バンド型会社組織論=ある居酒屋にて


「バンドーく〜ん、板東くん、こっち、こっち、ここ、ここ!」
「あ、部長、どうも遅うなりました。いやー、ここの居酒屋、よう繁盛してまんなー」
「せやろ、昔からよう流行ってるし、それに今年の夏は特別暑いさかいな。あ、ここセルフ やさかい、ビールもつまみも自分で取って来て、好きに飲んでな」
「はい。部長のそれ、旨そうでんな。なんてゆうんですか?はあはあ、ほな、それ取って こ・・・人が多て、やっと取れましたわ。ほな、よばれます」

「いやーしかし、若いモンと飲も思て誘たのに、君だけやで、来てくれたん。なんちゅう か、最近は、オーケストラ型の社員が減って、コンボ型の社員が増えた、ゆうことかいな ー」
「なんですか?“大きいトラ”と“こん棒”?」
「“大きいトラ”やあらへん、オーケストラや。ジャズでゆう、多人数のバンドのことや。 それに対して、少人数のバンドをコンボ、ゆうんや」
「ああ、そのことですか。私また、こん棒持ってトラ狩りに行くんか、思いましたわ。で、 どうゆうことです?」
「つまりやな、昔はオーケストラ型、つまり指揮者の命令に従ごうて全員がいごいとった んや。それが今はコンボ型で、少人数で固まって好き勝手にいごいとる、ゆうこっちゃ」
「いやいや、部長、それは、少し違うんとちゃいますか」
「ほう、とゆうと?」
「オーケストラゆうんは、命令に従ごうとるんやのうて、指揮者の指示の範囲の中で主体性を 出そうとしてる。コンボのほうは、好き勝手に動いとるんやのうて、各個人が主体性を持 ちつつまとまろうとしてる、ゆうことやと思います」
「ほー、君、トラ狩りとか、こん棒ゆうたわりには、バンドのことに詳しいな」
「いやー、それほどでも。脳ある鷹はへそ隠す、ゆいまっさかい」

「ふーん、で、君は、会社にはどっちの型がええ、思うんや」
「そうでんな、
<オーケストラ型>
指揮者、つまり部署の指導者がしっかりしてたら、全体として大きな仕事がでける、旧い ように見えても、会社として、グループとしての経験が引き継がれていく。ただし、個人 の能力を生かすには、それなりの工夫をせんとあきません。
<コンボ型>
小さな組織で動くことで個人の創意工夫が発揮でけて、作業でも小回りが利く、ただし、 個人に主体性がなかったら、会社組織としては成り立たん。
まー、どちらも一長一短、ゆうとこでっしゃろか」

「なるほど、おもろいとらえ方やな。ほたら、オーケストラ型の組織の中に、コンボ型の グループを作る、ちゅうのはどや」
「なるほど、それ、ええ考えでんな。実は、オーケストラの中でも、楽器ごとのパート 分けはあります、けど、それはおんなじ楽器のグループやさかい、いわゆる縦割り組織で、 コンボ型とはちゃいます。おんなじ部署のモンでグループを作るんやのうて、違う部署の モンが少人数で寄って、新しい組織を作る、ちゅうのも、おもろいでんな」
「仕事の組織でのうても、たとえば、社内のクラブ活動、とかから始めてもええしな」
「はあはあ、それやったら、社内間異業種交流みたいなモンも、生まれるやろし。うちの会 社でも、それ、やったらええんとちゃいますか」
「せやろ、な。やっぱ、わし、頭ええなあ、・・バンド型会社組織論に、カンパーイ!」
「ええぞええぞ、カンパーイ!」

「店長、あそこのサラリーマンの二人、大きな声で話しながら、長いこと飲んでますなー」
「どの?ああ、あの二人、サラリーマンちゃうで」
「え、ほな、なんです?」
「あいつら、バンドマンや」
「バンドマン?それがまた、なんで」
「あいつら、ヒマな時には飲みにきて、ああやって、“サラリーマンごっこ”、して いきよんねん」
「・・・・・」