熊さん流・ジャズの練習方法(基礎練習)


えー、いよいよ秋も深まってきまして、いいですね、秋。んー、お酒・・・そう、お酒が美味し い季節ですね。なんてんですか、白玉の虫歯にしみる秋の夜は、ってんですかね、ちょっ と違いましたが・・・。それから芸術の秋、これもいいもんです、普段、絵なんて全く興味の ない人が美術館に行ったりする・・・「この絵、いったい何が描いてあるんです?」「何っ て、それだからダメなんだよ。何、じゃなくて、ありのままをじっと鑑賞する、それが芸 術なんだから」、なんか言ってると、係の人が来て「すみません、逆さまでした」って、絵 をひっくり返して行ったりする。いいもんです、芸術・・・。

「おい、大家、いるけえ!」
「ばあさん、熊の野郎だ、相手にするんじゃないよ」
「おやぁ、居留守を使ってやがんな。そんなら・・・・おーい、みんな来てくれ、大家ん ちが火事だ〜!」
「ったく、とんでもない野郎だ。本当に人が来たらどうする。さっさと入れ」
「へへへ、えー、こんちは」
「何がこんちは、だ。何の用だ」
「あ、そうだった。最近、俺がなんて呼ばれてるか、知ってるかってんだ」
「いいや。ま、知りたくもないがな」
「豚のぜんそく、ブタゼンだ。それってえのが、大家さんが俺のサックスの音を「豚が喘 息を患ったような音」って言ったのが始まりだ。おう、この責任、どう取ってくれるんだ」
「なるほど、ブタゼンはよかったな。で、少しは音は良くなったのか」
「そこだ。どうゆうわけか、ちっともよくならねえ、ハハハ、あー、芸術家は辛い」
「まだ言ってやがる。芸術家になりたいんだったら、それなりの練習をしなくちゃ」
「その、それなり、ってのは、どれなり?」
「ふざけてると、張っ倒すぞ。まずは、
1. ロングトーン
これは、基本中の基本だ。相撲で言えば四股だな。体力的には、腹式呼吸、口の周りの筋 肉、タンギングなんかの練習だし、精神的には、どれだけ自分の音に集中出来るかの鍛錬 でもある。相撲でも、強い力士ってのは、みんな四股がきれいだ。」
「えー、あの、一つの音をズーッと長く吹くってのは、どんだけ長く延ばせるかの競争じ ゃねえのか」
「芸能人潜水大会じゃねえや。本番で、曲の最初の音が、自分のロングトーンの音で始まる、 そう思って練習しなきゃ。ブヒブヒした音じゃ客が帰っちまわ」
「へー、面倒くせえんだな。それから」
「もうひとは、
2. 音階練習
こちらは、相撲で言えば、鉄砲、すり足、ってとこかな。技を覚える前に、まずは正確に、 そしてスムーズに手足が動くよう鍛錬する、それが音階練習だ」
「それなら任してくんねえ。最近はバッラバラ、指が動くようになった」
「おいおい、よく聞きなよ。正確に、と言ったろ。音階練習ってのは、正確な音階感覚を 身につける練習だ。ドレミファ、レミファソ、なんていろんな階名を、いろんな調号で正 確に演奏する、そのためには、ピアノみたいに正確な音階の出せる楽器といっしょに練習 をするんだ」
「なんでえ、早く動く競争じゃねえのか」
「競争競争って、練習は運動会じゃねえ。熊さんのデタラメ拳法がボクサーの正確なパン チに負けちまう、それとおんなじだ。早く動くってのは、その後の話だ」
「いろいろ難しいんだな。なんだな〜、その、ロングトーンと音階練習は・・・」
「どっかで売ってないか、ってんだろ、馬鹿野郎。そんなもんが売ってあるか。いい教則 本を買って練習するんだ」
「キョウソクホン?ああ、肩こりに効くやつか」
「・・それはトクホンだ。しかし、熊さんにはトクホンが似合っているかもしれないな」
「へー、どうして?」
「どちらもハッタリ(貼ったり)が得意だ」