<よいこの音楽べんきょう室>

<< バンドの人は自分たちの音がやかましくないの?編 >>

『先生、このあいだジャズバンドのライブを聞きにいったよ。すごく大きい音でビックリ しちゃった。ねえ、バンドの人たちって、自分たちの音がやかましくないの?』

ふーん、ガキのくせにライブに行ったの、よかったわねぇ。そう言えば、最近のライ ブって音が大きくて、先生も引いちゃうことがあるわ。で、そんな時、やってる人は 自分たちの音がやかましくないのか、ってことね。
たとえば、たくさんの人が集まった立食パーティ会場で、お話しをする時にね・・・

『立食パーティって、先生みたいな大人の人が、払った分を取り戻そうとして、ガツガツ食べたり 飲んだりする、パーティでしょ』

ま、そうこともあるわ。そんな騒がしい中でお話しをしても、相手の人の声はよく聞こえる の。ところが、その時のお話しをテープに録って後で聞いたら、何を言ってるのか、ちっ ともわからないのよ、不思議でしょ。どうしてかって言うとね、人間の耳っていうか、脳 は、耳から入った音のうち必要な分だけを選んで、ほかの音は捨てちゃう、ってことがで きるの。テレビでオーケストラの演奏を見てて、クラリネットが映ると、クラリネッ トの音だけが大きく聞こえるような気がするのも、同じことよ。

『へーえ、人間の耳ってすごいんだ!・・・でも、教室が騒がしい時なんか、先生の話 が聞こえないこともあるよ』

それはね、それができるのは、人がそれに集中するからなの。耳だけでなく、目で、口元や 表情、身振りなんかにも集中するから、聞こえるのね。だから、あなたが先生の話が聞こえな いのは、集中していないからなの。今度の通知表に「集中力不足」って書いとくわ。

『(おいおい、ヤブヘビじゃねえか)・・・じゃ、バンドの人も、集中してる、ってこと?』

そういうこと。自分の演奏とか、全体のサウンドとかに集中しているから、やかましく感 じないのね。
でも、脳が集中できるのは、ある程度大人になってからなの。パチンコ屋さんの騒音の 中でも平気でパチンコが打てるのは、集中することができる大人だから。子供はまだそ んな能力がないから、そんな騒音の中に連れて行ったら、耳だけじゃなくて、心まで病気 になっちゃうわ。といって、車の中に置きっぱなしは、もっといけないことだけど。

『あのさー、この前、先生がパチンコ屋さんからタバコくわえて出てくるとこ見たよ。こ れでさっきの通知表の件、チャラにしない?』

ふーん、先生を脅迫するのね。ま、今回は勘弁してあげるわ。
それから、限界を超えた音だと、大人でも、脳が音を捨てちゃうことができなくなって、鼓膜 に障害がでたりするの。ヘッドホンをかけたまま寝ると耳に悪いというのは、集中が途切 れているのに、大きな音が耳元で鳴り続けるからなのね。

『そういえば、会場で寝てる人がいたけど、あれって、いけないことよね、先生』

そうとばかりも言えないわ。それは逆に言うと、音がじゃまにならなくてリラックスして る、ってことだから。日本人って、チケット料金の分だけ聞いたりノッたりしないと損だ、 ってバリバリ集中して聞くのがくせなのね。そうじゃなくて、リラックスして聞くのも大 切なの。「高いステレオ買って、リスニングルームで、ブランデーグラス片手に聞くのが夢だ」、っ て、それも肩に力が入ってる証拠。もっとノペーッと聞くことが、脳のリラックスになる のよ。

『先生、ノペーッて、どんなの?』

ノペーッて言うのは、そうね、ボーッとして、ダラーッとして、フワーッとて・・・

『ああ、いつもの先生のようす、みたいなものね』

(てめえ、ブッ殺すぞ)じゃ、きょうの「よいこの音楽べんきょう室」はこれまで。まッたねー。