熊さん流ジャズ勉強法・熊さんリハで失敗?


               熊さん流ジャズ勉強法・熊さんリハで失敗?


大:おい、婆さん、今、台所に何か飛び込んで来なかったか?え、気が付きませんでした?そうかい?
熊:さあ、勘弁ならねえ、あのホールの係の野郎!
大:婆さん、やっぱり居たじゃねえか、熊の野郎だよ。オイ、熊さん、何をそんなに興奮 しているんだ。包丁なんぞ振り回すんじゃない、落ち着け、危ないから・・・おい婆さん、 何を笑ってるんだ。え、あれは包丁じゃありません、おろし金です?
熊:やれやれ、おろし金を包丁と見間違うなんて、大家さんももうろくしたな。
大:何を言いやがる、熊さんから言われる筋合いはない。それにしても、そのおろし金を 持ってどうしようってんだ?
熊:だからよ、今から、コンサートをやったホールの係の野郎を、このおろし金でおろし てやろうと思って。
大:バカなことをするんじゃない。それに、コンサート?ああ、そういえば、熊さんが行 ってる隣町のバンドが、町内の文化祭でコンサートをやるって言ってたが。なにかい、そ の町内のホールで何かあったのかい。
熊:それだよ、バンドの演奏が、係の野郎のせいで、とんでもないことに。
大:とんでもないこと?どんなことだ。
熊:まずだな、ヘンテコリンなリハーサルの順番、略してリハ順を組みやがったんだ。
大:ヘンテコリン、というと?
熊:リハーサルの順番が、まるでアベコベなんだよ。最後にやる老人会の踊りのリハーサ ルが一番最初で、うちのバンドの出番は前のほうなのに、リハーサルは後のほうなんだ。
大:いや、少しもヘンテコリンじゃないが。
熊:なんでだよ。おかげで、俺ぁプログラムの順番が後のほうに変わったんだと思って、 メシ食いにいって、あやうく本番に遅刻するとこだ。それがどうしてヘンテコリンじゃね えんだよ。
大:なにかい、その文化祭にはバンドだけじゃなくて、いろんな演芸が出たんだろう。
熊:ああ、踊りとか詩吟とか、なんか、ごっちゃ混ぜのオンパレードだ。
大:そういう場合は、いろんな仕掛けの道具なんかの出し入れが大変だから、リハーサル を逆の順番でやるんだ。
熊:なんでだ?
大:後にやる演目から先にリハーサルをやっていけば、その道具なんかを順に奥のほうに しまう、そうして、本番では一番先にやる組が最後にリハーサルをやったら、その道具が 一番手前にあって、すぐ本番で使えるだろう。だから逆の順でリハーサルをやるんだ。
熊:ああ、納得、納豆、ネバ納豆、そんなことかい。しかし、まだあらぁ、腹の立つことが。
大:どんなことだ。
熊:リハーサルの時間が15分って短っけえから、全然練習できねえんだよ。イッパイ時間 をくれりゃいいのもを、係の野郎がケチりやがって。
大:おいおい熊さん、まさかリハーサルでも練習をするつもりだったのかい。
熊:え、じゃリハーサルで練習しちゃいけねえって法律でもあんのかい、おう。
大:法律なんぞ持ち出すやつがあるか。そもそもリハーサルってのは、練習のためにある んじゃない。
熊:また、モソモソかい。じゃリハーサルでいったい何をするんってんだ。
大:リハーサルをやるうえでの注意点というと、

1)ステージ上の配置のチェック
・客席からみたステージ上の、奏者の配置のバランスがいいか
・コンダクターや奏者同士が、アイコンタクトがとれる位置にいるか
・ステージ中央に出てソロをとる奏者のための通り道が確保されているか
・ひな壇の最後列が後ろに転落しないようなイスの位置がとれるか
2)音響のチェック
・PA屋さん(音響効果業者)にソロマイクや全体マイクの音チェックをしてもらう
・本番の曲を部分的に演奏して、全体の音、ソロの音、などの音響テストをする
 (バンド関係者か、音の分かる人に客席で聴いてもらってアドバイスを受けるとよい)
・返し(演奏の音をコロガシ=三角形スピーカーで、演奏者側に返すこと)のチェック
・マイクの位置にガムテープで印を付けて、本番ですぐ配置出来るようにしておく
3)ステージでの仕掛けを確認する
・イタツキ(ステージに上がった形で始める)やはけ方(退出)などの、出と入りの確認
・立ち位置と照明の当り具合の確認
・ステージ上でパフォーマンスをする場合はその動作確認
4)曲のパフォーマンスの確認
・MC(しゃべり)と演奏のタイミングを、イントロ部分で確認する
・曲と曲のつなぎなどを、エンディング部分で確認する

まあ、ざっとこんなところかな。
熊:おいおい、じゃリハーサルでは、練習はやらないのか。
大:当たり前だ。だいたい、練習不足で曲の仕上がりに不安がある、なんてバンドに限って、全曲 通しておきたい、みたいに思ってしまうもんだ。
熊:それなんだよ、俺ぁ、てっきりリハーサルが最後の練習だからそこで仕上げりゃいい や、って思って安心してたから。
大:それがそもそも間違いだ。そんなことをしたら本番では疲れてしまうし、本番での緊張 感がリハーサルで発散されてしまうし、ろくなことはない。本番前にはすべて仕上がって いる、それが演奏者としての心構えだ、わかったら、次からは気をつけるんだな。
熊:なるほどね、じゃ来週の文化祭では、そんなことに気をつけたらいいんだな。
大:え、来週って、もう文化祭は済んだんじゃないのか。
熊:いや、文化祭は来週だ。
大:じゃ、今までのは作り話か、何のためにそんなことをしたんだ?
熊:なに、リハーサルのためのリハーサルだ。