< 熊さん流・ジャズの勉強法「メモリー帳のススメ」>

           熊さん流・ジャズの勉強法「メモリー帳のススメ」


熊:「オオ〜・・オーソレミヨー、っと。オオ〜、おお、牧場は緑、ってか。オオ〜、大き なノッポの古時計とくらあ、えー、オオ〜、オオーマイパパー、あらよっと」
大:「ばあさん、玄関に誰か来てるぞ・・違えねえ、熊の野郎だ。何をさっきから、オオ、 オオ、言ってるんだ。入えるなら、さっさと入えれ」
熊:「オオ〜、オオ〜やさん、コンチハ」
大:「何がオオ〜やさんだ、まったく。ん?今日は、隣町のフルバンドの練習日って言って なかったか」
熊:「それが、あれだ。オバマ大統領んとこの犬だ」
大:「オバマ大統領んとこの犬?ああ、ボーって名の、胸と足だけ白くて、あとは真っ黒な犬 だな」
熊:「それだ、隣町のバンドの練習は、ボーっとしてて、尾も白くねえ」
大:「古いダジャレだな。何が面白くないんだ」
熊:「だって、知ってる曲をやるってえから練習に行ってやったのに、いざ吹いたら、何を やってるのかさっぱり分からねえ・・・ふー、やれやれ」
大:「やれやれ、ってやつがあるか。ま、確かに、日本じゃ、学校のブラスバンドや、アマ チュアのフルバンドみたいに、大勢の中で楽器を始めることが多い。そこでメロディーじ ゃないパート譜ばかり演奏してたら、初心者は楽しくないかもしれないな」
熊:「だろ。せっかく買った楽器が無駄にならねえよう、なんとかしてもらおうか、おう」
大:「おうとは何だ。そうだな、個人の楽しみ、つまり独奏が基本にないと、長続きしない かもしれない。ジャズバンドの形には、独奏がメインのコンボバンドと、合奏がメインの フルバンドがあるから、できれば両方やれるといいな」
熊:「両方?ふーん。そりゃ、酒とお菓子をいっしょにやるようなもんだな」
大:「そうじゃない。たとえば、列車に乗っていて、右の景色だけじゃなくて、左の景色も、 両方楽しむ、みたいなもんだ!」
熊:「そうムキになるこたあねえや。で、そりゃ、どうやるんで」
大:「そうだな。隣町のバンドにはリズム隊、つまりピアノ、ベース、タイコは、そろって るだろ」
熊:「ああ」
大:「だったら、少し早めに練習に行って、コンボの練習をやらせてもらう、とかな」
熊:「ふーん。しかし、いってえ何をやるんで?」
大:「そこだ」
熊:「ホイきた、どこでえ〜」
大:「毎回おんなじことを言うんじゃない。熊さんは、メモリー帳ってのを知ってるか」
熊:「ああ、よくあるね。なんとかメモリー、って、葬儀場だな」
大:「そうじゃない。スタンダードの曲なんかを書き留めた楽譜の帳面のことだ」
熊:「ふーん。なんだい、そりゃ」
大:「初めは、コンボで何かやろうったって、すぐに曲が浮かぶもんじゃない。そんなとき に、この曲をお願いしますってんで、リズム隊にお願いするときの、いわばカンニングペ ーパーだな」
熊:「へー。じゃ、全員分の帳面がいるんだな」
大:「いや、リズム隊は一般的なスタンダードならメモリーで演奏できるから、熊さんの分 があればいい。但し、オリジナルのキー、つまり原曲の調だと自分の楽器に合わない場合 は、自分に合うように書き換えて、このキーでお願いします、ってんで楽譜を用意したほ うがいいな」
熊:「それでもって、そこでアドリブをやんなきゃいけねえわけだ」
大:「本来ならそうだが、まずは音程やリズムを正確に演奏することに気を配ってメロディ ーだけやらせてもらってもいい。そうやって全体を通して演奏することで、曲の理解も深 まるし、フルバンドで演奏したときに、自分がどんな役割のパートを演奏してるのかも、 よくわかるようになる、つまり両方の景色が見えるようになる、ってことだ」
熊:「ふんふん」
大:「また、そうやってスタンダードや自分の好きな曲を、メモリー帳に増やしていく。増えれば 増えるほど、それが熊さんの知的財産になるわけだ」
熊:「知的財産?俺ぁ、金銭的財産のほうがいい」
大:「どっちだっていい。まあ、しっかりやんな」
熊:「そうかい。そんなら帳面を買って、そのメモリー帳ってのを作ってみるとするか。じゃ、あばよ」
大:「あ、熊さん、待ちな。帳面を買うのはいいが、メモリー帳じゃなくて、弁慶の勧進帳に、ならないようにな」
熊:「弁慶の勧進帳?、ってえと?」
大:「中が真っ白」