バンドマン風「悪魔の辞典<り>」
<り>

りあくしょん【reaction】
漫才ブームから発生した、相手の行為に対する「大げさな反応」のこと。その際に 「ナニゆうてまんねん!」「アホちゃうか!」「どないやねん!」などの言葉を添えると、 大げささの効果が増す。日本人全体がお笑い芸人化する元となった行動。

りかにかんむりをたださず【李下に冠を正さず】
スモモの木の下で冠を直すと、スモモを盗もうとしているように見えるから止めておけ、 という中国の教訓。バンドにも同じような教訓として、
・「他人の奥さんと笑顔で話さず」
・「よそのバンドのメンバーとむやみに親しくせず」
・「美人歌手に『楽譜を書いてあげようか』と言い寄らず」
・「ビーナカ(差し入れ)の酒が置いてある横で茶を飲まず」
などがある。

りきむ【力む】
バンドマンが、楽器の演奏、人付き合い、ナンパ、バンス(前借り)の交渉などで、最悪の 結果を生む時の、力の入れ具合。

りこうもの【利口者】
バンド社会でうまく立ち回っている人や、逆に、うまく立ち回れず別の職業に 就いた人の両方。どちらも出来ない者は利口者と呼ばれないが、実態はそんな バンドマンが最も多い。

りすとら【リストラ】
restructuring(再構築)の略。特に、会社更生のための人員整理のこと。 バンドで言えば、バンドが経営不振になった時、 優秀なバンドマンをクビにして、残った未熟なメンバーとトラ(臨時雇い)で、音楽性の 低い演奏をやってバンドを維持しようと試みるような、錯綜した行為のこと。

リセット・ボタン【reset・button】
それを押すだけで、過去の失敗が全てチャラ(無かったこと)になるというボタン。多く の若者が探し求め、探ているうちに年を取ってしまうという、悪魔の誘惑のボタン。

りちぎ【律義】
誰からも感謝されず、何の得もないのに、休みも取らず毎日黙々と出勤して来るバンド マン、のような人たちが持っている、悲哀に満ちた性格。

りっしょくぱーてぃ【立食パーティ】
足が疲れるのが先か、腹一杯になるのが先か、主催者の思惑と、客の忍耐が、火花を散らす パーティ。

りっちかん【rich感】
金銭的に豊かだと感じること。以下の二通りがある。
<絶対的リッチ感>
ある基準の金額を満たさないと豊かではない、というリッチ感。基準に達しないと1000万円 でも1000億円でも、リッチではないと感じる、不幸な感覚。
<相対的リッチ感>
今より少しでもよければ豊かだ、というリッチ感。夕食にビール1本でも増えれば、リッチ になったと感じる、多くのバンドマンが持つ、幸福な感覚。

りとますしけんし【リトマス試験紙】
「坊さん(酸)酒飲み赤くなり、借金あるかり(アルカリ)青くなる」という語呂から、 坊さんも生活は厳しいんだ、ということを教えてくれた、理科の教材。

リバーシブル【reversible】
「あんたなんか、人間の皮をかぶった獣よ!」と言われたバンマスが愛用している毛皮。

リピーター【repeater】
店は小さいが味が評判のラーメン店、飛び切り美人ではないが愛想のいいママがいるライブハウス、 年寄りばかりだがしぶとく生き残って演奏を続けている元キャバレーバンドマンのコンサート、などを、 「繰り返し訪れてくださるお客様」、の英訳。

りびんぐきっちん【living kichen】
住宅販売会社が、リビングルーム(居間)とキッチン(台所)を兼ねた洒落た部屋、として 宣伝しているが、農家で言えば、野良仕事から戻り、台所で調理し、その部屋 で飯を食うという、日本古来からある間取り。

リャンメンまち【両面待ち】
マージャン用語から派生した、二通りの可能性がある、ということ。但し、バンドマンの場合は、 「二股かけている」と取られ、「二兎を追う者一兎も得ず」という結果に終わることが多い。

りょうがえ【両替え】
虎の子のヘソクリの1万円が無くなる、最初の行為。

りょうさん【両さん】
「こちら亀有公園前派出所」という漫画の主人公、両津勘吉のこと。単行本 の巻数がギネス記録になるほど多くて、最近買ったのはどの巻だったか、覚えておくのが大変、 という漫画の主役。

りょうさんたいせい【量産体制】
アドリブを演奏する時、質を高めるより、量を多くすることに気を配って演奏すること。

りょうしき【良識】
バンドマンに欠けている「四つの識」の一つ。「四つの識」は知識、見識、常識、良識。

りょうせいばい【両成敗】
キャバレーのショーでバンドがミスった時、リハーサルを強制出来なかったバンマスと、 リハーサルを嫌がったメンバーの両方が、ショーのマネージャーから思いっきりイヤミを 言われる、ようなこと。

りょうてにはな【両手に花】
両手に花束を抱えて一見よさそうに見えるが、実はそのために身動きがとれない、という無防備 な状態のこと。だからニュースカイラークのメンバーは、そうならないよう常に心掛けています、 決して負け惜しみではありません(泣)。

りょうりひょうろんか【料理評論家】
味わう口より、喋る口の方が達者な人。

りょうやくはくちににがし【良薬は口に苦し】
ろくろっ首、給料日を首を長くして待っているバンドマン、のどの治療を受けている動物園の キリン、が感じる薬の苦さ。

りんきのひのたま【悋気の火の玉】
悋気(りんき=男女間の嫉妬)を題材にした落語の演目。

ある商家の旦那、吉原の花魁に一目惚れして、お妾さんとして囲う。これに気付いた 本妻さんは面白くない。旦那が帰ってきても、
旦那:「ただいま帰りましたよ」
本妻:「はい、さぞや、お疲れでございましょ、フン!」
旦那:「おい、お茶を入れておくれ」
本妻:「私の入れたお茶じゃ、おいしくないでしょ、フン!」
これじゃ旦那も面白くない、本宅には寄り付かず、妾宅に入り浸りに。

こうなると本妻さんも意地になる。
「あの妾のせいだ、五寸釘を買っておいで!」
と、わら人形を作って、五寸釘を打ち付ける。
これを知ったお妾さんも元は花魁で気が強いから、黙っちゃいない。
「あちらが五寸釘なら、こっちは六寸釘を買っておいで!」
「生意気な、こっちは七寸釘だ!」
「こっちは八寸釘を!」
ところが、「人を呪わば穴ふたつ」の喩えで、呪いがきいたとみえ、二人ともポックリ。 旦那は同時にふたつの葬式を出すはめになってしまう。

ところが、しばらく経って「本宅と妾宅から出た二つの火の玉が、ぶつかり合っている」 と町内の噂になり、それを知った旦那が、あわてて仲裁に出かける。
現れたお妾さんの火の玉に、
「ま、腹のたつこともあろうが、ここは私の顔を立てて成仏しておくれ。ところで、煙草を 一服やりたいんだが、お前の火を貸しとくれ・・・フーッ、ありがとう」
しばらくすると、今度は本妻さんの火の玉が、ゴーッ!っと、物凄い音を立てて飛んで来た。
旦那はまた、
「ま、腹のたつこともあろうが、ここは私の顔を立てて成仏しておくれ。ところで、煙草を 一服やりたいんだが、お前の火を貸しとくれ」
すると、本妻さんの火の玉が、スーッ、とそれて、
「・・・私の火じゃ、おいしくないでしょ、フン!」

両手に花などと粋がっている者に、いつかは降りかかってくる話です、ご用心ください。

リンボーダンス【limbo dance】
キャバレーに来るダンスショーの中で、正面からでなくバンドステージ(裏側)から見ても、ちっとも 面白くない踊り。