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キキキィィーーーー!! 「いっちばーん!!」 三輪車のブレーキを思いっきり握って、幼稚園の建物にぶつからんばかりに止まった、智幸の口からは、弾んだ勝利宣言が飛び出す。 「ずるいぞ、トモ!ちゃんとコースはしってないじゃないか!」 僅差で、隣に着いた京一の口からは、すでにもうそれに対するセリフが飛び出している。 「なんだとぉ!まけたからって、うそいうなよ、きょーいち!」 三輪車から降りて、つかみかからんばかりにしている智幸と京一に、酒井と大輝はおろおろするばかり。 「ハーイ、二人とも喧嘩しないの。もうおやつの時間だから、仲直りの握手して、手を洗ってらっしゃい」 美人だけれど、怒らすとこわい涼子先生が、智幸と京一の頭をぐりぐりと撫でて、高らかに宣言した。 「さあ、トモくん、京ちゃん、仲直りの握手は?喧嘩する悪い子にはおやつはなしよ?」 ここで、あくまでも意地を張っていては、一日の一番楽しみのおやつを食べ逃すことになる。 「あらあら、大輝ちゃん泣かないのよ。ほら、酒井くんが待ってるから、一緒に手を洗ってらっしゃい」 涙のにじんだ大輝を抱き上げて、頬をさすると、酒井の方へとんと降ろしたのは、いつも元気いっぱいの啓子先生だ。 「まったく、毎日毎日、よく飽きないわね、あの子たちは」 そうして、お腹が膨れて眠って起きると、子供というものは、それまでの感情など忘れてしまうものだ。 「なーなー、手ぇつなごうぜぇ」 |
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「手ぇつなご」 |
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バスが来るまでのいつもの風景。 |