闇と光  2002.4.20



私の中では欧州における教会のイメージと日本における教会のイメージは違う。日本のそれが結婚式を行う華やかな場所なのに対して、欧州のそれは苦しさと悲しみに彩られた暗闇の芸術である。

さて、今回のTOC(東京オリエンテーリング倶楽部)は都内の教会を巡るということで内心期待は皆無。観るべき物はニコライ堂と明治学院礼拝堂くらいだ。と思いながら出発。

まずいきなり某Aチームと南北線ホームにて遭遇。「どっち行くの?」と腹の探り合い。乗った電車も同じで、電車の中でも腹の探り合い。その頃某Bチームはイグナチオ教会でなぜかミサを受けていた。白金高輪駅に着き、我々は下車、早速明治学院へ向い礼拝堂へ行く前に学食にてランチ。ここの学食は新しくて綺麗でなかなかいい。後は味さえよければ…それを学食に期待するのはちと無理か。エネルギーを補給したところで礼拝堂へ行くと某Aチームと再び遭遇。「どっち行くの?」と腹の探り合いをするが、この近辺に教会がたくさんあるわけはなく、この後仲良く高輪の教会を二つ見に行った。

明治学院礼拝堂は普段一般の人は入場不可。しかし、一年に一回隣のインブリー館と伴に一般公開している。礼拝堂ではパイプオルガンの演奏会が行われ、それはいい雰囲気である。

日本キリスト教団高輪教会はライト(アメリカの建築家)の設計した自由学園明日館(池袋)そっくりここまで似せんでもというほど、お話を聞くとそれが自慢だったりする。しかし、建物は由緒あるすばらしい物である。ちなみに私はキリスト教団一般の組織には詳しくなく、格に違いがあるのかどうか知らない。日本の寺院のように総本山とかがあるのかな。カトリックの総総本山がバチカンであることくらいは知ってるが。

次のカトリック高輪教会は新品の教会である。輝く鉄骨がゴシック様式の梁を模しており、現代的な建築としての魅力がある。しかし、壁のコンクリート打ちっぱなしが無機質な感じを出していて個人的に気に入った。

その頃某Bチームはなぜか下北沢のジャズ喫茶でジャズに聴き入っていた。

ここで某Aチームと別れ、このままでは某Aチームと共倒れになりかねない。と我々は築地へと向った。聖ヨゼフ築地カトリック教会はなんとパルテノン神殿だ。室内にはご丁寧にエンタシスの柱が並んでいる。しかも、教会の前では子供たちが大騒ぎで運動会の主要種目である筒に入って転がるやつで遊んでいる。およそ教会らしくない。 しかし、明治時代、キリスト教解禁の時から東京のみならず日本の北半分の教会の中心的な役割を果たした由緒正しき教会なのであった。現在、大司教は他の教会へ移りその地位を失ったが、その当時の雰囲気を充分に残している。関東大震災で前の聖堂が焼失した時に当時の大司教のお好みでパルテノン神殿になったらしい。
「おいおいそんなもんか。」
祭壇の奥にいらっしゃるキリスト像とマリア像は前司祭が気に入らず、撤去しようとしたが重くて動かなかったそうだ。
「おいおいそんなもんか。」
と言う話しを気軽にしてくれた方は現司祭様であった。感謝!
ちなみにこのパルテノン神殿は木造モルタルである。

続いて我々は新富町から有楽町線で一気に護国寺まで上り、
「歩いた距離はともかく移動距離では他の3チームには負けないな」
と言いながら「東京カテドラル聖マリア大聖堂」へ向った。ここまで観てきた教会は芸術的にみるべきところが多く、観て廻ってよかった思うに充分であったが、イメージは日本の教会のイメージその物であった。
しかし、ここ「東京カテドラル聖マリア大聖堂」でガツンと頭をたたかれたようなショックを受けるのであった。外見はあまりに巨大で「新興宗教か」と思う程である。それもそのはず築地から移った大司教がいるのはここである。カテドラルとは司教座(カテドラ)がある教会のことである。さて、その内部に入るとそこには…
ヨーロッパの教会の持つ闇があった。内壁はカトリック高輪教会と同じコンクリートの打ちっぱなしであるが、そこには高輪と違い、真新しさや明るさは微塵もない。コンクリートは黒ずみ、地下の洞窟のようだ。黒ずみ、ジャンカ、ひび、その修復痕でさえ地中にうごめく魔物のようであり、よく見ると動いているような錯覚を呼び起こす。暗い闇の中に正面からほのかな光が射している。通常ステンドガラスは用いられるが、ここでは大理石が用いられている。その光はやわらかくやさしげで救いを求める人々にとってかすかな希望の光のようである。その荘厳な雰囲気は今までの教会からは想像できない物であった。

教会は一度廻ってみる価値ありと断言できます。基本的に一般に開放されているので、臆せず声を掛けて内部も見せてもらいましょう。
さて、最後にイグナチオ教会へ行くとそこで出会ったのは…某Aチームであった。静かな聖堂で失笑する二チーム。その後仲良くゴールした。
しかし、TOCの勝負はこれから!クイズに入るまで一進一退する各チーム、最後に抜け出した二チームは我々と某Aチームであった。最初の最初から最後の最後まで競い合うこととなった両チームは結局某Aチームが優勝。

次回は京都遠征!楽しみだねえ!!