アドリブをどうやって練習したらいいか、と聞かれたとき「相撲」にたとえて説明することがあります。
まず、プロの相撲がアマチュアと一番違う点は、基本の形ができていること。同様に、ジャズらしく聴こえる
ためには、なんといってもジャズのリズム感の基本が出来ていること。単にダーダッ、という表現を聴いただけで
ジャズらしいか、そうでないかがわかってしまう。
次に、いろんな技を身につける。ジャズで言えばいろんなフレイズを繰り返し練習し、考えるのではなく、
自然に指が動くようになるまで練習する。これが多彩か、しっかりしているか、が重要なポイントになる。
次に稽古場での組み手。ジャズで言えば、それらのフレイズをどんな風に組み合わせて流れを作っていくか
、どうしたら、ジャズらしい表現になるかをつかんでいく。
それから、本番に向けての申し合い稽古。つまり、やっとメンバーとの合同練習、ということになる。
この時までには、他のメンバーに迷惑をかけないようになっておく。ここでやっと、いままで練習して
きたことをつなぎ合わせ、自己表現という形が見えてくる。
そしていよいよ本番、これが曲者。相撲でも、本番が練習と全く同じように進む、ということはありえない。
勝つためには、土俵の上で、いままで練習してきたことがとっさに出せるかにかかっている。ジャズ演奏も、
精神状態、客の雰囲気、曲のテンポ、音量など、練習とは全く違った方向に進んだりする。それにどう
対応出来るかで、いい演奏だと言われたり、ボロカスに言われたり。
基礎が出来ている人は堂々としている、うまくいけばネカもいい、個性があれば評判もいい、酒を飲んでいて
も結果オーライ・・・「なーんだ、相撲とジャズ、よく似てるじゃない」、なんて言ったら、お相撲さんに
怒られるかな。
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