.2 in C minor Op.17 "Little Russian" [1976.1.7]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-3352 LP(C)1980
  3.Symphony no.3 in D major Op.29 "Polish" [1974.10.28 & 29]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-4121 LP(C) 1981
[全曲世界初CD化/2&3=日本初発売]

オーマンディ・ファン待望のチャイコフスキー初期交響曲・ついに国内盤で登場
  オーマンディはRCAに復帰後、「マンフレッド」も含むチャイコフスキーの交響曲全集を録音しているが、そのうち交響曲第2番と第3番は日本では未発売に終わったため、当シリーズの第1回以来、オーマンディ・ファンからCD復刻の要請が最も高かったアイテムの一つである。いずれもオーマンディにとっては唯一の録音となった貴重な演奏で、オーマンディの晩年様式ともいえる悠々たる音楽の運びの中で美しい響きが紡ぎ出されてゆく名演ぞろいである。

【管理人より】
  (一般に)知られざるチャイコフスキー初期交響曲の超絶名演がこの3枚。スケールの大きい老練かつダイナミックで若々しい(矛盾に満ちた表現ですが他にうまい形容が見つからないので)、他では実現不可能な演奏がここに。昔高校の吹奏学部で「冬の日の幻想」の4楽章を演奏したことがあるので、この曲には特に想い入れがありますが、夢見るような3楽章や和音の大音響で閉じるド迫力の終楽章は本当に「すごい」の一言。「小ロシア」・「ポーランド」もいずれ劣らぬ名演揃い。
  「小ロシア」も凄い演奏だ。フォルティッシモの和音の開始から怒濤の迫力のフィナーレまで驚愕の連続の名演が展開される。曲が習作の域を出ていないので未熟な演奏では正直聴くのがつらいが、ormandy/philadelphiaにより曲そのもの魅力が数段高くなったようにさえ感じる。怒濤のフィナーレは「冬の日の幻想」を上回る出来であり、「美しさ」と「豪胆」というお互い反発するような要素が見事なまでに融合している。メロディックなティンパニは本当に驚異的だ。こんなの聴いたら他のが聴けなくなってしまう。





●BVCC-38290
 Peter Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
  1.Symphony no.4 in F-minor Op.36 [1973.5.9]
  Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-0665 (C)1974 LP
 Sergei Prokofiev (1891-1953)
  2.Symphony no.1 in D major Op.36 "Classical" [1972.1.12]

オーマンディが秘術の限りを尽くして描き出すロシアの2大交響曲
  オーマンディの十八番である2曲の交響曲をカップリング。ロシア音楽とオーマンディの相性の良さはよく知られいるところで、いずれの作品においても、モノラル〜ステレオを通じて4種類の録音が残されており、当アルバムはそれぞれの最後の録音にあたる。チャイコフスキーでは、悲劇的な開始から歓喜のフィナーレにいたる作曲者の音楽設計の妙を、プロコフィエフでは、全曲にあふれる愉悦感を、それぞれ巧みに表出し、聴く者をオーマンディ・サウンドの魅力に引き込んでゆく。




●BVCC-38291[世界初CD化]
 Peter Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
  "Manfred" Symphony [1976.10.27]
  Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-2945 (C)1979 LP
チャイコフスキーの交響曲の中で最大規模の編成を誇る「マンフレッド交響曲」の名盤
  これもオーマンディにとって唯一の録音となったもの。バイロンの戯曲をもとにして作曲された標題音楽的趣きを持つ「マンフレッド交響曲」は、チャイコフスキーのオーケストラ曲の中でも省みられることの少ない作品である。当盤は、トスカニーニ=NBC盤、マルケヴィッチ=ロンドン響盤、マゼール=ウィーン・フィル盤、ティルソン・トーマス=ロンドン響盤などと同様、西欧風に洗練されたチャイコフスキー解釈の最右翼に属する名演であり、CD復刻が待ち望まれていたもの。カットなしの全曲盤である。




BVCC-38292[一部世界初CD化]
 Peter Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
 Ballet "Swan Lake" (Excerpts by Ormandy) [1972.9.26 & 27]
 米RCA Red Seal R114351 (C)1973 LP
  1.ActI: Scene, Waltz, Pas de trois
  2.ActII: Scene, Pas de deux, Dance of the Little Swans, coda
  3.ActIII: Spanish Dance, Neapolitan Dance, Hungarian Dance, Mazurka
    Pas de deux(The Black Swan), Variation I
  4.ActIV: Dance of the Little Swans, Finale

これぞオーマンディ=フィラデルフィアの真骨頂、豪壮華麗繊細なチャイコフスキーのバレエ
  オーマンディはRCAに復帰後、チャイコフスキーの3大バレエを、それぞれLP1枚両面に収録できる長さに抜粋した組曲の形で録音している。これまでは「3大バレエ・ハイライト」として何度もCD発売されてはいたが、オリジナルの形で復刻されるのは今回が初めてである。




●BVCC-38293[一部世界初CD化]
 Peter Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
 Ballet "Sleeping Beauty" (Excerpts by Ormandy)[1973.1.15,16&23]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-0169 LP (C) 1974
  1.Introduction, 2.prologue:Pas de six
  3.ActI: Waltz, Pas d'action:Rose Adagio, Dance of Maids of Honor and Aurora's Variations   4.ActII: Panorama
  5.ActIII
     March
     Pas de quarte:VaritationII(The Silver Fairy);VaritationIV(The Diamond Fairy);Coda
     Pas de quarte
       VariationI(Cinderella and Prince Fortune)
       VariationII(The Blue-bird and Princess Florine)
       Coda
     Pas de deux:Adagio
     Apotheosis

これぞオーマンディ=フィラデルフィアの真骨頂、豪壮華麗繊細なチャイコフスキーのバレエ
  オーマンディは、チャイコフスキーのバレエ音楽の全曲盤の録音は残さなかったが、SP時代からさまざまな形で組曲や抜粋の録音を行なってきた。「眠りの森の美女」も、コロンビア時代にモノラル・ステレオの2種類の録音があり、当盤はオーマンディにとって最後の録音となったものである。音楽の宝石箱のようなチャイコフスキーの見事なオーケストレーションが、フィラデルフィア管弦楽団のヴィルトゥオーゾ・プレイヤーたちによって次々と開陳されていくさまは、圧倒的としか形容できない。

【管理人より】
  希代のメロディーメーカーであるチャイコフスキーの3大バレエを ormandy/philadelphia の演奏で聴けるというのは何と贅沢なことだろうか。ハイライト盤であり全曲盤ではないのが残念だが。
  「くるみ割り人形」は12曲の「組曲」が良く聴かれるが、魅惑的なメロディーはその組曲以外の部分の方が多い。「冬の情景」「雪片のワルツ」そして Pas de deux のコーダ(ドシラソファミレドの下降音階を感動的な曲に仕立て上げてしまったチャイコフスキーに脱帽!)など美味しい部分は組曲からごっそり抜けている。国内盤でハイライト盤がCD化されたので、是非聴いていただきたいと思う。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」も今回のCD化でハイライトの演奏全てが聴けるのでこれまた必聴。





●BVCC-38294[全曲世界初CD化]
 Reinhold Gliere (1875-1956)
  1.Symphony no.3 in B minor Op.42 "Ilya Murometz" [1971.10.6]
    米RCA Red Seal LSC-3246 (C)1972, 英RCA Red Seal SB-6859 (C)1972
    I.Wandering Pilgrims:Ilya Murometz and Svyatogor
    II.Solovei, the Brigand
    III.Festival in the Palace of Prince Vladimir
    IV.The Heroism and Petrification of Ilya Murometz
 Sergei Rachmaninoff(1873-1943)
  2.Three Russian Songs for Chorus and Orchestra Op.41[1973.3.24]
     (English Translation by Kurt Schindler)
    Originally Released as 米RCA Red Seal ARL1-0193 (C)1974
    I.See! A Wooden Bridge is Jutting
    II.Oh, My Johnny
    III.Quickly,Quickly,from My Cheeks the Powder Off
  2.Mens of Temple University Choirs,Robert E. Page(Director)

ストーリー・テラーとしてのオーマンディの見事な手腕を刻印した「イリア・ムーロメッツ」
  ロシアの実在の英雄、イリア・ムローメツの冒険物語を、親しみやすいオーケストレーションで音楽化した「イリア・ムーメッツ」は、ロシアのロマンティックな民族主義に根ざしており、バレエ「赤いけしの花」(「ロシア水兵の踊り」が有名)や「コロラトゥーラ・ソプラノと管弦楽のための協奏曲」と並ぶ、グリエールの代表作。フィラデルフィア管弦楽団は、SP時代にストコフスキーの指揮で録音を行なっており、オーマンディの指揮ではコロンビアへのモノラル盤とRCAのステレオ盤(当アルバムに所収)がある。多彩なオーケストラのパレットを使って描かれる標題音楽を、オーマンディ=フィラデルフィアが見事に音化している。




●BVCC-38295
 Sergei Prokofiev(1891-1953)
  1.Symphony no.5 Op.100 [1975.9.30]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-1869 (C)1977 LP
  2.Peter and the Wolf Op.67 [1975.10.8 & 1977.11.17 & 19]
    
    Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-2743 (C)1978 (LP:Green Record) 

[演奏]
  2.デイヴィッド・ボウイ(語り)
[1.=世界初CD化]

オーマンディ=フィラデルフィアによる1970年代最大の名盤、プロコフィエフの「第5」
  このオーマンディによる1975年録音は、プロコフィエフの7曲の交響曲の中で最も長大な第5番の決定盤である。オーマンディにとってはコロンビア盤以来2度目の録音となり、1970年代のオーマンディ=フィラデルフィアによる数々の録音の中でも最高傑作の一つにあげられる。「ピーターと狼」も2度目の録音だが、ここではデイヴィッド・ボウイがナレーションをつとめているのがききもの。フィラデルフィアの華麗なソリストたちがボウイの巧みな語りをバックアップし、見事なストーリー・テラーを演じている。




●BVCC-38296[全曲世界初CD化]
 Sergei Prokofiev(1891-1953)
  1.Alexander Nevsky, Cantata Op.78 [1974.10.24 & 1975.2.26]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-1151 (C)1975
   I.Russia under the Mongolian Yoke
   II.Song about Alexander Nevsky
   III.The Crusaders in Pskov
   IV.Aries,Ye Russian People
   V.The Battle on the Ice
   VI.The field of the dead
   VII.Alexander's Entry into Pskov
 Sergei Rachmaninoff(1873-1943)
  2.The Bells Op.35 (English Translation by Fanny Copeland) [1973.3.24]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-0193 (C)1974
   I.The Silver Sleigh Bells
   II.The Mellow Wedding Bells
   III.The Loud Alarum Bells
   IV.The Mournful Iron Bells

[演奏]
  1.The Mendelssohn Club of Philadelphia/Robert E. Page(Director)
    Betty Allen(Mezzo-soprano)
  2.Men of the Temple University Choirs/Robert E. Page(Director)
    Geroge Shirley(Tenor),Phylilis Curtin(Soprano),Michael Devlin(Baritone)

初演者オーマンディならではの手腕が発揮された雄大な「アレクサンドル・ネフスキー」
  プロコフィエフとラフマニノフの代表的な合唱付きの大作をカップリング。13世紀に実在したノヴゴロドの英雄アレクサンドル・ネフスキーの物語を巨匠エイゼンシュタインが映画した際に、その伴奏音楽として作曲されたものから作曲者自身がオラトリオとしてまとめたものである。オーマンディはアメリカでのコンサート初演と世界初録音を指揮している。一方エドガー・アラン・ポーの同名の詩に基づいて作曲された「鐘」は、人間の一生の4つの局面を扱った作品。いずれもオーマンディ2回目の録音で、混声合唱を含む大規模な編成の曲を鮮やかにさばいてゆくオーマンディの手腕は見事の一言に尽きる。

【管理人より】
  今回初めてCD化される、プロコフィエフの「アレクサンドル=ネフスキー」です。このジャケットの作曲家の表記は"Prokofieff"で他のレコードでは"Prokofiev"になっています。ロシア人のアルファベット表記はその出典などで微妙に異なるので、少々注意が必要なようです。
  1939年にこのカンタータの形にまとめられてロシアで初演され、アメリカでは1943年に Leopold Stokowski/NBC SO によりラジオ放送による初演(?)が行われ、その2年後に ormandy/philadelphia によるコンサート初演と世界初録音(米Columbia ML4247, Jennie Tourel,The Westminster Choir, sung in English)が行われました。その30年後の1974-75年の録音がこのレコードとなるわけで、歴史の重みが感じられるではありませんか。なお、この演奏はロシア語で歌われています・・・が、ロシア語の歌詞は掲載されておらず英語の歌詞のみが記載されており、せっかくのロシア語がよく分からないという不満もあります。しょうがないので、Abbado/LSOのDGG盤の対訳を見ながら聴きました。
  13世紀中頃の英雄"Alexander Nevsky"の名前は1240年のネヴァ河の戦い(スウェーデン人の侵攻に対する戦い?)の勝利により「ネヴァ河のアレクサンドル」という名が付いたようですが、Grand Duke Alexander Yaroslavich of Vladimir(ウラディミール大公 アレクサンドル=ヤロスラヴィッチ)という名が示すとおりロシア大貴族の家系です。La Noblesse de Russie(「ロシア貴族」ロシア貴族連合系譜協会会長 ニコライ=イコニコフ編)等の資料で彼の家系を現代まで降りていくと面白い歴史が見れるかもしれませんね。
  冒頭の「モンゴル圧制下のロシア」は高弦の悲壮な音で始まります。これは面白い音の効果で、プロコフィエフのユニークさが最初から現れていますね。「ネフスキーの歌」はいかにもロシア風と言いたくなるような雄大な歌で、Paul Krzywicki による Tubaの見事な演奏が聴き物。彼の音が曲をぐいと引き締めています。「プスコフの十字軍」の抑圧された重苦しさから一転して「立ち上がれ、ロシア人民よ」で荒々しい合唱とともに重量感のあるオーケストラが迫ってきます。もっとも長いセクションの「氷上の戦い」では全てが総動員されて一つのクライマックスが築き上げられ、戦いの勝利を示す聖歌が静かに歌い上げられます。その後、「死の荒野」でベティ=アレンが逞しい声で戦争の後の惨状を歌い上げます。これはなかなか感動的ですよ。最後の「プスコフの入場」はネフスキーのテーマが高らかに歌い上げられ、勝利と母なるロシアの大地の祝福の歌で幕が閉じられます。
  録音は映画音楽ということが意識されているのか、他の曲の録音とはかなり異なるバランスで録音されているようです。オンマイクでかなりバランス操作しているようです。合唱の声も荒れ気味ですが、それが逆に迫力を生み出している面もあります。CD化でどの程度音質が改善されるか興味深いですが、いずれにせよ、ormandy/philadelphia のスケールの大きな名演に圧倒されます。(2003.11.22)



●BVCC-38297
 Sergei Rachmaninoff(1873-1943)
  1.Piano Concerto no.3 in D-minor Op.30 [1975.2.12]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-1324 (C)1976
 中央楽団集団創作(Central Philharmonic Society of the People's Republic of China)
 composed by Yin Chengzong, Chu Wanhua, Sheng Lihong, Liu Zhuang
  2.ピアノ協奏曲「黄河」(Yellow River Concerto) [1973.10.10]
  Originally released as 米RCA Red Seal ARD1-0415 (P)1974 (Quadraphonic LP)

[演奏]
  1.Vladimir Ashkenazy(Piano)
  2.Daniel Epstein(Piano),Murray Panitz(竹笛,Bamboo Flute),Hauman Lee(琵琶,Pipa)
 [2.=日本CD化]

アシュケナージとオーマンディ唯一の共演となったラフマニノフの名盤
  ストコフスキー時代からフィラデルフィア管弦楽団はラフマニノフの作品を積極的に取り上げており、オーマンディも作曲者本人とピアノ協奏曲(第1番・第3番・第4番)の録音を残している。このピアノ協奏曲第3番は、オーマンディとアシュケナージとの唯一の共演となった記念碑的演奏で、オーマンディにとっては作曲者自作自演に次いで2度目の、アシュケナージにとってはフィストゥラーリおよびプレヴィンとの共演盤に続く3度目の録音。カップリングのピアノ協奏曲「黄河」は、1973年のオーマンディ=フィラデルフィアによる歴史的な中国公演の直後に録音されたもので、おそらく西側の演奏家によるこの作品の初めての録音なったもの。

【管理人より】
  さて、AshkenazyとOrmandyのこの演奏、以前米BMG/RCA Victorから"Rachmaninoff in Hollywood"(09026-68874-2,(C)1977)というタイトルでCD化されていました。これは、"America's Best-Selling Music Series"というもので、恐らく映画「シャイン」のヒットを受けて制作されたCDでしょう。この曲の他に他の演奏家によるものの寄せ集めの、妙なイラストが焼きついています。

  それはさておき、Ormnady/Philadelphia によるこの曲の唯一のステレオ録音という貴重なもの。Columbia では1・4番と「パガニーニの主題による変奏曲」を Entremont とステレオ録音しています。肝心の2・3番は Columbia の A&R の方針のせいか、Bernstein/NYP と録音しているようで(うろ覚えの記憶なので・・・どなたかご存じの方、教えてください)、優遇されていた彼らのワリをくった(一説には、Bernsteinは自分の録音したい物を好きに録音できるという契約を交わしていたとのこと)ということかもしれません。RCAに於いては、Rubinsteinと2番を、Cliburnと「パガニーニの主題による変奏曲」を、そしてHorowitzとNYPとで3番をステレオ録音しているのはご存じの通り。

  さてこの演奏、猪突猛進とは程遠い、実に落ち着いた、細部まで注意を払った演奏ではないでしょうか。ピアノもオーケストラもじっくり鳴らす・・・そういう演奏と言えるでしょう。ただ、この時Ashkenazyはまだ20代、後年のHaitink/Amsterdam(この演奏は好きですよ)との演奏に較べると、テンポを揺らしているのがぎこちなかったりあまり効果を上げているとは思えないような部分が散見されます。しかし、それにぴったり離れず伴奏しているOrmandy/Philadelphiaは流石というところ。軽やかなブラスはphiladelphiaならではでしょう。他の演奏ではぱっとしないブラスもこの演奏では素晴らしく聴こえます。Jay David Saksによれば、この録音は日で仕上げたとのこと。独奏者もオーケストラも指揮者も一流でなければ出来ないことで、本当に驚きです。

  「黄河大合唱」(Yellow River Cantata)をピアノ協奏曲に編曲したのがこの「黄河協奏曲」。1970年代当時は作曲者は明らかにされず、「中央楽団集団創作」による作曲とされていた。しかし、10年前に発売されたNaxos盤では複数の作曲者が明記されている。原曲である「黄河大合唱」は1938〜1940の間に 光未然の詩に星海が曲を付けたものであり、当然のことながら「反日・抗日」「愛国心」の精神が強烈に刻まれており、恐らく日本では今後も殆ど演奏されないと思う。原曲は7曲だが、協奏曲は4曲にまとめられており、原曲に加え「東方紅」と「國際歌」も引用されている。「黄河大合唱」は発想記号的に「抗日進軍」とか「毛澤東万歳!」というフレーズがちりばめられているということだが、楽譜がないのでどこがそうなっているかはよく分からない。

  「黄河協奏曲」は、中国情緒と派手なピアノ技巧が盛り込まれた聞きごたえのあるもので、時々苦笑的な展開はあるものの、2曲目の「黄河頌」や3曲目の「黄河怨」などのメロディーは胸にぐっと来るものがあり、親しみやすさと感動的な面において傑作だと思う。「反日・抗日」の曲だからといって聴かないのはもったいない。すばらしいメロディーの曲として予備知識がなくても十分楽しめる。しかし、どうせなら歴史的背景を知ってから聴く方がより感動できると思う。

  さて、このD.Epstein のormandy/philadelphia盤、中古LPでしか入手出来ないのが残念だがこの曲の最高演奏と言える。4曲目の颯爽とした快速テンポによる気持ち良さは他の演奏の到底及ぶところでは無い。 これは「黄河協奏曲」ファンなら是非入手したい逸品。ormandy/philadelphia は1973年に西側のオーケストラとして初めて中国への演奏旅行を行っており、この演奏はその帰国後に録音されたもの。ormandy と 紅青との写真は歴史の重みを感じさせる。その後の紅青の運命を考えると・・・。(河協奏曲、西洋風中華音楽も宜しかったらどうぞ)






●BVCC-38298[世界初CD化]
 Dmitri Shostakovich(1906-1975)
 Symphony no.13 in Bflat minor Op.113 "Babi Yar" [1970.1.21 & 23]
   
 "Capacity audiences first in Philadelphia, then in Manhattan, roard approval of Shostakovich's grim, powerful music
  and offerrd special bravos to Ormandy and black, Slavic sound of Finnish baritone Tom Krauss."
  -Time, Feburyary 2, 1970
  Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3162 (C)1970
  (photo, left:LP, right:Dmitri & Gene)

   I.Babi Yar, II.Humor, III.At The Store, IV.Fears, V.A Career

 [演奏]
  Tom Krause(Baritone)
  Male Chorus of the Mendelssohn Club of Philadelphia/Robert E. Page(Director)

時代を語る問題作「バービー・ヤール」の西側初録音
  オーマンディは、ショスタコーヴィチの音楽を早くから積極的に取り上げており、交響曲第4番・第13番〜第15番、チェロ協奏曲第1番などの西側初演と初録音を行なっている。ユダヤ人問題を扱ったエフトゥシェンコの詩にもとづいて1962年に作曲された交響曲第13番「バービイ・ヤール」は、詩と音楽が見事なまでに一体化した痛烈な作品であるが、ここでは、トム・クラウゼの見事な独唱と、ショスタコーヴィチのオーケストレーションを見事なまでに再現するフィラデルフィア管弦楽団の音楽性が素晴らしい。待望のCD化である。







●BVCC-38299[世界初CD化]
 Dmitori Shostakovich(1906-1975)
  1.Symphony no.14 in G minor Op.135 [1971.1.4 & 6]
  Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3206 (C)1971 LP
  "...as rich, powerful and personal as anything this remarkable composer has given the world" -The New York Times
  "...Mr. Ormandy, who was made for music like this, conducted the 23 members of the Philadelphia Orchestra and
   his solists with complete finesse." - Harold C. Schonberg, New York Times

  I.De Profundis II.Malaguena III.Lorelei IV.The Suicide V.On Watch
  VI. Madam, Look! 
  VII.In Prison VIII.The Zaporozhian Cossack's Answer to the Sultan of Constantinople
  IX.O Delvig,Delvig! X.The Death of the Poet XI.Conclusion

 Benjamin Britten(1913-1976)
  2.From "Peter Grimes" [1976.9.26]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-2744 (C)1978 LP
   1)Four Sea Interludes Op.33a
   I.Dawn II.Sunday Morning  III.Moonlight IV.Storm
   2)Passacaglia Op.33b

  [演奏]
    Phyllis Curtin(Soprano),Simon Estes(Baritone)

人間の死と真摯に対峙する2人の作曲家の名作をカップリング
  ショスタコーヴィチの交響曲第14番は、人間の死をテーマにした11の詩にもとづいて1969年に作曲されたもので、2人の独唱者と室内オーケストラという比較的小さな編成の作品。フィリス・カーティンとサイモン・エステスという表現主義的な歌手2人の名唱を得て、オーマンディは室内楽的編成のオーケストラから緊迫感あふれる音楽を引き出している。併録は、ブリテンの代表作「ピーター・グライムズ」からのオーケストラ曲の抜粋である。いずれもオーマンディ唯一の録音。

【管理人より】
  1971年元日に Academy of Music にて Ormandy/Philadelphia により ショスタコービッチの「死者の歌」(といっても「死者の歌」という題はどうも日本のみで通用するようで、英語ではそのような標記は無い。)が米国初演された。確かに、解説で市川さんが指摘されていたとおり「新年に演奏する曲としては、これ以上相応しくない曲はないと思われる・・・」と言える陰々滅々の曲だ。この10年前にアメリカの秘密部隊がベトナムに派遣され、'63年ケネディー暗殺、'64年トンキン湾事件によりアメリカのベトナム介入が本格化、翌年北爆開始、'68ソンミ村虐殺事件、'69アメリカ国内企業連続爆破事件(何とRCAもその標的にされた)・R.M.ニクソン大統領就任(ormandy/philadelphia は彼のお気に入り。ウォーター・ゲート事件で失脚したが、この人、ベトナム戦争集結や中国との国交樹立等イメージに比して結構平和的な実績をあげている。逆に人気のあるケネディーこそ史上もっとも危険な大統領だったという見方もあるので、歴史の事実は一筋縄では行かないようだ)、'73米軍撤退という歴史の中で、アメリカ国内に暗い影が覆っていたことは否めまい。それを敏感に感じとってこの曲を取り上げたのかも・・・・知れませんが、さて、どうでしょうか?(手塚治虫氏の「雨のコンダクター」にも通じる話ですな。あの中のマエストロは気の毒な役回りでしたが・・・)

  今回ポケットスコア片手に初めてこの曲を聴きましたが、歌の雰囲気がなんとなくグレゴリオ聖歌のように響くように感じるのは私だけでしょうか?全く以てユニークな曲です。録音も結構優秀でヘッドホンで聴くと周囲の車のエンジン音まで聴き取れます。小編成だからマイクセッティングやミキシングがシンプルなのが良い結果を生んだのでしょうか?(あくまで推測です)何にせよ、歴史的な演奏であり、録音も良く、しかも Ormandy/philadelphia の優秀な弦楽セクションの室内楽的で精緻な演奏を堪能できるという希有なCDではないでしょうか。カーティンとエステスのソロも素晴らしい出来だと思います。

  カップリングの「ピーター=グライムズ」もこれまた新年に相応しくない非常に暗い物語ですが、ここで聴くことの出来る演奏は非常に颯爽とした爽やかなもので、あまりおどろおどろしさを感じることはありません。選曲がそうなのかもしれませんが。この曲も Ormandy/Philadelphia の実力の程を十分堪能できます。ブリテンには歌劇「グロリアーナ」というもっと明るい劇もありその田園曲(Country Dances)など思わず口ずさみたくなるような愉快な曲なので、その曲もこのコンビで聴いてみたかった。




●BVCC-38300
 Dmitri Shostakovich(1906-1975)
  1.Symphony no.15 in A major Op.141 [1972.10.4 & 5]
    
   Left:CRL3-1284 In Memoriam Dmitri Shostakovich, The Last Three Symphonies(3LPs,(C)1975)
  Right:Originally released as 米RCA Red Seal ARD1-0014 (C)1972 Quadraphonic-LP
 Bela Bartok(1881-1945)
  2.Four Pieces for Orchestra Op.12,Sz.51 [1969.11.10]
  Originally Released as 米RCA Red Seal LSC-3159 (C)1970 LP
  I.Preludio
  II.Scherzo
  III.Intermezzo
  IV.Marcia funebre

[ショスタコーヴィチ=日本初CD化/バルトーク=世界初CD化]

オーマンディ=フィラデルフィアが総力を結集して挑んだ、20世紀オーケストラ曲の問題作
  当アルバムの2曲は、いずれもアメリカでの初演直後に録音されたものである。ショスタコーヴィチの最後の交響曲となった交響曲第15番は、過去の自作やベートーヴェン、ロッシーニ、ワーグナーなどの作品からの引用がコラージュのようにちりばめられた回顧的作品。バルトークの「4つの管弦楽曲」は、RCA復帰初期の名盤のひとつで、オーマンディによって蘇演された直後に録音されている。




●BVCC-38301
 Charles Ives(1874-1954)
  1.Symphony no.2 [1973.2.7]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-0663 (C)1974
  2.Symphony no.3 "The Camp Meeting" [1968.10.3]
   Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3060 (C)1969 LP
   I.Old Folks Gatherin
   II.Chirdren's Day
   III.Communion

[1.=日本初CD化、2.=世界初CD化]

アイヴズならではの錯綜するオーケストレーションを鮮やかに描ききったオーマンディらしい快演
  アイヴズの交響曲第2番は作曲者の生誕100年を記念して録音・発売された。全曲は5楽章からなり、5曲ある交響曲の中で最も規模が大きく、アイヴズ初期の後期ロマン派の作風と実験的な作品との間の橋渡し的な位置付けができる作品で、他のアイヴズの作品同様、アメリカの様々な音楽が引用・コラージュされている。一方、オルガン曲に起源を持つ交響曲第3番は、最も規模が小さいものであり、コネティカット州のダンベリーで催されたキャンプ集会の印象を描いたもの。いずれもオーマンディにとっては唯一の録音である。錯綜したオーケストレーションを描きわける手腕はオーマンディならではの見事さで、アイヴズ復活に大きな一役を買ったこのコンビによる最良の成果の一つ。




●BVCC-38302[全曲世界初CD化]
 Charles Ives(1874-1954)
  1.Holiday Symphony [1974.10.7]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-1249 (C)1975 LP
   I.Washington Birthday
   II.Decoration Day
   III.The Fourth of July
   IV.Thanksgiving and Forefathers Day
 2.Three Places in New England [1974.12.11]
   Originally released as 米RCA Red Seal ARL1-1682 (C)1976 LP
   I.The "St.Gaudens" in Boston Common
     (Col.Robert Gould Shaw and his Colored Regiment)
   II.Putnam's Camp,Redding,Connecticut
   III.The Housatonic at Stockbridge

[オーケストラ・セット=日本初発売]

静かなるアイヴズ擁護者、オーマンディならではの歴史的なアイヴズ解釈
  「アメリカの休日」は、1903年から1913年にかけて作曲されたオーケストラ曲をまとめたもので、このオーマンディ盤は1974年のアメリカ建国200周年を記念して録音されたもの。「ニュー・イングランドの3つの場所」という副題の付せられたオーケストラ・セット第1番は、1913年から1914年にかけて構成されたもので、このオーマンディ盤は、ジェームズ・シンクレアによるフル・オーケストラ版による世界初録音となったもの。いずれも静かなアイヴズ擁護者だったオーマンディならではの演奏である。




●BVCC-38303[全曲世界初CD化]
 Krzysztof Penderecki(b.1933)
  1.Oratorio"Utrenja,The Entombment of Christ" [1970.9.28 & 10.1]
  Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3180 (C)1971 LP
   I.Tropar II.Velicanija-Psalom 50(51) III.Irmos IV.Irmos V.Irmorogion

 Vincent Persichetti(1915-1987)
   2.Symphony no.9 Op.113 "Janiculum" [1971.3.16]
  Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3212 (C)1971 LP
[演奏]
   1.Stefania Woytowicz(Soprano),Kerstin Meyer(Mezzo-soprano),Seth McCoy(Tenor)
     Bernard Ladysz & Peter Lagger(Basses)
     Temple University Chorus/Robert E. Page(Director),Gail B. Poch(Assistant Director)

同時代の音楽との真摯な取り組んだオーマンディならではの貴重な録音をカップリング
  ポーランドの作曲家ペンデルツキの「ウトレンニャ I〜キリストの埋葬」は、1969年から1970年にかけて作曲された大規模な宗教的オラトリオで、これはアメリカ初演の直後に作曲者の監修で行なわれた世界初録音。一方、フィラデルフィア出身のアメリカの作曲家、パーシケッティの「シンフォニア:ヤーニクルムの丘」は、1969年にローマで書かれた1楽章形式の交響曲で、世界初演の直後に録音が行なわれた。いずれもオーマンディ=フィラデルフィアによるRCA復帰直後に立て続けに収録されたもので、このコンビのレパートリーの幅広さと同時代音楽への積極的な取り組みを記録したものである。

2006年12月15日 追記修正

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