1.非ホジキンリンパ腫とは
悪性リンパ腫は、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍で、リンパ節がはれたり、腫瘤(しゅりゅう)ができる病気です。リンパ性白血病といって、白血病の中にもリンパ球ががん化した悪性腫瘍がありますが、悪性細胞が増える場所が主に血液や骨髄(骨の中にあって、血液を造る工場のようなもの)である点が、悪性リンパ腫と異なります。

悪性リンパ腫の中には、ホジキンリンパ腫(ホジキン病)と非ホジキンリンパ腫があります。日本人の悪性リンパ腫では、ホジキンリンパ腫は約10%と少なく、大半が非ホジキンリンパ腫です。

非ホジキンリンパ腫の病気がおよぶ場所はリンパ節が多いのですが、皮膚、脳、眼、鼻腔、副鼻腔、扁桃(のどの奥にある組織)、咽頭、唾液腺、甲状腺、乳腺、肺、縦隔(じゅうかく:左の肺と右の肺の間の胸の正中部分のこと)、胸膜、胃、小腸、大腸、肝臓、脾臓(左上腹部にある臓器)、精巣、卵巣、骨など、全身のあらゆる臓器に発生する病気です。

リンパ系組織は、全身に広がる血管のような細い管であるリンパ管と、リンパ管に介在するリンパ節で成り立っています。リンパ管には、リンパ球を含んだ透明のリンパ液が流れています。リンパ節は小さな豆のような形をした器官で、やはり全身に分布していますが、特にわきの下、頸部、鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)、腹部、骨盤部に集まっています。脾臓や胸腺(胸骨の裏側にある組織)と扁桃もリンパ系組織の一部です。

リンパ球はリンパ系組織、血液、骨髄の中にあり、細菌やウイルスなどの感染と戦っています。リンパ球にはT細胞、B細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)があるため、非ホジキンリンパ腫にもT細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫とNK細胞リンパ腫があります。また、顕微鏡で見た細胞の形や予後の点からも非ホジキンリンパ腫にはさまざまなタイプがあり、低悪性度リンパ腫、中悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫の3つに大別されます。

わが国で1年間に発生する悪性リンパ腫は約10,000人で、少しずつ増えています。ホジキンリンパ腫が20〜30歳代に多いのに対し、非ホジキンリンパ腫の発生のピークは60歳代で、非ホジキンリンパ腫は高齢者に多い病気ですが、若年者や小児にも発生します。本項目では、成人の非ホジキンリンパ腫について説明します。

非ホジキンリンパ腫の発生原因について研究が盛んに進められてきました。成人T細胞白血病リンパ腫という九州地方に多いリンパ腫には、ヒトT細胞白血病I型ウイルスの感染が関係していることがわかりました。また、エイズや臓器移植後など、免疫の働きが著しく低下した場合に発生するB細胞リンパ腫やバーキットリンパ腫、結核性膿胸後の胸膜に発生するB細胞リンパ腫、またNK細胞リンパ腫の一部には、EBウイルスというウイルス感染が関係していることがわかっています。ただし、ヒトT細胞白血病I型ウイルスやEBウイルスに感染した人すべてが悪性リンパ腫を発症するわけではなく、これらのウイルスに感染した人の中のごく一部の人に悪性リンパ腫が発症します。他の大半の悪性リンパ腫の発生にはウイルスが関係しないと考えられています。シェーグレン症候群にみられる唾液腺のB細胞リンパ腫、慢性甲状腺炎(橋本病)に合併するB細胞リンパ腫のように、自己免疫疾患にB細胞リンパ腫が合併しやすいこともわかっています。一部の悪性リンパ腫では、特定の染色体の異常や遺伝子の異常が見つかり、診断に利用されています。


2.症状
頸部、わきの下、足のつけ根などのリンパ節がはれてくることが多く、通常は痛みを伴いません。病気が全身に拡がるタイプでは、発熱や体重減少、寝汗、身体のだるさ、かゆみなどがみられることがあります。リンパ節以外の臓器に発生する悪性リンパ腫の場合は、その部位がはれてきたり、健康診断の際のX線検査などによって悪性リンパ腫が偶然発見される場合もあります。


3.診断
はれているリンパ節や腫瘤(しゅりゅう)の一部を試験的に切除して顕微鏡で調べる病理組織検査によって、悪性リンパ腫であるかどうか、どのタイプの悪性リンパ腫であるかが判定でき、悪性リンパ腫の悪性度を知ることができます。この悪性度判定は、治療方針決定の上で極めて重要です。病理組織検査の前に、リンパ節や腫瘤に注射針を刺し、細胞を吸引して顕微鏡で調べる場合もあります。通常は、これらの検査に加えて、免疫学的な検査を行って、T細胞リンパ腫であるか、B細胞リンパ腫であるか、あるいはNK細胞リンパ腫であるかを調べます。染色体や遺伝子の検査が診断に役立つこともあります。

T細胞リンパ腫の場合は、血液中にヒトT細胞白血病ウイルスI型に対する抗体があるかどうかを調べ、成人T細胞白血病リンパ腫であるかどうかを確認する必要があります。


4.病期(ステージ)
悪性リンパ腫であることがわかった場合は、治療方針を決定するために、病気の拡がり(病期)を判定する必要があります。頸部、わきの下、足のつけ根などの触診、扁桃を含む咽頭部の観察が大事です。この他、頸部、胸部、腹部、骨盤部のCT、全身シンチグラム検査、胃・十二指腸の内視鏡検査やX線検査、骨髄検査、血液検査、病変部分のMRI検査、腹部超音波検査などを行って、病気の拡がりを判定します。

病期は4つに分かれます。
I期

右の頸部、左のわきの下など、ひとつのリンパ節領域のみのリンパ節がはれている
II期

上半身もしくは下半身のみの2ヶ所以上のリンパ節領域が侵されている
III期

上半身、下半身の両方のリンパ節領域が侵されている
IV期

臓器を侵していたり、骨髄や血液中に悪性細胞が拡がっている


5.治療
非ホジキンリンパ腫に対する有効な治療法には、放射線療法、抗がん剤による化学療法、外科療法などの複数の治療法があります。他のがんに比べて、非ホジキンリンパ腫は放射線療法や化学療法がよく効く悪性腫瘍であることがわかっています。ときに、これらの治療法を組み合せることが必要になったり、これらの治療に造血幹細胞移植療法(骨髄移植療法を含む)を用いたりする場合があります。


1)低悪性度リンパ腫

濾胞(ろほう)性リンパ腫とMALTリンパ腫(唾液腺、甲状腺、消化管などの粘膜関連リンパ組織に発生するリンパ腫)というB細胞リンパ腫が多くを占めます。
I、II期
病変が存在する部位に対して放射線治療を行うのが一般的です。放射線治療により約半数の方に治癒が期待できます。
III、IV期
これまで、化学療法を中心に多くの研究が行われてきました。このタイプの非ホジキンリンパ腫は、進行期においても一般に症状が乏しく、病気の進行も遅いため、低悪性度リンパ腫と呼ばれています。抗がん剤の併用療法によって大半の方に病変の縮小効果が認められ、多くの方では病変がほとんど消失した状態(寛解)になります。しかし、完全に治すことは難しい病気です。これは、進行の速い中悪性度以上の非ホジキンリンパ腫に比べると、抗がん剤がむしろ効きにくいためであると考えられています。III、IV期の低悪性度リンパ腫の患者さんの平均生存期間は10年前後とされています。これまでの研究結果によると、症状のない場合や病気が進行する傾向を示さない場合は、化学療法を早期に開始することによる生存期間の延長効果が確認されていません。そのため、症状のない場合は、診断がついてもすぐに治療をはじめずに経過観察をするという選択もありえます。ただし、病気の進行が明らかになった場合や症状が出現した場合には、化学療法や放射線療法などの適切な治療を開始する必要があります。

III、IV期の低悪性度リンパ腫の大半はB細胞リンパ腫ですが、最近、B細胞の表面に存在するCD20と呼ばれるタンパク質に対する抗体療法が開発され、その有効性が注目されています。B細胞リンパ腫に対する抗体療法の中で、最も検討が進められているのはリツキサンという治療薬です。再発した濾胞性リンパ腫の患者さんにリツキサンを週1回で4回点滴静注すると、50〜60%の方で腫瘍が縮小することがわかりました。リツキサンは、他の抗がん剤と異なり、白血球や血小板を減らす副作用が弱いために、抗がん剤の投与量を減らさずに化学療法と併用することができます。現在、リツキサンと化学療法の併用の検討が盛んに進められており、従来の化学療法による治療成績の改善が期待されています。

低悪性度リンパ腫は経過中、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などの中悪性度以上のリンパ腫に進展することがあり、その場合には中悪性度以上のリンパ腫と同様の抗がん剤治療が一般的に行われます。


2)中〜高悪性度リンパ腫
日本人に多い悪性リンパ腫のタイプで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が最も代表的なタイプです。悪性リンパ腫に対して有効な抗がん剤は多数存在しますが、中でもビンクリスチン、エンドキサン、アドリアマイシンが最も有効な抗がん剤です。この3つの抗がん剤に副腎皮質ホルモンを加えた4剤による併用療法(CHOP療法など)が最も標準的な化学療法とされています。このCHOP療法は全身状態のよい場合には外来でできる治療法で、通常、3週ごとに6〜8コース行われます。治療開始前に直径10 cm以上の大きな腫瘤があった場合は、化学療法終了後にその部位に放射線療法を追加することが一般的に行われていますが、これは抗がん剤がよく効いた場合でも、大きな腫瘤があった部位にはリンパ腫細胞が残ってしまうことがあるためとされています。放射線療法は1日1回で週5回照射し、4〜5週間行うのが一般的です。また、最近の研究により、大きな腫瘤のない、I期およびII期の中悪性度リンパ腫では、CHOP療法を3コース行った後に放射線療法を追加することによって70%以上の患者さんに治癒が期待できることが明らかになりました。

標準的な化学療法によって得られる効果は、年齢、病期、血液の検査値、全身状態などによって異なります(これらを予後因子といいます)が、III、 IV期の進行期でも標準的な化学療法によって半数弱の患者さんに治癒が期待できます。

標準的な化学療法のみで治癒する可能性が低い場合、メソトレキセート、エトポシド、ブレオマイシン、プロカルバジン、キロサイドなどの他の抗がん剤を加えたり、投与間隔を短縮したり、抗がん剤の投与量を増やす(自家造血幹細胞移植を併用した大量の抗がん剤の投与を含む)、などの治療法もあります。このような治療は研究段階の治療法であり、標準的な治療より優れた治療効果が得られるかどうかは、まだわかっていません。これらの研究的な治療では副作用が強くおこる可能性がありますから、その治療内容や、標準的な治療に比べて期待される効果とおこりうる副作用についての十分な説明を受けた上で、受ける治療を患者さんご自身が選択することが大切です。

3)リンパ節以外の臓器に発生するリンパ腫(節外性リンパ腫)
節外性リンパ腫は、発生する臓器によって一定の特徴があり、選択すべき治療が異なります。

眼に発生するリンパ腫は、大半が低悪性度で、眼以外におよぶことが少なく、生命にかかわることはまれです。放射線療法によって80%以上の治癒率が期待できます。

鼻に発生するリンパ腫の多くはNK細胞リンパ腫ですが、3コースのCHOP療法後に放射線療法を追加する通常の治療法では効果が不十分であることがわかりました。病気の拡がりが鼻およびその周辺にとどまる場合は、早期に十分量の放射線療法を行うことが重要で、一定の割合の患者さんに治癒が期待できます。放射線療法に化学療法を追加することによって治療成績が改善されるかどうかが検討されています。

胃に発生する中〜高悪性度リンパ腫の場合は、わが国ではこれまで外科療法が広く行われてきました。手術時のリンパ腫の拡がりによっては、手術の後で化学療法を行う必要があり、これら一連の治療によって、胃と周囲のリンパ節に病気がとどまっている場合は、多くの患者さんに治癒が期待できることがわかっています。一方、欧米諸国から、化学療法と放射線療法の併用(CHOP療法3コースの後に放射線療法を行うのが標準的)によっても外科療法±化学療法と同等の治療効果が得られることが報告されているため、化学療法±放射線療法の有効性と安全性を確認するための臨床試験がわが国で行われています。

また、「MALTリンパ腫」と呼ばれる胃に発生する低悪性度リンパ腫があり、高率にヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が関係していることがわかりました。この「胃のMALTリンパ腫」では、多くの患者さんでヘリコバクター・ピロリの除菌療法が有効であることが確認されています。胃のMALTリンパ腫と診断された場合は、ヘリコバクター・ピロリの除菌療法について担当医に相談して下さい。

小腸や大腸に発生するリンパ腫で最も多いのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫です。外科切除でとりきれたと考えられる場合でも、CHOP療法6〜8コースなどの化学療法の追加が勧められます。小腸や大腸に発生するリンパ腫には、若年者に多く発生するバーキットリンパ腫という高悪性度リンパ腫があります。バーキットリンパ腫は卵巣や乳腺の腫瘤として発症することもあり、多くの患者さんで腹部に巨大腫瘤を伴います。骨髄や中枢神経に病気がおよびやすいリンパ腫で、リンパ腫の中では最も進行が速いリンパ腫です。メソトレキセート、エンドキサン、キロサイドなどの抗がん剤の大量投与や脊髄液中への抗がん剤の注入を含めた強力な治療により、半数以上の患者さんに治癒が期待できるようになりました。ただし、治療開始直後に抗がん剤が効きすぎたための腎不全などの臓器障害を合併することが多く、特に専門施設での治療が望ましいリンパ腫といえます。

精巣に発生するリンパ腫は、悪性度が高く、骨髄や中枢神経に病気がおよびやすいことがわかっています。そこで、全身的な化学療法に加えて、脊髄液中に抗がん剤を注入して中枢神経に病気がおよぶのを予防する場合があります。

縦隔に発生するリンパ腫には、ホジキン病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の他、T細胞性の「リンパ芽球性リンパ腫」と呼ばれる特殊な悪性リンパ腫があります。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合は、標準的な化学療法を行いますが、治療をはじめる前の縦隔腫瘤が一定以上の大きさであった場合は、その部位に放射線治療を追加することが勧められます。

T細胞性の「リンパ芽球性リンパ腫」は、若年の男性に多い高悪性度リンパ腫です。骨髄にリンパ腫細胞が入り込みやすく、T細胞性の急性リンパ性白血病と一連の病気とされています。リンパ芽球性リンパ腫では、非ホジキンリンパ腫に対する標準的化学療法による治療効果が不十分であるため、急性リンパ性白血病と同様に、多種類の抗がん剤による強力な化学療法を行います。中枢神経への予防治療を行う必要があり、抗がん剤の脊髄腔内への投与、もしくは頭部への放射線照射が行われます。これらの治療によっても治癒困難と判断された場合には、骨髄移植もしくは末梢血幹細胞移植を併用した大量化学放射線療法が行われることがあります。

皮膚に発生する悪性リンパ腫は、菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)という病気と成人T細胞白血病リンパ腫が主なもので、いずれもT細胞リンパ腫です。菌状息肉症は、一般的には慢性的な経過を示す病気で、紫外線療法、放射線療法、化学療法などの種々の治療が行われてきましたが、決め手となる治療法がないのが現状です。

脳に発生するリンパ腫では、これまで主に放射線療法が行われてきましたが、その治療効果は十分ではありません。



6.治療の副作用
1)放射線療法
皮膚障害、粘膜障害(口内炎、食道炎など)、肺障害などが主なものです。一般に、放射線治療の後半に症状が強くなる傾向があります。かゆみを伴う皮膚障害にはステロイド軟こうが有効です。食道炎が強くなると、固形物の通りが悪くなったり、痛みを伴ったりします。その場合は、一時放射線療法を中断する場合があります。

肺障害は咳、息切れ、微熱ではじまることが多く、放射線療法の副作用の中でも注意すべきものです。ステロイド剤の使用が必要になる場合があります。
2)化学療法
用いる抗がん剤の種類によって異なりますが、多くの抗がん剤に共通する第一の副作用は骨髄毒性(白血球減少、血小板減少、貧血)です。白血球が減少すると感染しやすくなり、ときに高熱が出ることがあります。その場合には抗生物質の投与が必要です。血小板が減ると出血しやすくなります。この他の主な副作用は、吐き気、嘔吐、食欲の低下、末梢神経障害(手足のしびれ)、便秘もしくは下痢、肝臓や腎臓の障害、脱毛、心臓や肺の障害などです。膀胱の粘膜が荒れやすくなる薬もあります。これまでに世界で行われた多くの研究によって、どれぐらいの量で、どういうスケジュールで、また、どういう組み合わせで抗がん剤を投与すれば、大部分の場合において化学療法がほぼ安全に行えるかがわかっています。また、白血球減少に対する白血球増多因子(G-CSF)、血小板減少に対する血小板輸血、貧血に対する赤血球輸血、吐き気や嘔吐に対する吐き気止めなどの支持療法が進歩してきており、副作用のために化学療法が続けられないケースはずいぶん減ってきました。

安全性が確認されていて明らかな効果が期待できる治療法を「標準的治療」といいます。初回治療においては標準的治療を行うのが原則です。標準的治療が無効であったり、標準的な治療によっていったん寛解になったが再発してしまった場合には、これまで使用していない抗がん剤の組み合わせによる救援化学療法が一般的に行われます。この段階では、研究開発中の抗がん剤の使用や自家造血幹細胞移植(骨髄移植や末梢血幹細胞移植)を併用した大量化学放射線療法、また同種造血幹細胞移植(同種骨髄移植など、白血球の型が一致したドナーからの造血幹細胞移植)が検討される場合があります。これらは、いずれも研究段階の治療法ですから、その治療内容、期待される効果、おこりうる副作用などについての十分な説明を受けた上で、治療を受けるかどうかを自分自身で判断して下さい。どの治療を選択すればいいか迷う場合は、セカンドオピニオンといって、別の専門家の意見を聞くことをお勧めします。


7.外来治療の際に注意すべきこと
現在の悪性リンパ腫の治療は、入院よりもむしろ外来で行われることが多くなっています。外来治療の場合には、以下の点に注意して下さい。
  1. 高い熱が出た場合は要注意です。担当医から抗生物質が処方されている場合は、すぐ服用して下さい。注射による抗生物質投与が必要になる場合がありますので、ぐあいの悪い時は、担当医もしくは通院している病院に電話連絡をして下さい。

  2. 投与されている抗がん剤の肺障害のために、咳、息切れ、微熱などがおこることがあります。その場合には、予約を変更してでも早めに外来を受診するか、担当医に電話連絡することをお勧めします。ステロイド剤の投与が必要になる場合があります。

  3. 悪性リンパ腫で治療を受けていると感染に対する抵抗力が落ちているため、帯状疱疹(水疱を伴った発疹が出現し、痛みを伴うことが多い)が合併しやすくなります。悪性リンパ腫では帯状疱疹が重症化することがしばしばあり、重症化すると痛みが長く残りやすくなります。帯状疱疹に対する有効な抗ウイルス剤があり、迅速に治療を開始することによって帯状疱疹の重症化を防ぐことができますので、担当医に連絡するか、皮膚科の医師の診察を受けて下さい。

  4. たばこは止めることをお勧めします。理由は、たばこを吸っていると、肺の感染症がおこりやすくなることと、抗がん剤の肺障害がおこりやすくなるため、十分な治療が受けにくくなるためです。

  5. 食事については特に注意すべきことはありませんが、プロカルバジンという抗がん剤を服用している場合には、高血圧になりやすくなるため、バナナとチ−ズが制限されることがあります。

  6. 悪性リンパ腫では多くの方が、仕事、家事、学業などを続けながら外来治療を受けています。病気にばかりとらわれずに、できるだけ通常の社会生活を送られることをお勧めします。

  7. 寛解に達して治療が順調に終了した場合でも、再発する可能性が残っています。また、放射線療法や抗がん剤による長期の影響について観察を続ける必要があります。


(資料提供:国立がんセンター http://www.ncc.go.jp/jp/index.html)