虎毛山(秋田県)


とらげやま 標高1433m。

 筆者は阪神タイガースのファンではないけれど、 以前から虎毛山は気になっていた。 山頂に池塘が点在し湿原が広がる山として知られていたからだ。 位置は秋田県南部の宮城県との県境に近く、 東北東には栗駒山がある。
 東京からは距離があるので、 思い立ってすぐにでかけるわけにはいかず、 2008年の夏にやっと登る機会がやってきた。
 今回は交通手段として、 新幹線とレンタカーを組み合わせた「トレン太くん」を利用。 前日の朝、東京を発ち古川で下車。 曇っているせいもあり、東京に比べ涼しいというのが第一印象。 ここで予約しておいたレンタカーを受け取り、 秋の宮温泉郷に向かう。 秋の宮温泉郷は、神室山に登った折、 下山後に温泉で汗を流したことあるが、 泊まるのは初めてだ。 何軒かある温泉宿のうち、 インターネットに調べて予約を入れておいた太郎兵衛が今回の宿。 着いてみてわかったことだが、 この旅館は街道(国道108号)から離れた集落の中にあるので、 車の音はほとんど聞こえない静かな環境だ。 この日の宿泊者は筆者一人とのことで、 館内も静寂そのもの。
 翌日は朝5時に旅館を出て、 虎毛山の登山口に向う。 国道108号に登山口の案内板があるので、 迷うことはない。 舗装道路を少し走ると、 赤倉沢とマダゴ沢の出合いで道路も二手に分かれる。 ここに虎毛山登山口を示す大きな看板と、 工事中につき一般車通行止めの標識が立っている。 広場もあるので、ここに車を停める。 すでに登山者のものと思われる千葉ナンバーの乗用車が1台止まっている。 平日なのに登りに来る人がいることに感心する。 私もその一人だから、他人のことは言えないが。
 支度をして歩き始めたのが5時半。 赤倉沢に沿う未舗装の道路を進む。 約20分で「雲上のオアシス 虎毛山登山道」の標識が現れ、 登山者ノートボックスが置かれている。 ここが本来の登山口。 ノートに住所氏名を記入して左手の道を進むと、 やがて古い林道跡につけられた登山道に変わる。 沢沿いのおおむね坦々とした道は沢を渡る木造の橋で終わる。 ここで、休んでいる年配の男性に追いつく。 千葉ナンバーの車で来ていた人だ。 しばし休憩を取りながら雑談した内容からすると、 東北地方の山を数多く登っている様子で、 阪神タイガースのファンということもないようだった。、
 息を整えたのち、腰をあげて急坂の道に取りつく。 よく手入れされているのか、 歩きやすい登山道だ。 しばらく汗をかきながら登ると、 傾斜がゆるみ、ヒノキ林となる。 ベンチもあり小休止する。 ここより上はまた急斜面となりブナが主体の林に変わる。 この数日は雨が多かったらしく土はたっぷりと湿気を含んでいる。 林の中の登りに飽きてきたころ尾根の上に飛び出す。 高松岳に通じる道との分岐点である。 ここにもベンチが置かれているので小休止する。
 あとは尾根上に付けられた道をたどれば虎毛山の頂上なのだが、 藪が登山道に勢いよく覆いかぶさっていて、 あまり歩きやすくない。 それに湿った霧に包まれているために葉はぐっしょりと濡れている。 おかげでズボンもびしょびしょで靴のなかまで濡れてきて不快だ。 分岐から歩くこと45分で頂上。 脇には避難小屋がそびえている。 霧雨混じりのガスに包まれているので、 小屋の中に入って休む。 しっかりとした造りの小屋だ。
 前日旅館で作ってくれた昼食のおにぎりを頬張ったのち、 横になって休憩。 天気が好転するのを待つ。 1時間も待っただろうか。 外に出てみると霧雨は止み、 少し明るくなっている。 木道を歩いてみると周りには湿原が広がっている。 池塘が点在する場所は、 天気がよければまさに雲上のオアシスだ。 背景には栗駒山が浮かぶはずなのに、 残念ながら景色は見えず。
 結局、頂上に1時間半以上いたが、 天気がよくなる見込みはなさそうなので下山することにし、 往路を戻った。 この日も秋の宮温泉(太郎兵衛)泊まりで、 時間の制約がないので歩いていても気が楽だ。
 虎毛山の登山を振り返ると、 大きく4つの部分に分けられることがわかる。 赤倉沢沿いの比較的平坦な道、 次に高松岳分岐までの急登、 そして分岐から頂上までの尾根の上の登山道、 最後が頂上の湿原となる。

 歩行時間 2008/07/30 登り3h40m 下り2h50m

 ヤマユリ
 虎毛山登山の前日、 秋の宮を車で走っていると見事なヤマユリの花を見かけた。 花の中に黒いものがあるので、 よくみると花の中にカラスアゲハかミヤマカラスアゲハが潜り込んでいる。 翅には橙色の花粉がべっとりとついている。 さらに拡大して撮ろうとして近寄ったら、 飛んで行ってしまった。
 ここに載せた写真は、 すべてPENTAX K10D・DA12-24mmF4 ED AL[IF](35mm判換算で18.5mm−37mm)で撮影。

 赤倉沢とマダゴ沢の出合い。 ここに虎毛山登山の大きな案内板があり、 さらに工事中であることを示す看板が何枚も立てられている。 一般車通行止めとあるので、ここに車を置いていく。

 赤倉沢を離れて急坂を25分ほど登るといったん傾斜が緩み、 ヒノキ林になる。 原生林だとしたら貴重なのではないだろうか。 この上部にはブナの林が広がっている。

 頂上に広がる草地に、一箇所だが池塘が点在している場所がある。 晴れていれば、雲上のオアシスに違いないのだろうが、 この天気では。。。

 池塘の周りには、モウセンゴケの群落が広がっている。 モウセンゴケは水をよく弾くらしく、小さな水滴が無数についている。

 イワイチョウの花。 この時期、チングルマの花も終わり、 湿原の花の種類も数も多くなかった。

 下山時にヒノキ林の下部あたりを歩いているとき、 チッチッと鳴き声がした。 あたりを見回すとオコジョが岩の下から顔をのぞかせて、 こちらを観察している。 すぐにカメラを取り出して、数枚シャッターを切ったところで、姿を消してしまった。
 この写真はそのうちの1枚をトリミングしたもの。 残念なことに、 このときカメラに装着していたレンズは広角ズーム(35ミリ判換算18.5mm〜37mm)で、 大きく拡大して撮ることができなかった。

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