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自作からくり

●そもそも、茶運び人形って何?

茶運び人形とは、その名のとおり、お茶を運ぶからくりが内蔵されている人形のことで、江戸時代につくられたからくり人形の中では、かなり早い時期に作られたと考えられている。当時は、大名や、豪商の贅沢な遊び道具のひとつであった。ねらいは、来客をお茶でもてなす時に、お客を驚かせて、話の花を咲かせる点にあった。

服を着せたままだと、茶台を持った人形にしか見えないが、服を脱がせてみると、西洋から渡来した時計技術を応用した精巧なからくり技術に驚かされる。茶室の畳の上で遊ぶように設計されていたので、約170センチを往復するように設計されていた。時計では振り子に当たる脱進装置や、歯車、タイヤなどもすべて木で作られており、動力源であるゼンマイには、当時手に入りやすかった鯨のひげが使われていた。
  人間と人形がやりとりをするという、現代のロボットと同じような発想は、当時としては非常に独創的であり、世界に類を見ないものであった。

●「機巧図彙」(からくりずい)ってなに?

寛政8年(1796年)に土佐の技術者、細川半蔵が出版した専門書(首(I$上(I$下の三巻)で、茶運び人形を含めた9種類のからくりと、4種類の時計の作り方が載せられている。作者が当時あったからくりを苦心して作った現物の構造図や部品の形、寸法までを書き込んだ詳しい図面が掲載されているため、今でも昔のままの動きをするからくりを復元することができる。
  しかし、江戸時代に、この本のとおりに作られた茶運び人形の存在は確認されていない。また、この本は、明治以前の唯一の機械工学書であり、その精巧さにおいては、世界的にも評価されている。技術の門外不出が当たり前だった当時、秘伝の公開は革命的でもあったといっても過言ではない。

●試作機について

茶運び人形ヒヲウ3△号

●茶運び人形試作機 ヒヲウ※−1号

歯車の作り方などの試作機で、脱進機(スピード調節機能)を搭載しておらず、動力も塩化ビニールの板を切って作ったゼンマイだったため、パワーも弱く、また、歯車の不具合で約10cmしか前進しなかった。方向転換機能も搭載していたが、その力も機能不良で、発揮されることはなかった。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−2号

ヒヲウ−2号は、1号で得た教訓を生かし、構造の単純化をはかった。歯車は、逆転防止兼ストッパー以外は使わず、動力も、ゼンマイから輪ゴムへと変えた。脱進機、方向転換機能は搭載していなかったため、前進はしたものの、ものすごいスピードで走り、見事にお茶をぶちまけてしまった。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−2号−α

2号−αは、2号の改良版で、2号と同じく方向転換機能は搭載されていないが、本物の茶運び人形にも搭載されている脱進機を搭載した。しかし、機能も十分ではなく、進み方も安定しない上、走っている途中に脱進機がいかれ、急にものすごいスピードで走り出し、またしてもお茶をぶちまけてしまった。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−3号

3号は、1号に続いての、歯車の試作機であり、動力には、2号−αと同じく輪ゴムを使用した。歯車の機能も何とか実用レベルに達し、2号−αよりも格段に長い距離を走れるようになった。ただし、脱進機は搭載していなかった。(今回は、お茶のかわりに小さめの国語事典を運ばせた。)歯車を作るに当たっては、ボール紙で歯を作り、それに瞬間接着剤をしみこませた。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−3号−α

3号−αは、3号に脱進機を取り付けたものである。脱進機の弾み車を円筒状にしたことで、人形の側面にコンパクトに搭載することができた。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−3号−β

3号−βは、3号−αに方向転換機能を搭載したものである。約150cmを往復することに成功した。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−3号−γ

3号−γは、3号−βの脱進機の弾み車に、おもり代わりの乾電池を取り付け、スピードを落とし、走行を安定させることに成功した。

● 茶運び人形試作機 ヒヲウ−3号−Δ

3号−Δは、3号−γに頭を取り付け、首振り(上下)をするようにした。(ちなみに、頭にはガチャポンのカプセルを使用した。)

※ちょうどいい名前が思いつかなかったので、「機巧奇伝ヒヲウ戦記」というアニメの主人公の名前を借りた。


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