麻布スタイル・・(2003年1月12日)

麻布は偉大なる田舎である。鉄道がなかったために、バブル的開発から取り残されてきた。しかし、そのことによって画一的開発から守られ、独自の進化を遂げた街だ。新宿・渋谷、銀座などいった大都会ではなく、かと言って自由が丘や下北沢のような新興郊外とも違う。都会と呼んでいいのだろうか、高級住宅街と呼んでいいのだろうか、感性のあるおしゃれな山の手であるのに下町的な生活臭を失っていない。とても奇特な街である。東京を街ごとに文化分類学的に検証すると、麻布は麻布スタイルという、ある種、異端なそして特異な系統を形作っていると言える。そんな魅力オーラを発しながらも、この街は一般的好奇心を持った大衆を寄せ付けない陸の孤島でありつづけていた。
そんな孤島にも、2年ほど前、営団地下鉄南北線と都営地下鉄大江戸線が相継いでやってきた。2年の間に麻布はその魅力を失ってしまったのではないか、どこにでもある街に成り下がってしまったのではないか、それを確認するため、麻布十番の街に出向いてみた。
果たして、麻布十番の街は、東京一般的都市化の波に負けず、その基本的スタイルを失ってはいなかった。「よかった!」胸をなで下ろすと同時にこの街がさらに好きになったような気がした。

さて今回は、新春恒例の(恒例と言ってもまだ2回目)七福神巡りである。麻布の七福神と言っても六本木から芝まで及ぶ広範囲に点在するため、歩く距離も限界に近い量となった。人はこの七福神を港区七福神と呼ぶ。広いはずである。しかもこの一帯は坂が多い。於多福坂、鼠坂、牛坂など名前とその由来を巡るだけでとてもたのしい。が、精神的充足感とはうらはらに、容赦なく体力は奪われていく。真冬の割にはあたたかい日和だったのが、救いであった。

今回は新たなる試みが二つあった。そのひとつが、「新春おめでたい言葉さがし」である。鶴亀や紅白、富士、福などおめでたい言葉を10個探し出し、その希少性、ひねり、お祝い度、さらにおバカ度などを総合的に判断し、審査員の主観的感性のもとに100点満点で点数がつけられる。一体全体そんな言葉どこから見つけたのか、いやそれ以前になぜそんな名前がつけられたのか疑問に思ってしまうような珍答が続出。場は爆発的に盛り上がる。みんなの顔も笑顔だ。大成功である。しかし、そんな笑顔も凍り付くよな試練がこの後参加者を待っていた。二つ目の試み「一発逆転ダーツゲーム」である。
いつものようにクイズ大会が始まった。しかし、今回はクイズに正解しても即得点とはならない。ダーツゲームの権利を得るだけである。ダーツゲームの得点は10点から200点まである。的を外せば当然無得点である。各トライに一回練習が認められる。実はこの練習が曲者だった。人生とは思いどおりにいかないもの、練習では高得点を出す人ほど軒並み的を外すのだ。しかも大きく外す。本番では無意識のうちに力が入る。当人にはその認識がないため、力の抜けた練習でうまくいくと同じように投げてしまう。おもちゃの軽いダーツが軽すぎた。微妙な力の揺れ動きが的を大きく外す原因となってしまった。4分の3のトライが無得点、的にあたったトライも多くが低得点の中、盛り上がりだけは最高潮に達するのであった。
そんな中、どのチームにも優勝の可能性が残された最終トライを制し、優勝の栄を受けたのはKさんチームであった。めでたし、めでたし・・