バンドマン風「悪魔の辞典<も>」
<も>

モーイー【もーいー】
芋(いも)の隠語。バンドマンは、焼き芋やポテトチップスなど、芋製品を一切口にしないが (【いも】の項参照)、芋焼酎だけは安いため、例外的にこの習慣から除外されている。
「お客様、焼酎は、芋、麦、米、蕎麦がありますが、どれになさいますか」
「俺といっしょのやつ、くれ」
「・・と、言いますと?」
「イモよ、いも!」
(『ニュースカイラークメンバー語録』より)

もうきのふぼく【盲亀の浮木】
大海を泳ぐ盲亀が浮木に遭遇するぐらい、めったにないこと。バンドマンが、金を貸した相手に 偶然出くわした時に言うセリフの中で、よく使われる。
「やあやあ、めずらしやな金尾苅太。汝に会わんがため艱難辛苦(かんなんしんく)いかば かり。ここで会うたが盲亀の浮木、優曇華(うどんげ)の花待ち得たる今日(こんにち)只今、 いざ尋常に、金を返せ〜!」
ただし、早口でしゃべらないと、モタモタしている間に逃げられてしまう。
(※優曇華=うどんげ、三千年に一度しか咲かないとされる花)

もうけばなし【儲け話】
バンドマンの周りにいくらでもあるのに〜、バンドマンが儲かったという話は全く聞かない という〜、世にも不思議な〜、怖〜いお話。

もうこしゅうらい【蒙古襲来】
現在の大相撲の、力士構成。

もうしわけ【申し訳】
バンドマンが謝罪する時に用いる言葉。その際「申し訳」の前後に付ける言葉によって、頭を下げる 角度が異なってくる。
「も、申し訳ございませんでした!」・・・180°(土下座)
「誠に申し訳ございません!」・・・90°
「申し訳、ありません」・・・45°
「ホント、申し訳ないです」・・・30°
「いや〜、申し訳ない」・・・15°
なお、頭を下げたくない場合や、そっくり返って謝罪する場合は「申し訳」ではなく、「スマン」 や「誠に遺憾に存じます」などを使う。

もうはんぶん【もう半分】
少々怪談じみた落語の演目の一つ。

ある居酒屋に「お酒を、半分だけください。グビッ、グビッ・・・恐れ入りますが、もう半分・・ ・すみせんね、一杯注文するより、半分を二度注文した方が、なんとなく得したような気分になります んで。グビッ、グビッ・・・すみません、もう半分」と、飲みにくるお爺さんさんがいた。

ある日、このお爺さんが帰った後に大金の入った財布が忘れてある。居酒屋の夫婦はネコ ババを決めこむことにし、慌てて戻って来たお爺さんが必死に懇願しても、知らん顔。 「あの金は娘が身を売って作ってくれた金、その金をネコババするとは。この恨み忘れまいぞ!」。 お爺さんはそう言い残して、川に身を投げてしまう。

ネコババした金で夫婦は店を大きくし、居酒屋は大繁盛。

しばらくして、夫婦の間に子供ができた。ところが、生まれてきた子供の顔が、あのお爺さんにうり ふたつ。あまりことに女房はショック死してしまう。

残された亭主は、乳母(おんば)さんをやとって子供を育てようとするが、どの乳母さんも数日で 辞めてしまう。不思議に思った亭主が、夜中に子供の部屋をそっと覗いてみると、子供は行灯(あんどん)の 油を湯のみに注いで飲んでいる。「おのれ、この妖怪!」と、亭主が部屋に踏み込むと、子供は亭主 の方を振り向いて、湯のみを差し出し、「・・・もう半分」

ネコババする夫婦にしろ、半分ずつ飲むお爺さんにしろ、やたら貧乏臭い。
「貧乏はしてもいいが、貧乏臭くなっちゃだめだ(古今亭志ん生さん)」という、バンドマンへの教訓の噺。

もうぼさんせん【孟母三遷】
孟子の母が、教育環境のよい場所を求め、墓地のそば、市場のそば、学校のそばへ引っ越したという故事。 「おっかさん また引っ越しかと 孟子言い」(川柳)
但し、バンドマンの場合は、
墓地のそば・・・人生のはかなさを学べる
市場のそば・・・人生は金だということを学べる
学校のそば・・・人生は学問だけではないことを学べる
など、どんな場所にでも適応する能力を持っている。

もぐらうち【土竜打ち】
子供たちが家の前の地面を竹竿などで叩き、もぐらを追う仕草をして餅や小遣いをもらってまわる、 小正月の行事。筆者が幼少の頃居た都会(?)でも見られたが、こういう行事を大人が「うさんくさ い」と相手にしなくなってから、古き良き習慣は消えていった。

もざいくもよう【モザイク模様】
ただの四角いブロックの集合体なのに、なぜかワイセツさをかもし出す幾何学模様。

もちあわせ【持ち合わせ】
バンドマンが、金を払う場面に遭遇した時に用いる言葉。必ず「無い」との組み合わせで使用する。

もったいない【勿体ない】
惜しい、失われるのが残念、の意味。
<杉浦日向子「百日紅・女罰」から>
北斎宅の居候・女好きの善次郎が、川舟で女と遭遇した。女は「わっちのことはお忘れかい」と言うが、 善次郎はどこで会ったのか思い出せない。やがて川の半ばまで来ると、女は骨壺を取り出して川に散骨 し始めた。
「誰の?」
「誰って、妹分のお鈴だよ、あんなに可愛がったくせに」
「いくつ?」
「十九」
「厄年か、気の毒に・・・(もったいない)」

男が思い浮かべる「もったいない」の典型的な例。(なお、この「お鈴」、実は猫)

もっぱらのうわさ【専らの噂】
バンドでは、根も葉もない噂、やっかみ半分でバラまく噂、発信元が自分であることを隠して広げる 噂、のこと。

もともこもない【元も子もない】
あぶく銭を手にしたバンドマンが2号さんを作って遊びまわり、金が無くなって戻ってみると、 元のカミさんも子供もいなくなっていた、という、よくある人生模様。

ものいえばくちびるさむしあきのかぜ【物言へば唇寒し秋の風】
サラリーマン、公務員など、組織社会の人間が、無難に人生を送るための格言。バンドマンは この格言を知らないので、年中、唇も懐も、寒い思いをしている。

もみじがり【紅葉狩り】
山へ紅葉を見に出かける、風流な遊びのこと。紅葉だから「鹿」を撃ちに行って「紅葉鍋」を作る ことだろう、と考えるバンドマンは考え過ぎ。

もやい【催合い】
一つの物を他人と共同で使うこと。おもちゃの取り合いをしている子供に「おもやいで使 いなさい!」というように使う。無駄な重複をいましめ、かつ他人と協調する心を育む、という、貧乏 人の知恵が溢れている言葉。

もりぐちくらぶ【森口クラブ】
ニュースカイラークのバンドリーダー・森口茂生氏(80)を熱愛してやまない20代から30代の女性 のための、ファンクラブ。現在、会員ゼロ。皆様のご入会を心よりお待ちしております。
(なお、本人は50代、60代でも十分OK、と申しておりますので、念のため)

もりもりもりあかるくもへあゆむ【もりもりもりあがる雲へあゆむ】
放浪の詩人・種田山頭火の句。山頭火は松山の一草庵での句会の夜、酒を飲みながら一人で頓死したため、 この句が辞世の句とされる。後に(元)奥さんが「最後の句が力強い句でよかった」と述べている。
(なお、ニュースカイラークには、山頭火ファンを口実に大酒を飲むメンバーが一人と、 山頭火と同じ名前を持つ、山頭火に負けないぐらい酒好きのメンバーが一人いる・・・合掌)

もんがいふしゅつ【門外不出】
キャパレーバンドのバンマスがそれぞれに持っている以下のような独自の技を、他のバンマスに 絶対に漏らさないこと。
・ショーのリハーサルを断っても、ビーナカ(バンドへの薄謝)がもらえる技
・休みを取っても、店のマネージャーの機嫌を損ねない技
・バンス(前借り)を安く叩いても、いいプレーヤーを獲得する技
・メンバーの非難の矛先を、自分でなくジャーマネに向けさせる技
・バンドをぬるま湯状態にして、メンパーが他のバンドに移る気を起こさなくする技
など。

もんじゅのちえ【文殊の知恵】
三人寄ると出る知恵。10+10+10=30ではなく、10×10×10=1000のような、相 乗効果を生む知恵のこと。但し、バンドマンが三人寄ると、1+1+1=3が、1×1×1=1、 になってしまうことが多い。

もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ【門前の小僧習わぬ経を読む】
「ボーヤ」がキャバレーでジャズを習得するための、基礎的な道筋。この道筋を踏み外して、 無理やり勉強したり、嫌々練習したりすると、中途半端なバンドマンが出来上がる。
(ボーヤ→バンドマン用語集参照)