特別寄稿  シゲちゃん万歳!
                    シゲちゃん万歳!

                          <ニュースカイラーク・ピアニスト:森山輝生>

今回は、われらが敬愛する、ニュースカイラーク・オーケストラのリーダーでアルトサッ クスを吹いている、森口茂生さん、愛称「シゲちゃん」のことを皆さんに紹介したいと思 います。もうすでにテレビや新聞などで何度も紹介されたことがあるので皆さんもよくご 存知かとは思いますが、敢えて改めて紹介させていただきます。

「シゲちゃん」は昭和元年のお生まれ、ということは現在ナ、ナントおん年78歳なのだ。 メンバーの中では只一人戦争にいかれた方で、海軍軍楽隊で厳しい音楽教育を受けた後、 音楽を生業(なりわい)として激動と混乱の時代を、生きぬいてきた、生粋の職業音楽家、 いわゆるバンドマンです。

当時のバンドマンの方の多くがそうであったように戦後は米軍キャンプを巡って様々な洋 風文化、特にジャズに触れながら音楽的才能を磨きました。いわば、日本のジャズの西日 本における草分け的存在で、戦後復興期のキャバレーの全盛の頃には「キャバレー新世紀」 にて、ニュースカイラーク・オーケストラの前身「スカイラーク・オーケストラ」を率い て「九州に森口あり」との名声を得ます。

約30年間に亘ってバンドリーダーとして活躍、その間森口さんのもとで学んだ多くのミュ ージシャンに多大の影響を与えました。当時のキャバレーでは3日置きぐらいに変わる様々 の豪華なショーが売り物でしたが、森口さんのオーケストラはショーバンドでしたので多 くの有名タレントさんたちからも抜群の信頼を受けておりました。

綺麗なオネーさま達にもえらくモテタそうで(私は知りませんが)時折仕事で一緒になる と、楽しい武勇伝をありがたく拝聴しております。詳しくお聞きになりたい方は、ニュー スカイラークのメンバーかご本人に直接お聞きしてください。なおその際は、酒を必ずご 持参ください。くれぐれも自宅になど電話しないでください。奥様のご寵愛を今も尚一身 にお受けになっておられますので、いかなる修羅場が起きないとも限りませぬゆえ。

20年ぐらい前、バブルの崩壊の影響をもろに受けて、社交界が没落の一途をたどり始めた 頃、全盛期には県知事よりも高い給料を稼いでオネーチャンにもモテモテだった、われら がシゲちゃんもついに第一線を退かざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。   その後、奥さんのやっていたラーメン屋さんを手伝ったり、新聞を配ったり、パーティー などのバンドの仕事(これを通称“ショクナイ”といいます)などを続けておりましたが、 根っからの音楽バカ(失礼)のシゲちゃんは、やがてかっての同じような音楽バカ(失礼) を集めてもう一度昔のようなサウンドを再現したいと8人編成の「ニュースカイラーク・ オーケストラ」を結成します。

はっきり、いつとは言えませんが大体10年ぐらい前だったようです。初期はいろんなメン バーが入れ替わり参加しておりますが、そのうち現在のようなメンバーに固定されてきま した。私も始めは、「友人からピアノがおらんので手伝ってくれんね」と誘われて軽い気持 ちで参加したのですが、メンバーの皆さんの音楽的な熱意というか音に対する執着などに 感銘を受け、いつの間にかレギュラーになってそのうちプロデュースなんかもするように なりました。年齢的にも今では充分資格を取得しました。(当番バンドの平均年齢は62歳 くらいです。有資格年齢は別にありませんが一応50歳からです。)

これまでに、マスコミの取材も14,5件ぐらいあって生中継で全国にも紹介されたりし て広く世間にも知れるようになり仕事のオファーも結構来るようになりました。 昨年の2 月に「ペンタトニカ」で行われた喜寿のお祝いのパーティーの時は、定員が70〜80人のお 店に、250人近くの人が詰めかけ開演前から超満員という大盛況で、シゲちゃんのこれまで の実績とどんな人とも温かく付き合ってきた人間性の素晴らしさを垣間見た感動的なパー ティーでした。

78歳の今も尚、当バンドの全レパートリーの作・編曲をして楽譜を書き続けておられます。 まだまだ介護の手も借りず、今も現役でサックスを吹き続けております。 先日も山口の 「ぱるるプラザ」という素晴らしいホールで2回目の本格的なコンサートをやりましたが、 シゲちゃんはソロで「SUMMERTIME」をリハーサルなしで余裕の演奏で拍手喝さいでし た。

全盛期には小倉の町だけでも400人近くもいたバンドマンが、バブルの崩壊とともにほと んどこの世界から去ってしまいました。そんな中で、これといって特別に肩を張るわけで もなく只黙々と音楽する事の喜びを謳歌してきた60年余りのシゲチャンの音楽人生、まだ まだこれからも素晴らしい曲をいっぱい書いて僕たちはもちろん聞いてくださる皆さんに 生きる勇気と感動をいつまでも与え続けてください。 シゲちゃんバンザーイ!