<よいこの音楽べんきょう室・パート8>


                << 気温と音程の関係は? >>


「うー、さびー!ねえ先生、こんなに寒いのに、どうして学校やるの。冬は学校、休みに すればいいのにー」

(お前は冬眠中の熊か!)そんなんで休んでたら、春は眠たい、夏は暑い、秋は寂しい、 って、一年中、学校休まなくちゃいけないでしょ。

「それはそれでいいと思うんだけどなー。あ、でね先生、このクソ寒いのに、ブラスバンド の連中、外で練習してたよ、バカだね、あいつら」

(バカがバカって言うな)あら大変ね、先輩が抜けるから、後輩たち頑張ってるのね。

「そんでね、あいつらが言うには、『外から暖かい部屋に戻ったら、管が延びて音程が下が ると思ったら、逆にあがるみたい、どうなってんの』って焦ってんだけど。あれって、どう なってんのかな」

(あいつら、あいつらって、お前より学年は上だろ!)あらそう、それは、みんなのちょ っとしたお勉強不足ね。

「(お勉強不足!?それ、そっくり熨斗つけて返したるわ)ふーん、どういうことなの」

つまりね、金属の性質や管楽器全体の長さからみると、温度変化による管の伸び縮みって、 わずかなものなの。どんなに楽器の温度が上がっても、音程への影響は、せいぜい2,3セン トってとこなのね。あ、セント(cent)っていうのは、半音の中を100に区切った 単位のことね。

「へー、じゃ気温が100度とか、1000度とか上がっても?」

(そんなに上がったら人間、生きとらんわい!)んー、地球上でそんなに温度変化するこ とはないわね。それに、ポイントは、外気の温度ではなくて、管の中の温度変化なの。つまり、 吹き込む息によって管の中の空気はずいぶん暖まるのね。例えば外気が10度でも、吹い ているうちに管の中は30度近くまで上がるの、そして、それが音程に大きく影響するっ てわけ。

「(お、また、インターネットで仕入れた知識の安売りかい)えーっと、よくわかんない」

(それはこっちもじゃ)そうね、あなたにはちょっと難しいかな。じゃあ、まずは、音の 伝わる速さ、つまり音速っていうのを考えないといけないんだけど、音速には、
音速(/秒)=331.5m+0.6t(t=温度)
って公式があるの。これはつまり、tが大きくなる、すなわち温度が上がれば、音速も速くなる、 ってことね。そういえば、先生が子供のころは、稲光りがして3秒経ってゴロゴロって鳴ったら、約3 40m×3秒=1020mで、雷は1km先で鳴ってる、なんて言ってたわ。今は、そん なこと言ってたら、あっと言う間に、カミナリに打たれて死んじゃうかもね、ハハハ。

「(おいおい、わき道にそれてんじゃねえよ)ねえ先生、それが音程と、どう関係あるの」

(そやった、そやった)んーと、そしてね、実は、音に関する公式がもう一つあってね、
周波数=音速÷波長
というやつ。この場合、周波数=音程で、波長=楽器の管の長さ、のことね。で、この公式からす ると、波長、つまり管の長さは一定だから、音速の値が大きくなれば、周波数が増 える、つまり音程が上がる、ってことになるわけ。

「(どうみても受け売りの知識やん)あ、なんとなく分かった気がする。でも、具体的には、 どれぐらいの温度変化で、どれぐらい音程が変わるの?」

この公式に当てはめて計算した人によると、温度1度に付き約3セント、だそうなの。これ って、けっこう大変。例えば、チューニングする→個人練習で管が暖まる→合奏する、そ の間に管の中の温度が10度上がると、3セント×10=30セント、つまり、半音の3 分の1近くも、音程が上がることになるのね。それじゃ、いいハーモニーはできないわね。 あ、ただし、ビブラフォンとかの打楽器は、温度の影響で材質が伸びて音程が下がっちゃう 、ってことがあるけど。

「へー、そうなんだ。じゃ、ちゃんと楽器が暖ったまってからチューニングしろって、あ いつらに教えてやろ」

そうしてあげてね。あ、それと、あなたの脳ミソも、少し暖めたほうがいいわよ。そのま まだと冬眠しちゃいそうだから。

「そうしま〜す。先生も、寒〜いジョークを暖っためてくださ〜い」

よけいなお世話じゃ。
じゃ、よいこの音楽勉強室、今日はこれまで。まったねー!