今年の年賀状川柳 「龍、竜」


                    今年の年賀状川柳 「龍、竜」


皆さんこんにちは、バンドマン文化講座のお時間です。
さて今回は、今年の干支「龍、竜」をテーマにした川柳をお勉強しましょう。
解説してくださる講師はおなじみ、萬同萬(ばん・どうまん)先生です。では先生、お 願いいたします。

皆さんこんにちは、上から読んでも下から読んでも、萬同萬です。
「川柳は 心にゆとり 脳に知恵」、川柳を学んで心豊かに暮らしましょう。
さて今回は、毎年私が年賀状用に作っている「「年賀状川柳」から、今年の干支「龍、 竜」をテーマにした川柳をご紹介しながら、川柳についてお勉強しましょう。
では、まずはこの川柳から。

【 拝むほど 頭の上がる 相国寺 】
これは、「頭の上がる」がポイントですね。実は、京都の相国寺は「天井の鳴き龍」で 有名なんです。普通は拝めば頭が下がる、ところが相国寺では、天井の鳴き龍の絵の下 でパン、パンと、手を打つと、天井から龍の鳴き声のように音がはね返って来るので、 そのたびに天井を見上げる、つまり拝むほどに頭が上がる、そんな様子を詠んだ句です。

【 不忍の 池に水足す 甚五郎 】
これは、東京の「上野東照宮」にある、名工・左甚五郎が彫った竜が、夜な夜な 不忍池(しのばずのいけ)に水を飲みに行った、という伝説がもとになっています。毎 夜水を飲んだら池が干上がってしまう、だから甚五郎が水を注ぎ足しただろう、と、う がった句ですね。

【 龍の年 天(テン)に昇るか 消費税 】
今年はいよいよ消費税が8%、そして段階的に10%に引き上げられるか、という議論 の年になりそうです。消費税が10%、すなわちテンに昇るかも、という句ですね。

【 総理また 睛 (ひとみ) を描かず アイム・ソーリ 】
最後の仕上げをおろそかにする、ということわざに「画竜点睛を欠く」というのがあり ます。睛はひとみのこと。総理が就任するたびに「アイム・総理」と言う、ところが、 どの総理も最後は「アイム・ソーリー」と言って投げ出してしまう、まさに画竜点睛を 欠く、の実践版です。

【 頭は竜 シッポはどじょうの 頼りなさ 】
「どじょう内閣」は謙虚な表現なのかと思ったら、竜とは比較にならない貧弱な内閣、 のことらしい。「竜頭蛇尾内閣」どころか「竜頭どしょう尾内閣」、では日本のこれから が不安ですね。

【 竜巻に 巻かれて始まる 4人旅 】
竜巻に巻かれる、といえば、思い浮かべるのは「オズの魔法使い」のドロシーのこと。 魔法の国に着いて、ライオン、かかし、ブリキ男と、4人で旅をする物語ですが、こと の始まりは竜巻。ところで、竜巻といえば、杉浦日向子さんの「百日紅」の中で、葛飾 北斎が「(竜巻の)雲の中に爪や鱗がはっきり見えた」と言うシーンがあります。日本 では竜巻は、単なる自然現象・トルネード以上の、神秘的な現象だったようです。

【 オレ流(りゅう)を 次に託して 竜の年 】
オレ流の落合監督も、最後の最後はホークスに負けて日本一にはなれず仕舞い。今年こ そは竜の年というのに、あとは次に託す無念。

【 ぎゃくりんと 読んで教師に 叱られる 】
逆鱗(げきりん)とは、竜のアゴの下にある逆さに生えた鱗で、それに触れた人は竜に殺 されてしまうとか。「逆鱗に触れる」とは目上の人を怒らせてしまう、の意味。竜とい う架空の生物に、さらにいろんなストーリーを考える、昔の人の想像力に感心します。 なのに、いまどきの子ときたら・・・。

【 卍翁 龍に身を変え 天に駆け 】
卍(まんじ)翁とは「九十老人卍筆」の落款の主、葛飾北斎のこと。そしてその絶筆となったのが 「富士越龍図」。その絵は、富士山から立ち上る黒雲にまぎれて竜が昇天していく図。 その竜はまさしく北斎その人。

【 竜頭(りゅうず)から 壊れて知れた 安時計 】
竜頭とは釣鐘の釣手の部分や、また、アナログ時計のゼンマイをまいたり時刻合わせを するネジの部分を指します。昔の安物時計やニセモノ時計は、竜頭がスッポ抜けたり回 らなくなったり、決まってこの部品から壊れたものです。

【 竜の子が よその国では 馬に見え 】
年賀状のイラスト集にはいろんなデザインの竜が紹介されていますが、なかにはタツノ オトシゴのイラストもあります。本物の竜は見ることが出来なくても、タツノオトシゴ は水族館で見ることが出来ます。まさにこれが竜の子供だ、と思ったら、英語ではシー ホース、つまり海の馬、と言うらしい。日本人の感性に改めて感心します。

さて、「龍、竜」に関する川柳を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
龍は、十二支のなかで唯一の架空の生き物、伝説の生き物です。今年は、たまには現実から 離れて空想の世界に浸る時間を作ってみてはいかがでしょうか。

では、今日の講義はこれまで。また、来週〜、はねえよ。