熊さん流ジャズ勉強法・レガートタンギングで悩む


            熊さん流ジャズ勉強法・レガートタンギングで悩む


熊:おい、大家さん、いるかい。
大:おや、熊さんかい、ま、お上がり・・・と、言いたいところだが、なんだ、その格好 は。スネ当てなんぞ付けて、早朝野球でキャッチャーでもやるのか。
熊:キャッチャー?なにを寝ぼけたこと言ってんだよ。楽器のケースを持って野球が出来るか い。隣町のバンドの練習に行くんじゃねえか。
大:じゃ、ナンなんだ、そのスネ当ては。
熊:スネ当てって、だから大家さんはモノを知らないってんだよ。こいつぁスネ当てじゃな くて、レガート、ってんだ、よく覚えとけ。
大:レガート?それも言うなら、レガースだ。
熊:え、レガース?じゃ、これはレガートじゃねえのかい。
大:レガースだ、元々はleg guards、スネを守るもの、ってえ和製英語だ。
熊:え゛〜、そうなのかい。せっかく少年野球のチームから借りてきたのに。
大:おい、また子供を脅して持って来たんじゃないだろうな。
熊:とんでもない。ちょっとまばたきをしないで頼んだら、快く貸してくれた。
大:睨んで脅かしてやがる、あきれた野郎だ。後で俺が行って謝っておく。それはそうと、 レガートがどうかしたのか。
熊:あ、そうそう、こないだの隣町のバンドの練習のとき、バンマスが「熊さん、そこは レガートで」ってしつこく言いやがるから、こいつを持っていってギャフンと言わせてや ろうと思って。
大:なにがギャフンだ。それでレガート、か。レガートっていうのは、アーティキュレーションだ。
熊:え、相手は九連勝?
大:どんな耳をしてんだ。アーティキュレーション、つまり、フレーズを作るときの音や、 音のつながりを表す記号のことだ。
熊:ハハハ、さっぱり分からねえ。
大:たとえば、スタッカート、アクセント、スラー、レガート、なんかだ。
熊:ああ、それなら分かる。で、レガートってのはなんだ。
大:音と音の間に切れ目を感じないように演奏する、ってことだ。
熊:切れ目を感じない?それだったら、スラーでいいじゃねえか。え、おい、強欲大家。
大:人にモノを教わるのに強欲ってえやつがあるか。確かにスラーも同じような意味だが、 ジャズの場合には特に、スラーとレガートを区別することが多い。
熊:へー、どんな風に。
大:スラーは、タンギングを伴わないで音をつなぐ、という意味合いが強い。
熊:ああ、息を出しっ放しで指だけ動かすってやつだよな。じゃ、レガートは?
大:一方、レガートは、軽いタンギングを伴って滑らかに音をつなぐ、という意味合いが ある。
熊:待ちなよ、タンギングをしたら、音に切れ目が出来るだろ。
大:そこだ。
熊:待ってました、そこだ?どこだ、どこだ〜!っとくらあ。
大:うるさいな。この場合のタンギングは、レガートタンギングと呼び、息を出しっ放し の状態で、滑らかにタンギングをする。
熊:滑らか、って言われてもなあ、具体的にはどうしたらいいんだ。
大:普通のタンギングが「ドッ、ドッ」という発音なら、レ ガートタンギングは「ドゥードゥー」という発音だな。これだと、音と音に切れ目がない、 それでいてフレーズにメリハリがある、というジャズ独特のフレーズを作ることが出来る。 ハーフタンギングとも言うな。
熊:なんだって?息を出しっ放しにながら、それでタンギングをする?ドゥドゥ、ドゥー ドゥー・・・なるほどね、これがレガートタンギングか、ドゥドゥ、ドゥードゥー・・・
大:おい、どこに行くんだ・・・あ、戻って来た。あ、また出て行った・・・あ、また戻 って来た。待ちなよ熊さん、ドゥドゥ言いながら、なにを同じところをグルグル回ってい るんだ。
熊:なーに、これがホントの「ドゥドゥ(堂々)巡りだ」