「いやー、坂東く〜ん、キミの意見、おもろいな。どや、ほかに、ナンかないか」
「そない、おだてんといてください、テレますがな」
「いやいや、豚もおだてりゃ木に登る、ゆうなやいか。ちょっと、木に登ってみせてー
な」
「豚ですか、わし!?まあ、おだてられて木ぃに登る、ゆうんもええですけど、若いモンが
自分から木に登りとうなるモンも、いるんちゃいますか」
「ほう、自分から、気になる木〜、ゆうやっちゃな・・・わかった、金やろ、やっぱ金。
いまどきの若いモン、なんかとゆうと金や〜」
「そない大きな声で、金、金、言わんといてください、みんな見てますがな。金、ちゃ
いますがな」
「金やない?ほな、スーバン(バンス=前借り)か、リョーキュー(給料)アップか、
ナスボー(ボーナス)か」
「それ、みんな金ですやん。そら、金は、よおけもろたほうがエエけど」
「ほな、これか」
「これて、親指立てて、どないしまんねん!」
「ハハハハハ、ちがうかー!」
「誰のギャグでんねん、それ。そやのうて、言いたいのは、よきライバル、でんがな」
「・・・さあて、帰ろか」
「ちょっと、ゆうだけ言わせてといて、帰ろて、なんでんねん」
「せやかて、よきライバル、て、どっかの青春マンガやあらへんで、気色の悪い。今ど
きの若いモン、そんなん聞いたら、木に登らんと、木切って、帰ってしまうで」
「まあ、そう言わんと。たとえば、バンドマンとして生計立てて一年たち、二年たち、
そのうち、三十年たち、しますわ」
「ちょっとそれ、いっぺんに、たち過ぎやないか」
「そんとき、周り見たら誰もおらへん、ポツンと一人、バンドマン人生送っててみなは
れ。えげつのう、悲しおまっしゃろ」
「そうかあ?競争相手おらんで、ええんとちゃうか」
「そんなことおまへん、競い合おてこその上達やないですか。マラソンかて、いくら速
よても、一人で走っててみなはれ、記録、伸びしまへんで。バンドかて、同じ歳ぐらい
のやつがいて、そいつが、あんなこと出来よる、あないおもろいことやりよる、負けて
られへん、それが上達の糧になる、思いますけど」
「せやけど、同じ歳ぐらいのやつがいてへんかったら、どないすんねん」
「そら、しょうおまへんわ。けど、そんなときは、仮想で作ったらよろし。要は、自分
満足にならんと、そいつやったらどないしよるか、そいつはどう考えるやろか、そう考
えることが大事なやいですか」
「そうかー、ほな、今どきの若いモンも、金ばっかりやないんや。ところで、キミのリ
ョーキューアップの件やけど、少し待ってくれるか」
「それとこれとは、話が違うやないですか」
「なにゆうてんのや、自分でゆうたやないか、バンドマンは金やない、金は要らん」
「要らん、ゆうてしません!」
「おい、あそこのバンドマン二人、えろーもめてるで」
「どこの?ああ、あの二人、バンドマンとちゃうで、普通のサラリーマンや」
「えー?せやかて、さっき店長ゆうてはったもん、バンドマンがサラリーマンごっこしとるて」
「ああ、店長な、いつもそうゆうて、キミみたいな新入りの店員を、からかいはんねん」
「・・・・・」
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