現代版 平家物語・・(2003年5月29日)

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。猛き人もついに滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」

元ドリフタ-ズメンバーである高木ブー氏(以下ブー氏)を見ていると平家物語の一節が思い浮かぶ。
「8時だよ 全員集合!」世代である私には、ブー氏といえば、いかりや長介氏から突っ込まれて泣く役をしている雷様(注1)の印象しかない。その姿はまるで雨野ダメ助(注2)のような子供ながらに同情をしてしまうようなキャラであった。

時は流れて、ドリフターズが解散して早幾年。と思ったらまだ解散はしていなかった。(ごめんなさい)
時は流れて、8時だよ全員集合が終わって早18年。「ホントか!?そんな経ったか!」と思った方、ホントです。

驕れる者久しからず、あれほどお笑い界における人気を誇ったドリフターズの番組が少なくなるにつれて、ブー氏の姿を見ることも少なくなっていった。そしていつしかその存在さえ、忘れかけ始めたその時、忘却の彼方からハワイアンの調べとともに、ウクレレを抱えたブー氏が甦って来たのであった。(ブー氏は消えたつもりも甦ったつもりもないと思うけど)
第3次ハワイアンブーム(注3)が到来したのである。ハワイアンの波に乗ったブー氏のその後の活躍は目を見張るものがある。ブー氏はかつての輝きを取り戻した。かつてが輝いていたかどうかは賛否あるが、現在のブー氏が輝いていることに異論はないだろう。高橋尚子と共演したりして、CMにも引っ張りだこ、志村ケン氏(以下ケン氏)とのCMではかつての立場が逆になったような印象(注4)も受ける。

TVに出演しまくり、本まで書いて、ハワイアンバーも絶好調らしい。きっと得意満面の笑顔でウクレレ弾いているに違いない。ブーズバーハロナへその様子を探りに行って来た。そこで見たブー氏は、私が子供の頃持っていた印象のままであった。ぼそぼそと話す語り口、眠そうな目、穏やかな雰囲気、揺るやかなハワイアンの調べ、あせることとも急ぐこととも怒ることとも無縁な流れ。つまり、ブー氏はドリフ絶頂のときも、消えかけていた時も、きっと変わらないのだ。人気にあぐらを欠いて、我が世の春を謳歌しているに違いないなどと思っていたが、まったくそんなことはなかった。人間万事塞翁が馬、周囲の雑音なんか関係ない、そのようなブー氏は以前とは違い、とてもかっこよく、輝いて見えた。

その姿は、現代版平家物語ではなく、日本版フォレストガンプなのであった。

しかし、ライヴの後、寝ているブー氏を見ていると「輝いているのか?この結論でいいのか?」とも思わないでもなかった。いやきっとこれでいいのだ。

注1) 8時だよ 全員集合!でいかりや長助氏、仲本工事氏とブー氏が雷様の格好をしてコントをする名物コーナー?があった。
注2) 漫画「ダメおやじ」の主人公 そういえばダメおやじも最後は大会社の社長になった。
注3) 戦後米軍が進駐してきたときに、ジャズなどとともにハワイアンも持ち込まれ、戦争で傷んだ日本人の心を癒すように第2次ハワイアンブームになった。その後そのブームもロカビリーの大波に押し流されてしまった。ちなみに第1次ハワイアンブームは明治時代のハワイ移民が帰ってきたりし始めた大正時代頃と考えられている。ハワイアンブームはその時期が特定しずらいが、現在が第三次であることはたしかである。
注4) 保険のCMだったと思うが、ケン氏が床屋でブー氏が客だった。視聴者である我々から見ると人気者のケン氏が脇役をやっているような印象を受けるCMであった。かつてなら決してこのようなCMは作られない。もちろんTV画面上での立場のことであり、実生活の上ではブー氏の方がケン氏より先輩で今も昔も立場は強いのだろうと思う、たぶん、きっと。