職内で出会った名人達(2)
ショクナイ(職内)というのは臨時で受ける演奏の仕事のことですが、時として過酷 な条件の場合もあります。
九州の北の端、北九州市を朝4時に出発して、九州の南の端、内之浦まで車を飛ばし、 小さな漁村の村祭りでの歌謡ショーの伴奏をして、そのまま日帰り、帰り着くのが、 朝4時、ということもありました。
こんな場合、雇う側の経費節約のため、車代・ガソリン代をもらって2、3台の車で乗合いで 行くのが一般的ですが、そんな時、感心するのがドライバーです。
荷物が多い関係でタイコ(ドラマー)のことが多いのですが、彼らは初めての場所、どんな 小さな村の公民館でも、以前に何回も来たことがあるかのように、当たり前のように目的地に 到達します。
一度、ドラマーの車とはぐれて、別々に帰ったことがあります。「なんとかなるよ」と 言っていたのは最初のうちだけ。まず、夜の田舎道は真っ暗、標識もない。分かれ道で どっちに行けばいいのか地図を見ても、現在地が分からない。おおかたこっちだろう、と 進むうちに、どんどん不安になってくる。
しばらく進んで、間違っているらしい、となると、もうパニツク!引き返したら、今度は どこまで引き返したかがわからない。誰かに聞こうにも、人も車も通らない。 何か目印になるようなものはないか、と捜しまわり、とうとう出発点まで戻ってやりなおし、 半ベソをかきながら、帰り着いたこともあります。
ドラマーは、職内のために大きなワゴン車を買い、元をとるために(?)あちこちを飛び回る ことが多いからとは言え、やはり彼らも職内名人なんだな、と思います。
追記:もちろんこれは、カーナビなる道具が一般的になる前の、むかーしのお話です。