2003年4月22日
『らくらく視覚障害生活マニュアル』
(加藤明彦/著、医歯薬出版社、
A4判、2003、\2000+税)
これはぼくが最近、カバーデザインを担当した本ですが、自分の仕事の宣伝というより、内容そのものがすばらしいので、ぜひご紹介したいと思いました。4月20日に発行したばかり。
視覚障害の原因はさまざまですが、本書によれば、中途失明の原因の第1位が糖尿病網膜症で、視覚障害者全体の5分の1、年間3000人に及んでいるそうです。
糖尿病を患っている方はわたしたちのまわりに少なくありませんが、視覚障害になるとどうしても引きこもりがちになります。でも、本書の著者である加藤さんは、もっと積極的に外に出ようと呼びかけます。とはいっても、精神論を説くのではありません。積極的に出てゆくための具体的な方法が書かれています。
この本の何がすばらしいかというと、何よりも著者のキャラクターです。著者ご自身が30年近く糖尿病とつきあってこられているのですが、その苦労を感じさせないくらい、実に明るく積極的な生活を送っていらっしゃる。「今までの糖尿病関連の本は、病気とこんなふうに戦ってきたんだぞという、個人的な体験を振り返るものが多かったんだけど、そうじゃなくて、実生活の中でどうやっていくか、みんなが共有できる具体的な情報や方法を紹介し、さらにまわりの人たちに視覚障害について理解してもらえる、そんな本を作りたかったんですよ」と加藤さんはおっしゃっています。
体裁も、視覚障害者に配慮して大きな文字で組まれ、それにあわせて判型も大きくなっています。本書に掲載されている数々のアイデアは、著者の実践から生まれたものです。ぼくは、今回の仕事を通して糖尿病についてお話を伺い、また本文を読んで、とても勉強になりました。病気になっていない人が、視覚障害をわずらっていらっしゃる方とどう接していけばいいかも教えられました。
一例をあげましょう。街で道に迷っている様子の視覚障害者に、どう声をかけたらいいか。親切かお節介かどうなんだろうとためらっているうちに、結局助けてあげるチャンスを逃してしまったという経験はありませんか? 著者は、まず相手の立場になること、静かに声をかけることを勧めます。なるほど。考えてみたら、これって、人間関係の基本なんだけど、ぼくたち、つい忘れがちなのです。
そんな小さなことも、ここでは教えてくれています。この本を読み進めるうちに、視覚障害だけでなく、広くバリアフリーそのものについても理解を深めることができることがわかってきます。だから、ぜひみなさんにこの本を手に取っていただきたいのです。
ぼくの担当したカバーデザインも、内容にあわせて明るいイメージに仕上げました。少しでも多くの人が糖尿病や視覚障害について理解を深めることができれば、ぼくたちの社会は、みんなにとって住み良い場所にまた一歩近づくことができるでしょう。楽しく、また驚きながら読める本です。
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