あるバンドマンの(心の)叫び・・リハーサル編


マネージャー
「おはようございます、今日の菜の花つぼみのマネージャーです、よろしく お願いします」
バンド
「おはようございます(・・って、早過ぎだろ、だいたい、なんでこんな『ターウ』(歌手)の、 リハせにゃいかんの、あー、二日酔いで頭が痛ぇ!)」
菜の花
「菜の花つぼみで〜す、まだ新人ですので、よろしくお願いしま〜す」

バ「はい、よろしくー。じゃいきましょか(・・若ぶってるわりに、ちょっと化粧、濃くない?)」
マ「えーっと、楽譜は順番に並べてありますので。じゃ1曲目、デビュー曲の『あの花い ったいなんの花』から。これは、本番は、『通り』(楽譜に書いてある通りのコーラス数) で、お願いします」
バ「通りね。じゃ今は、『ベタ』(繰り返し記号を無視して書いてある小節のまま)でいこか。 (・・なんちゅう曲名や、早く終わろうや、こんなリハ!)」
菜「すみません、これ、今も、通りでお願いしたいんですけど」
バ「え、ベタじゃいかんの?(・・これのどこがリハ、いるっちゅうの?)」
菜「すみませーん、よろしくお願いしま〜す☆」
バ「はい、じゃ通りで(・・もー、のっけから色仕掛けかい!)」
菜「テンポは、これぐらいで・・・(指パッチンで)」
バ「はい、じゃ行こか、ワン、ツゥー、スリー、フォー、(前奏)〜」
菜「♪ふるさと離れて 東京で
   一人暮らしにゃ 慣れたけど
   路地に咲いてる 白い花
   見れば 母さん 思い出す
   でも、知らないのったら 知らないの
   あの花 いったい なんの花〜♪・・・
あー、ちょっとすみません。あの、もうちょっとテンポ、早目でお願いします」
バ「もうちょっと早目ね(・・お前がテンポ出したんだろうが!)。はい、じゃ次」
菜「あの、すみません、今の、もう一回」
バ「もう一回?(・・え゛〜っ、バンドなめとんのかい!)」
マ「つぼみちゃん、あんまり時間ないから、次、いこか」

菜「えーっと、次は『りんご追分』、これは『ツー』(2コーラス)でお願いします」
バ「ツーね(・・って、これ『フメン』(譜面)通りのベタでツーやろ!だいいち、美空ひば りには、100年早いわい!)」
マ「これ、途中でスローになりますから、つぼみが手振ります。これも、今、楽譜通りで お願いします」
バ「はいはい(・・って、そうにしか吹けんように書いてあるっ、ちゅうねん!)」
菜「♪りんごの・・・・〜(著作権の関係で省略)
   〜津軽むすめは・・・、あー、あのー、テンポ、変わるんですけど」
バ「ん、だから、ちゃんと手、振ってもらわんと(・・あんたが振るてゆうたやろ!)」
マ「つぼみちゃん、テンポをバンドさんに言っといて、バンドさんに合わせたら?」
菜「はい、じゃ、テンポはこれぐらいで・・・(指パッチンで)」
バ「じゃ、ここで、いきなりそのテンポね(・・こいつ、指パッチンだけは、よう鳴るな)」

マ「えーっと、次からは3曲メドレーで、全部ツーでお願いします。つぼみちゃん、これ、 今は全部、一番を歌ったら次の曲に入ろうか」
バ「じゃ今は『ストレート・コーダ』ね。それと、次にいく時は『サンとシーと』(遅い歌 謡曲のテンポの出し方)でいくから(・・あー、腹減ったな〜)」
菜「バンマス、そのお洋服、ステキですね」
バ「え?ああ、ありがとう(・・唐突に何を言い出すかと思ったらー。第一、これ昼間のアル バイトの制服じゃい!)」

マ「最後の曲は、スリーです」
バ「スリーというと、フメン通りね、で、テンポはこれぐらい?じゃ今は『コー ダ・コーダ』(途中を全部抜いていきなり終わりの部分へ跳ぶこと)でいこか(・・早く終わろうぜい!)」
菜「マネージャー、この曲は1回通してやっときた〜い」
マ「これ?ああそうか、これ、昨日のバンドで止まったもんね。すみません、これだけ、通 してもらっていいですかね」
バ「今もフメン通りね(・・止まった?どこにそんな箇所があるん?『タリハ ツ(ハッタリ)』ちゃうん?もー、カンベンしてよ〜)」

菜「今日はありがとうございました。これ、バンドの皆さんで、いただかれてください」
バ「あぁ、ありがとう、ナニかなぁ(・・いただくは謙譲語じゃ、食べるの尊敬語は召し上がる、 ぐらい知っとけー!)」
菜「うちの実家で作ってる、『菜の花つぼみ饅頭』です」
バ「へー。じゃ、つぼみちゃんを食べちゃおっかなー、ハハハ(・・それ、自分とこの商 売モンやないか!第一、バンドの『ビーナカ』(差し入れ)に、お菓子なんか持ってくんなー、 もう、誰か、助けてくれ〜!!)」