定番<ふぐ・・(2003年1月25日)

東京の散歩好きにとって庭園美術館は定番である。緑の多い公園の中に佇む洋館。お茶室が風景として溶け込んだ庭園。よく手入れされた芝生の空間。散在する彫刻群。洋館は旧朝香宮邸であり、内部の装飾はアールヌーボーの傑作が残っている。どれをとってもそぞろ歩きしたくなる魅力にあふれている。

が、どれをとっても中途半端な印象はぬぐえない。そもそもなぜあれが、庭園美術館という名称なのか、庭好きが見に来たら怒るだろう。他の美術館や公園などで庭園を維持管理している人に失礼だ。(庭園美術館の管理が悪いといっているのではない。むしろ管理がしっかりしているからこそミスマッチな名称が気にかかる) 庭園美術だからといって、彫刻を置くのなら彫刻美術館として欲しい。きっと彫刻好きの人が怒るだろう、なぜなら申し訳程度に数点置いてある程度だから。お茶室もお茶の設備がある硝子戸の一般的な古い戸建のようである。洋館についてもどうという特徴のない外観である。

全てが中途半端なこの美術館の中で、内部に残されたアールヌーボーの装飾は見る価値がある。当時の一級品が揃えられ、それがまとまって現在まで保たれてきた。戦中・戦後の混乱期を考えれば、当然切り売りされ、散失していておかしくない。関係者の努力が並々ならぬものであったろうことを想像させる。いっそのこと、アールヌーボーの家具や装飾品を集めて、アールヌーボー美術館(庭付き)と名前を変えて欲しい。展示品が増えれば意味のない不使用な空間が埋まってちょうどいいだろう。

もう一つの目的地、原美術館は、完全なる現代美術館である。(催し物にもよるが) 建物は特に見るところはない。美術館として改装されていて、内部の意匠も当時の面影は一切ない。これで入場料1000円は?であるが、現代美術を解し、価値を認める人にはいいのかもしれない。ちなみにこの近辺は静かな古い住宅街であり、散歩には最適である。

さて、散歩を終えたわれわれは、御殿山のホテルラウンジにてお茶をした後、念願のふぐへと向かった。我々の間では本日ふぐがもっとも好評だったことは言うまでもない。