紅茶とビターと倫敦と 早朝、田園風景に機影を落として シンガポール航空(SQ)
ロンドン便はヒースロー空港に着陸態勢に入った。トランジットを含めて20時間以上も乗っていたためにいささかグロッキー状態であった。「二度と南回りなんて乗るか!」と思ったが、この後ヨーロッパに来るたびにシンガポール航空を利用することになる・・・(^^;;
今なら「5日を第一希望としてその前後の出発で取れる日、帰国は13日を第一希望でその前後の日、ロンドンがだめならパリでもフランクフルトでもかまわない、そこから陸路で行くから・・・」というオーダーでそれも夏休みの見当をつけて早い時期から名前を入れてもらうことなど要領を得たやり方で手配してしまうのでほとんど希望どおりのチケットを手に入れることが可能なのだが、この頃は経験不足のためそのような考えには至らなかった。やはり経験は必要ですね(^^)
日本ではほとんど紅茶なんか飲まないのに、英国に来ると紅茶ばかり飲んでいる。駅構内の立ち飲みの20ペンス(=70円)の紅茶でさえ美味しく思えてしまうから不思議である。食堂の鏡を見ると、飛行機疲れと時差ボケで疲れた顔をしている自分が写っていたが同時にそこにはホッとしている自分自身があった。日常、平日は広告営業、土日はイベントと仕事に追われ、学生の頃みたいに「好きなことを好きな時間にやる」ということができなくなり、忙しいのが当たり前みたいになっている自分があった。久しぶりに仕事からはなれ、一人になることができた。これ以降、毎年海外に行くことになる。特に夏休みは”行くのが当然”という感じになる。海外に行くのが好きなのと好奇心もあるが、もう一つ、自分自身を仕事から切り離せられるということも大きかった。これ以降1996年までに約20回ぐらい海外旅行に出かけているが、その原点はB&Bの鏡に写った自分の姿があると思う。
紅茶を飲み終え、街に出た。何処へ行こうかと思いつつグリーンパークをブラブラしていた。時差ボケで身体が重い。
ベンチでうつらうつらしていると、リスが足下に現れた、ネズミかと思ったが、尻尾が立派なのでリスなんだと、なんの脈絡もなく結論に至った。ちょうど機内食の残りのクラッカーがあったので、ちらつかせてみたら寄ってくる。「こりゃ、面白い」と手持ちの機内食の残りを全部出してみた。クラッカー、バター、チーズ、塩、胡椒、飴。さすがに塩、胡椒は無理だが、後は全部食べるのには驚いた。飴をカリカリ囓るのを見ていると、「喉詰めるなよ!」と言いたくなってきた。リスって雑食性だったんだ・・・!!
さて、リスとひとしきり遊んだ後、UNDERGROUNDに乗り、アビーロードのEMIスタジオに向かった、あのBeatlesのABBEYROADのジャケット写真になった横断歩道を渡りEMIスタジオを眺めて、スタジオの階段に座ってみたり、近くをブラブラしていた。そうして、ボクの身体の中にやっと旅の感覚が戻ってきた。普段は1分も惜しいような生活だが、旅にでて時間が流れるままに過ごす感覚。本や音楽がなくても時間をつぶしていくことができる感覚。やっとその感覚が戻ってきた。
さて、お昼、イギリスに来たらPUBに行かなければならない。これは、旅行者として当然の努めである(^^)
時差ボケで食欲がなく、ともかくビール!ということで手近のPUBに飛び込み。カウンターで「A
paint of bitter,please!」と一言!1パイントグラスにつがれたビターが出てくる。通常のピルスナービールと異なり泡立ちがなく、苦みが強くて、冷えていないけど・・・でも病みつきになってしまう。カウンターにもたれかかって飲んでいると、サラリーマン風の人がサンドイッチやパイとビールで昼食を取っている。地元の人らしきお爺さんがゆっくりとビター飲んでいる。おそらく毎日繰り返されている光景なのだろう。その中に一人異質の者が紛れ込んでいる、ひよっとしたら今ボクがもたれているカウンターのこの場所もいつもなら誰かの指定席なのかもしれない。ゆっくりとビターを飲み干すとPUBを出た。
さて、どうしよう?今回の旅行の目的というのはとりたててなく、なんとなくヨーロッパ、なんとなくロンドン、ともかく海外脱出という感じで決めたので、ロンドンで何々をするという目的はなかった。中心部のピカデリーサーカスにでて、市内観光バスに乗り込んだ、これは、2階建てバスの2階部分の屋根を取り外してオープンにしたものである。3£(=1050円)払って2回の最前列に乗り込んだ。ビクトリア宮殿、ビッグベン、ロンドン塔、セント・ポール寺院、トラファルガー広場と市内名所を回っていく。これまでは、観光バスツアーなんてお上りさんのする事であって、ボクには関係ないと信じていた。どの国に行っても乗ろうと思わなかった。まぁ、お金がなかったというのもあったが・・・しかしボクも間違いなくお上りさんの1人である。乗ってみると土地勘はつかめるし、2階建てのバスだから視点が変わって道路から見上げるのと違うし、時間つぶしにもなるし、「こりゃ、いいわ」と素直に思った。
さて、夕方になってきて猛烈に眠くなってきた。日本時間では午前1時、その上機内では殆ど寝れなかったので睡眠不足状態。でも、これで寝てしまうと明日以降がきついということもわかっている。ここは我慢我慢・・・夕食はFish&Chipsに塩とビネガーをザブザブふったのをテイクアウトして、ハイドパークのベンチで夕食とした。もう8時になろうかというのにまだ充分に明るい。そしてPUBでビターを飲んで、ホテルに戻りバタン・・・
翌日以降は、気ままにベイカーストリートでホームズを忍び、大英博物館で一日中、大英帝国の略奪品の数々を鑑賞していた。
バッキンガム宮殿では衛兵の交代よりそれを見物する人をみているほうが面白かった。
またある日は日がな一日ロンドン動物園で時間をつぶしていた。
とある昼下がり、ロンドンブリッジのたもとで指を油だらけにしてFish&Chipsの昼食をとっていた。その前をボーイスカウトの団体が通りかかった。その中でボクとおない年ぐらいのリーダーがボクに「写真を撮ってもらえませんか」と声をかけてきた。写真を撮ってあげて、「ロンドンのボーイスカウトですか?」と声をかけた。
受付で確認すると幾つかの団がキャンプをしている、広い敷地をウロウロしていたら、ボクに気がついた子供達が駆け寄ってきてサイトに案内してくれた。 1985.8.5〜8.11 |