熊さん流・ジャズ勉強法<ジャムセッションに初参戦?>


            熊さん流・ジャズ勉強法<ジャムセッションに初参戦?>


熊:お〜い、大家さ〜ん、いるけぇ。返事がねえとこをみると、この家の者は死に絶え たか。
大:おい熊さん、玄関先で大きな声で縁起でもねえことを言うんじゃない。いったい、 なんの用だ。
熊:おや、生きてたかい大家さん。あ、そうだ、ジャムがあったら、ちょっとばかし貸 してもらいてえんだが。
大:ジャム?昼飯にパンでも食うのか。そうだな、イチゴジャムとリンゴジャムがある が、どっちがいい?
熊:どっちと言われても困るな。俺はイチゴジャムの方が好きだが、ジャムセッション てえのに使うには、どっちがいいんだ?
大:ジャムセッション?それでジャムを貸してくれってのか。おい熊さん、そりゃ、ジ ャム違いだ。
熊:ふーん、じゃ、リンゴジャムでもいいや。
大:そうじゃない。そりゃなんだろ、隣町のバンドの連中から「ジャムセッションをや るから来ませんか」とかなんとか、声をかけられたんだろ。
熊:おや、よくわかるな。ははー、さてはどっかから覗いてたな、このスケベ大家。
大:スケベとはなんだ。そうじゃなくて、ジャムセッションというのは、臨時にメンバ ーが集まって即興的に演奏をする、ってことを言うんだ。
熊:へー、みんなでジャムを食べるんじゃねえのか。で、そんなことしてナンになるんだ?
大:そうだな、ま、プロとアマチュアの場合では意味合いが異なるが、

【プロのジャムセッションの場合】
・自分の音楽性やアドリブ技術を披露して客やメンバーの反応を見る
・現在のジャズシーンがどうなっているかを他のメンバーの演奏からさぐる
・自分でバンドを組む際のメンバーを物色する
それだけでなく、楽しんでいるようでいて実はほかの演奏者をノックアウトする、って えシビアな場合もあるな。それに対して、
【アマチュアのジャムセッションの場合】
・個人的にやっている練習や勉強の成果を発表する
・普段アドリブを取れないフルバンドのメンバーの欲求不満解消
・リズム隊(ピアノ、ベース、ドラム)はコンボバンドのトラ要員として呼ばれること があるのでそんな時のための実践練習
それから、バンド内のメンバー同士の親睦とか、他のバンドとの交流を図る、なんて意 味合いも大きいな。

熊:なんでぇ、そんなことかい。じゃ、ちょこちょこっと、やっつけてくらぁ。
大:おい待ちな、熊さん。ジャムセッションに参加するんだったら、ある程度の礼儀と いうか、暗黙のルールがあるが、分ってんのか。
熊:礼儀?ルール?そんなもん、俺の辞書にはねえ。
大:それじゃだめだよ。まず、ジャムセッションには二通りのパターンが考え られるが、
【パータン1】
臨時に集まったメンバーのうち、幾人かはハウスバンドのような固定されたメンバーか、 もしくは顔見知りで、それにゲストプレーヤーが加わる場合。臨時バンドではあるが、 ある程度まとまりがあって演奏にも融通がきく。
【パータン2】
全員が初顔合わせの場合。こちらが本来の姿だが、この場合は誰かが仕切り役になって、 ある程度の進行や役割分担を決める必要がある。
どちらのパターンにしても、普段は付き合いのないプレーヤーが集まっていきなり合奏 をするんだから、それなりのルールってものを守らなきゃ。
熊:ふん、そう言うんならしょうがねえが、どんなルールがあるってんだ。
大:熊さんみたいに、初めて参加する場合は、

<ジャムセッションに参加する人の心得>
・自分の出番前には楽器の準備を済ませておき、スムーズに演奏に参加する
・どの曲をやるかを決めた人は他のメンバーに「よろしく」とお願いする
・ある程度スタンダードな曲を選ぶ(自分の欲望でゴリゴリの曲を選ばない)
・オリジナルのキーでない場合は(特にB♭などの移調楽器の人)楽譜を準備する
・ステージであまり細かい決め事はしない。面白みも減るし時間のムダ
・終わったら「お疲れ様でした」とか「ありがとうございました」と挨拶する

<曲を演奏する際の心得>
【テンポ出し】
やりたい曲を決めた人が他のメンバーにハッキリと分かるようにカウントを出す。
【イントロ】
ピアノなどに任せるか、「ケツ(曲の終わりの部分)四つください」などと指示をする。
【テーマ】
AABAなどの曲は1回、ブルースは2回。メロディを四角四面に演奏してもメンバー はノッてこない。ここでいかに曲のイメージを膨らませてメンバーをノセるかが勝負。
【アドリブ】
練習の成果の見せ所ではあるが、2コーラス(ブルースは×2)か、せいぜい3コーラ ス、スローな曲は1コーラスで止める。ダラダラとアドリブを垂れ流しては、客にも、 付き合わされるメンバーにも、次に演奏するのを待っているメンバーにも失礼。
【後テーマ】
普通はテーマをそのまま繰り返す。バラードなど冗長な曲で「ダレるな」と感じた場合、 ひとさし指をカギ型に曲げて合図を出し「サビ」から入ることもある。
【エンディング】
ピアノなどに任せるか、スタンダードなエンディングのパターンを使う。強引にある形 にもって行こうとすると最後の最後でコケることがあるので注意。

まあ、こんなところかな。
ジャムセッションというのは、いろんなメンバーが集まるから、誰かが好き勝手にやっ ては全員にチャンスが巡って来なくなってしまう。だから、こんな暗黙のルールが必要 なんだ。
熊:ふーん。じゃ、とりあえず、今日は楽譜が準備出来ないから、ジャムセッション参 加は取りやめにしとくか。
大:楽譜が準備出来ない、って、熊さん、いつもパソコンから印字してるのに、どうしたんだ。
熊:なーに、俺はジャムらねえが、プリンターが‘ジャムってる’。



注)ジャムる=プリンターやコピー機が紙詰まりをおこすこと。