バンドマン風「悪魔の辞典<や>」
<や>

やおちょう【八百長】
「待遇はいいし、メンバーはいい奴ばかりだし、こんないいバンドは無いな・・・」
「ん?あ、ジャーマネの独り言か・・・ところで君、うちのバンド、ネカ安いけどいい?」

やおもてにたつ【矢面に立つ】
バンドがショーでミスした時に、雲隠れしたバンマスやジャーマネに代わって、平バンドマン が先頭に立って苦情を受けること。

やかましい【喧しい】
演奏している本人は決して感じることのない、自分の演奏の感想。

やがいえんそう【野外演奏】
日焼けし、蚊にさされ、楽器がほこりや雨にさらされるという、キャバレー育ちのひ弱 なニュースカイラークにとっては、過酷な演奏環境。
(但し、ギャラさえ頂ければ喜んで演奏します、マネージャーまでご連絡ください)

やかん【やかん】
物知り顔をしているが、実は浅知恵しか持ち合わせていない、という人物を扱った、 「根問いモノ」と呼ばれる落語のひとつ。

物知り顔の隠居と、隠居に「愚者、グシャ」と呼ばれている八っあん。
今日も今日とて・・・
「どうして、娘が来るのに、嫁入り、ってんですか」
「そりゃお前、来る花嫁に目が二つ、迎える花婿に目が二つ、合わせてヨメ(四目)入りだ」
「まぐろは、どうして、まぐろってんです」
「群れで泳いで来る姿を見ると、真っ黒だろ。真っ黒だ、マックロだ、マグロ、になった」
「だって、切り身は赤いよ」
「それがお前が馬鹿だ、まぐろが切り身で泳いで来るか!」
「それゃそうだ。ちゃわんは」
「置いたところで動かん。チャワンとしている」
「なら、動かないものは、みんなチャワンじゃねえか。どびんは」
「土で出来た瓶だから、ドビン、ぐらい分からんか、グシャ!」
「じゃ、やかんは」
「や、やかん?!やかんは・・・、もとは水沸かしと言った・・・」
(と、これから、舞台を川中島に見立て、講談調に演じる落語家もいる)

「戦(いくさ)で夜襲を受けたひとりの武者、鎧を着け、さて兜を捜したが見当 たらない。そこで水沸かしの湯をザンブと空けて、かぶった。この武者が強いのなんの。 敵は『あれなる水沸かしの化け物を討て』と一斉に矢を放つ。その矢が水沸かしに 当たって、カーン、と鳴った。矢が当たってはカン、矢が当たってはカン、で、 ヤカンになった」
「矢が当たってヤカン?でも、注ぎ口が邪魔になるでしょ」
「いや、名乗りを聞くのに要る!」
「だったら、両方にありそうなもんだ!」
「なに、無い方は、下にして寝る方だ!」

この手の人物はどこでも見かけるが、まともに相手をしないのが、バンド界では、 本当の物知り。

やきがまわった【焼きが回った】
バンドマンが、年をとって腕が鈍ってしまうこと。なお、ハッキリ言わないと、耳の遠く なったニュースカイラークのメンバーは「焼き場が回ってきた」と聞き間違える。

やきとりや【焼き鳥屋】
バンドマン御用達の「安くて、早くて、美味い」飲食店。どこかの首相や外国の要人がお忍び で立ち寄るような高級焼き鳥屋は、バンドマンの間ではニセ物とされている。間違っても入らない ように。

やくせきこうなく【薬石効無く】
「薬や治療のかいもなく亡くなりました」ということ。年寄りを最後まで面倒みた、という 見栄の通知に使われる常套句。

やくびょうがみ【厄病神】
バンドマン自身がなることができる、神様のひとつ。ほかに「貧乏神」「死神」がある。 但し、せっかく神になったのに、そのことに気が付かないまま暮らしているバンドマンが ほとんど。

やくそく【約束】
バンドマンが日常茶飯事にやっている、自分の意思に反して口から出てしまう実行不可能 な行動の契約。

やけいしにみず【焼け石に水】
赤字の家計簿(焼け石)の上に垂らす、バンドマンの汗(水)、のようなもの。

やすうけあい【安請け合い】
「昨日のツェー万?明日返します。明日のトラ?上手い奴頼んどきましたから。 今日のショー?楽勝っすよ、バンマス、大船に乗った気でいてくださいよ」と言って おいて、すべてダメにしてしまう、バンドマンにありがちな気質。

やすものがいのぜにうしない【安物買いの銭失い】
貧乏なので安い物を買い、それによってますます貧乏になる、という、バンドマンが 無意識のうちに迷い込んでいる「貧乏のスパイラル」のこと。

やせがまん【痩せ我慢】
痩せる思いで太っている人の我慢。

やたいぼね【屋台骨】
家を支える中心となる骨組み。バンドマンの家には無いことが多いが、これを「偽装建築」 とは呼ばない。

やつあたり【八つ当たり】
「だいたい、あんな難しいショーの譜面、持って来るジンガイ(外国人のタレント)も ジンガイや。第一、外国の楽譜は、日本人には合わん!」

やっつけしごと【やっつけ仕事】
この「悪魔の辞典」の作成のように、適当にやっても、簡単に自己満足が得られるような作業のこと。

やっとこさ【やっとこさ】
やっと「や」の項までこぎつけた「悪魔の辞典」の筆者の心境。

やなぎにかぜ【柳に風】
小言に対して、それに逆らわず受け流すという、バンドマンがバンド界で生き残って いくための知恵。但し、ほとんどのバンドマンは、その知恵はあっても実行 していないのが現実。

やなぎのしたにいつもどじょうはいない【柳の下にいつも泥鰌はいない】
文法に弱いバンドマンが、「いつだっていない」のか「いつもいるとは限らない」 のか、頭を痛めることわざ。

ヤバイ【やばい】
「ヤバイうまい」「ヤバイすごい」にのように、最近の若者よって訳の分からない使い 方をされ、そのうち、それが正しいとされていく日本語の一つ。

やぶいしゃ【藪医者】
見通しがきかない医者、少しの風(風邪)で騒ぎ立てる医者、ささ(酒)ばかりの医者、 中に入るのに覚悟がいる医者、藪から棒にものを言う医者、のような医者。

やぶへび【薮蛇】
やらなくてもいいことを、わざわざやって、自分を窮地に追い込むこと。これを 「好奇心が旺盛」、と勘違いしているバンドマンも多い。

やぼ【野暮】
見栄を捨てて地道な生活をするという、バンドマンの成れの果ての姿。

やまのかみ【山の神】
バンドマンの妻自身がなることができる、神様のひとつ。但し、せっかく神になったのに、 そのことに気が付かないまま暮らしているバンドマンの妻がほとんど。→厄病神

やまとなでしこ【大和撫子】
絶滅が危惧されている日本女性。但し、これに値する「日本男児」も同様に絶滅状態。

れやれ【やれやれ】
人生に疲れたバンマスが心底から発する、開放感と虚無感が入り混じった、渾身のため息。