街の魅力  2002.10.12



およそ「おしゃれである」とは言い難い私が、当世おしゃれな若者が集う街である代官山に足を踏み入れたことがなかったのは必然である。一度行ってみたいと言う気持ちは前からあったが、「人気のある場所だ」というかなり漠然としたイメージ以外の思い入れは全くなかった。そもそも何かの用事でとか、たまたま近くに来たからとか、忘年会や合コンで、といった他力的な理由で訪れることなどあり得ない街である。忘年会や合コンをわざわざ代官山でなどと言う人々はそれ自体既にハイソな人であり、そんな忘年会や合コンは招待されても場違いな気がして、きっとキャンセルだ。 「代官山へ行くんだ」という確固たる意志を持たずして足を踏み入れてはならない領域なのだ。その意味で、代官山は特異なスタンスを確立した街である。

代官山の魅力はどこにあるのか。もちろん、現代デザイナーズビルディングの宝庫であることは、周知である。しかし、それだけでは、この代官山ブームは説明できない。どこかに他の街にはない魅力が隠されているに違いない。それを究明せんがために「テーマパーク・ザ・代官山」は企画されたのだ。そこにはなにがあるのか、我々は好奇心というアドレナリンによって、高ぶる気持ちを抑え切れずに代官山へ向かうのであった。

しかし、おしゃれなスポットには縁遠い集団な我々にとって、代官山は魔宮である。さらに渋谷から裏通りを抜けて向かったので、どこからが代官山と呼ばれる一帯だったのか、気づくとそこは代官山だったらしい。

特に特徴のある街ではない。三茶や下北のような印象のよくある街だ。と思い始めた頃、代官山という街が従来の街にはない新たなる鼓動を持った街であることに気づき始めた。三茶や下北にも新しい店が次々登場している。新店はめずらしく、魅力があるが、場所に目新しさはない。人の流れに身を任せていれば、苦もなく回遊できる。しかし、代官山は、そうはいかない。魅力的な人気のある店ほど自己主張がないのだ。そう、自ら探し出さなくてはならない。つまり、代官山は見る楽しみに探し出す楽しみが複合的に絡み合い、絶妙なシナジー効果を出している。路地に迷い込んだら更に奥へと好奇心を駆り立てられる。そして、決して期待を裏切らない。店名も書いてなければ、店であるかどうかもわからないそんな場所が人気だ。聞いていなければ行き着けない、知っていなければ目的を達することもできない。
他の街では立地条件が悪くて、営業が成り立たない賃料が安価な場所であっても代官山では、客が探し出してくれるため採算に合う。いやそういう隠れた場所にこそ魅力がある。だから、小規模な店だが個性的な店が、資金力がなくても出店できる。個性的な店の集積が魅力をさらに高め、人を惹きつける。そんな好循環にはまった代官山がそのステイタスを確立しえたのは当然だ。

この視点から考えるとかえすがえすも同潤会アパートを取り壊してアドレス代官山を建ててしまったことが残念でならない。同潤会アパートに個性的な店が集まり、新陳代謝が絶えず繰り返されていたなら、代官山は世界的に有名な街に成り得たのではないか。アドレス代官山のオブジェ群はとても魅力的ではあるが。

残念だが、今回代官山へ訪れた印象は、既に人気が出た成熟期に差し掛かっている印象でもある。個性的な街に人気が出て、日本的で画一的な再開発が行われ、一般的な人気スポットになり始めている。しかし、そのことを嘆く必要はない。都市の新陳代謝はその活性化の必要条件であるからだ。ニューヨークを見てみると、ソーホーやトライベッカなど錆びれた街に個性的で、先鋭的な人々が集まり出し、個性的な街になり、そして人気が出てくると大資本が進出してくる。そしてまた別な錆びれた街にいつしか人々が集まってくる。都市の輪廻転生法則である。
我々は第2の代官山を楽しみに待っていればいい。

さて今回のTOCではババ抜きの要素を取り入れてみた。各チーム同士が遭遇したらババ抜きよろしく、カードを交換する。最後にババを持っていたチームにペナルティという仕組みだ。効果抜群盛り上がるに違いないと思っていたが、各チームが遭遇する機会が極端に少なく、とても効果があるとは言い難かった。変化といえば、集合場所の前でババを持っているチームが各チームを待ち伏せていた程度であった。 そして、結果はというと、最後の最後にババを引かされたにもかかわらず、めげすに頑張った晩婚化チー、いや番紅花チームの圧勝であった。(番紅花 は阿佐ヶ谷のカレー屋さん)