博多華丸・大吉風漫才「バンドの用語の聞き間違い」

             博多華丸・大吉風漫才「バンドの用語の聞き間違い」


A:あんた最近、よう聞き間違いばするごつなったね。
B:なんね、聞き間違いて。
A:ほら、「汚職事件」が「お食事券」て聞こえた、とか言うやろが。
B:そらぁ作り話たい。普通は、そげんかこた、なかろうや。
A:普通はなかこつば、あんたがすっとやろうが。
B:俺がいつ、聞き間違いばしたね?
A:したやなかね、このあいだ二人でバンドショーの司会の仕事ぱしたとき。
B:あんとき?俺がどげんか聞き間違いばしたね。
A:したやんね。最初に二人でバンドさんに打ち合わせに行ったろ。あんとき、バンマ スが『今日のドンバです、あんた二人がMC?』てゆうたらあんた、『トンマさん、 僕らは虫じゃながですよ』て、ゆうたろが。違うとたい、トンマやのうて「ドンバ」て「バンド」の こったい。「虫」やのうて「MC」てゆうて「master of ceremony」、司会とか司会の 言葉のことたい。
B:ああ、あれは、ちょっとした言葉の行ったり来たりたい。
A:それば聞き間違いて、ゆうとたい。そんあと、バンマスが『他のメンバーはシーメ に行っとる』てゆうたら、『え、志免まで行っとっとですか。本番に間に合うですか』 て。「シーメ」て「飯」たい。なんで、用もなかとに志免町(しめまち)まで行かないかんね。
B:あらバンマスの言い方の悪かと。ちゃんと、食事に行っとります、て言わんと。
A:それから、バンマスが『一部のステージはイタツキで行きます』てゆうたら、あん た、『え、志免から板付て、けっこう遠かですよ』て。違うたい、「イタツキ」て 「板=ステージに乗った状態で始めること」ぱゆうとたい。
B:あらー、志免から板付までの近道ば教えてやろと思たとに、あーあ。
A:なんが、あーあね。バンマスが、『3曲目からはウタバンで、ターウのあとツーコ ーラス目はインスト』てゆうたら、『3曲目からは歌わんで、田植えのあと、 コーラスはインスタントですか』て、誰がステージで田植えばすんね。「ウタバン」は「歌 の伴奏」、「ターウ」て「歌」、「インスト」は「インストルメントの略で、楽器のこと」や ろが。
B:ま、それぐらいのことはあったかもしれん。
A:それだけじゃなかろ。あんた、楽譜ば見て、『CとかAmの記号はなんですか』て 聞いたろ。バンマスが『それはコードネームたい、ダンゴは見にくいから』、てゆうたら 『ほんなこて、子供は眠たい、談合は醜いですもんね』て。和音をアルファベットで 書くとばコードネーム、音符で書くとばダンゴ、てゆうとたい。
B:ああ、そげんか話もしたね。
A:『4曲目は、アフロキューバンのキャラバン』て聞いて、『4曲目は、お風呂で吸盤 で、キャラ・パンですか』て、だいたい、キャラ・パンてなんね。
B:あらー知らんと?キャラクター柄のパンツのことたい、今はいとっとば見せてやろか。
A:見らんでよか。「アフロキューバン」はラテン系リズムの名前、「キャラバン」は曲 名たい。
B:あらーそうね。
A:バンマスが『5曲目はゴンタ』てゆうたら、『権太さんて、苗字はなんですか』て、 「ゴンタ」て「タンゴのリズム」のことたい。
B:あーらら、人の名前じゃなかったとね。
A:バンマスが『最後の曲は、エーエービーエーのビーだけシーデキで、あとはウエス トコーストスタイル』てゆうたら、あんた、『ははあ、海老エビの身だけ新規で、あとは上下こ うしたスタイルですか、そら、新か海老の天ぷらの作り方ですか』て、ゆうたろが。
B:やっぱ、天ぷらは上、下ひっくり返したほうがよかとやろか。
A:違うとたい。「エーエービーエー」は「AABA」という曲の形式、「シーデキ」は 「デキシーランド調」、「ウエストコースト」は「アメリカ西海岸で流行ったジャズスタ イル」んこったい。
B:そげんゴチャゴチヤ言わんたって、結果的に仕事が上手くいってよかったやなかね。
A:なんがよかったね。終わったあと、バンドさんからは『あんたたち、よくまあ、あ んなに口からでまかせが言えるね』て言われたとよ。
B:そらよかったやなかね。
A:どこがよかったね。
B:そら、なんちゅうたって、バンドの仕事やけん、“吹く”のが一番たい。
A:もう、いい加減にせんね。