論文「バンドマン属」についての考察


                  論文「バンドマン属」についての考察


< 序論 >
人間が脊椎動物門・哺乳網・サル目・ヒト科・ヒト属に分類されるのは衆知の通りである が、そのヒト科にあって今や絶滅の危機に瀕しているヒト属の亜属である「バンドマン属」 について、今まで深く論じられることがなかったのは遺憾の極みである。
よってここに以下の通り「バンドマン属」について特にその「種」別に考察を加えることで、 彼らの絶滅後、その研究の一助となることを切に希望するものである。

< 本論 >
【 1.バンドマン属の各「種」別・性格分類 】
[バンドマン属にはモッカン系、キンカン系、リズム系が存在し、その中にさらに各「種」が存在す る。以下、それらの「種」毎にその性格特性を述べる。

A.モッカン系
▽ アルトサックス種
サックス種の中で高音域を受け持つ人種。コンボ、フルバンドに於いて主要な役割を担当 することが多い。その責任ある立場から、神経質であり、かつ派手好みという、ダブルフ ェイス的性格の人種が多々見受けられる。ただし現在では女性の進出が著しく、よって大 雑把でド派手好み、大胆で超派手好みなど、そのバリエーションも多岐にわたっている。
▽ テナーサックス種
サックス種の中音域を受け持つ人種。アルトサックス人種に対し無意識的に対抗心を持つ 者も多い。音域の関係上、渋い音色のソロも得意とするが、だからといって性格も渋いと は限らない。フルバンドに於いては最前列に居てアルトほどソロを取らないことから、暇 に飽かせてバンマスになりたがる者も多い。
▽ バリトンサックス種
管楽器の中でも最低音域を受け持つ人種。それゆえ、コンボ活動には限りがあるが、逆にそれ を狙い目とする者もいる。楽器が重いため首痛、腰痛を訴える癖(へき)がある。常々、 楽器の重さでギャラを決めて欲しいと思っているが、じゃピアノはどうだ、と反論された ときのことを考え口に出すことはない。
▽ソプラノサックス、クラリネット、フルートの少数種
これらの種は「持ち替え」と称してサックス人種が併奏することが多い。それをダブラー、 マルチプレーヤーなどと呼称する。
ソプラノサックス種・・・アルトサックスよりさらに高音を奏するため、音色がカン高く メロディに不向き。コンボでのみ奏されることが多く、そのため独りよがり的性格が否め ない。
クラリネット種・・・ジャズ発祥の時代から活躍しておりデキシーランド的雰囲気を醸す ため、古色蒼然とした性格になりがち。またグレン・ミラー楽団やベニー・グッドマンな どの名演奏の影響が強く、そのため保守的な性格も見受けられる。
フルート種・・・その音量の少なさ故に、PA装置の発達と共にやっと近年になって脚光 浴びるようになったが、それを新鮮と曲解している節もある。また、サックス、クラリネ ットが移調楽器(楽器のドがピアノのドと一致しない)のに対し、唯一C調楽器であるこ とが、ある種の優越感を醸していると取られることもある。

B.キンカン系
▽トラペット種
カン楽器にあって最高音域を担当し、その華やかな音色でメロディを受け持ち、バンド全 体の音楽性をリードすることも多い。そのため性格は派手好み、さらに進んで破滅的、生 活は天国か地獄か紙一重、になりがち。なお、その出処は不明であるが、超絶ハイトーン で女性の子宮を刺激することこそがトラペット人種の最高のステイタスだ、とする伝統が今 も根強く残っている。
▽トロンボーン種
キンカン系の中で中・低音域を受け持つ人種。スライドという管を伸び縮みさせて音程を 変化させるという単純でスローモーな楽器の反動か、理屈っぽくせっかちな性格の者が見 受けられる。明確な根拠もないのに周囲から「ムッツリ助平」が多いとされることに、当 たらずといえども遠からずと思いつつも、少なからず不満を抱いている。

C.リズム系
▽ピアノ種
この人種は、ジャズ創成期のニューオリンズの娼婦街において、店と客との仲立ちをして金銭 を授かっていたという史実を持つ。それはピアノを演奏出来る環境からくる知的水準の高さと、メロディ とリズムの両方を奏することで単独で稼業が出来るフットワークの良さに起因すると思わ れる。興味深いのは、その伝統が引き継がれているのか、現代でも、女性問題を抱える者 や金銭感覚が大雑把な者が多々見受けられることである。
▽ベース種
バンド全体の最低音域を担当する人種。曲の性格を決定するリズムパターンを正確なリズム感 覚で刻み続けるという、重要ではあるが地道なパートを務める。しかも単独でソロを取る頻度が 少なく、ステージでも後方に位置し、管楽器系の「フロント」に対して「バック」と 呼ばれることに少なからず抵抗があり、それらが反映してか、粘り強い、もしくは粘着性 の高い性格の者も見受けられる。
▽ドラム種
曲の性格を決定するリズムパターンを、ベースと共に終始刻み続けるという過酷な労働を担う人 種。スネア、バス、タムタム、シンバル、ハイハットなどの音階を発しない多くの打楽器 群を、両手両足を酷使して奏するが、それが「楽音」とされるか「雑音」とされるかは 聴き手次第、という残酷な一面も存在する。そのことが性格に反映するのか、猪突猛進型や、 さらに進んで「ジャズは爆発だ」型の性格も見受けられる。

以上、バンドマン属の中の各「種」について、その音楽的役割りと楽器の特徴という見地 から、その性格特性を分類した。


次回は、【 2.行動パターンから見る バンドマン属の特性 】と題し、行動面からバンドマン属の特性を 探ることにする。

※なお、この論文の内容に関する抗議や反論は、一切受け付けない旨ご了承ください。