♪ブン、ブン、ブン、ハエが這う……

詩をつくりました   02年5月23日

夏の音        
珍しく家の中に迷い込んだ
一匹の蠅
耳元を通り過ぎる羽音が、
記憶の彼方の夏の日を運んできた
草木がそよぐことさえやめてしまう
けだるい空間に、侵入し、まとわりつく雑音
風景に納まる昼の蝉のような律儀さもなく、
姿を現さない夜の蚊のような狡猾さもなく、
鈍感に、無遠慮に、
景色と静寂をからかう黒点
……ほどなく
夏の音を届けた蠅は窓の外に消え、
家の中は、ふたたび都会の五月