音を一晩寝かせる?
このコラムを書くとき、気を付けているのは、「一晩寝かせる」こと。 すぐには載せず一晩おいてみる。そうすると、次の朝、カッコよく書いたつもりの文章が、 臭くて独り善がりなのが、よくわかる。

絵や習字もそう。いいと思って描いたり、表現しようとしたものほど、後でみると ひどい。よく見せようという欲が見え見えだからだろう。

では、演奏は?一晩寝かせる、というわけにはいかないので、録音して後で聴いてみる。 メロディーは演奏の時間に余裕があるから欲が出やすいし、アドリブは演奏中にあれこれ 考える余裕はないはずなのに、やっぱり欲が出る。それが聴こえた時の恥ずかしさ。

もう自殺してしまったが、桂枝雀さんは自分の落語を聴くのが楽しみだったとか。 あれだけ破天荒に演じても、わざとらしさが見えなかった。なにをどうしたら、ああ なれるんだろう。不思議な落語家だった。

幾つになってもまともな演奏出来ない苛立ちが、焦りを生む今日このごろ、そういえば 最近は録音して聴くことが、おろそかになっている。頑張って録音して、音を一晩 寝かせてみるかなあ。

・・・と言いつつ、このコラムは締め切りを超過して、一晩寝かせる暇がなかった!