「バンドマン平成哀歌集」

                「バンドマン平成哀歌集」

バンドマンの悲哀をつづった歌集の登場です、題して「バンドマン平成哀歌集」。
感動の力作ぞろいです、ハンカチやテッシュペーパーをご用意してご鑑賞ください。



▼狂おしく 妖(あや)しく 十指動くなり そは人間(ひと)の意思?ミューズの意思?

▼気だるさの極みでアコベに寄り掛かり 弾(はじ)き出したる ブルースの気高さ
(アコベ=アコースティックベース)

▼首かしげ 額にシワ寄せ 足を踏み なのに生まれる 媚薬のメロディー

▼華やかな音は見せかけだけと言う 君の眩(まばゆ)さ 知らぬは君だけ

▼生来の明るさだけが取り柄と言う 彼(か)の人の音の 淋しさ何ゆえ

▼金と 物と 物欲と 野心と 引きかえに 音と生きるも それも人の愚

▼マイナーは暗くメジャーは明るいか? 葬送の「Aトレイン」に 涙溢るる

▼「従業員同士の恋愛ご法度」と 書かれた店は 愛を売る店

▼リハのあと 「シーメは店持ち」と誘われて ボーヤひたすら空腹満たす
(リハ=リハーサル シーメ=食事 ボーヤ=坊や、見習いバンドマン)

▼ビータ先 ホテルの豪華な夕食に なぜかチラつくドモコの笑顔
(ビータ=演奏旅行 ドモコ=子供)

▼サッチモもティファナブラスも吹き分けた 器用な君よ 今はどの店

▼褒め言葉 甘い言葉 に背を向けた 乾いた心を ワインに浸す

▼「長さんのベースはいいね」に 若者の「誰それ?」の声で オヤジ撃沈
(長さん=いかりや長介、ドリフターズのリーダーでベーシスト)

▼「楽器が無い!楽譜もない!」で目が覚める なぜに焦るか夢の中さえ

▼バンドマンだけはダメよ と孫を抱く妻の言葉に 弱く頷(うなず)く

▼マンボ、チャチャ、ルンバ、サンバを区別せぬ若者の中で浮く 老奏者

▼還暦を過ぎても馴染まぬバンドマン 「サービス第一? お客第一?」

▼ただ一つ悔いというなら 音楽を趣味に出来ない職業選択

▼酒タバコ 途中で止めたバンドマン 「意志薄弱」のレッテル 嬉し

▼あら楽し 「音を楽しむ」人もあり  「楽しい音」を産む人もあり