<よいこの音楽べんきょう室・パート9>

                   「リズム感覚、タイム感覚」


しぇんしぇ〜い、おはようございます・・・

あら、どうしたの?元気がないわね。まるで借りてきた豚、じゃなくて、えーと、なんだ っけ、ま、なんでもいいけど。いつもの悪ガキっぷりは、どこにいったのかしら。

(借りてきた豚?乙女心をなんと思っとんじゃ!)先生、わたし今、人生に悲哀を感じてる の。

(悲哀?おいおい、お前に一番似合わん日本語じゃ)まあ大変。先生、なんでも相談にのっ てあげるから、どうしたのか、話してみて。

あのね、実は・・・ドラえもんの道具に「タイム・ライト」ってのがあってね、そのライ トを点けると、時間が激流のように流れ去っているのが見えるの。それを見て、ああ、わ たしの青春も知らないうちにどんどん過ぎ去ってるんだ、と思うと、切なくて切なくて・・・。

(このガキゃあ、悩みの元はドラえもんかい!)あらー、そうだったの。でも、大丈夫よ、 そのうち先生みたいに大人になったら、子どものころってバカだったなー、って思えるよ うになるから。ねっ、頑張って。

ふーん、つまり(その成れの果てが先生で、そうならないように)時間を大切にしろ、って ことね、相談してよかった〜。ところで先生、「タイム・ライト」で思い出したんだけど、 ジャズで、リズム感覚とか、タイム感覚とかって聞くんだけど、あれって、どういうこと なのかな。

(いきなりそこに飛ぶんかい!)よかった、ジャズの話ができるぐらいに元気になってく れて。そうね、音楽の三要素って、リズム・メロディ・ハーモニー、って言うぐらいだし、 特にジャズでは、リズムって重要な要素なのね。でも、リズムってなにか、って説明すると なると、けっこう、やっかいなの。

(自分が理解できんことはみんなやっかい、だろ)へー、どういうふうに?

実は以前、先生の生徒のなかに、規則的なリズムで手拍子を打てない子がいたの。で、その子 に『あなたはリズムをどう感じてるの?』って聞いたら、その子は、さっきの「タイム・ ライト」じゃないけど『直線でずーっと横に流れてる、で、それを同じ長さで切るみたい にして手拍子を打ってる』って言うの。つまり、パンと手拍子を打って、同じ時間が経っ たと思うときに、またパンと打ってる、って言うわけ。で、その間隔が同じにならないか ら、いわゆる「手拍子」にならなかったわけ。それを聞いて、『ああ、そういう感覚の子に どうやってリズムを説明したらいいんだろう』、って思ったのね。

ふーん。で、どうしたの。

言葉では、直線じゃなくて同じところをグルグル回る感覚でとか、同じタイミングでパルス を感じるようにとか、一定のきまりで強拍と弱拍を繰り返すのがリズムよ、とか、付け焼 刃的な説明をしたけど。でも、じゃそれを体得してもらうとなると、リズム感が当たり前 のことと思ってる人がそれを伝えるのは大変、ってことがわかったわ。

へー、そうなんだ。ところで話は戻るけど、リズム感覚とタイム感覚、って違うの?

(ガキのくせに細かいこと気にすんじゃねえよ)そうね、リズム感覚というのは、ジャズ に限らず、いろんな音楽のについてのリズムに対する感覚のことをさすわね。それに対して、 タイム感覚というのは、特にジャズの場合に、リズム感覚をさらに突っ込んで解釈した 「ノリ」、のような意味も含めて使われることが多いようね。

ねえ先生、リズムの無い音楽ってのも、あるの?

もちろんよ。たとえば日本の昔からの音楽には、一定のリズム、例えばずっと四拍子、と かじゃなくて「アウンの呼吸」で進行するものが多いし、現代音楽の中には、音符じゃな くて図のようなもので音の長さを指定してある曲もあるのよ。

ふーん、そうなんだ。ひょっとして、そっちのほうがもっと鋭いタイム感覚がいる、のかもね ・・・あ、お昼だ。先生、わたし食事の時間なので、これで失礼します〜。

あら、今日は学校のチャイムが故障で鳴らないのに、よくお昼ってわかったわね。

だって、わたしリズム感がいいから。

リズム感がいい?って、どうゆうこと?

ほら、よく言うでしょ、食事とか睡眠とかの周期のこと。

?・・・そりゃ、リズムはリズムでも、バイオリズムじゃ!先生をおちょくんじゃねえ。
じゃ、よいこのおんがく勉強室、きょうはこれまで。まったね〜。