<熊さん流・ジャズの練習方法(絶対音感)>


熊「オカ〜ン♪、どこにいるんだよー、オカ〜ン♪」
大「ばあさん、家の前が騒々しいと思ったら、熊の野郎だよ。こっち入えれ、何やってん だ、うちの前で」
熊「お、いたな、ラグビー部の給水係」
大「ラグビー部の給水係?なんだそりゃ」
熊「ふふふ、デコボコのやかん頭」
大「大きなお世話だ、まったく。今日は仕事はどうしたんだ」
熊「仕事?ああ、ちょっと熱っぽいことにして、早引きだ」
大「あきれたやつだ。それに、何をオカンオカン騒いでるんだ」
熊「あ、そうそう、よそで聞いたんだ、楽器をやるんなら『絶対オカン』が要るって。大 家さんなら知ってるだろうと思って来たんだ。さあ、出してもらおうか、『絶対オカン』」
大「絶対オカン?そりゃ『絶対音感』じゃねえか?」
熊「・・・ああ、そうとも言ってた。ナンなんだ、それ」
大「なにがそうともだ。絶対音感というのは、例えばピアノの音を聴いただけで、鳴って いるのが何の音か判る、みたいな音感のことだ。しかし、どこで聞いたか知らないが、絶 対音感てのは、楽器をやるのには、特に必要なものじゃない」
熊「えー、それって便利じゃねえか。それが要らねえってえのかい」
大「ああ。絶対音感に対して『相対音感』ってのがあって、こっちの方が大切だ」
熊「ふーん、ナニモノだ、その相対音感ってのは?」
大「例えば、このピアノで、ソラシド、と弾いてみる」
熊「クイズ、空の上には何があるでしょう、はい、答えは、シドです」
大「うるさいな。このソラシ、の後のドは、どんな感じだ?」
熊「どんなって・・・ソラシ、ド〜、だから、これでオシマイー、って感じかな」
大「そうだな。じゃ、次に、ドレミファ、と弾いてみよう。この時の、ドレミの後の、フ ァはどうだ?」
熊「んー、ドレミファ〜、ソ〜、って続く感じだな」
大「そう。そこで、今度はファから弾き始めて、シの音を半音下げて、ファソラ♭シ、 ドレミファ、と弾いてみる。そして、あらためて、ドレミファ、と弾いてみると、どんな 感じだ?」
熊「あ!なんか、ドレミ、ファ〜ってのが、さっきのソラシ、ド〜、みたいに、終わって 聴こえた!」
大「そうだな。実は、ファから始めてシを♭した、ファソラ♭シドレミファ、の並びは、ド レミファソラシドと同じ並び、つまり相対関係になる。で、ドレミファの部分がちょうど、 ソラシドの位置にあたるから、終わった感じになるわけだ」
熊「ふーん。しかし、ドレミファ、はドレミファ、だろ」
大「そこだよ」
熊「どこです」
大「捜すな。そんなふうに、あくまで鍵盤のドレミファとか、またはCDEFと かハニホヘ、これを『音名』というが、そう感じるのが、絶対音感だ。ドはあくまでド、 という意味で『固定ド』とも言う」
熊「ふーん」
大「それに対して、ドレミファだけど、並びでいうと、ソラシド、これを『階名』という が、そう感じるのが相対音感だ。ドと感じる場所が移動するので『移動ド』とも言うな」
熊「ふーん。で、なんで相対音感が大切なんです?」
大「音楽で大切なのは、その曲の感じをつかむことだ。よく、カラオケで、キーを変える ことがあるだろう」
熊「ああ、女のキーじゃ高過ぎたりすることがある」
大「でも、曲の感じは同じだろ。それと同じでドレミファ〜が、曲の中では、おしまい〜、 と聴こえる、演奏する時にも楽器まかせでなく、自分でそう感じて演奏することが重要と いうことだ。相対音感が大切だ、というのは、そういうことだ」
熊「へー、そいつはどっかに売ってない・・・だろうから、どうしたらいいんだ」
大「前に言った音階練習が、相対音感をきちんと感じる訓練になるな」
熊「ねえ、大家さん、俺にも相対音感ってのが、身につくかな」
大「熊さん?熊さんは大丈夫だ」
熊「そうかい」
大「ああ、熊さんはソウタイ(早退)の名人だ」