古龍感想書き散らし

陸小鳳伝奇
辺城浪子
楚留香 蝙蝠伝奇
多情剣客無情剣
天涯・名月・刀

どの作品のあらすじにも感想にもあまり女性の名前が出てこなくて、まるで漢だらけのようですが、古龍の魅力の一つは残酷で美しく魅力的な女性達にあります。その美しさ、醜さ、強さ、やさしさ、冷たさ、暖かさ、全てが極限まで生き生きと描かれる様は、古龍が女性にとても酷い目に会わされ、同時にとても幸せにされたのだろうことを感じさせます。流石に死後子供が何十人と現われたというお人。では何故感想に女性が現れないか…それは誰もが鍵握りすぎてて下手なこと書けないからだったり。女は怖い…感じますとも同性ながらにひしひしと。

陸小鳳伝奇



あらすじ

若いうちからいろいろいろいろやってきて、その筋ではすっかり名うての陸小鳳。そんな彼の元にきれいなお姉さんがやってきて言うんです。
「お父様を助けて!」
その隣では小生意気な美少女が言うんです。
「この人で大丈夫なの?」
美人の頼みは断れない。しかも話を聞いただけでいろんな人が襲ってくるし、なんてったって面白そう。最近のツレ花満楼はすっかり女にほだされてるし、腐れ縁の西門吹雪も巻きこんで…さて、やりましょうか。

ひとこと

読むきっかけは「決戦!紫禁城」。あのトンデモ映画の登場人物が出ている小説がある。それは読まないと!そしてそれは想像以上に面白かった。
お気に入りは西門吹雪。あのやる気なさげででもしっかり付き合ってくれちゃう感じがたまらない。ルパン一味でいうなら次元かな。いや、五右衛門と評する向きが多いんですが、あんなに「若い」人じゃないでしょ。どちらかというと花満楼のが五右衛門ぽい気が。すーぐ女にほだされちゃうところとか、わりとあっさりだまされちゃうところとか…そういうところ、好きですよ?そういう意味では奴には西門吹雪ではなく花満楼のが合ってると思うんだけどなー…ていうか、あんな西門吹雪はいや。認め難いので脳内では別物として処理されとります…風といい西門吹雪といい原作のが断然ツボ!ってことになっちゃうのはなんだかなぁ(苦笑)。
そんなことはともかく。男も女もキャラが立ってるのはもちろんのこと、次から次へのどんでん返し。人が生きてたり死んでたり実は誰だったりそれは何だったり…なんやかやとハードな展開ながら、どんなに緊迫した状況でも交わされる軽妙な会話。軽いけど重い、そんな本。
しかし、今から思えばこの軽さは稀有なものだった…というか、シリーズものの一部という位置付けだし、陸小鳳一味他登場人物が背負ってるものについて未だ書かれてないからかもしれないんだけど。
他作品の人って結構いろんなものにがんじがらめになってて、飄々と生きてるようで悩みは深いからなぁ…でも、そういう重さが感じられないのがまた陸小鳳の魅力かな。


辺城浪子



あらすじ

天下の風来坊葉開が訪れたのは江湖の大侠馬空群のお膝元。そこで出会うは暗黒剣士傳紅雪。父の仇、馬空群への復讐を赤子の頃から吹きこまれ、呪いにも似た宿命に縛られた傳紅雪を影に日向に見守る葉開…ていうかもしかしてもしかしなくても貴方関係者でしょう?!

ひとこと

いやーはまったはまった。だって葉開がどんぴしゃツボだから。うさんくさい女たらし仕掛け女房つき。強くてでも心の師匠なんかがいたりして、それなりに過去があってでも飄々としてて、全てを知ってるような感じででも全ては予測できてなくて…ていうかあんたが最初にネタばらししてればあの人もこの人もその人も死ななかった気がしますよ?…でもそうすると傳紅雪が壊れちゃうからだめなのね。
どいつもこいつも傳紅雪のためにあれこれやきもき手出しして、奴を成長させちゃうぞ!という気概満載。んもう傳紅雪ったらほんっとみんなに愛されてるんだから☆

映像版

93年の年の映画なのに傳紅雪役がティロン…という恐ろしい情報の元に購入したVCD。はいあじあでは主演張智霖@路小佳になってるけど…ほんとかよ。
…というわけで、見てみました。予想よりずっと良かった♪全般的に原作に忠実で、端折り方も上手だったと思う。ただ、肝心の傳紅雪と翠濃の道行きを端折ってるため、翠濃がただのお色気妓女になっちゃってるのは原作ファンには痛いところかと。まぁ傳紅雪の見た目がおっさんなんで、沈三娘のがしっくりきたりするんだけどね。
傳紅雪は天涯〜の時より傳紅雪らしかった…と思うのは私が辺城しか読んでないからかもしれませんが、あの妙なかたくなさが上手く出てて、一族皆殺しエピソードのところとか見入っちゃいましたよ。ただやはりアクションで唐突にきびきびしてしまうのはなぁ。心底いやそーに一閃して終わり。ってのが奴だと思うのだが…それだとアクションが減っちゃって武侠片としてはだめなのか。で、とても傳紅雪らしいので、言ってることが大変青いんですが、そこがとっても良かったんですが、見た目がね。何度も言うようだがおっさんなんでね。それなりに違和感はあった。でも覚悟してたよりはずーっと少なかったんで安心安心。
葉開は…なんか陸小鳳みたいでした。髭だし。あの子の軽さとか胡散臭さとかが出ててけっこう良い感じだったんだけど、原作よりさらに悟ってる感じなのと、お笑いを一手に引き受けてる(この辺がすごく決戦!の陸小鳳)のとで、それが悪いわけじゃないんだけど、どうにも「葉開」に見えなかった…。役回りはちゃんと葉開だったんだけど、そういうことではないのよ。でも「こんなん違うわー!!」と卓袱台ひっくり返したくなるほどかけ離れては無い、びみょーな違和感なんで、その辺が余計むずむずする…。これはまぁ私のあの子への思い入れの問題なんで、普通に見ればしっかり合格点のはず。(このあたり、二回目を見てからだいぶ評価が上がりました。ていうかさ、すーごーく芸達者なんだもの。葉開。彼が出てくると映画のテンポがぐっと良くなる。この映画の中の「あるべきポジション」をしっかり掴んでる…と思ったら監督さんでしたよ…そりゃそうね。てことはあの朝食もあのラストも貴方のお考えで…素晴らしい。)
霖ちゃんはアニタ・ユンで、早口の妙なお嬢さんになってたけど、服もチベットの民族衣装風で可愛かったーvv葉開ともお似合いでした♪
登場人物で一番普通に美人さんだったのは馬芳鈴かなぁ。原作どおりいろんな人に振り回されて、あげくに魅かれた路小佳は死んじゃって、やっぱり結局可愛そうなお嬢さんでした。原作ほど悪女化せず、ちょっと気の強い父親想いのお嬢さんだっただけに、ね。
で、路小佳ですよ。登場シーンではちゃんと道端で風呂に入ってくれておぉっと思ったけど、ピーナッツは登場せず。あれは…ファンサービスなのか…。とっても自信たっぷりな美形で、なかなかの路小佳ぶり♪「特別ゲスト」扱いなんで出番は多くないんだけど、傳紅雪との一騎打ちとか見せ場はばっちり。なるほど当時のアイドルねぇ。ていうか、張智霖ってアニタの彼氏だったよな…。
…というわけで、何やかや言いつつ良い出来でした。ほんとすごく決戦!と似てた気がするんだけど(もちろん決戦!のがずっと後。王晶…)、大量に使われてたのがCGではなく爆薬なところが時代ねぇ。


楚留香 蝙蝠伝奇




あらすじ

去った後には香を留める美形の凄腕大泥棒「楚留香」。お友達の無花和尚を引き連れて、生きかえったら魂入れ替わり事件に怪しい金持ちパラダイス「蝙蝠島」へのご招待、男だったら一つに賭けて掛けて縺れた謎を解きます。…って貴方泥棒ですが、何か盗んでます?…あぁ、女心ってやつね。

ひとこと
ミステリー仕立て…ていうか謎が多すぎてミステリーにならざるを得ない向きの古龍作品にあって、これはかなりまっとうなミステリーです。軽いタッチで進む話はどんでん返しの繰り返し。交わす会話も軽快で、ノリはなんとなく陸小鳳と似てますが、主人公一味の造形がまた違う。どちらかといえば三枚目の陸小鳳と比べると、楚留香は美形泥棒らしく実に軽やかでかっこいい。かっこいいんだけど、どうにもかっこよすぎて私のツボにははまりません。それより誰より胡鉄っちゃんvvv素直でまっすぐで純情で…いい年だってのにあーもーほんとかわいいなぁ。楚留香の見えすぎてるあたりとか、胡鉄っちゃんのまっすぐさが状況を開いてくれたりするあたり、晴明と博雅みたいな感もあり。よくもまぁ私の生まれる前からこんなにも魅力的なキャラがどっさり書かれていたのかと。胡鉄っちゃんのビジュアルを検討すれば日本の女子にもきっと受けるので、是非とも他編も邦訳を…っ。

映像版

VCD裏のあらすじが私の知ってる話と違います。ていうか、胡鉄っちゃんが死んだってどういうこと---!!!ショウブラの作品は「前半は原作に忠実」という前例があるし、原作でも本当に死んでたらどうしよう…どきどき。
多情〜と違って、とにかく邦訳と入り方から何から違ったので、あらすじはまたゆっくり見ないと飲みこめない。とりあえずあの夫婦が何者なのかに力を置いて見てみないと。ショウブラなので女性の影が薄く、金霊芝は出てきただけ、高亜男も姑梅大師のお付きなだけ…これはやっぱ絡むべき胡鉄っちゃんがいないからなの?姑梅大師はただのお婆さんで、華真真は…出て来たっけ?「げに恐ろしきは女の情念」を実感するこの作品にあってこの使い方はもったいない…蝙蝠公子も今一つ小物だし。ていうか、あれは「親子の情ではない?」というのが怖いところなんだと思うのに、それをあっさり親子にしてしまうのはありがちすぎていまいちだわ…。
あと。香帥のキャラにティロンは今一つ合わないと思うのよ。もう少し軽さのある人のがいいかなぁ…あの硬さが傳紅雪とか李尋歓には合うんだけどね。しかし今回胡鉄っちゃんに代わり香帥とコンビを組む一鮎紅がいい。ビジュアルもキャラも。鍔広帽かぶって黒ずくめで、なんとなく隙のある香帥(胡鉄っちゃんがいないからその辺りのキャラも香帥が引き受けてる?)をばっちりフォローしてて、なんかねー。コンドルの竜みたいな渋いいい男なのよvvこれはこれでとてもツボですが、それでもね…胡鉄っちゃんに会いたかったわ…。
もう一本の「楚留香」には出てくるみたいなんだけど、でも後ろの写真では一鮎紅が出張ってるんですけど、もしかしてここに胡鉄っちゃんの死がかくされているのかしら?


多情剣客無情剣



あらすじ

情に厚い人柄と百中の飛刀の実力から江湖に名を成す小李飛刀こと李尋歓。愛する女と屋敷とを友に譲って身を隠すも、結局気になり屋敷に戻ってみたところ、あれよというまに江湖の勢力争いに巻き込まれちゃってさぁ大変。江湖第一の座を狙う上官金虹が盲目的に彼を慕う剣士荊無命を使い暗躍し、稀代の美貌と悪意を抱く林仙児は愛憎渦巻く網を編む。その芯に立つ李尋歓が情に縛られ動けぬうちに、愛した女は不幸になって、なんとなく知り合った少年剣士阿飛は網に絡め取られ、情を交わした好漢達はあぁっというまに死んでいく。
李尋歓に思いを寄せる旅の美少女小紅は自己を成し、かつ縛る情を捨てられない彼を解き放つことができるのか?

ひとこと

えーっと。これ言っていいのかな…正直李尋歓うっとうしいんですよ。病に冒され、情に悩む剣客はそらもう渋くてかっこいいんですがね。ですけどね…その優柔不断で何人死んで何人不幸になったかと。この辺やっぱ葉開の師匠だと思わないでもないですが、葉開は優柔不断なんじゃなくって傳紅雪思いなだけだもん!!と言ってしまうのはやはり愛の差か。どうも私は侠客として完成されてる彼にはあまり興味がわかなくて、その隙とも言える情という名の危うさにも、できるんだからやりんさい!といらいらしてしまうんですなぁ。それが阿飛とか荊無命なら、その人としての危うさと共に愛しくなってしまうのだけど。
でもでも。香港で見た古龍群侠傳追加シナリオパッケージの李尋歓はちょっと病みやつれた美中年でもぉすっっごく素敵だったのよねぇ…思わず店頭で写真を撮ってしまおうかと思ったほどに。その後どのゲーム雑誌見てもネット泳いでもその画像を見ることはなく…やっぱ撮っとけばよかった。
私の好みは別として、やはり李尋歓は江湖随一の好漢で、阿飛も荊無命もまた年を経て漢と成っていきます。それでも私は若さゆえの危うさを抱くこの頃の二人に会いたくて、この本を読むのです。


さらにどうでもいいことですが、私の中で阿飛の配役は反町隆史です(苦笑)「竜馬におまかせ!」の以蔵限定ですが。前髪長めで長髪括ってっていうビジュアルもそうだけど、照れ屋で無口ででも腕に自信あり!なとこがぴったりだと思うのー…ってわかる人はいるのだろうか…。

映像版

正直、良い出来でした。前半は何かと原作に忠実で、忠実すぎて1枚目が終わった段階で上巻すら終わっていませんが、おかげで話には入りやすかった。
原作ネタバレ
阿飛と雪の中で出会い、林子音ごと龍嘯雲に譲ってしまったかつての自宅にて梅花盗との疑いをかけられて遊龍生と対決し、何故か彼が死んでしまって捕らえられ、田七親分と大師により少林寺へ護送される途中五毒童子に襲われて…ていうかこんな道中を詳しく書く必要がありましたか?毒オンパレードは楽しかったけど。そして少林寺に着いたはいいものの、大師殺しの疑いをかけられて脱出…というぐらいまではほぼ原作通りでしたが、この時点であと20分ぐらいしかありません。
で、映像ネタバレ
…しかしまさかそこで林仙児が「お父様の仇!」と襲ってくるとは思いませなんだ。まさか彼女が阿飛が惚れるに値する孝行娘なんていうことがあっていいのか!阿飛の「彼女は清らかで美しい人だ」という台詞がそのまま通るなんて…。
「阿飛が桃レンジャーと対決中に装束が破れて「え!?女?」と驚いているうちに昏倒。変装を解いた仙児に助けられてだまされる」とか「仙児にそそのかされた阿飛と李尋歓の一騎討ちがクライマックスに違いない」とかいう
予想はちっともあたりませんでしたよ…。
仙児がいい人になってしまった代わりに龍嘯雲が大出世。ラスボスに格上げでした。正直李尋歓の君に対する仕打ちは親切を通り越していやみなので、君の気持ちはよくわかるよ。つらかったねぇ。
…だからといって飛刀返しが磁石板ってのはどーかと思いますが…
しかし最後は阿飛も加勢に加わって二対一。龍嘯雲にはやはり勝ち目は無く、勝った二人が雪の中別れて劇了。

遊龍生だって出てきたのに上官金虹荊無命も出てこないということになんとなく不満を感じないでもないですが、まぁきれいにまとめたよね、とは思います。
ティロンの李尋歓は出来るはずなのに思いきれない辺りとか逃げてしまえばいいのに逃げられないところとか、そんな心情的な硬さと合っててとてもよかった。わざとらしい咳き込み方も(笑)
イートンシン演ずる阿飛はイメージ通りのまっすぐな美青年でこれまたとてもよかったです。私のこの作品に対する評価は彼あってのものかもしれん。イートンシンは今や映画監督として名を上げていて、「三少爺剣」で自分のやってた役をレスリーにやらせて撮りたい、と言っていましたが、これでも同じことを考えたことは…いや、阿飛はレスリーには合わないか。もうすこしすねた感じじゃないと。ね。

天涯・名月・刀

あらすじ

黒い剣士傳紅雪が歩いているとどんちゃかな集団がやってきて中から青年が現われます。彼は去年傳紅雪に負けるも命を救われ、今日リベンジの約束をしていた燕南飛。リベンジバトルを開始するもなんだか邪魔が入って燕南飛の彼女名月心宅へ逃げ込む二人。そしてなんだか(私が)よくわからないうちに彼らは謎の悪役公子羽の野望を打ち砕くため必殺武器孔雀羽を手に入れ、守って、旅に出る羽目になるのです…。

ひとこと

未邦訳なのでショウブラのティロン主演VCD(中英字幕)を見ただけ。つまり↑はでたらめやもしれませんが、とにかくこの話は辺城浪子の主役の片割れ、傳紅雪のその後の話です…ていうか辺城浪子がこの「天涯・名月・刀」と葉開主役の「九月鷹飛」の主役二人の過去話として書かれたものなのですが。あらすじゆーても古龍の話は詳しく書くとネタばれになるのでいつだって適当なことしか書けませんが、これもまた書画剣碁詩の五人衆を初め、相変わらずにキャラ立ちした男女が現われて繰り広げるどんでん返し満載の娯楽大作です。
ティロン演ずる傳紅雪はちょっとたくましくて押しが強そうに見えますが、そこはやっぱり傳紅雪。結局はお人よしで悩み満載なラブリー兄さ…いやおっさんでした。
しかしなんとあなたこの映画。夏に日本語字幕つきで発売されるのですよーーー(喜)
これで私も話がわかるはず。でもきっといろいろいろいろ改変されてるだろうから原作の邦訳も超希望。九月鷹飛といっしょにね☆

…で、日本語字幕付で見てみましたが、特に新しい発見はありませんでしたよ。何語で見てもどーでもいいと思ってることは目に入らないようで…ていうか。字幕ひどかった…。江湖は江湖でいいでしょう。IMEでだって変換できる言葉をわざわざ何通りにも言い換えるなや…。

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